【完結】炎ぺらーと行くナザリックの侵略日記   作:目此

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気付いたら新年だったので初投稿です。


etc.

etc 炎ぺらーと行くナザリックの侵略日記

 

 

【御方々のなにも無い日】

 

 

 ナザリック地下大墳墓・第九階層“ロイヤルスイート”にはギルドメンバー全員に個室が与えられている。

 

 与えられた後はそれぞれ好き勝手に改装こそされたが、寄与された状態の内装は元々おなじだ。

 ほぼ無改装のまま使用しているモモンガと異なり、炎ぺらーは課金によって弄った側である。

 基本は元のまま使用しているがベッドルームだけ違い、床面積を本来より1.5倍ほど拡張してていて、その拡張分には彼らのリアルではほぼ存在しないタタミ()と白いタイルの床ばりが半々で床に敷きつめられていた。

 その上、畳側の壁際は年季の入った━━ようなデザインに仕上げられた━━棚に本が疎らながらに整頓され、タイル側の壁側はショーケースがびっしり並べられて中に精巧な人形細工が見栄えよく飾られている。

 本棚の本たちは家具と一体化したただのテクスチャだったが、転移後はリアルで炎ぺらーが所持していた数少ない貴重な紙の本やネットが普及したことで使われなくなった紙の辞典、その中でも多種多様な言語の翻訳辞典……いわゆる、英和辞典のようなものが一通り揃えられていて炎ぺらーを驚愕させた。

 ついでに、既に形骸化されていた六法全書まで揃っていたため、一瞬だけ灰化する炎ぺらーを目撃したモモンガが大慌てしたのは余談である。

 人形細工はパワードスーツというユグドラシル・オンラインのサービス後半に追加された要素で、様々な機能を内蔵できる空飛ぶ全身鎧系の防具をマジックアイテムで縮小させて飾っている。

 パワードスーツ自体のギルドの最終的品評は“カンスト勢(戦闘寄りメンバー)ほど極まった環境ではむしろ足枷”というものなのだが、一芸に特化した炎ぺらーはレベル適正が低いところで遊ぶ時の外装(おもちゃ)としては大変好ましいもので、サービス終了告知前後くらいまでなんだかんだ冒険の合間に時間を潰すゲーム内趣味として質を問わなければそれなりの数を作り、フィギュア制作・鑑賞感覚で飾られていた。

 閑話休題。

 

 そんな高級ホテルと(彼らのリアル基準で)古典映像作品に出てきそうな安部屋とフィギュアショップを併設させて壁を取っ払ったような内装は一言で言ってカオスである。

 本人もそう思ったのかマジックアイテム化されたパーテーションが彼の気分によって自動で動き、拡張部分が完全に隠されるのだ。なお、本人を含む“仕組み”を知るかつて居たギルドメンバーたちは逆に“秘密基地”のようで課金できなかった聖騎士を悔しさで地に伏せさせたのは大悪魔と武士のしょっぱい記憶として残っている模様。

閑話休題。

 

 そんなカオスな空間は今、紙を静かにめくる音のみが支配されていた。

 だが、それを破るのもまた音のみで支配していた彼である。

「ネー、モモンガさん」

「なんですか炎ぺらーさん?」

「ちょっと遊び行かネ?」

「……どこにですか?」

「外」

「絶対無理でしょ」

 数冊の本が積み上がる少人数向け短足テーブル(ちゃぶ台)の傍で姿勢良く本を読んでいたラフ(ナザリック基準)な格好の骸骨が眼窩に宿る怪しげな灯りを怪訝に歪め、彼の部屋にもある天蓋付きのベッドの縁から頭を投げ出し仰向けで本を読むこれまたラフ(ナザリックry)な装いの友人な炎を象った結晶を()め付けた。

「エー、良いじゃないッスかー」

「言い換えましょう、絶対()()()()()()()()でしょ」

 一応言っておくが彼らはギルド“アインズ・ウール・ゴウン”のギルドメンバーで骸骨の方はギルドの一切を(合議制で)仕切っていた組織図の頂点“ギルドマスター”〈モモンガ〉とギルドメンバー〈炎ぺらー〉である。加えるなら今現状ギルドメンバー(プレイヤー)としてこの場にいるのも彼ら二人しか居ない。

 そんな実質二人チームのような彼らの行動を縛るものは少ないのである。

 

 ……彼らだけの行動で済むのであれば。

 

「……おかしくないッスか?オレらタダの放浪者のハズッスよ?」

「ええ、そうでしょうね。()()()()()なら」

「……アイツらなんとかして置いていきましょうヨ」

「追いかけてくるでしょうね、確実に。周辺を問答無用で()()ながら」

「やっぱおかしいでショ、数人ならまだしも普通に大部隊が護衛って……」

「あ、ひとりだけ護衛を許した結果、世界征服することになった話します?笑えますよ?」

「その話は絶対引き攣った笑いしかでナいッスよ……」

 呑気に寛いでいるふたりであるが、今こうしているのだっていい顔はされないのだ。

 今だって『二人でゆっくりするからお前らも気を抜いていいよ』と“お願い”したにも関わらず、恐らく扉に耳をそばだてて中に異常がないか確認してるだろう“今日の至高の御方係”ふたりと最低限の護衛がいて、ここに最低限しか残せないくらいの人数を導入してほかのNPC(主にアルベドと魔燒)の進行を阻んでいるだろうことは想像に容易い。

 そのくらい、彼らは存在の基底部分に(存在意義として)自分たち至高の御方々(ギルドメンバー)への奉仕を刷り込まれているのだ。

 

━━その行動として現れる如何には目を瞑るものとする。

 

 金貨を支払って雇っただけの傭兵NPCやナザリックでポップ(出現)したモブですら、モモンガたちが命ずれば喜んで死ぬような思考をしていて、ギルドメンバーたちが手塩をかけて創ったNPCは輪をかけて思想が強いのだ。

 夜風を浴びるため、勝手気ままにカーテンを開いただけでも、主人に手間を取らせたと泣いて土下座し許しを乞うナザリックメイドすら居たことをモモンガは知っている。

「なんなら見たでしょ、というか笑ってましたよね!?()が一日休みたいって言ったら、寝返りすらメイドたちがお世話する姿を!!」

「イヤ、あんなん笑うしかないじゃないッスか。大昔の童話にあった小人の国のお話みたいでしたヨ」

 最古図書館(アッシュールバニパル)の著作権切れ書籍に確かありましたネ。なんて、ケラケラと周囲に燃え移らない火の粉を散らしながら笑う炎ぺらーへ(気持ちの上では)ジト目を向けるモモンガ。

 炎ぺらーもモモンガもここでは至高の御方と呼び敬われ、多くのシモベが喜んで傅くほどの立場に居る。

 だが、彼らの主観で元々リアルではただただ使い潰される労働階級の木端にすぎない。

 自然環境は崩れ、国に代わり台頭した企業が操作する世情を回す歯車のような部品に過ぎないのだ。

 特にモモンガ自身は部下すらろくにいなかった営業マンという認識が強いため、軽い身振りにすら意識をしなければならない今の立場はかなり分不相応に感じてしまう。

 ギルメンの子供のように感じるNPCたちへ悪感情などあるはずもないが、彼らの望む支配者なんて到底演じ続けることは難しい。

 だから、ほんのちょっと、気の迷いで“今度丸一日休むわ”とリアルでほとんど使ったことのなかった有給をかなり頑張って遠回しにゴマすりと周囲の反応を確認しながら申請(気持ちの上での話)した。

 最初こそ酷く驚かれた顔をしたが直ぐに了承され、いざその日を迎え“さぁ休むぞ!”と気合を入れた朝、ずらりずらりと並ぶナザリックメイドの大半とアルベド。

 右を見ても美人、左を見ても美人、枕代わりに傾国。

 極楽だった。いや違う、よく言っても介護としか言えない謎空間の完成である。

 合間に様子を見に来ただろう炎ぺらーへ助けを求め訴えたが、腹を抱え……あまつさえ尻もちをついたことにも気付かず笑い転げた姿が記憶に新しい。

 絶許。

「休みたいなら、冒険者活動中にやれば良かったじゃないッスかー」

 ちなみにオレは結構、外で息抜きしてますヨ。絶対(ナザリック)でなんて休めないンで。とか(のたま)う着火剤ヤロウは最近エ・ランテルでのんびりしていたと報告してくる始末。

「それは炎ぺらーさんのアンダーカバー(外での姿)がエ・ランテルであんま有名じゃないからじゃないですか!俺はアダマンタイト冒険者!プラプラしてたらそれこそ絡まれますよ!」

 実際、宿屋からギルド協会に向かう途中ですら、声をかけられて二、三言交わすようなやり取りすら三歩も歩かず連続エンカウントするのだ。

 他の国へお忍びで行っても人相と首から下げざるを得ない冒険者タグが示す階級(いろ)が許さず、下手すれば大惨事の火種となるだろう。実際転移魔法による密入国であるが。

「ガワ変えれば良いじゃないッスか」

「炎ぺらーさんと違って、人間化のレパートリー少ないんですよぉ。ヘタに異形のまま幻術使って誤魔化すのはバレた時のリスクが大きいですし……」

「え、髪色とワンポイント付け加えれば、服が同じでもない限りバレないもんスよ」

「えぇー……?そんなものですか?」

「実際、オーガミとシーカーは顔変えてないですシ、強いて言えばシーカーは年齢が上に見えるよう軽く化粧してますケド」

「(そのふたつがびっくりするくらい別のキャラ(人格)として演じ分けられてるってこと、気づいてないのか?)」

 エ・ランテルにも噂が届いている“従剣*1オーガミ”と“刀商*2シーカー”を噂でも同一人物説は一切出ていない。

 せいぜい、『オーガミ、シーカーの愛弟子(or後継者)説』が出ている程度だ。

 

 モモンガは悪魔の王都襲撃事件以降、モモンとしてどちらとも一度ずつ会ったことはあるが、やはり同一人物だと知らなければ分からない。

 

(俺にそんな器用なことはできないし、やっぱりリスクが高いなぁ)

 他国に伝わってるだろう人物像だけで特定されるとは思わない。

 何となく脳裏にリアルでの“リアル(顔)バレ”系事件の記事を思い出すのは炎ぺらーが居るからこそなのだろう。

 モモンガも“ギルドメンバーに見つけてもらう”ための撒き餌なら積極的に喧伝するが、“休み”にまで“ギルド(アインズ・ウール・ゴウン)に敵対するプレイヤーの目に止まるかもしれない”なんて比べるのもおかしくなるくらい小さいリスクへ目が向くのだから。

 だが、現状そんな()()()()()()()()()妄想よりも確実に起こるだろうシモベの暴走が怖い。

「……とにかく、今はおとなしく部屋でくつろぎましょうよ」

 何より()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだから。

 

 

 

 

*1
炎剣従者の略

*2
商人剣豪とかその辺からの派生。刀専門商人の略では無い




本当は季節ネタとか、EXを投稿予定でしたがいつ書き上がるかわからなくなったのでこれが一応の完結となります。

マジで中身のない話ですが、この作品としての自分内のコンセプトに区切りをつける意味でこれを投稿しました。


それでは。

━━目此


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