【完結】炎ぺらーと行くナザリックの侵略日記   作:目此

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アンケート以外の番外編です。



番外編2

番外編02 炎ぺらーと行くナザリックの侵略日記

 

【if√_もしも炎ぺらーがモモンガよりも早く現地入りしてたら】

 

(結局はこうなるのか……。誰も()と、ユグドラシルを最期まで……)

 手遊びしていたテキストを閉じて腕が垂れ下がる“モモンガ”。

 カタン、肘掛に置いた骨の手から嫌に響く音が鳴る。

 いや、そんな音すら響くほどここには何も無いんだ。

 この世の贅沢を形にしたような凝った意匠の内装も、貴金属の糸を編み込んだ荘厳な御旗も、そばに居るだけで極楽の気分すら味わえる美しい女性(の外見をしたNPC)も。

 それを堪能するヒトが彼、モモンガを除いてここには居ないのだ。

(炎ぺらーさん……死ぬ気で駆けつけるって、言ってくれたじゃないですか)

 歯の折れた櫛のように抜けていく所属していたギルドメンバーが多い中、「最後の最後まで!ユグドラシル・オンラインを骨の髄までしゃぶるみたいに遊び尽くすん()!」と言って連日、それこそアルフヘイム以外の他世界(サーバー)まで飛び立って二人で溜め込んだ課金アイテムを贅沢に使った未踏破ダンジョン攻略や他所のギルドまで無駄に喧嘩を売ってGvGをしまくっていた友人の(アバターの)顔がチラつく。

(最終日も有休ぶんどってヤルって息巻いてたのに……)

 早朝に“ゴメン、遅れる”と来て、お昼に“何とか間に合わせる”の連絡を最後に反応はなく、夕方こちらからの連絡には既読すらつかない。

「期待させられただけキッツいなぁ……」

 

 来ると知らなければ良かった。

 来れないならそう教えてくれれば良かった。

 来てくれるかもと思わなければ良かった。

 

 親友に裏切られると愛憎(こんなきもち)になるなんて知りたくなかった。

 

「モモンガ様がお望みならば今すぐその裏切り者を排除いたしましょう」

 

「……え?」

 

 自分以外居ないはずのナザリック最奥(王座の間)に知らない声が語りかけてくる。

 目が声の方へ向けば、そこには憎悪を剥き出しにどこかを睨む絶世の美女が居た。

 否、その存在は確かに自分が玉座に座る前から居たが、急に喋り出すよう設定なんてしていない。

 混乱が勝って、目の前の現象(動き出したNPC)に理解が追いつかないがこのままではマズイのだけは理解できる。

「セバス急ぎ部隊を組みます。アウラとシャルティア、それにコキュ━━」

「ま、待て!」

「━━どうかなされましたモモンガ様?」

「お俺、……いや、私がいつそれを認めた?」

「しかし……」

「私に、二度、言わせる、つもりか?」

 空回る思考を落ち着かせる意味でもゆっくりと問いかけ、咄嗟に出た横暴な態度をクソ上司でエミュレートしながら目を向けたモモンガ。

「っ!!……失礼しました」

 血の気を引かせたまま恭しく頭を垂れるアルベドの豹変ぶりにやり過ぎたと感じたモモンガは止めらただけ幸いとクソ上司ムーブを秒で捨てる。

「良い。私が勘違いをさせる言い方をしたのだ、お互い様として今回は流そう。……さて、私が先のような発言をした意図を話す前に確認せねばならんことができた」

 強引すぎる話題の舵取りだと理解しているが、本心から彼女に、()()()()に聞かなければならない。

 

「先の発言はほんの少し違和感を感じたがゆえの発言だったのだが、お前たちはなにか違和感を感じたりしたか?」

 

 なぜ君たち“NPC(Non Player Character)”が動き出している?

 

 

━━━━━━

 

 あれから数時間、モモンガの指示の下ギルド拠点外へ出たり、内部の調査を進めるシモベたちがそれを発見するのは当然のことだった。

 “七色の炎”が荒れ狂い近づけない場所があると報告を受け、瞬時に炎ぺらーに関する何かだと判断し現場に向かおうとする。

 だが、シモベたちが近付こうとして攻撃性の高い警告を受けたと聞いたアルベドに猛反対されてほぼ全ての守護者を含めた大所帯で向かうこととなった。

(よ、ようやく来れた……でもなんで彼女達が?)

「“魔燒”……何故君らだけがここに?」

 第五階層『氷河』へ訪れたモモンガは炎ぺらーの姿が見当たらないことに落胆しながら、逸る気持ちをおさえ、相対する彼女たちへなるべく声を穏やかに作る。

 本来なら彼女たちはギルド拠点のポイントを消費して造られた守護者(ギルドNPC)たちや金貨を払って召喚した傭兵NPCと異なり、テイマーの使役する魔獣に近い扱いで、主従契約(炎ぺらー)に紐付けされたNPCであったはずだと考えたモモンガ。

「…………っ!」

 本来はマントだろう大きな布で何かを包み抱え蹲る素朴ながらに整った顔立ちの少女とその彼女を匿うように六人の女性が疑念に満ちた視線を向けていた。

「答えなさい、魔燒」

「ちょっと、アンタたちっさすがに今回のはやりすぎよ!」

 楚々とした態度を崩さずもその目に確かな敵意を携えたアルベドと、その隔意を感じ取ってわざと自身が前に出て話し合いを率先するバニティア。

 珍しくギルメンと喧嘩をして頑なな態度をとっていた時の“タブラ・スマラグディナ”を宥めた時の炎ぺらーを思い出すモモンガだが、このままではマズイ事だけは直感した。

「いや、ここに彼が居ないこと……その理由を問いたいのは彼女たちも同じだろう。だからこそ、私たちも彼を探している。私も予想しなかった未曾有のナニカを彼女らも体験し警戒しているのだ」

 モモンガの言葉に尖る敵意を少しだけ収めるアルベド、その様子に険しくなりかけた魔燒たちの気配も疑念はなくならないもののお互いを見合せ探る雰囲気を見せる。

「モモンガ様……あなたの仰る通り、私たちの炎ぺらー様は何故かここに居らず、私たちも突然ここに現れました……。ですが、こちらを見てください」

 決心したように立ち上がる少女“ルシ”は包みを開き、その中のものをモモンガにも見えるよう差し出す。

「これは……」

「はい、私たちには気配で分かりますが、“炎ぺらー様の腕”です」

「っ!!?」

 警戒していた周りのシモベすら息を呑むのが聞こえた。

 色褪せた濁りの強い結晶で作り出されたような腕。体格を察するに少年少女の姿をした守護者“アウラ”や“マーレ”よりは大きいが、それでも成人しているとはとても言えないほど。

 なにより、形がまるで炎を切り出したようなものをしている。

 精霊種エネミーが死亡した時の姿からもぎ取ったものだと言われれば信じてしまうほどでモモンガの記憶にある炎ぺらーの、あくまでゲーム中のHPゼロ状の(死亡)時に酷似していた。

「炎ぺらーさんが、…………死んだ、と言いたいのか?」

 悲嘆、絶望、諦観。一粒の希望を残し、モモンガの心は深い穿孔へ落ちる感覚を覚え、眼球など無くなってるのに見えていた視界が暗く閉ざしかけるのがわかる。

 

「おそらく違います。微かにですが炎ぺらー様の気配を未だ放っているんです!」

 

「━━━━っ、ほ、本当か?」

 落ち切る前の指先が淵の掴み意識をすくい上げた。

「はい、それがどこへだが分かりませんが繋がっているを感じます」

「……信じるぞ?」

「私たちも信じたいんです」

 

 正直今思えば魔燒との距離感が他のシモベほど窮屈に感じなかったのはこの時のことがあったからだろう、とモモンガは振り返る。

 

━━━━━━

 

 だが以外にも事態は転じた。それも良くも悪くもモモンガの想像を超えた方向へ。

 

 あの後、魔燒の登場により遅れていた調査は炎ぺらーの、そして他のギルメンたちの手がかりが無いか、徹底的な再調査を厳命して行うがナザリック拠点内にそれらしい痕跡は無かった。

 だとすればナザリック外へ探しに行かねばならない。

 そのためモモンガは魔法やスキルの有無を含む自分自身の力の確認が必要だった。

 ゲームの頃は純粋な魔法詠唱者にして死霊使いの極地に至った〈死の支配者(オーバーロード)〉で、取得した職業や種族は戦闘用のものをメタメタに積み上げたガチ対人(PvP)向きでないロマン構成(ビルド)な“モモンガ”というアバターでは魔法の仕様が変わっていたり、そもそも使えなかった場合、大幅に戦力ダウンしてしまう。

 なんとしても炎ぺらーを見つけたいモモンガは自身より強者の多かったユグドラシルと同等を想定し、薄皮を重ねるよう優先度の高い攻撃魔法や死霊魔法を中心に確認のタスクを一つ一つ処理していく。

 純後衛の魔法詠唱者でありゲーム時代に数々のイベントをクリアしたモモンガの魔力は非常に豊富であったが、それでも確認作業に没頭するあまりかなりの魔力を消耗した。

「一通り確認は済んだか……?だけど、のんびり回復を待ってるのもなぁ……」

 必要最低限の確認は終わったがまだ外へと再度派遣した彼ら(NPCたち)が帰ってきていない。

 自身の魔力回復力と不意の戦闘を想定するとあまり消耗の激しい魔法の確認はできないし、スキルの確認も使用回数的にもう少しタイミングを見計らいたかった。

「……もしかして」

 消耗が少なく、確認しておいて損は無い魔法で脳裏に浮かんだものが一つ。

「《伝言(メッセージ)》」

 魔法詠唱者なら初期も初期、とりあえず枠が余ったら取得しておきたい対象と離れていても会話のできる(個人チャット)効果を持つ低位の魔法。

 低位階だけあって、戦闘中であれば妨害されてない方がおかしい、妨害魔法の副次効果(ついで)にすら満たないもので防げるが、使わない魔法詠唱者の方が珍しかった。

 糸のようなものを伸ばす感覚が続き……。

 

『ふぁあ〜イ、朝も早ウからどなた〜?』

 

 奇跡を手繰り寄せた。

 

「炎ぺらーさん!!?」

『どわぁあ!?え、……もしかしてモモンガさん()()()?』

「そうです!モモンガです!!!」

『お、お願いでス。も、もう少しだけ声量を抑えてくださイ、あぁ頭がっ』

 

 繋がるとは露程も考えておらず、本来持っているはずの〈精神抑制〉を超えて、嬉しさが有頂天を飛び出し、無いはずの天井へドンガラガッシャーンしてしまうモモンガも炎ぺらーの呻く声に冷静さを取り戻す。

 

「はぁっはぁっ……ふぅ」

『オゴゴ、数年ぶりの二日酔いみたいな不快感っ、ウゴゴ……』

「す、すいません、ちょっと予想外すぎて」

()()もッスよ。……一発で目が覚めましタ』

 何とか落ち着いたモモンガは炎ぺらーの少しトゲのある言葉につつかれるが、それが気にならないほど〈精神抑制〉でも抑えきれない歓喜の波に負けて、ないはずの頬が持ち上がる感覚を思い出す。

「でも良かった、炎ぺらーさん……」

『え、なに……?なんでそんな噛み締めるみたいな言い方してんスか?』

「当たり前じゃないですか!ようやく会えたんですよ!」

『あー、()()()()()()()()()()()()()()

「遠くも何もまだよく分かってないですよ〜」

「『……ん?』」

「あの、ちなみにどこに居ます?」

『ドコって……“カルネ村”、あっ、エ・ランテルってわかりまス?』

「全然、わかりません。なんで数時間でそんなに情報集まってるんですか?」

『数時間?も何も()()も住んでればこのくらいは……』

「え、数年?」

『あっ、あぁー、コレが“揺り戻し”ってヤツカァ……』

「???」

 

『オレ、こっち来たの何年も前ッスから』

 

━━━━━━

 

 リ・エスティーゼ王国“カルネ村”。

 トブの大森林にほど近い開拓民トーマス・カルネによって拓かれた現在村民150名ほどの小さな村。

 森を縄張りとする強いモンスターの影響が届く範囲であるため防柵のようなものがなくても安全で、アゼルリシア山脈から流れる栄養を広い平原が余すことなく受け止めてできた肥沃な大地は安定した農作物として人にも還元されている。

 そんな村へと招かれたモモンガは今、ドン引いていた。

「おいっすー☆モモンガさーん!」

「えぇ……?」

 ナザリック内にあった〈遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)〉を何とか操作し、(くだん)の村を見つけ森の方向から接近する。

 この辺は人間種が主に集落や国家を形成していると聞き、アンデッドの姿のままではマズいと考えて人間に変化する魔法やマジックアイテムを控え、加えて幻術を重ねるのも確認が終わっていなかった。

 なので能力低下を避けるためと身バレ対策に素骨(すはだ)をマスクやガントレットで隠す方向で装備を固めた。

 炎ぺらーも同様に普段は人間のフリをして過ごしていると聞いていた。

(なんだかんだ溶け込んでると思ったけど……)

 まず目に付いたのはローグライクゲームに出てきそうな(のほほんとした)農村の端に、竜系モンスターが経年で白骨化したと思われる物が鎮座していた。〈遠隔視の鏡〉で見た時は俯瞰視点だったため正体まで気が向かなかったが、どう考えても存在が浮いている。

「……これなんですか?」

「え、コレ?俺が討伐した竜王っていうこの世界独自の魔法を使う他国の(おさ)やってたヤツ」

「おい……」

 コイツ今、国の王ぶっ殺したって言ったか?

「あの彫像は?」

「アレ?村の警備用に放った課金アイテムのゴーレム」

「……」

 確かレベル八十弱くらいなのにアホほど強力な奴を召喚できるやつじゃなかったっけ?

「あの顔色の悪い少年は?」

「BSSで精神病んじゃってヤク漬けになった子」

 あ、炎ぺらーさんが改造し(いじっ)た訳じゃないのね。

 さっきから「エンリィ、エンリィ……」と呟く度首に付けられたゴツゴツした器具から液体が流れ込んでいる。

「その子は?」

「オレの子。母親はさっきのンフィ少年の想い人」

「壊れたのおめぇのせいじゃねぇか!?」

 すげー目ぇキラキラさせてモモンガを見てる幼女に「抱っこ」と言われた炎ぺらーを名乗る隻腕の少年はそのまま片手で今日に抱き上げる様子には歴戦の貫禄がある。育児パパとしての。

 先程の少年(ンフィ)よりも幼く見えてこの姿は炎ぺらーの変化できる人間の姿だと知っているが、それより子どもの存在で頭が働かなかった。

「え、え?」

「とりあえず、ウチ行きまショ」

「は、はい……」

 

 

 すぐ呼ぶと言ったまま待たれている魔燒の存在すら抜け落ちるほどの衝撃的なことであったが故、モモンガはこの時気付くことすらできない。

 

 




この世界線では
・現実世界でリアルの炎ぺらーは本編同様死亡。ただし死因は別。
・それが影響してるのかは不明だが、炎ぺらーの方が早く来ている。
・片腕ないけど、ナザリックとかの守るものがないので漫遊しながらなんやかんやトラブルに巻き込まれる。
・能力自体は据え置きで、神器級装備無し+魔焼のブーストなし。一人+縛りプレイ地味てる分、相手への警戒心が強いため自分の能力をフルに活用してる。
・なんやかんやあって○○○に目をつけられるが、逆にそれが明確な○意を炎ぺらーに持たせてしまう。
・なんやかんやあって討滅し、トブの大森林に不時着。
・著しく世界情勢が変わりガゼフ暗殺が前倒しに。
・なんやかんやあって今の奥さんと良い仲へ。
・さくやどころでないおたのしみがつづき
・BSS発生、拗れに拗れMFD版外見へ(技術提供炎ぺらー(無自覚))
・しばらく()してモモンガがナザリックごと転移。モモンガの転移が原作より二〜三ヶ月ほど遅い。



実はこのオチの方が本編の出筆?より先に思い浮かんでた。
はぁー、ンフィくんの曇り顔……良……。


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