【完結】炎ぺらーと行くナザリックの侵略日記   作:目此

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お待たせしました。

ちょっとだけ駆け足。


20.5_3

20.5_3 炎ぺらーと行くナザリックの侵略日記

 

【ナザリックの者たち】

 

 

 第九階層ロイヤルスイートのモモンガの私室に備えられた大きなベッドで寝息が漏れる。

 穏やかで規則正しく赤子のようにまるまっているのはナザリック支配者のひとり、モモンガであった。

 本来睡眠不要である不死者(アンデッド)の彼だが、今は人間化して文字通り惰眠を貪っている。

 そのことを咎めるシモべはもちろん居ない。

 どころか生者ならば必要な睡眠をあえて死者の王であるモモンガが取ることで、無防備な所を任される=めっちゃ信頼されてる!と元々高いやる気が数段上がってしまう、まであった。……既に最上段だったところに段を作って積み上げるシモベたちという真実から目を背ければ、であるが。

「くふ、くふふ、くふふふふふふふふ」

 安寧とした室内に抑えきれず漏れ出る怪しく湿った声を抑えた、部屋の主を除いた唯一の人物。

(あぁ、愛しのモモンガ様に膝枕。お慕いする殿方の無防備な姿を特等席で眺めながら使われる……炎ぺらー様も偶には良い事を言うわね)

 守護者統括アルベドである。分かりきってましたよ、ええ。

(足で感じる重さ、普段よりも大きく聞こえる息遣い、手を伸ばせば届く距離……っっっ最高だわ!しかも戦士である私なら何時間でもして差し上げられる。……疲労無効(つかれしらず)のシャルティアもやろうと思えばできるのは業腹だけど、一番の障害はとっくに取り除かれている。なんの心配もしなくて済むのは本当にいいわね)

 その心配のほとんどは杞憂であった、と今なら笑い話になるがここには居ないもう一人の至高の御方からすれば剣を突きつけられた玉座(リアル・ダモクレス)など苦笑いすら浮かばないことに彼女は気付くことはない。

(……本当、どっちが危なかったのかしら。炎ぺらー様もヒトが悪いわね)

 至上の時を堪能しつつ、脳裏に映るのは王都での()()だ。

(物資?実験体?名声?そんな程度の訳ないじゃない。()()()()はデミウルゴスに花を持たせる方便よ。本当の狙いは八本指そのもの。まさか、幹部をひとりも挿げ替えずに黒棺(ブラックカプセル)での“洗礼”だけで実質的に王国の裏を牛耳れるなんてどこまで見通してれば浮かぶ発想なのかしら)

 守護者統括としてナザリック内の領域を知識では知っていても、その効果……()()を受けた後の“従順具合”まではさすがの予想外だ。

 アルベドとて嫌ってはいないが、あまり良い印象を持っていない……いや、言葉濁さず言うならナザリックの仲間たちでも黒棺(ブラックカプセル)の守護者である()を含めた眷属たちへ、なんの忌避感を抱かないのは極小数である。

(わざわざ()()()()()()()()()()()()()を生み出しといて、それをたかが人間の雌に成り代わらせて使う程度で使い潰すなんて……と思ってたけど、実際やってみればあっさり騙されて拠点の場所も割り出した。その上、八本指の幹部たちの居場所も見つけるなんてどこまでも計算通りだったってわけね)

 

 そこまで考えてないヨ。そんな声が聞こえてきそうだが、着火マンは今頃村で新しくできたカップルをお祝いしてるんじゃないかな。

 

(でも、()()第三王女をデミウルゴスに対応させた。いえ、炎ぺらー様も今回の詳しい計画までは知らなかったはずだし、さすがにデミウルゴスの独断だと思ってたけど……もしかしてそこまで織り込み済み?ダメね、どこまで計算だったのか考えるだけで病気無効のマジックアイテムを突破して頭痛がしそう)

 ほんの少しだけ全身に力が籠ったのを寝苦しそうなモモンガに気付いて脱力する。

(そうすると次に行く場所を考えると……。なるほど、でも、それもかしら……っ、いえ、()()()()()は後でいいわ)

 ほんの少しだけ熟考しかけるアルベドは思考を打ち切る。

 

「今は、よくお眠り下さいモモンガ様」

 

 優しく髪を梳く姿は聖母のように美しかった。

 

 

━━━━━━

 

 ナザリック地下大墳墓の第九階層はその成り立ちからして実にギルドメンバーらしい造りとなっている。

 ナザリック全体で見ると最奥は第十階層であり、もちろん侵入者に対しての防備もしてあるが、実質上の最終防衛ラインは第八階層なのだ。

 であれば第九階層はなんなのか、それは“ロイヤルスイート”の名の通り拠点における偉大(ロイヤル)な方々の憩いとなる場所として()()()()

 

現実(リアル)では味わえない贅沢を味わいたい”

 

 そんな庶民的で大それた事が可能な空想(ゲーム)は一丸となった集団にとって、個々の熱量を互いに高め合う炉であった。

 

 多数のメイドが食事する場所が欲しいとなれば“大衆食堂”風の食事スペースを増設し、蒸し風呂ではなく“じゃぐじー”なる泡風呂が欲しいとなれば作り、ネット通販ではなく“露天商”で買い物がしたいとなればブティックを立ち並べ、小料理店の女将さんっていいよね……いい、となれば小洒落た小料理屋をひっそりと陰に建設した。

 

 その中に『オシャレなバーで美味しいお酒を飲みたいんだ!』と化合物で味と色をつけたアルコールを呷るギルドメンバーがいてもおかしくは無い。

 

アルコールを頼む、とあるコール。ふふ……

 

 そしてできたのが『バー・ナザリック』である。

 

 優しい灯りにぼんやりと照らされた室内、カクテルの中を泳ぐ氷が奏でる涼やかな音、そして━━

「美味しいでありんすねぇ、ひっく」

「ちょっと、なんで《毒無効》解除して酔ってるのよ」

「お、お姉ちゃん……」

━━雰囲気(ふんいき)を味わう客の存在。

 

 もっとも、今日は些か風変わりなご様子であった。

「“酔わない酒は酒の味を悪くする”と、炎ぺらー様が言っていたでありんす」

「“酒は飲んでも、呑まれるな”って聞いたよ、あたしは炎ぺらー様に」

「……美味しいですね、これ飲んでるととってもふわふわしてきます」

 第一・第二・第三階層守護者、真祖(トゥルー・ヴァンパイア)の“シャルティア・ブラッドフォールン”。

 第六階層守護者、エルフの“アウラ・ベラ・フィオーラ”。

 同じく第六階層守護者、エルフの“マーレ・ベロ・フィオーレ”。

「〈マーリカ・ピーチ〉のリキュールと濾した〈ガ=イム・オレンジ〉のジュースで作りました〈ジンバー・ファジーネーブル〉でございます。口当たりが柔らかく、甘く爽やかな後味が特徴ですね」

 

 そして、普段ナザリック食堂で働く副料理長がバーテンを務めていた。

 

 バーカウンターに並ぶ小柄な体躯はカウンターチェアに腰かければ足が宙に浮かび振れてしまうほどで、言葉濁さず言えば子供が背伸びしているようにしか見えない。

 とは言ってもシャルティアは不死者(アンデッド)、アウラとマーレはエルフで、ここはナザリック。

 至高の御方と呼ばれる人たちが飲酒を認めればそれがそのままナザリックでは適用される。

 

 良い子は真似しないでね(お酒は二十歳になってから)

 

 このバーを含めたロイヤルスイートに存在する施設は異世界へと転移してからシモベ達にも慰安目的に開放された。

 正確には元々使用の制限などなかったが、シモベ達にとって第九階層は至高の御方(ギルメン)の住まう聖域故に立ち入りすら躊躇する者も居て、それを至高の御方手ずから使用用途などをレクチャーされた事でそれなりに利用者が出るようになったのである。

 モモンガも炎ぺらーもナザリックへ帰った時は積極的にシモベを誘い、レクチャーの片手間に思い出話を交えて利用していた。

 本人たちは(これってパワハラ的なやつか?)と不安を覚えているが、もちろんシモベ達にとっては「バッチコイ(一部バッチ恋)!」なので杞憂に過ぎない。

 シモベたちの役割上、守護者たちが最も誘われるのは自然であり、気負いなく利用できるようになった彼らである。

「どちらも炎ぺらー様は仰っておりましたね。お酒はアルコールの味や酔いも楽しむものでありますし、同時に毒であるため飲みすぎるのも良くありません」

 幾度となく訪れた彼女たちの味の好みまで把握している副料理長は酒の場とはいえ、これ以上険悪になられるのも迷惑なので注意を込めて話に割り込む。

「……さすが炎ぺらー様でありんすねぇ」

「ほんとそうだよねー」

 言外の意図を察したふたりはお互いを見合い、口を湿らせ本心からの賛辞を口にする。

 ちなみにシャルティアが口にしているのは〈マキシマム・トマト〉のジュースと〈ヴィクトリー・オオムギ〉のビールで作った〈ブレイブ・レッドアイ〉で、アウラは〈キョウシャバナナ〉のスムージーに〈デュークレモン〉のシロップとヘルヘイム産コーヒーのリキュールを足した〈ロードバロン〉だ。

「それで……あんた最近何かあったの?」

「いきなりなんでありんすか」

「あー、その、最近、モモンガ様のところに、あんまり、行かないじゃん」

 お酒の味を楽しみつつ、アウラは気になっていたことを聞いてみるが上手い言い回しが思いつかず半端な問いで聞いてしまう。

「キチンと報告はしてるでありんす」

「そうじゃなくてっ!」

「なんでありんすかっ?」

 いつになく歯切れの悪いアウラへ怪訝な視線を向けるシャルティア。

「その、前ほど、アピールしてないじゃん、お后になるーってアルベドと張り合ってたのに」

 ナザリックが異世界へ転移してからモモンガに会えば熱烈アピールを送り、アルベドと会えばどちらが第一妃になるかで、威圧合戦をモモンガのいない所でも繰り広げアウラが仲裁に入ることもあった。

「そういうことでありんすか」

 納得いった表情でグラスをあおるシャルティア。

「今でも、お慕いしてるでありんす」

「だったら……」

「でも、一番じゃなかった」

「ッ……」

「炎ぺらー様に『モモンガ(さん)の伴侶はアルベドが良い。彼女じゃないとダメなんダ』と言われた時は……不敬だけど、ほんの少しだけ、言い返したい気持ちが湧いた()

 赤い水鏡に映る自分の顔を、グラスを指で軽く弾いて揺らし無くして弄ぶ。

「『お前()を本当の意味で受け入れられるのはここに居ないアイツ(ペロロンチーノ様)ダケ。何せお前はあの人の専用嫁なんだかラ』って聞いて納得しちゃった()。ああ、私は頭のてっぺんからつま先まで最高のご主人(ペロロンチーノ)様が作った専用なんだって」

「シャルティア……」

 

「これが、専用お○ほ、という奴でありんすねぇ!」

「知らないけど、たぶん違うかな」

 

「……そう言えばアウラ様やマーレ様は大森林なる場所へ前線基地を建造する任を拝命されてましたがどうですか?」

 煎った黄金ナッツをツマミとして提供しながら、ふと思い出したように副料理長は話を振る。

「トブの大森林に建ててる“フェイク・エヌ”は順調よ。あーでも、“ハムスケ”が縄張りから居なくなったせいか、少しざわついてるかな?」

「そ、それに炎ぺらー様が縄張りとかの急激な変化で森にも影響出るからって、隠密に長けたシモベで偵察隊をいっぱい作って森全体を駆け回らせてます」

 以前は“フェイク・ナザリック”と呼んでいたトブの大森林に建設中の偽装用仮拠点だが、モモンガと炎ぺらーがある時の会話の中で『ナザリックの名前をそのまま使うのはいかがなものか?』と零したためナザリックの頭文字だけを使うこととなった。

 名前を広めるなら“アインズ・ウール・ゴウン”だけで十分であり、ナザリック地下大墳墓の名前はギルド名に比べれば知名度が低いのも理由として挙げられる。

 シモベとしても至高の御方がフェイク・ナザリックと呼ぶよう命じたなら従うのだが、シモべage・他sage・至高の御方foreverが標準装備なのでやっぱりナザリックはそれなりに特別な意味があるため、呼ばなくて済むならそれに越したことはない。

 ちなみに『ハムスケ』とはトブの大森林の一部を支配していたモンスターのことで人語と魔法を解する珍しい生物(ナマモノ)だ。至高の御方たちには“ござる口調のでっけージャンガリアンハムスター”にしか見えないが。

「モモンガ様たち結構あの森気に入ってるみたいだからね。『やたら開発してもリアルの二の舞になる』って言ってた」

「リアルですか……確かに造物主ブループラネット様も『森が見たい』や『草原に大の字に寝転がって夜空の星を眺めたい』と常々仰っておられましたから、御方々の住まわれたリアルなる世界はもしや第五階層や第七階層のよりも過酷な環境なのでしょう」

 並大抵の環境であれば至高の御方たちなら絶対に問題がないと確信しているシモべは、そんな御方々がある程度形を残したまま周辺を保っているのだから意味があるのだろう。

 シモべの浅慮では考えつかないような神算鬼謀の持ち主()()なのだから、と納得することしかできない。

 それ以上に……。

「……リアルから炎ぺらー様しか()()()()()()のってもしかしてっ」

「マーレ!そんなわけないに決まってるじゃん!」

「そうでありんす!ペロロンチーノ様もぶくぶく茶釜様も、きっと無事でありんす!今はきっと、……きっとこちらへ来るのがほんの少し遅れてるように感じるだけ……でありんす。以前至高の御方たちが『時差』なる物に悩まされていたと仰ておりんした。あの方たちはモモンガ様たちと違って戦士でありんすから、その差が大きいのでしんしょう!」

 自身たちの造物主がリアルなる環境でこちらに戻れないだけのダメージを、どころかその命が……。などと過ってしまう己が信心の浅さを心で叱責しながらお互いの肩を寄せ合う。震えているのは抱いた相手なのか、それとも……。

 

 モモンガだけが今もナザリックを支配していたのであれば自分たちの不甲斐なさに“お隠れ”になられた。

 

━━そう自分の至らなさを悔やむこともできた。

 

 だが、現実として炎ぺらーだけが戻り、他の御方は未だ帰還されていない。

 

 造物主と炎ぺらーの違いはなんだ?

 職業?習得されている魔法?使用できるスキル?

 切欠は?条件は?それとも制約?

 

 本当に戻ってきて欲しいあの方は何処?(なんでお前だけ戻ってきたんだ?)

 

 炎ぺらーは確かに希望を灯した。

 だが、それは同時に絶望を色濃くもしたのだ。

 

 呷った酒は塩気(ソルティー)な風味を増した気がする。

 

 

━━━━━━

 

(嘘だ……嘘だっ、嘘だ嘘だ嘘だ。嘘だぁっ!)

 ナザリック地下大墳墓地表部に備える巨大な霊廟。

 その屋根の上には天へと右の掌を突き上げて立つ炎貌の友人……否、友人だったものが、今元々そうだったかのような結晶のモニュメントと化している。

 普段の炎体を象ったまま、まるで石像のようにピクリともしない。

 近くによれば、近頃読み取れるようになった炎の表情は必死のもので固定されている。

 

「Tu■ー、◆◆◆◆◆◆◆◆っ!私たちを、私をっ、()を裏切ったな!」

 

 いまだ○○魔法の余波で渦巻く曇天を慟哭が裂く。

 

 確かに最近関係が、世の中が危うかった。

 だから自分たちは世の軒を共にする隣人として君たちとできうる限りの妥協案を模索しながらも歩いてきていたはず。

 だがそれを一方的に決めつけ、歩んできた道から逸れたのはお前だろう。

 彼は最後の最後までお互いの落とし所を探し、作り、訴えていたはずだ。

 

━━その最期が命を賭して____の制限を無視した使用による魂ごと燃焼させて我が家を傷一つなく守って終わりでいいはずがないっ!

 

「アルベド!全ナザリックの者に伝令だ!奴らは決してやってはいけないことをしでかしたのだ!殺せ!殺し尽せ!草の根ひとつ残すな!羽虫ひとつ遺すな!人であろうと、獣であろうと、竜王だろうと、魂魄の一欠片まで鏖殺(みなごろし)だ!」

 

 自分がこれほどの憎悪を抱けたことに驚きだ。

 自分の感情は精神抑制の効果でこれほどのものを持続できないはず。

 自分はいまだこれだけの心があったのか。

 

 だがもう無理だ。

 これは抱いたのではない。

 

 自分が憎悪(カイブツ)そのものになったのだから。

 

◆◆◆◆

 

 

「はぁっぁっ……はぁ、はぁ……」

 身の毛もよだつ感覚にはね起き、荒い息を何度も吐く。

「い、如何なされましたモモンガ様?」

 寝苦しさにうなされていたモモンガへ起きた時に飲み物でも、と━━他のシモベにモモンガの寝顔を見せたくなく━━断腸の思いで水差しを取りに寝室を離れたアルベドが絶叫のような声を聞き慌ててベッドの側へと駆け寄る。

「アルベドか……少し夢見が悪くてね」

 ナザリックの代表“アインズ・ウール・ゴウン”として振る舞う時のような声音もなく、姿形も見た目通りの人間種の青年となったためか、支配者然とした普段と違う穏やかで優しげな声にキュンキュンキテいるアルベドはその様子をおくびにも出さず持ってきた水差しからグラスへと注ぎ渡す。

 しかし、お礼を口にして受け取った水を飲み干しても、汗と寝苦しそうにする前にはなかった焦燥感を滲ませる顔はアルベドの精神を平静へと落ち着かせた。

「……夢を、見たんだ」

 二杯目を空にしたモモンガがポツリと洩らす。

「炎ぺらーさんが、死んでしまう夢。ナザリックのみんなを守って、()()()()を使って燃え散る最悪の夢。そんなこと無いはずだ……だって、炎ぺらーさんは独りじゃないって、言ってくれたんだっ」

 誰がやったのか、どうしてこんな夢を見るのか、わからないがただただ酷く強い現実味が心を苛み、震える両手がグラスを包む。

 ナザリックが壊されたのなら怒りは湧いても我慢できる。シモベが傷付けられたのなら殺意は湧いても我慢できる。自分が負けたのなら悔しさは湧いても我慢できる。

 

 だが、炎ぺらー()が倒れるのは我慢できない。

 

 炎ぺらーを壊そうとするものが許せない。炎ぺらーを傷つけるものが許せない。炎ぺらーを負かすものが許せない。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()” 

 

 脳裏に過った危険な思考に気が付き、慌ててかぶりを振る。

 

(俺ってこんなに独占欲強い方だっけな?しかも、その相手が男なのは……ちょっと嫌だ)

 

 冒険者活動やナザリックのリフレッシュで人間へと度々変わったことで、異形種の時に感じる他人(ナザリック外)への共感の無さが薄れたのはいいが、その分身内に重い感情を向くのは避けたい。その思考の根幹が主に炎ぺらーに嫌われないか不安、という点に気づいていないモモンガ。

 

「安心してくださいモモンガ様」

 

 俯いた先に映るグラスを覆う震えた両手が優しく包まれる。

 細長くも女性らしい柔らかさの手は凡そナザリックでも上位の戦士だとは思えない美しさ。

 視線を移せばベッドに腰掛ける自分の前でドレスの裾が汚れることも厭わずに跪くアルベドの姿。

「炎ぺらー様も倒れません。モモンガ様も倒れません。……ナザリックも倒れることはありません」

「なんでだ?なんで、そんなに……断言できる?」

「モモンガ様が()()をお望みだからです」

 慈愛の満ちた微笑みに不思議と心の端が軽くなるのを感じるモモンガ。

「あなた様が望むのなら、私たちは成すだけです。ですので、無理も無茶も仰ってください」

「こんな夢の話なのにか?」

「なおのこと、お任せ下さい。私は“夢魔(サキュバス)”。夢の中であなた様を苦しめるものがいるのであれば、私が退治してみせます……ですのでっ━━」

 

「━━夢の中で会うことをお許しください」

 

 目を逸らし、頬を染めるアルベド。

 

 スッと行ってドスッとやられた。そんな感想を抱くモモンガ。

 

━━これがアルベド?

━━炎ぺらーさんが来るまで肉食獣みたいな目で見てた、あの……?

 

 心に巣食った不安が一瞬で霧散したことに、モモンガ自身も気付く。

 

━━頼ってください、悟さん━━

 

(そうか、頼ればいいんだ。確かにアルベドたちはギルメンの残した子どもみたいなものだけど、みんなそれぞれ自分の意思を持って俺らに着いてきてくれてる。……まだ、全部さらけ出すことはできないけどもっと頼ってみよう)

 

「そっ、それでも、足りないのでしたらっ」

「ん?」

 

 ほんの一瞬、彼方の方向を向いた意識が手首に触れる柔らかく瑞々しい感触に戻される。

 

「お、おまじまない、だそうです」

 

 ……炎ぺらー様に教わりました。という言葉を聞くことなく頭が真っ白になったモモンガが復帰して最初の慟哭は━━

 

 

(炎ぺらーさぁあああああん!!!!????)

 

 

━━彼の脳内で裂き響いた。

 

 

 

 

 




ちびっ子たち……スマン(余計な闇を背負わせた気がする
副料理長の造物主がブループラネット氏なのは独自設定(造物主の情報がなかったはず……あったらごめんなさい)

ワイの貧弱恋愛脳ではこれが限界や……すまんアルベドっ

炎ぺらー「あ、デミたち以外のフォローしてねーワ」
モモンガ「おいマッチ棒」

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