【完結】炎ぺらーと行くナザリックの侵略日記   作:目此

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あまりにも次話が書き上がらないので番外編を放出します。


番外編 01

番外編01 炎ぺらーと行くナザリックの侵略日記

 

【炎ぺらーさんの侵略日記】

 

━━━━━━

 

「モモンガさん、オレちょっとサーバー移るッス」

 円卓の間、定例会議の時でなくとも人が集まるそこで炎ぺらーはギルドマスターであるモモンガへ用件だけ伝える。

「「「えええ!?」」」

 モモンガ以外にも、たまたま近くで聞いていたペロロンチーノ、たっち・みーを酷く驚かす内容だった。

「また急だね、炎ぺらーさん。今回は一体何をやらかすの?」

 比較的動揺の少なかったヘロヘロは炎ぺらーがこれまでやらかしてきた━━その内、炎ぺらーが主犯のものが極めて少ないのが彼の人柄を知る人の感想だが、それはそれとして巻き込まれた多数の━━事件を想起し、粘液体(アバター)の奥で楽しそうな騒動(イベント)の気配を感じ取る。

「やらかすは酷いッスね!ちょっと小耳に挟んだ情報の真偽を確認するだけッスよ」

 腰に手を当て『おこ』のエモーショナルアイコンを表示した炎ぺらー。

「と、とりあえず訳を教えてくださいよ。じゃないと話が進みません」

 ヘロヘロの冷静さに引っ張られ落ち着きを取り戻すモモンガとその言葉に激しい頷きで同意を表すペロロンチーノとたっち・みー。やはり表情が動かずともジェスチャーで伝えられるのが人間というものである。

「ちょいと気になるイベントが開催されるって話なんでスよ。んでそれに参加してこようかナと」

「イベント?」

 サーバー限定のイベントなんてあったか?とモモンガたちは顔を見合わせるが答えはノーだ。

「まあ、たぶん、ユーザー側の非公式イベントッスね」

「なるほど」

「それでどんなイベントなんですか?」

 それなら知らないものもあるだろうと納得する各々。どこかの野良ダンジョンやギルド拠点を攻略することをイベントと称することも多々ある。

「なんでもサマナー限定の強力なアイテムが取れるってダンジョンに潜るイベントッス」

「サマナー限定かー」

 それなら引っかからないのも無理はない、と得心を深めた。なにせ、〈召喚士(サマナー)〉そのものの人口が少ない。

 〈召喚士〉も信仰系や魔力系などいくつか系統に別れ、召喚できるモンスターもレベルと比べれば強力ではある。だが、その扱いはピーキーのひと言。

 攻撃単体を見れば格上でも十分通じるものもあるが、“DPS(攻撃時間比)”で比較すると〈ワールドディザスター〉など攻撃を得意とする魔法詠唱者よりも低く、何よりも操作の難解さからなり手も少ない。

 操作面でいえば軍師系の“タブラ・スマラグディナ”のような卓越したプレイヤースキルありきでようやくエネミー相手にできる程度なのだから、魔力系死霊魔法詠唱者のモモンガの使う━━スキル名上作成だが、プレイヤーとしてもゲームシステムとしても━━召喚スキルみたいに〈死の騎士(デス・ナイト)〉を使ったヘイト集中と耐久で純粋な“壁”として利用するものがほとんどだ。

 炎ぺらーも最近“魔燒”と呼称するようになった自分専用にカスタム(レベリング)したサモン系に属するNPCがいるが、どちらかと言えば彼の持つ特殊なスキルの増幅器のような位置付けに近い。

 〈召喚士〉とはとても言い難いビルドではあるが、話通り強力なアイテムであれば戦力的にもありがたいものであろう。万が一、自分が使えなくても強力なアイテムはそれなりの値で売れるので損もないだろう。

「しかし、それでサーバー移動までしなくても……」

 サーバー移動自体は珍しくないし、難しくもない。コンソール上の指示に従い、所定の手順で操作をすれば行える。

 しかし、それはユグドラシル、引いてはフレンド間において単独では実行しづらいのが現状。

 理由としては互いの状況を把握し合えないからだ。

 フレンド間であっても相手の状況がログアウトの扱いのまま変わらないため、今ゲームをプレイしている(インしている)のか判別できないこと。《伝言(メッセージ)》などのゲーム内の連絡手段は同じ“サーバー(世界)”でしか適用されない。

 加えて、ユグドラシル・オンラインが現在まで続くDMMORPGの中では古参に入り、フルダイブの動作環境的に別のチャットツールを起動しながらのプレイが不便であること。

 動作の軽い情報サイトなどであればできる環境もあるが、市販されているナノマシンでは些か以上に不具合が出る。これは公式も公表済みで、「ならサーバー間の通信手段を用意してくれ」と訴える声もあるが現状で採用されていない。

 ちょっとした買い物程度ならギルドのメンバーもしているから、わざわざギルドマスターやメンバーに報告することを考えればそれなりの期間をアルフヘイム(サーバー)から離れるであろうと想像は難しくない。

「言っても数日でスよ?」

 炎ぺらーはヒラヒラと手を振り、今持っている最強装備を置いていく旨を伝える。

 サーバーを移動した友人がそのまま永住(比喩)してしまったというウェブ記事を最近見たモモンガとしては気が気でなかったが結局止められなかった。

 

━━━━━━

 

「ちょっとモモンガさん、こっち来て!」

「〈ぶくぶく茶釜〉さん、どうしました?」

 炎ぺらーが遠出(サーバー移動)してから数日、モモンガが円卓の間でギルド関係の雑用をしていると━━少しアレな形をした━━ビンク色の粘体が声をかけてくる。

「今、他鯖で遊んでる人から連絡あったんだけど炎ぺらーさん“また”やらかしてるぅ!」

「え、……えっ!?」

 炎ぺらーのやらかし、そう聞いて声をあげないメンバーは少ない。

「今度は何やらかしたのー?」

 またもや復活の早いヘロヘロがぶくぶく茶釜に問いかける。

「わかんないけど、かなり大立ち回りしてるみたい!」

「わ、わかりました。今集められるだけのメンバーで行きましょう」

 そう言ってモモンガはログイン中のギルドメンバーへと簡単な説明を兼ねた招集をかける。

 

 そうして集まったのはモモンガ、ぶくぶく茶釜、弐式炎雷、武人建御雷、ヘロヘロの計五名の調査隊。

 たっち・みーや死獣天朱雀などのメンバーもログインしていたが別件で動けないとの事だった。

 ぶくぶく茶釜の手に入れたものと炎ぺらーから事前に貰った情報を元にやや離れた位置から隠蔽魔法をかけて近づいていく。

 個人での隠密能力に優れた弐式炎雷だけは潜伏スキルと仲間からの援護を受けて、調査隊よりも前方で斥候の役割を果たしていた。

「待って、今空に魔法の軌跡が見えた」

 先行している弐式炎雷からのハンドサインで前方の空を窺えば、描写範囲ギリギリの空に幾度か魔法のエフェクトの端が映る。つまり空中で魔法行使が行われていて……察するに戦闘行為がぼっ発しているのだろう。

「少し先行して見てきたけど……あれ、炎ぺらーさんだわ、あんな炎のエフェクト他に知らない」

「っ!周囲を警戒しながら急ぎましょう!」

 弐式炎雷の言葉に思わず固唾を呑んでしまうが、努めて冷静に周囲への警戒を怠らないモモンガ。

 端とはいえ魔法のエフェクトが見えるということは既にこの場も戦場だ。漁夫の利、ハイエナ、そういった()()()()狙いのプレイヤーがその辺に潜んでいる可能性は十分にある。

 事実彼らが少し進んだ先で1パーティ(六人)にも満たない低層プレイヤー集団を不意打ちで蹴散らし、さらに接近すれば環境音に混じり微かに声が聞こえた。

「ハーッハッハ!闇に飲まれろ!喰らい尽くせ、〈地獄浄火(ベルゼブブ)〉!」

「ぎゃー!死ぬ死ぬ死ぬー!?」

「なんだよこのバ火力!チートじゃねぇか!?」

「お前ら火耐性上げろ!ホントに死ぬっ、ギェー!?なんで上げたのにこんなダメージ受けてんだよォ!」

「「「「「…………」」」」」

 近づいた先で見えたのは文字通りの地獄絵図。

 フィールドのそこかしこに環境ダメージの延焼が発見でき、かすかに生える木々や青々とした草も残らず〈炎の世界(ムスペルヘイム)〉に変わったのかと疑うほど火に侵されている。

 そして、噂のダンジョンの前で陣取り、辺りにあるもの全てを炎に沈めながら今も()()()()()で攻撃し続けているのか、陽炎のように揺らめく熱気(エフェクト)を纏う炎の魔人。探していた件の人物、炎ぺらーが天に座していた。

 そんな時間もすぐに終わる。参加していたであろう全てのプレイヤーが全員、死亡状態となりそこらで声を上げている。

「あれ、どうしたんスか皆?」

 ようやくモモンガたちに気付き先程まで表に出ていた邪悪な態度(悪役ロール)を引っ込める炎ぺらーはモモンガたちへと手を振った。

「何してんだこの着火マン!」

 そのモモンガの言葉と共に一足で肉薄した弐式炎雷の連撃を受けていると、少し遅れて武人建御雷の剛力による加勢でみるみるうちにHP(ヒットポイント)を減らす炎ぺらー。

 現在、炎ぺらーはチームを編成していないため、ギルメンであろうとフレンドリィファイア可能なのだ。

「え、なになに!?死ぬ死ぬっマジで死ぬぅ!」

 やめテ、アッー!と断末魔を上げて不動明王コンボ紛いな連携に倒される炎ぺらー。

 無駄にかっこつけて決めポーズを取る余裕すらあるアタッカー勢はご満悦で戻ってきたのはご愛嬌。

「んで、どうします?」

 ぶっちゃけ、事情も聞かずに推定加害者(炎ぺらー)をボコボコにしただけで、一切事情を把握していないモモンガたち。

「あ、〈のみー〉だ、おーい!」

 そんな中、ぶくぶく茶釜がダンジョン入口に隠れていたプレイヤーを発見。

 警戒心なくぶくぶく茶釜が近づくと最初は遠くから見ても驚いていたが、手振りも混じえて話すうちになにやら話し込んでいる。

「っで今度は何したんです?」

 自前の蘇生アイテムで復活した炎ぺらーがなぜかヘロヘロの前で正座させられていた。

「え、そもそもオレはなんでボコられたんスか?オレただあの人守りながら、こっちの報酬ネコババしようとしてた奴ら返り討ちにしただけなんスけど……」

「「「えっ?」」」

 炎ぺらーの話はこうだった。

 当初の予定通り、ダンジョンへと集まったユーザーたち。総勢八人と少なくはあったが、斥候役のプレイヤーからエネミーレベル帯高くても五十届かないレベルだとエネミーの傾向から判断された。

 ただ、メイン火力となるアタッカーが炎ぺらーを含め二人━━そもそも、サモナー系で火力を出そうと言うのが難しく━━しか居らず難しいかもとなる。

 そんな時に炎ぺらーがダンジョン外周を観察していたところ、ダンジョン付のNPCと遭遇。

 炎ぺらーの持っていた交渉スキルが功を奏し、傭兵として雇い彼はそのままのノリでダンジョンへ入る。

 それを一番に追いかけたのが〈のみべぇ〉という、ぶくぶく茶釜と話している推定女性プレイヤーの猫亜人(猫寄りの外見)と斥候役の中性的なエルフ。

 めったに会えない女性プレイヤーにいい所を見せようと、残りの五人もダンジョンへと踏み入れた。

 道中は斥候役の情報通り、エネミーの強さだったため雑談混じえて報酬の分け方を話し合う。

 要所で危ないところはあったものの無事に最奥まで辿り着く。

 そこにはボスキャラとしておどろおどろしいトレント系と思われ敵が現れた。

 ろくに攻撃手段を持たなかったほとんどのメンバーを守りつつ、その極端な特性と今回の敵とたまたま相性が抜群に良かった炎ぺらーは実質一人で討伐してみせる。

 ボス討伐で手に入れた報酬は事前の話し合いで決めた分け方で振り分けるもここで問題が発生。

 なんと炎ぺらーの雇ったNPCがボス討伐のボーナスによって、人間種専用の強力職業への転職に必要な特殊キャラだということが判明するイベントが始まる。

 これにクリア時点で解散したチームのメンバーが反発。実際第一功とLAB(ラストアタックボーナス)に加え、そんなボーナスキャラまで持っていくのは不公平だと暴論を翳す。

「まぁ、ぶっちゃけ女の子の前でいい所が見せられなかったどころか、実質的な報酬を総取りされればそらキレるっスね」

 炎ぺらーはコミュ力を遺憾無く発揮し全員と話していたが、唯一の女性プレイヤー〈のみべぇ〉が自分から(楽しそうに)話しかけていたのは炎ぺらーと斥候役だけであったことを炎ぺらーは気付いていない。

 そして、この横暴に〈のみべぇ〉と斥候役は炎ぺらー側の擁護に回ったあたりで完全に話が拗れた。

 〈のみべぇ〉がリアル声優であることがバレるわ、妙な勘ぐりされるわでてんやわんや。

 ボス戦で大きく疲弊している炎ぺらーを五人でPKしようと攻撃を開始。

 最終的には炎ぺらーと斥候役で〈のみべぇ〉を守り、斥候役は落ちた(HP0)もののそれによって強化された炎ぺらーが元々優勢だったところをダメ押しした所が、モモンガたちの目撃したところである。

 そして、一息つこうとして先程の仕打ちを(仲間から)受けるに至ったのだ。

「え、炎ぺらーさんがマトモだとっ!?」

「いやいやww炎ぺらーさんホントトラブル体質www」

「サンドバッグ殴るのたのちぃ、ほぼイキかけました」

「昔の人が罪人で刀の試し斬りする気分が味わえた」

「殴られ損な上、ひどいっスねこの人たち……」

 話を聞いていたメンバーのコメントである。

「その話ホントみたいだよ」

 向こうも話が終わったのかぶくぶく茶釜が件の人物を連れてやってきた。

 しきりに頭を下げて謝り倒す〈のみべぇ〉へ、モモンガは手で抑えるようなジェスチャーで返す。

 なんだかんだで今回の騒動も楽しめたとヘロヘロが横目に炎ぺらーを見た。

 話が終わったと判断して、正座を崩して立ち上がり蘇生アイテムで斥候役を復活させた炎ぺらーは子供のように()()()()()()を周りに見せびらかし、その効果を聞いたメンバーが騒ぎ立てている。

 ギルメンに交ざって驚くエルフの斥候役は金床のような胸部の弓使いであるが漏れ聞こえる声から男だとわかってヘロヘロは視線を切った。

 

 

 ユグドラシルであった、在りし日の騒動。

 彼らにとって、思い出の1枠。

 

……こんなイベントばっか起こしてるからトラブルメーカー扱いされるということは炎ぺらーは知る由もない。

 

 

━━━━━━

 

「あ、この(NPC)女装っ子なのカ」

「「ガタッ!」」

 

 

 

 

 




斥候役君の外見は変なの(ゴブリンスレイヤー)さんのとこのエルフっぽい。
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