【完結】炎ぺらーと行くナザリックの侵略日記   作:目此

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02 炎ぺらーと行くナザリックの侵略日記

 

 因果応報と言われればそうだろう。

だが、ゲームの因果がリアルに持ち込まれるのは理不尽な気がする。

 

━━━━━━

 

 オレはロールプレイに重きを置くいわゆるお遊び勢。

ユグドラシルでのテーマは“炎で全てを焼き尽くす魔法戦士”。

 ユグドラシルの炎のクオリティに惚れ込み、その系統を強化ばかりしていた。

 人間種のオレはソロで活動してたから気にしなかったがこの頃、ユグドラシルでは異形種狩りというのが流行ってたらしい。

 “らしい”というのも、その頃にはアルフヘイムの辺境でたまたま見つけた小規模だが城型の拠点をソロで落とし、管理で忙しかったのだ。

 どうしても狩りだけだと管理が上手くいかないので〈皇帝〉の職を取らざるを得なかったが、今ではそれこそがアイデンティティとなっているのは不思議なもの。

 

 話は変わるが、ユグドラシルには拠点にもいくつかの階級のようなものがある。

 ナザリックのような初期で6層もあるダンジョンや城とその周辺を含めトーキョードームくらいの広さを待つ城下町など拠点ランク上位のものから、三棟くらいしかない村までさまざま。

 その中でも〈村〉は拠点としては最低クラス。しかも近くの〈町〉や〈城〉などの発展度などいくつかの要素からランダムで生成される。

 その住民からクエストを受けたり、商談を行ったりと交流することで発展させることも可能だが、同時にオブジェクト判定されるため一部の攻撃魔法の対象にもなっている。

 

 そんな、六位階魔法が吹けば消し飛ぶ程度の村をストレス発散で焼き尽くすのにハマりにハマっていたのがオレであった。

 

 ある時はスキル強化で村を一瞬で焼滅させ、ある時は延焼の継続ダメージでじわじわと燃壊させる。

 

 煌めく炎の姿に惚れ惚れし、建物が燃え崩れる音に高揚して、燃え散った煤が舞う様が物悲しい、リアルでできない行為と規模がたまらないほど楽しくて夢中だった。

 

 そんな事をやっていたからだろう。

 

 《大罪人》の職業を取得させられたのは。

 

 気が付けばオレはアルフヘイムで有名なプレイヤーとなっていた、しかも運営によって。

 

 フレーバー的な設定だと、“奇跡的に近くの集落まで生き延びた村人によりその罪を公にされた”という感じである。

 

 誠に遺憾である。

 

 結果、問答無用でキャラネームとその時の外見が世界一つ(サーバー)に拡散され、運営によって指名手配(ウォンテッド)されているのだから。

 とはいえ、賞金が━━ユグドラシル廃ゲーマーなら━━二日もあれば稼げる程度の額という世界一つに轟くには明らかに少ないと、今となっては思う。

 すぐに襲いかかるような輩がいなかったのも不幸中の幸いだった。

 なにせこちらは世界の端でこじんまり放火してるだけのプレイヤー。

 わざわざ高位の遠望魔法や転移魔法まで使って来るほどの暇人はいなかった。

 山手線の環状線(やまのてせんのかんじょーせん)内くらいあるマップは広大である。普通に一週間くらい人と会わないとかザラ。

 

 なお、こっちもムカついたので調子に乗って大罪人の職業レベルをカンストさせてやったのがこのあとの分岐となったのだろう。

 

 ある日、拠点用のアイテム作成にどうしてもプレイヤーのいる街に行く必要があり、しかたなく向かったその先でPK(Player Kill)されかけた。

 大罪人のクラス特性に『取得したキャラクターをPKしても異形種同様ペナルティなし』なのがどこからかバレて、人間種を狩ることで成れるクラスの標的にされたのだ。

 

 もちろん全力で反撃。

 

 実質的なリーダーを真っ先に倒せたことで優位に進めていたが、相手に立て直されデバフの抵抗にも失敗。

 そこからリンチのような嬲るような攻めを受けたが途中で味方してくれる人たちが居たことと、相手集団もガチ勢ではなく、さらなる反撃に出たオレも溜め込んだ課金アイテムを惜しまず使い果たし殲滅に成功。

 

 するとイベントが発生し、大罪人のクラスがなくなり《シンナルツミ》という職業を引っさげ幽鬼(レブナント)精霊(エレメント)系の複合種族として異形種デビューした。

 

 この時がきっかけになり、助けてくれたギルドでゲーム終了まで席を置かせてもらえるようになったのは幸運だろう。

 

 そしてオレは楽しい仲間達のお陰で今の自分を作ることができた。

 

 以前に比べればイン率は落ちたが最後くらいはしっかり参加しようと思ってたのに……。

 

━━━━━━

 

━━ァアアア!

「ギャハハwww燃wえwてwるwぜw」

「そりゃそうだろ、うちの薬品丸かぶりにしてるんだから」

━━熱いあつい、あついあついあついあつい!

「こいつ、前からウザかったからなwww」

「そうそう、仕事できねえ癖に課長に取り入ってよ。あとなに、入社の時の真面目ぶってるの?“自分率先して行動してまーす”ってヤツ?サムいわー」

「おまwwなんで入社当時の事覚えてんだよwwwどんだけ根に持ってんだよwwww」

━━そんなことで?

━━そんなことで!?おれはおまえたちにコロされるのか!?

「っとなんか動いてね?」

━━ゼッタイニユルサネエ

━━ナア、“オソロイ(マルヤキ)”ニナロウゼ!

「ひぃ!離せ!離せこの!?」

「テメェ、離せよ!」

━━ケラレタクライデハナスカヨ。ホノオツカイヲ……

「アガガァアアア!熱い!暑い!あつい!」

「やめ、ひがからだからっ!ウォオオオ」

 

 

 

━━コノ“炎ペラーサマ”ヲナメルナヨ?

 

 

 

◆◆◆◆

 

「ってな感じが最後の記憶っスね」

「重い重い重い!何ですかそれっ!?」

「いやー、仕事は真面目にしてたんスけどね。真面目で恨まれるって正直想像してなかったスわ」

 第5階層騒動は多少の時間を浪費したことで落ち着いた。

 至高の御方と呼ばれる二人は円卓の間でお互いに状況確認が済んだところ。

 自分がボツボツと来ない仲間に対して不満を漏らしていた裏で、“絶対駆け付けるから!死ぬ気で行くから!”と言っていた相手がボウボウ燃えていて死ぬ気どころか、本当に死んでも駆けつけたなんて聞かされたアインズの心境は計り知れない。

「しっかし、アバターのまま異世界に飛ばされるなんて不思議なモンスね」

 この部屋に入ってから何度目かわからない疑問を口にする炎ぺらー。

 今も自身の体を触り、布で覆ったガラス同士を擦り合わせるような音が小さく響く。炎を人型にかたどった姿であるが周りのものに燃え移ることの無い様は若干の違和感はあるがそこに思い至ることは無かった。なぜなら二人ともそれはゲームで見慣れた当たり前の光景だからだ。

 人で言う目にあたる部分を一際強い炎が瞬きのように揺らめくため、微かな感情を読み取れるアインズは先と同じことを言うしかない。

「はい、どうゆう訳か」

「考えてもわからないッスねー」

(んー、やっぱ見た目通りモモンガさんだよナ?アインズさまーとか言われてたから別人かと思っタ)

 呑気とも取れるほど努めて明るい声音を作る炎ぺらーとてすぐに理解できたわけでも、信じたわけでもない。

 だが、目の前にいる死の支配者(オーバーロード)の装備は間違いなく友人のもので外見が一致していることと、表情こそ読めないが話口調・若干の手癖や身振りから目の前にいる骸骨は自分の知る友人である、と確信したからこそ言葉を鵜呑みにしているのだ。

 

 そんなことを考えているとはつゆ知らずアインズは現状把握していることを炎ぺらーへと伝えていく。

 そのわかり易い説明に炎ぺらーはそんなことを考えながらもゲーム当時のように情報を共有する感覚を懐かしむ。

「にしても、NPCが生きて動き出すとは……」

「はい、もうわかっていると思いますが忠誠心もかなりのものだと」

「でスよねぇ」

 この部屋に入る時の様子を思い出す炎ぺらー。

 

“私達は常にお傍におりました!”“どうして今さら嫌がるんですか!?”“もう離れたくないの!”“お茶の用意しますぅ!”“ボク達静かにしてますから!”“あらあらうふふ(威圧)”““お願ーい、炎ぺらー様!””

“こらー!あんた達はー!”“配下でありながら、なんと羨ま……不敬な!”“炎ぺらー様わた……ジブン、悲しいd……ぞ”

 

「なんて言うか感慨深いッスね」

 “ラノベ主人公みたいになった感じッス”などとのたまうコンロ野郎……もとい炎ぺらーにアインズは不満など抱かない。

 

 それほどまでに今のアインズは浮かれていた。

 

 美の結晶。

 守護者よりはるかな強者。

 慈悲深く深い配慮に溢れたお方。

 凄く優しい方。

 賢明な判断力と、瞬時に実行される行動力を有されるタンゲースベカラザル(端倪すべからざる)方。

 最後まで私たちを見離さず残っていただけた慈悲深きお方。

 私の愛しい方。

 などとシモベには評されるがアインズにとって、自身とは現実の世界で使い潰され壊れゆく歯車でしかないと考えている。

 青春らしい青春など望めず育ち、そしてようやく謳歌できた青春こそギルド〈アインズ・ウール・ゴウン〉の皆で冒険したユグドラシル・オンラインなのだ。

 

━━歯のかけた櫛のようになっても縋り続けたものに、かつての友人が戻ってきた。

 

 いろいろ理由付けて救った村よりも、異常なほど自らを慕う配下よりも、かつての残滓となりかけた心を本当に潤す存在。

 今のアインズ……否、モモンガは精神抑制を超えて溢れ出る喜びが、鈴木悟の精神の変調を緩やかに整えてくれるのを感じている。

 

 人であった頃なら付き合い方を考えるレベルでだらしない顔をしている彼の内情は、表情筋、及び全ての肉の喪失で見事なポーカーフェイスならぬボーンフェイスを保たれているのは余談。

 

 炎ぺらーの発言にも“何を呑気な”などという感想は浮かばない。

 むしろ“こういう感想抱くのが炎ぺらーさんだよなー、ポジティブな所は変わってない”と思ってしまうのは仕方の無いことだ。

 

 しかし、そこは長年問題児ばかり抱えた異形種動物園の園長モモンガこと、アインズは気持ちを切り替える。

 

「確かに感慨深いんですが、その分期待を裏切った時の影響が非常に大きいはずです」

 

「oh……(無駄に良い発音)」

 

 弱卒凡人の俺が支配者になったんだけど、部下の好感度が振り切ってる件について。と銘を打てば新境地(笑)の軽文学書籍(ライトノベル)ができてしまうほど小説より奇なりな現実に打ちのめされるふたり。

 もちろん、彼らの共有した情報は今居る世界のこと、魔法のこと、ギルドのこと、なによりギルドに所属したNPCの彼らが意思を持ち動き出したこともその人格が創造主であるギルメンたちの“設定”したものに準拠する、などといったことを含まれていた。

 多分に思い出話を交えながらであったのはこの場にいるふたりは情報を正しく共有していく。

 

「大変ッスねアインズ?さん?」

「モモンガでいいですよ!それにこれから大変なのは炎ぺらーさんもですよ」

「やだヨ、めんどい。楽隠居まっしぐらでスわ」

 人間なら意地の悪い笑みを浮かべているアインズの雰囲気を敏感に感じとった炎ぺらーは先手を打つ。

「許さないですよ、俺を置いて隠居させるわけないじゃないですか!」

「オレちゃんは平のギルメンなのでスよ、ギルドマスター?」

「ならギルドマスター権限で副ギルドマスターに任命です!」

「拒否!ギルドの掟により過半数を超えないため、否決されまシた!」

「チッ!」

 言葉だけなら険悪とも取れるやりとりだがそこに負の感情は一切なく、旧友とのやり取りを楽しむ喜色の感情しかない。

 

「……ふぅ。そろそろ、段取り決めましょう」

「あーっ、やだよぉ、緊張するよう。もう少しフランクに接せないのカあいつら」

「はいはい、装備取りに行ったら始めますよ。《伝言(メッセージ)》、……アルベド少しいいか?」

 

支配者たちの夜は続く。

 

 

 

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