【完結】炎ぺらーと行くナザリックの侵略日記   作:目此

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05.5 炎ぺらーと行くナザリックの侵略日記

 

 時間を遡り、とある場所に場面を移そう。

ナザリック地下大墳墓、第九階層ロイヤルスイート。

「アンタ達はまったくもう!炎ぺらー様に迷惑かけてどうするのよ!」

 部屋の防音性能が優れているからこそ、廊下へと漏れない怒声が室内を響く。

 怒声を受けている魔燒たちは全員が全員正座をしている。もちろん自ら進んでした訳では無い。

 それでも大人しく揃って言うことを聞いているのには理由があった。

「そーは言っても炎ぺらー様と一緒にいたいって気持ちは分かってくれるっしょー?」

「そーだそーだ!」

 魔燒の中で、最も幼い外見かつ鏡写しのような双子の姿をした〈冥府双灯火のマモー&モーナ〉が声を大にして〈バニティア〉に抗議する。

 しかし、それはバニティアの眉を吊り上げることしかできない。

 怒鳴るだけでは意味が無いのを理解したバニティアは努めて冷静を保とうと腕を組めば、ダークグリーンのジャケットから覗く薄緑のシャツを押し上げるようにたわわが強調されるがそれを恨めしそうに見るのはナザリックでもふたりくらいだろう。

「くっ……、バニティアは私たちがどれだけあの方を愛しているのか分からないんだわ。だからそんなに冷静でいられるのよ」

 魔燒は炎ぺらーと至高の御方々によってレベル100まで()()()()()

 元々、彼女たちは━━炎ぺらーのスキルをひとつずつ同じものを持っているだけの━━ただの異形種。それを炎ぺらーがギルドメンバーとの冒険の中でそれぞれの成長方針(コンセプト)に合わせ、守護者と同等(レベル100)まで育成(レベリング)を行ったのである。

 その上、それぞれにワールドアイテムに次ぐレア度を誇る神器級をひとつずつ賜ることができたのはギルドメンバーのおかげに他ならない。

「それは痛いくらいわかるけど。だからって、逆さ吊りにして全員で責めてもいいことにはならないでしょ!」

 シモべなら即座に自害を強要するか、行った不敬なシモベを処罰するだろう行いをした魔燒たちへ、怒鳴り声とともにバニティアからの放電が襲う。

 バニティアは炎ぺらーの被造物であるNPC。ナザリック地下大墳墓、ひいてはギルド〈アインズ・ウール・ゴウン〉に所属するほとんどと同じく人間ではない。

 異形種のひとつ〈人造生命(フランケンシュタイン)〉であり、種族特性により雷に対して高い耐性と放電などの雷属性の攻撃スキルを保有する。

 そのレベルは48でプレアデスに匹敵するが、8レベルの種族レベルを除けば〈書記(ヨハネノペン)〉〈目録(インデックス)〉など戦闘に適さないギルド運営を支える職業がほとんどである。

 戦闘力もレベル三十台のデスナイトとすら戦えばダメージを与えることもできず、あっという間に瀕死へ追い詰められるほどである。

 故に多少のロマンがあるとはいえ、戦闘向きに取得構成されたレベル100の魔燒にはレベル差とステータス差、そして攻撃スキルでは無いスパーク程度ではダメージと言えるほどのものはない。

 魔燒もバニティアも、もちろん互いにダメージとならないことを承知でしているやり取りであるが、それでも魔燒たちが大人しくバニティアの説教を受けるのも、バニティアが魔燒たちに説教するのもひとえに敬愛する炎ぺらーが定めた設定に基づく行動だ。

 バニティアは分析力に優れ、組織の利害を考える効率思考の持ち主で、身内にも自分にも厳しくはあるが世話焼きな一面がある。と設定され、魔燒はそんなバニティアに頭が上がらないとなっている。

 デスナイトにすら勝てないバニティアであるが、レベル1のメイドたちでは対処できるわけもなく、下手をすればスキルに巻き込まれて黒焦げになるのは分かりきっているからか、早々に部屋を退出し各自ここ以外の仕事に従事していた。

「はぁ、まったく……傍仕えのアンタたちが粗相をしてちゃ、シモベとして恥ずかしいのに」

 病気無効を持つはずのバニティアは頭痛をこらえるように頭を押さえる。

 しかし、その仕草とは別にバニティアの思考の八割は()()()()の予想に割かれていた。

(炎ぺらー様はモモンガ様と並んで慈悲深いお方。彼女たちをしょっぴいた時は酷く落ち込んではいても怒りの感情はなかったから大丈夫だろうけど……。それよりもなんで宝物殿にお一人で行かれたのかしら?)

 バニティアはアルベドやデミウルゴスに総合的には劣るが知恵者の部類で、組織的な金銭運用や企画力などに関しては特に優れている。━━と設定され、今では反映されていた。

 なにより、炎ぺらーがナザリック内を散歩する時は供を許されるほど気にかけられていた自負がある。

 被造物である誇りからも少なくとも魔燒を除くシモベの中では最もその深遠なる智謀に爪をかけた存在(理解者)でありたいという意地もあった。

 炎ぺらーのことに関して常に側仕えする魔燒にも劣らないと内心で対抗心を燃やす。

 むしろツンツンなのは見た目だけで中身はデレデレである。姐さん女房ってイイよね。

(謁見の間では御身の装備は調えられてたから噂の宝物殿の守護者に会いに行ったのかしら?だとすると、次の行動は?その目的は?どうすればアインズ様のおっしゃられてた世界征服に繋がるの?)

 コツコツと靴を鳴らしながら足を動かし考えをまとめていく。

「そっか……炎ぺらー様は外に行かれるんだ……」

 足音が止まると同時に零れた呟きが皆に届いた。

「えー!!炎ぺらー様またお別れしちゃうのー!?」

「い、いやですぅ!せっかくまたおそばに居させてもらえるのに!」

「ぼ、ぼぼぼ僕たちどうすれば!?」

「あらあら〜?(困惑)」

「ちょっ、まっ!?ほんとに待って、潰れる!潰れるから!」

 魔燒の過半数が一斉に囲み、バニティアに説明を要求する。だがレベル100の基礎能力で掴まれては戦闘能力だけでなくステータスにおいてもクソザコナメクジにとっては、チョコと一緒に食べたガムのように消え去ってしまう。

 だが、見た目は良い。バニティアのパイナップルが魔燒たちの桃やらリンゴやらまな板やらに押し合い、圧し合い、取っ組み合いする様はフルーツバスケットと言った感じだ。スラックスに包まれた水蜜桃は良いぞ。個人的にはショーパンも捨て難い。

なお、アスモ氏のスイカ外野から高みの見物。

「み、みんな落ち着こうよ!」

 声を上げたのは髪を結んでいる蝙蝠を模したリボンが特徴の〈ルシ〉。

「炎ぺらー様が私たちを置いてどこにも行かないって言ってたんだから大丈夫だよ!」

 モモンガと会話した時に比べどこか平凡な少女らしさが身振りから滲み出す。

「ルシの言う通りなの」

 正座に疲れたのか〈爆炎地獄のアスモ〉の膝を借りて寝転ぶ〈辺獄烈火のベル〉。

「そうそう、ちゃ〜んと炎ぺらー様に聞けばいいのよ〜」

 アスモののほほんとした雰囲気が伝染し、張り詰めた空気が緩む。

(ありがとうございます、アスモさん)

(大丈夫よ〜、それに話が気になるのは私もおなじ)

 ですよねー、と悟った表情をするバニティアは周りを見渡す。

「炎ぺらー様……とモモンガ様もね、ふたりともこの世界を知るために外へ出るのよ」

「知るって、何を?」

「色々よ、人や物、魔法に“武技”?だったかしら、この世界独自のスキルみたいなもの。そういった諸々込めての色々よ」

 指折りに数えながら説明するバニティアは人に説明することで自分の考えに間違いがないだろうと確信を強める。

「至高の御方の一手は五手も六手も先まで想定した神算の上でのもの。そこまでは私もわからないけど、情報を集めるだけじゃなくて、外貨の入手とか、人脈の形成、……今の私で思い浮かぶのはこのくらいね。デミウルゴス様やアルベド様、それに宝物殿の守護者とも煮詰めればもう少し先までは予想が立てられそうだけど」

 それでも深謀の爪先程度がやっとだろうけどね、なんて説明しながら既に指が何度か折り返ししている。

「どちらにせよ、あなた達の“本領”は炎ぺらー様と一緒じゃないと発揮できないんだから、そうそう引き離されたりはしないわよ」

「そうですよね……」

「だよねー、バッちゃん冴えてるぅ!」

ながれいし(流石)ー!」

 一応の納得がいった魔燒たちはやんややんやとバニティアを持ち上げる(物理)

「ちょっ!?私はいいから!あなた達は炎ぺらー様からいつ声がかかってもいいように準備しなさーい!!」

 

 魔燒たち+αの夜はこうして明けていく。

 

 




06も本日中に投稿予定です(一日1話とは)
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