【完結】炎ぺらーと行くナザリックの侵略日記   作:目此

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30.5_1 炎ぺらーと行くナザリックの侵略日記

 

 

【ふるべ、ゆらゆらと、ふるべ】

 

「ほぅ……」

 コキュートスからの知らせを受け、《転移門(ゲート)》で文字通り飛ぶようにやってきたアインズは未だ起動したままの《水晶の画面(クリスタル・モニター)》へ送られる映像をつぶさに観察する。

蜥蜴人(リザードマン)との戦争は()()()()コキュートス率いるアンデッド軍の敗北で終わった)

 未だ頭を垂れて伏せるコキュートスを一瞥して再び《水晶の画面(クリスタル・モニター)》へ視線を戻せば、そこには無秩序に襲い来る(さや)を被った木にも触手にも見える謎のモンスターと……。

(動きを見る限り、音に反応するだけだが、蜥蜴人(リザードマン)では手も足も出ないレベル……)

 その謎のモンスターの大群を前に大立ち回りする()()()()に見える戦鎌(ウォーサイズ)使い。

(その謎モンスターが容易に蹴散らされているっ!)

 突き出される槍のような攻撃を、それも複数をいとも容易く躱し、返す刃で屠る姿は明らかにこの世界で見た誰よりも格が違う(レベルが高い)

(この世界の強者!炎ぺらーさんが()()()()イビルアイに並ぶ、いや、おそらく超えるレベルの存在っ!━━)

「━━見つけたぞ……」

 興味・関心を含みながらも底冷えするほど冷徹に戦力の計算する。

「コキュートス」

「ハッ!」

蜥蜴人(リザードマン)との戦いについては追って沙汰を下す。今は一振の刀として、我らが道を切り拓け!」

「……御意ッ」

 

━━━━━━

 

「弱いわ」

 泥中に足をつけているとは思えない軽やかな足捌きでひらりと舞うように避ける。

「弱いわ」

 細腕で担いでいるとは思えない閃くような武器捌きが確実に命を刈り取る。

「弱いわ」

 攻防一体の死の踊りを迫り来る根の槍相手に刻み続ける。

 

「私を倒せるのは誰かしら?」

 

“此処二居ルゾ”

 

 ぞわり……。

 久しく感じる……否、初めて遭遇する強者の気配に背筋だけでなく、己を構成する細胞ひとつまで粟立つのを戦鎌使い……スレイン法国が誇る絶対戦力〈番外席次〉“絶死絶命”は()()した。

「あぁ……やっと会えたっ」

 常人なら生命活動すら手放すほどの濃厚な死の気配。並の強者では立つことすら叶わず、超級の強者でも逃げ惑う圧倒的力量差が本能レベルで警鐘を鳴らす。

 空間に突然開いたとしか言えない暗闇、番外席次は直観的に“孔”が通ったように見えた。

 ぬらりと現れたのは自身の倍以上の体躯の“虫”。

 地を這うか、翅を必死に動かす小さき命。

 そんな矮小な存在が彼女の中での認識だ。

 だが今目の前にいるのどうだ?

 

 アイスブルーの体表は金属と見紛う光沢を放つ生きた鎧と変わらない。

 

 背中に生えた氷の柱は空気すら凍てつかせて、尻尾のような部分は鋭く尖っている。

 

 六本ある(あし)。二本で巨体を巨木を支える根のように立ち、残りに()()()()()()()()()()()()()()()()()()業物が握られている。

 

 複眼は死角なく周囲を見渡し、左右に割れる顎は挟まれれば大人の胴すら引き裂くだろう。

 

 蟲人。……その中でも上位種だと直感した。

 

 にんまりと口端が裂ける様な弧を描き口角が持ち上がる。

 

「私の旦那様候補(を倒せるかもしれない人)!」

 

 ()()()()()種子の異形(バケモノ)に気付くことなく……否、視界にすら入らないまま、己の全てで振るう戦鎌が先程まで種子を蹴散らしたものとは比べものにならない明確な“殺意”を乗せて閃く。 

 一閃、二閃、四、十。

 閃く度に風切り音が死の香りを漂わせる。

 しかし。

 しかし、届かない。

 弾かれ、避けられ、いなされ、防がれ。

 お返しとばかりに煌めく神器の刃が()る。

 一閃、二閃、四、十。

 弾けず、避けられず、いなせず、防げず。

 攻撃を当てるのはこれ程遠かっただろうか。

 攻撃を避けるのはこれ程難しかっただろうか。

 

 だからこそ。

 ああ、だからこそ。

「(楽しみだわ!)」

 

 本気を出すのに、躊躇いがない!

 

「《あらゆる生ある者の目指すところは死である(The goal of all life is death)》!」

 

 彼女はこれまでの打ち合いで察した。初手にて決殺しなければ勝ち目はないと、法国無敵の今を築く経験から全力中の全力を一撃に込める初めての感覚に従い()()の準備を整える。

 

「《(デス)》!」

「ヌゥッ!?」

 強烈な戦鎌の一撃と共に放たれる死に至らしめる魔法を放たれ、歪な声でうめく蟲人。

 自身の魔法が()()()感触と六大神の一人〈スルシャーナ〉の時計の形をした御業が時を刻み始める。

「はぁあああ!」

 弾かれようと、避けられようと、いなされようと、防がれようと、既に関係ない。

 ()()()()()()()()()()

 

「ひぃ、ふぅぅあああああ!」

 

 数えること十と二つの刻限。

 ()対なる()を以て、()()つ。

 

 これが法国が誇る絶対強者〈絶死絶命〉たる所以━━

 

「ナルホド、御方ノ懸念ハ(コレ)デアッタカ」

 

━━だった。

 

「な、なんで」

「……コレナルハ至高ナル御方ノ深謀、ソレガ何枚モ上手デアッタ、ソレ二尽キル」

 呆然とする番外席次へ構える蟲人……ナザリック地下大墳墓第五階層守護者〈コキュートス〉。

「っ!!?」

 自身すら超えうる、そう認識していたはずの彼女にとっても、この術を受けて無傷で立たれた衝撃の忘我の数秒は致命以外の何物でもない。

 

「〈火界呪・倶利伽羅大天衝(カカイジュ・クリカラダイテンショウ)〉!」

 筋骨隆々な不動明王(けんごう)の形作る膨大な剣気を纏った大上段が正中線で(とお)り抜ける。

 

「あ」

 

 上下にズレていく自身を断ち切った蟲人の残心が彼女の見た光景だった。

 

━━━━━━

 

「(()のスキルをっ……いや、ツカサからの()()()()()()()()()()()()()()()使()()()なんてチート生まれながらの異能(タレント)持ちが居るとは聞いてたのに、即死魔法を警戒しなかった俺のせいか。念の為、蘇生用アイテムを持たせてて良かった)」

 沼地へと崩れ落ちる戦鎌使いをできうる限りの防諜を行いながら《水晶の画面(クリスタル・モニター)》で観戦するアインズ。

「(戦い方を見る限り戦士系?多少複合で信仰系や他の魔法職を取ってそうな感じか。勿体ない、多分レベル90前後で半端な……いや、こっちだと取得の厳選なんかは難しいのか?それともタレントに関係するのか?)……やはり情報が足りないな」

『アインズ様、コキュートスの方は終わったみたいですけどあたしたちはどうしましょう?』

「アウラか、暫くは警戒を続けてくれ。あの強者の死体を回収しに来る者が現れるやも知れん。報告は密に、いざとなればマーレの範囲魔法も許可する」

『かしこまりました!』

 

 他にもいるだろう同郷の徒(ぷれいやー)や《破滅の竜王》なる強者による介入を防ぐため、トブの大森林で活動していたアウラや彼女の使役する多数の魔獣に隠密や索敵に優れたシモベ、更にはマーレまで呼び出して外と内に対する網を敷いていた。

 幸い謎の戦鎌使いは周囲から襲い来る莢の異形を相手に足を止めていたからこそアウラたちを呼び、包囲する時間があった理由の一つである。

 

「さて、やることは多いが着実に処理していこう。……ナーベラル」

「はっ、何なりと!」

「……拠点の外へ出て警戒せよ」

「しかしアインズ様!それではいざと言う時、御身を守ることが……」

「良い、ナーベラルよ。疑問は当然だ。だが同時に私はお前を信頼する。故に屋敷の外にいる程度であればお前は十分に私を警護できると信じている」

「も、勿体なきお言葉っ!ナーベラル・ガンマご命令に従い、外での警護に移ります!」

「うむ、務めよ」

 頬を紅潮させて、屋敷の外へと恭しく出ていくナーベラルを見送るアインズ。

 そして数秒、大きく息を吐く()()をして、脱力した様子を作る。

 十、二十、数えること三十秒。

「ふむ、さすがに、暗殺者系の職業だったとしても乗り込んでは来ないか」

 既に展開している攻性防壁を含む最上位の防諜魔法に反応は無い。

 アインズは感じる範囲におかしなものもないのを確認すると再び《水晶の画面(クリスタル・モニター)》へ向き直る。

 戦場を俯瞰して見てもコキュートスが構えを解いて戦鎌使いの死体を回収している所へ襲いかかる者は居ない。

(いや、油断しちゃダメだ。〈ぷにっと萌え〉さんが言ってたじゃないか、『勝利を確信した時こそ、最も無防備(ねらいどき)』……コキュートスが突然倒されることだって想定しないと)

「……ん?」

 より俯瞰的な視点に移動させた画面に移るのは包帯や軟膏らしきもので傷口を塞ぐ、手負いの蜥蜴人(リザードマン)が氷の剣を手にコキュートスへと近付く姿。

「そう言えばリザードマンとの戦いについて決めないとなぁ……っと、あとから追いかけてきた奴もいるか。腕がデカイのと白いの……アレってどっちの方がレアなのかな?」

 何か話しをしている様子だが、《水晶の画面(クリスタル・モニター)》では音声までは拾えないため、自身の魔法を発動させるアインズ。

「良し、これで音も拾える」

『━━あの〈死者の大魔法使い(エルダーリッチ)〉の言っていた御方とお見受けする!我が名は〈ザリュース・シャシャ〉!』

『……アレヲ倒ストハ見事ダッタ。シカシ何故来タ、アレヲ倒シタオ前ナラ━━』

『ああ、わかっている!()()()()()()()()()()()()()()()()!』

『━━ムゥ……』

『だからこそ、聞きたい!何故我々を滅ぼそうとしたアナタが、我々を襲った木の化け物や()()()()()()()()()()()()()()()()()()()をその手で殺した!?』

『…………』

『アナタの目的はなんだ!』

「これは……」

 なるほど確かにそうだ。

 アインズは確かにコキュートスへ“リザードマンたちを滅ぼせ”と命じた。

 そして、リザードマンたちに敗北したコキュートスへ間髪入れずに“戦鎌使いを殺せ”と命じた。

 

「俺のせいじゃん!?」

 

 瞬間、アインズの脳裏に衝撃(トラウマ)(よみがえ)る!

 

 これではサラリーマンをしていた時の数分前と言っていることが真逆なのに理由を聞いても答えないクソ上司と同じムーブではないか!

 

 しかも、タスクが終わったあとに『そんなこと言ってない!』と更に発言をひっくり返した時の理不尽(トラウマ)も一緒に思い出してしまったではないか!

 

「この責任(せつめい)は俺が()るべきだ……。ナーベラル!」

「はっ!」

 かつてのモモンガ(鈴木悟)と同じ思いはさせないと使命感に燃え《転移門(ゲート)》を開きながら、脳裏に微かに引っかかったもの(炎ぺらーのやらかし)を思い出し部屋外へ追い出したナーベラルを呼び戻す。

「発言を控え後ろについてきてくれ」

「かしこまりました」

 

 




オリジナルスキル
《火界呪・倶利伽羅大天衝》
不動明王の剣気を纏い繰り出される強力な一刀。
似た技に〈不動明王撃(アチャラターナ)〉からの〈倶利伽羅剣〉があるが、こっちは追加効果がない代わりに、相手のカルマ値に依存せず高火力を発揮する。反面、当てるのが難しい。
簡単に言うと超高火力の振り下ろし。
火界呪は不動明王の大呪。
倶利伽羅は不動明王の持つ剣。
天衝は頭にある経穴。
モチーフはFGOに登場する宮本武蔵の宝具。
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