33 炎ぺらーと行くナザリックの侵略日記
微睡みのような半覚醒のまま厄災が動き出す。
「っ!炎ぺらー様、ザイトルクワエが目を覚ましました」
「うぃ、それじゃあ各員ヨロシク」
『かしこまりました!』
枯れたような木々の生える中心、根から干からびてしまい倒れ伏した死の森。
まだ辛うじて痩せているだけだった周りと違い、鬱蒼とする天然の天蓋が穿たれぽっかりと空いた木々のない空間。
空間のさらに中心部に突如聳える巨木から伝わる生命の鳴動。
ザイトルクワエ。現地の者にそう呼ばれる魔樹が彼らを敵性存在と認めたのだ。
「一番槍頂ク!」
「次いで行くでありんす!」
徐々に聳え上がる魔樹はあっという間にそこらの木々を超え、耳障りな鳴き声を上げて鋭い牙を剥く。
百メートルは優に届く巨体から生えた幾条の長い根を跳ね上げ、彼我の差で言えば米粒程度の身の丈である生物を叩き潰すには十分だろう。
最も相対する生物は
「〈倶利伽羅剣・羅刹〉!」
「あれはもらいんす、〈清浄投擲槍〉!」
神速の斬撃が空を断ち、神域の飛ぶ斬撃が放たれる。それも、散弾のように無数に増えて体高の数倍はあった長さの根をほとんど切り飛ばしてしまう。
辛うじて残ったものもズタズタに刻まれた上、シャルティアが隊列を崩さぬまま軽い踏み込みでジャンプし、上半身をコキュートスの陰から覗かせスキルを使った。
魔法の槍は弧を描き根を横から当てて他の残ったものを巻き添えにしてしまう。
少なくとも魔樹から彼らまでの道を阻むものが無くなった。
「上手いモンだ」
「相当練習していたようですよ?」
珍しく隣に控えるアルベドへ視線もくれず炎ぺらーは彼らの動きを観察する。
「デミウルゴス、頼んだよ!」
「ええ、再生能力などがあってはたまりませんからね。《
後列二人は魔法抵抗の抜けやすい魔法で破片となった大きなものを、無数の矢を振らせて処理して後顧の憂いを絶っていた。
「い、行きますよー!えいっ、《
「大地・海波・空裂、〈閃光一閃〉!」
「《
マーレが植物系にも
「アウラ、ザイトルクワエの
「うん、……うん、減ってる。相変わらず量は多いけど、今の所どれも同じくらいだから、やっぱり物理へも魔法へも特別特化した防御を持ってる感じじゃないね」
「次は違う属性を試しながらやってみましょう。コキュートス、シャルティア!次の方法をお願い!」
「もしかしたら体力によって耐性が変わるかもしれないから違う動きしたら注意してねー!」
「承知っ!」
「了解っ!でありんす!」
全体を俯瞰し指示を出すアルベド、前衛の動きを見ながら適宜フォローを入れるアウラ、アウラのフォローと魔法による攻撃をするデミウルゴス、そして前衛で暴れつつもギリギリお互いをカバーできる距離を維持するコキュートスとシャルティア。
「(うっそォ?アイツらナニ?自分らで連携の特訓とかしてたノ?いつ?え、えぇぇ?)」
アウラと裏取りが終わったあとモモンガたちへ報告を上げると、アルベドが珍しく待ったをかけて守護者たちを集めた時はモモンガと顔を見合せて疑問符を浮かべていた。
モモンガとだべりながら、今後を想定して連携の練習でもさせてみルかー、あーでもコキュートス忙しいッスかね?と数刻前まで考えてた炎ぺらーの顔はお笑いだったぜ、的なアルベドの視線の意味を今更ながら理解する。理解するまで硬直は直らない模様。
ちなみに特訓を始めたのは時期的に王都でのあれそれのあとくらいである。至高の御方同士の連携を経験したデミウルゴスの話からアルベドとパンドラズ・アクターが“守護者の連携も想定した方がいいのでは?”と考えたからであった。
なお本人たち的には時間が足りず、互いの攻撃を邪魔しないようするのが精一杯だったと後に語っている。
「ね、ねぇ、今どう見ても胴体の半分くらいまで斬れてたよね!?おかしいよ!?だって、彼らの振るう武器はどう見ても普通の大きさだよね!?なのになんで!?」
隣でギャーギャー騒ぐ似た気持ちの同士がいた事で何とか平静を取り戻した炎ぺらー。
「騒ぐナ。見た通りだヨ、ピニスン」
「騒ぐななんでできるわけないじゃないか!世界を滅ぼす魔樹に敵うはずないよ!」
「ないなんてことは無い。ピニスン、君に比べれば
邪悪な炎貌が嗤う。
「世界の広さ、その一端を見せテやろう」
━━━━━━
アルベドは背筋に氷で貫かれたような感覚に襲われた。
「炎ぺらー様!あいつの頭の上に生えてた苔っぽいの集めてきました!」
「サンキュ、この手のヤツはレアアイテムってのが相場だしナ」
「そうなんですか?」
「そーゆーもん。ジャ、そろそろ出てくルわ」
優れた戦士の能力がその感覚の正体を看破する。
否、看破などせずとも答えは目の前にあった。
濃密な邪炎、文字通り悪性と熱を凝縮した其処に在るだけで死を振りまく地上の太陽。
「おーい、そろそろ交代ダ」
『かしこまりました!』
守護者たちは炎ぺらーの言葉を合図に自身の取得する中から
「〈
炎ぺらーは一瞬で仰け反ったザイトルクワエの目の前へ転移し……。
「━━〈崩蹴脚〉。どっせい!」
青い炎を迸らせた蹴りを叩き込む。
“━━━━━━!?”
丸太に指先を触れる。それ以上のサイズ差があるはずが、守護者たちの作った隙よりも大きく巨体を揺るがし、あまつさえ瞬く間に青い炎が燃え広がっていく。
「そりゃそりゃそりゃ!」
《
被弾する度に樹皮が砕け、吹き飛ぶ残骸は地面に着く前に灰と化す。
痛覚があるとは思えない植物の体をもがくように振るい根の鞭が縦横無尽に暴れ回る。
「残念、そこはまだ俺の射程ダ……出番だゾ」
「「りょ→か→い」」
炎ぺらーの背中に並び立つ双子が形を二振りの剣へと変えた。
「〈
緑、藍青色の二振りの炎剣で中空を切り払えばたちまち炎が渦巻く。低温と高温の二種の炎が作り出す焔の竜巻が容赦なくザイトルクワエを焼き焦がす。
「オマケだ、〈
ザイトルクワエの真上に展開された魔法陣の更に上、既に天に座していたベルがひと撫ですると黒色へ染まり、地上へと吹き出す炎を黒に変えて降り注ぐ。
魔力の消耗は精神的な消耗にも繋がるこの世界だが、そも植物系にどの程度影響を与えるのか分からない炎ぺらーは構わず次の手へ移った。
「ゼブル、《礼装化》」
「はいっ!」
長杖型の〈ナインズ・インペリアルグローリー〉を器用に回すと白銀色の液体へ変わり、人で言う肩甲骨の辺りで三方向に伸び広がり片側三枚の銀翼となる。
名を呼ばれたゼブルは恭悦に頬を染め、黒で統一された服装が白に侵されながら全身が炎へ溶けた。
「〈
瞬時に穿たれる六つの穴は
仰け反ることも離れることもできなかったザイトルクワエは遅ればせながら自身の欠損を自覚し、無自覚の逃避行動に移ろうとして━━
「はい残念、〈
━━白銀の炎により霜焼かれ大地に
“ギシャアアア!!!”
その言葉を理解した訳では無いのだろう。だが、窮鼠猫を噛むように、追い詰められた
「残念もうお前は“オレら”に囚われてるゾ?ナァ、アスモ?」
〈
爆炎が周囲の金属と反応して幻覚を見せるその
「
(アッハッハ。なんダこの色合いは……ゲームじゃ、エフェクトが重なってもこうはならなかったケド……キレイだ。
青に始まり、青藍、緑、黒……重なり混ざる炎の描いた極彩色の揺らく煌めき。
元々、
強敵との戦いも、名も無きモブへの蹂躙も、
テメェの燃える姿で見せろ、魅せろ、ミセ━━
「「「「「「「「炎ぺらー様!」」」」」」」」
━━呑まれかけた邪念を振り払い、恭しく並ぶ半身とも言うべき彼女らへ振り返り
「っ!……ふぅ」
(何考えてんダ、ユグドラシルの火を楽しんでた“オレ”はあの日に死んだ。いまここに居るのは……)
「サァ、この
(“七獄の煌帝”サマなんだヨ!)
《
「〈大炎戒・炎帝〉!」
自身の中でも前準備として破格の魔力消費を求められるがその効果は知識だけでなく今実感した。
自身を中心として展開される炎熱の絶対領域、低レベルでは存在するだけで骨すら昇華する実力行使圏。
炎ぺらーのスキル展開を合図に本来の姿を取り戻す魔燒。
煉獄の大王が、双頭の巨鳥が、辺獄の看守が、地獄の六枚羽が、陰府の大蛇が、爆炎の乙女が、━━
「〈セブンフレイム・セブンファイア〉!」
━━七つの炎が、七度吐く。
地を焼き、地を爆ぜ、地を巻き上げる火柱が巨木を包み焼く。
「ふぃー、焼却完了っと」
流行病やらなんやらで投稿が遅れました。
ぶつ切り感がありますが、あとエピローグと数話の外伝で完結の予定です。
外伝はいくつか候補をアンケートで決められたらなと。
外伝で読みたいもの
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ぷれぷれぷれあです ほむら
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イビルアイの長い一日
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異世界かるてっと 炎
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モモンの活躍
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守護者の話
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その他(活動報告へお願いします)