【完結】炎ぺらーと行くナザリックの侵略日記   作:目此

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今月分です。(遅れました)


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32 炎ぺらーと行くナザリックの侵略日記

 

 

「そんで君がその“ザイトルクワエ”の存在を教えてくれた森精霊(ドライアード)ちゃんネ」

「は、はいぃ、〈ピニスン・ポール・ペルリア〉ですぅうう……」

 穏やかに雲が形を変える青空の下、痩せた木々の鬱蒼とする場所で炎ぺらーは植物系異形と会話をしていた。

 

 きっかけはほんの数時間前に遡る。

 

「木が枯れてる地帯があって、少しずつ拡大してル?」

「はい」

 モモンガがコキュートスとアルベドと共に蜥蜴人(リザードマン)たちとの事後処理で離せない間、バニティアとナザリックの政務を代行する炎ぺらーの元へアウラから齎された情報は手を止めて聞かざるを得ないほどだった。

「なんでも、その“森精霊(ドライアード)”が言うには強大な魔樹の封印が解けかけてるみたいで」

 アウラの持つ地図を机の上に広げ、彼女の説明へ耳を傾ける炎ぺらーとバニティア。

「(森精霊(ドライアード)……ユグドラシルには居なかったケド……興味ある。アウラの雰囲気からして女のコっぽいンだろうな!)」

 炎ぺらーに木の性別は分からぬ。だが、()()()()()の気配には人一倍敏感であった。

「わかった。バニティア、ナザリックのことは任せて大丈夫カ?」

「はい、かしこまりました」

 手早く急ぎのものを処理し、モモンガたちへの言伝を残すとアウラの案内で件の森精霊(ドライアード)の元に向かう炎ぺらー。

「確かにこの辺だけ枯れ方が異常だナ」

「あ、アレですよ炎ぺらー様!」

 度々カルネ村に訪れる炎ぺらーはトブの大森林がどれだけ原生林の残る地帯なのかある程度把握している。

 加えて精霊種の特徴で生命力そのものを感覚的に捉えることができた。

 故に報告のあった地帯を目にすれば文字通り色褪せているのがわかる。

「おーい、ピニスンー!」

「さ、さっきのダークエル━━ぎゃああああ!!!」

 アウラが声をかけた方へ目を向ければ、不自然に震える木が悲鳴をあげた。

 炎ぺらーが注視して見れば、その木だけ周りよりも多い活力を内包していることが分かる。

 もっとよく観察すれば何とか顔のような造形などを把握することができた。

「ダダダ、闇妖精(ダークエルフ)!騙したのか!?どう見ても助けてくれそうにないじゃないか!」

「はぁ?もしかして炎ぺらー様のこと言ってる?」

「「ヒェ……」」

 慌てふためくピニスンと呼ばれた森精霊(ドライアード)だが炎ぺらーを腕と思われる枝で指した途端、アウラの目がガン開きになりさっきまで怯えていた炎ぺらーへ縋り付きながら二人揃ってビビり散らす。

「……あー、コホン。何を見てそう判断したかわからんが、こちらに敵対の意思はない。名乗り遅れたがオレは炎ぺらー、こっちのダークエルフの上司……まぁ、保護者みたいなもんダ」

「は、はひっ」

「そんで君がその“ザイトルクワエ”の存在を教えてくれた森精霊(ドライアード)ちゃんネ」

「は、はいぃ、〈ピニスン・ポール・ペルリア〉ですぅうう……」

 それからたどたどしくもアウラにした説明だろうことを聞き直す炎ぺらー。

「(だいぶ昔なこと以外分からン)」

 炎ぺらーの知るリアルでは“木”というものが既に知識でしかない。

 範囲を広げれば多年生植物などは数こそ少ないが現存する。しかし、土壌汚染も進んでいたリアルの環境では樹齢十数年の純木材すらアーコロジー内の限られた特権階級にのみ出回る希少品がせいぜいだ。

 ただ、炎ぺらーには高卒程度の知識はあるため、多少なりとも植物という“雑学”は話のタネ程度に持っている。

「(本人は若い方だって言ってるガ……長命種?っていうノの話だから、数十年単位で昔だろうナァ。……しっかし、こりゃある程度オレら()()()なのが周期的にポップしてるのは確定カネ)」

 ナザリックのあるココではどうか知らないが、自然というものが培うのにどれほど難しく喪われるのは容易いかは炎ぺらーの知るクソな世界(リアル)が証明していた。

 原生林の残る場所での長命種が蓄えた自分の命に関わる知識なら信用できる。時間認識の差への理解が必要だが。

 さらに魔樹を封印したと思われる人物たちは恐らく自分たちより先にこの世界へやってきた“プレイヤー”だろうと当たりをつけた。

「なるほど、ンでオマエさんを保護すればいいのカ」

「た、助けてくれるの!?」

「おう、そのために来たんだからナ」

(言うて、何時ぞやのトロールみたいなのだったら今頃灰すら残してナイけど)

 トブの大森林に()()()居たアホが思う浮かぶのを無視する炎ぺらー。

()()()()()()()()()()()()()、おま……貴方様は神か……」

「アッハッハ、神を名乗る気はないゾ」

「そうだよ、ピニスン。神程度が炎ぺらー様たちより偉いわけないじゃん」

 あー、そういえばオレ〈死霊〉系アンデッドかつ火属の〈精霊〉だからカ。人間の振る舞いを続けたり、元々リアルの人間であったため、炎ぺらーに人外(ヒトデナシ)の自認はあっても種族自認は薄い。

 

なお、アウラの発言からは全力で目を逸らす模様。

 

 

━━━━━━

 

「てなわけで、久しぶりの全力戦闘をしたいと思いますッス」

「物騒だ!?」

 事実確認のため(うらどり)調査をアウラに任せてきた炎ぺらーは自らの足でモモンガの元へと訪れた。

「実際問題、多分今までで一番の強敵ッスよ?」

「……そんなにですか?」

 炎貌から表情は読めずとも長年連れ添ったギルメンの雰囲気が変わったのを察して居住まいを正す。

「恐らく。エルフっ子の方は所詮単体戦力でどうにかなるタイプです。でも、今回は規模が違います」

「規模?」

「ゲーム的に言えば、エルフっ子はあくまで強者プレイヤー、でも今回のはイベントとかダンジョンのボスみたいな感じですネ」

「あ……確かにそれは規模が違いますね」

 PvP(対人戦)の強者ではなくGvNPC(レイドバトル)の類の強敵。

「そんな規模の強敵が……」

「オレらだってこの世界的には相当ヤバイっすよ?まだまだ新参ッスから情弱もやむなしっス。むしろ単体でオレらクラス(レベル100勢)がポンポン出てきたら、世界がどうの言う前に滅んでますネ」

 攻撃でもない受動(パッシブ)スキルで死を振りまいたり、焼け野原にする能力を備える……少なくとも現地の人間では対抗できない(レベル)の違う相手が複数揃っているのが異常事態だ、と念を押す炎ぺらー。

「どれだけ人間っぽく振舞ってもオレらは異形なんスよ。文字通り“腕を振る”だけで、そこらの人間なら粉微塵になってしまうンです」

「うわっ、そう言われるとヤバいですね」

 彼らのリアルではとうの昔に虫を含め動植物がほとんど希少化している。その中で“紙装甲”“虫ケラ”“花を手折るよう”といった慣用句の意味は伝わっても、事実どの程度弱いのかという実感を持つものは少ない。

 彼らの世代では地面を歩くアリの行列を踏み潰すことも、木がそこらに生えていることも、花冠を作る文化もなくなって久しいのだ。

「オレらが彼らと関わる時は意識的にしろ無意識的にしろ、力加減が必須なのはこの辺が原因ッスね。あぁ、オレらの人間種へ同族意識が薄いのはその辺基準がズレてるンか」

 理解が現実感に遅れてやってきたモモンガは(よ、良かった……幻術だけで変化してたら気付かない心の機微を言葉にしてくれた)とひたすら安堵している。

「今回は放置する方が後々に響きそうなんで、早々に対処しておきまショウ」

 そこから滞りなく進んだ。

 アウラの帰還によって齎された情報を元に編制が組まれ、既に布陣を固める炎ぺらーたちナザリック組。とは言っても。

「些か相手を過大評価しすぎでは無いでしょうか、炎ぺらー様?」

「過小も過大もしてないゾ、アルベド」

 ピニスンと出会った地点よりもさらに土地の痩せた場所、つまり(くだん)の“ザイトルクワエ”が居ると思われる中心地に近いところで目を凝らし一点を見つめる炎ぺらーへやや不躾で懐疑的な表情のアルベド。

「それならアルベドはどうすればいいと思うんダ?」

「我々守護者だけでも戦力的には十分かと」

「確かにナ。ただそれは額面(データ)上の空論だネ。……実践ナメんなヨ?」

「ッ!!」

「敵がひとりとは限らない。二人になった時のメンバーの配置は?その時の各メンバーの役割は?もっと増えた時は?メンバーがやむを得ず後方に下がった時のほかのメンバーの取るべき行動は?その際のお前の立ち回りは?戦後におこぼれを狙う輩の可能性は?そいつらの強さはどのくらいを想定してる?」

 守護者統括。その肩書きに恥じない知性と知識を持ち、〈ハイ・ガーディアン〉などのタンク職を習得するアルベド。

 普段なら間髪入れずに反証を幾らでも提示できただろう。

 だが、今目の前にいる相手(おんかた)は普段、どこかヘラヘラと呑気な提案で愛するヒト(モモンガ)を連れ出すあんちくしょうでは無い。

 

 ナザリックに攻め入った数千の愚物共(きょうしゃたち)を、たった四十二()で退けた“至高の御方”だ。

 

 その御方が歴戦の勇士として忠告している。

 お前たちの予想(あたま)では考えつかないようなことが多いぞ、と。

 

 

「ま、ふんぞり返ってるダケじゃねぇのを見せてやるヨ」

 

 

 

 

 

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