31 炎ぺらーと行くナザリックの侵略日記
リ・エスティーゼ王国とバハルス帝国を別けるようにそびえるアゼルリシア山脈から南下に広がるトブの大森林。
その森の奥に周囲の木を切り倒して組み上げられた大きな建造物。
〈フェイク・
とはいえ、炎ぺらーという存在の
既に目印代わりに使われているが拠点としての完成度はまだまだ低い。
しかし、今回ばかりは突貫も突貫で一応の形だけでも整えられたのは偏にデミウルゴスを筆頭にナザリック(元)NPCの頭脳陣が計画修正の傍らにできる限りの初期資材搬入を密に行わせていた先見の妙と優れた手腕の結果だろう。
「
仮拠点の館の中、コキュートスが司令所として使用していた場所は簡素であったテーブルや椅子は片付けられ、代わりに上座には部屋に似合わないほど豪奢な椅子が二つ並び、彼らの主が威厳強く座してシモベを睥睨する。
「さて、前置きは省略しよう。まず、コキュートスよ。今回の現地の強者の
「有リ難キオ言葉━━」
「だが、褒めるばかりではいられないのは分かっているか?」
「━━……ハイ」
コツコツと肘掛けで指先を鳴らすアインズの様子は、炎ぺらーの帰還から頻繁に人化の魔法で過ごしていて、普段は穏やかな雰囲気の持ち主であると知る者であればより肝の冷える光景だろう。
「では改めて聞こう。今回の
「ハイ、
「それで?」
事の経緯を事細かに、自分が愚かであったことを詳らかに、自身の言葉で報告するコキュートスとその様子を淡々と眺める至高の御方々。
時折鳴らされる骨の指が緊張を強め、表情の読めない炎貌と並び、叱責を受けている訳では無い他の守護者たちも内臓がせり上っていくような錯覚を苛まれながらも臣下の礼を崩さない。
侮りから事前の調査を怠ったこと、
怠りから現場の指揮をとる者の不足や“
「━━ソレニヨリ“
「そこから先は良い。さて、コキュートス随分と言葉を選んでいたようだが、なにか思う点でもあったか?」
「……
「コキュートス、アインズ様たちのお考えに反旗を翻すと言うの?」
「待て、アルベド。私が思うところはないかと問うたのだ。ならば、それがどのような意見でも聞くべきだろう」
「はっ、申し訳ありません」
そばに控えるアルベドがコキュートスを強く睨むのを制し、鷹揚に頷くアインズ。
「良い、許す。さて、コキュートスよ。私が滅ぼすと言ったことに対して、異を唱えた。相応の理由があるはずだと思うが?」
「……ハイ、彼ラ
「戦士の輝き?」
「コノママ殲滅スルヨリモ、ナザリックへノ忠誠ヲ植エ付ケ、勇敢ナ尖兵トシテ配下ニ置ク方ガ良イト考エマス」
「……彼らにとって我々は敗者だぞ。素直に従うか?」
「…………力ヲ示セバ」
「ふむ……(お、思った以上に効果があった!)」
顎に手を当て思案の格好を作るアインズ。
彼らに今後“自分で考える力”が身につくのか、その試金石にしようと思って炎ぺらーに提案したアインズ。
賛同を得て、アインズ主体で基礎を立案し、アルベドが細かい精査を行い煮詰めた。
アインズとしては平和に暮らす集落へ、かつての炎ぺらーのロールプレイのような虐殺を勧めたことにほんのちょっぴり罪悪感を抱いたが、今後のナザリックのためには
予想通り、自分で考える事のできない低級アンデッドたちは烏合の衆としてあっさり負けた。
コキュートスの言う通り、十分な準備期間を設けもして、調査も、分析も可能な時間は与えられていて、なお預かった三千の物量だけで乗り切る手を選んだのである。
コキュートスが何の学びもなく終わったなら、彼らはそういうものだと思って“運用”するしかないと割り切っただろう。
だがコキュートスは自身の考えをまとめて提案したのだ。こうしてシモベの成長を感じられてウキウキなアインズであった。
ほんのちょっぴり、もしかしてエルフの戦鎌使いのことで
(俺一人なら成長を喜びながらも、彼らの忠誠が変わるものだって疑うことの方が大きかっただろうけど……炎ぺらーも言ってた通り“これからの主人たる行動”で変わらないよう気をつければいいんだ。……具体的にどうすればいいのかは分からないけど!)
「炎ぺらーさん」
「ンー、コキュートスが言うなら見れるモノはあるんじゃないっスか?」
「ふむ、ではこの場の全ての者に命ずる!ナザリックが威を示し、彼ら
『畏まりました!』
「……畏マリマシタ」
至高の御方々の号令に使命感たぎらせるシモベ声に鷹揚な頷きを返すアインズだった。
━━━━━━
「終わってみれば呆気なかったナ」
“ナザリック・オールド・ガーター等の儀礼行進”、“ガルガンチュア”、そして……。
“見せ札として〈超位魔法〉《
超位魔法。ユグドラシル・オンラインにおいて位階魔法・第十位階の上に存在する文字通り魔法詠唱者の到れる極地。
確認されてるもののどれもが強力無比かつオンリーワンの性能を待つ。
《
広大な瓢箪型の湖と
加えて、相手の士気が大幅に下がり恐慌一歩手前なのも炎ぺらーには
(モモンガさんは“服が汚れそう”とか気にして使ってタけど、まぁ
超位魔法は詠唱中に潰すのが鉄則のプレイヤー的思考誘導も含めて
だが、何も知らない彼らからしてみれば
その上で、自分たちを苦しめた植物系エネミーやエルフ系強者を超える強者も居たことも合わせ、絶望に心折られるのも時間の問題であった。
諦観に膝を屈しても誰も責めないだろう。
それでも、それでもと、決死の覚悟を抱き、必死の抵抗を以て、せめて相打ちを狙った
「っで、これはどゆ状況?」
アウラの従えるモンスターたちを引き連れ、これ見よがしに
彼が目撃したのは
「よ、よくぞ戻った!我が友!」
震えながらも縋り付く
「(お願いですから、単独行動やめてくださいよ?もしかしたら、機会を窺ってるだけかもしれないんですから……心臓に悪い)」
「(ウィ、反乱分子の確認シたくて……)」
「(あぁ、確かに〈内政〉のできる職業は制圧した拠点なら反逆率とかわかりますもんね)」
《皇帝》を持つ炎ぺらーのスキルでは内政事で活躍できるものは敵地の敵性意識などになると、直接目に収めなければ効果がない。
だからこそ、余計な示威行使と知りつつ占領地を直接見に出かけたのだ。
まあ結果的にはほとんどの屈服とちょっぴりの離反・反逆の兆しが確認できたので良いと割り切る炎ぺらー。
「(で、どこまで話進んだんスか?)」
「(とりあえずはコキュートスをしばらく置いて村全体の復興に当てようかなと、その他だと現地の
「(なるホロ、そういうことッスね)」
やっぱこの人、色々と頭の回る人だナァ。なんて呑気なことを考えてしまう炎ぺらー。
「(ンで、具体的にはどうやって交渉したんスか?)」
「(コキュートスと戦った三
「ゥワァ……」
「ちょっ(声大きいですって)」
いやうん、わかるヨ。そりゃ、効果的だよネ。うん、でも、ウン、うーん。
スキルによるダメージこそ抑えているが、風で吹かれているでもないのに複雑な
「ンで、ホントの狙いは?」
「あれもほんとですよ。まぁ、言っちゃうとこっちで蘇生魔法がどんな風に効果を表すのかテストですね」
「そいや、エルフっ子ちゃんでやる前に試したいって言ってたっスね」
(ノリと勢いで書いてるけど、炎ぺらー《皇帝》のスキルしか活躍してねぇな)