「黄金卿エルドリッチでダイレクトアタック!」
「ぐああああ!」
LP1800→0
どうも初めまして。LDSジュニアユース総合コース、死堂 蛍(しどう けい)と申します。ジュニアユースの大会に出場するために戦っているのですが
「また死神が勝ったのかよ」
「相手の子、大丈夫かなぁ。デュエリストとして死なないといいんだけど」
「相変わらずエグいなぁ」
死神呼びされてます。まあアンデットデッキなので仕方ないのですけど。
「文句あります?」
「いや、なんも?」
刃くん、北斗くん、真澄ちゃんとつるんでいますが周りからの視線がひどいです。
「というかお前儀式も出来るのにやらないんだよな?」
「儀式も好きですけどしないデッキのほうが強いので。いや、普段あまり使わないデッキに1つ強いのはありますけど王道の儀式デッキとは言えないので」
「あれか…」
北斗くんにだけ使ったことがあるので変な顔をされてます。カオスMAXドライトロンはやりすぎでしたかね?
「一番勝率が私たちの中で高いけど、舞網チャンピオンシップには出るの?」
「出ますよ。というかそのために公式戦してるんですから」
「普段はほぼ出てこねえもんなあ」
「デュエルは楽しむものです。大会とかはせずに仲間内でやってたいものですよ」
「そういうもんかね?」
「少なくとも私はそうですね」
リアルソリッドビジョンの普及でかなりアクションデュエルの機会は増えました。あれ攻撃が痛いんですよね。
「そういえば今日着いてこいって理事長が言ってたけど」
「ああ、LDS狩りの正体が榊遊矢だってな?」
「本当ですかね?少なくとも彼とは交流がありますがそういう汚い手を使う理由はありませんし犯人はエクシーズを使ったそうですが彼はエクシーズを持っていません」
「隠し持ってたとかじゃねーのか?」
「可能性はあります。ですが似ているだけで断定するには事が大きすぎます。慎重に調べるべきですしディスクの履歴からは見たことのないカードの記録が出ています。何か裏があるのかもしれません」
幻影騎士団、少なくとも聞いたことのないテーマです。バージェストマのように罠カードとして扱わない罠モンスター、ランク3とランク4を出すことに特化しているであろうモンスター群、そしてエクシーズの名を冠するエクシーズモンスター。かなり強力な永続罠など、使っているデュエリストがいなくてはおかしいカードが複数あることからどこかの企業が雇ったデュエリストが試作カードのテストのためにやっていると言われたほうが納得がいきます。
「遊勝塾にデュエルを申し込みに行くとは言われていますが、まあ恐らくはペンデュラムが目的で因縁を付けているように思います。ちょうどいい口実なのかもしれません」
「じゃあ襲撃もマッチポンプってことか?」
「ペンデュラムが出る前からあったので別件でしょう」
ペンデュラム召喚。榊遊勝の息子、榊遊矢が初めて成功させた新しい召喚法。見たところモンスターを大量召喚することに特化しているので単体では驚異とはなりえないと思います。手札の消費も激しいでしょうし、エクストラデッキのモンスターが活用しやすくはありますが彼は持っていないはずなので火力は低く、決定打に乏しいでしょう。
「沢渡に犯人の特徴を聞いて榊遊矢が一番可能性が高いデュエリストだったんだろ?」
「他人の空似というのはよくあります」
「じゃあ怪しいくらいで留めておいたほうがいいのね?」
「そうですね。犯人かもしれないけど断定はできない、くらいで」
──────────
「ではLDSの各コース主席たちとデュエルをしていただきましょうか!」
「やっぱりこうなりましたね…」
「ああ」
「そうね…」
「まあデュエルできるならいいけどよ」
理事長が意気揚々と遊勝塾をかけたデュエルを申し込みました。正直、やる気は出ません。理不尽にすぎる要求をしている自覚はあるのでしょうか。悪い印象を与えるのは早計でしょう。
「あの、理事長。別にデュエルをする必要性はないのでは?榊遊矢がLDSの襲撃犯とはまだ決まってない以上、無闇に喧嘩を吹っ掛けるような真似をするのはリスクがあるかと。それにペンデュラムカードを貰うとは言いましたが、研究目的なら少しの間借りるだけでいいでしょうしこの塾を買収するにしても利益は言っては悪いですがペンデュラムだけです」
「LDSの総合コース主席ともあろう貴方が怖じ気づいたのですか!?」
「このデュエルに関して無意味に近いと思っています。勝てる可能性は高いですが負ける可能性は0ではありません。これで負け越したら恥の上塗りになるでしょう?」
「まあ、誰だって負ける可能性はあるものね」
「昨日まで勝ってたやつに負けるなんてこともあるしなぁ…」
「それよりもこの塾は経営難のようなので支援をしつつペンデュラムカードを借りて研究したほうがコストもかかりませんしリスクも低いかと」
理事長はすごい形相で睨んできますが、普通に考えてこちらのほうがいいはずです。最近の赤馬社長と理事長は何か焦っているように思えます。結果として強引な手段が多くなっているようです。
「あー。赤馬理事長?私としては生活がかかっているので少々考える時間をくれませんか?」
遊勝塾の塾長は変な雰囲気を察してか時間を置くことにしようとしてますね。ありがたいです。
「相手も突然すぎてすぐには決められないでしょう。理事長、こういう話は話し合いを何度かしてからのほうがいいかと」
「……わかりました。ですが明日も来ます」
とりあえず企業間デュエルなんていうめんどくさいものは回避できましたね。
「あ…蛍!」
「どうしました遊矢くん」
「その、ありがとうな」
「礼には及びません。冷静さを取り戻してもらいたかったから勝手にやっただけです」
一応はクラスメイトな遊矢くんには礼を言われましたが他人の人生をかけたデュエルなんてやりたくないのが本音です。やらなくてはならないなら全力でやりますが
──────────
「母が迷惑をかけた。すまなかったな」
「いえ、冷静になってもらいたかっただけです」
私だけ社長に呼び出されました。はて、何かあるのでしょうか。
「ところで君は大会には興味はないと思っていたが舞網チャンピオンシップには出るつもりだそうだな?何が目的だ?」
「……舞網チャンピオンシップには強いデュエリストが出場するでしょう。基本的には大会には興味はない自分ですがそれは弱いデュエリストと当たって勝ったときに文句を言われるのが嫌なだけです」
傲慢な考えというのはわかっていますが、誹謗中傷されるほど強いと自分を評価しています。煩わしい程度ですがエスカレートして家族に被害が及ぶのは嫌ですね。
「つまり君は強者とならデュエルしたいと?」
「その考えで間違いないですね」
「ならば何故遊勝塾とのデュエルを避けた?」
「後腐れなくデュエルをしたいだけです。人生がかかったデュエルとか、楽しくないですから」
「楽しくない…か…」
何か遠くを見つめているようですね。何かあったのでしょうか。
「公式戦は6連勝しているから出場資格は手にしています。ただ気になるのはLDS狩りなどによって中止になることですね」
「中止という選択肢はない」
「それならいいのですが」
プロ認定のために必要な大会に出場するというのはやはりある程度の強者でなくてはなりません。私はそのレベルの強者とデュエルをしたいので中止というのは若干困ります。ユースのデュエリストや目の前の社長のようなプロデュエリストという相手は居ますがそういう方々は忙しく、なかなかデュエルをしてもらえません。
「…そうだな…。君に頼みたいことがある」
「なんでしょう」
「ペンデュラム召喚、使ってみたくはないか?」
…なるほど。ペンデュラムカードを既に開発していたようですね。とはいえまだ開発したばかりでしょう。それに面倒臭いです。確かに新しい召喚方法は魅力的ですがそれ以上にやる気が出ません。
「やめておきます。そういうのは沢渡がやるでしょうし」
「そうか。まあ無理強いはしない」
面倒ごとは回避できたようです。
「では代わりにLDS狩りについて調べるというのはどうだ。こちらには興味があるだろう?」
「……興味はありますが私が参加したところで大して意味がないと思いますが?」
この社長、面倒ごとを押し付ける気ですかね?いやまあLDS狩りには興味がありますし知り合いが被害にあっているので敵討ち、とまではいかなくとも何かしらやっておきたいとは思いますが。
「いや、LDS狩りの強さが伝わったせいか捜索する者も少なくなっている。そしてジュニアユースの各クラスの主席が参加すれば他の者も参加するかもしれない」
「つまり旗印のようなものですか?」
「そうなるな」
先頭に立つ者に着いていくのが性とでもいいますか。まあLDS狩りを捕まえようとする知り合いは多いですからね。
「わかりました。そちらは受けましょう。ただし積極的に捕まえようとはしませんのでご容赦を」
「捕まえなくてもいい。安全を第一に念頭に捜索してくれ。他の知り合いにかけあってくれてもいい」
メガネを持ち上げながら言われましたがまあジュニアユースの子供に被害が及ぶのは避けたいんでしょうね。しかし人手が足りず頼らざるを得ないと。
「では失礼します」
「ああ」
──────────
「という訳で捜索するわけですがどうしますか?」
「俺はやるぞ」
「俺もやるさ」
「私もよ。マルコ先生の敵討ちよ」
「敵討ちはしなくても足取りさえ掴めばいいんですが」
勇んでますが相手が明らかに違法改造したディスクを使っている以上、デュエルは出来る限り避けるべきです。
「お前は悔しくねえのかよ!?」
「悔しいとかよりも安全が先です。被害者も重傷とはいえ生きていますし敵討ちと言うほどでもないです」
火傷のあとなどはありましたが総じて命に関わるほどではなく数週間で退院できるレベルで留まっています。まだ傷害事件で収まっているならば下手に事を大きくして自棄になられても困りますし。
「さて、まずは目撃場所と襲撃場所の把握はしましたが港付近が多いですね」
「密航者か?」
「港にはいくつも廃倉庫がありますし付近には廃ビルが多く点在しています。身を潜めるのにはぴったりでしょう」
「港付近じゃないのは?」
「それこそLDS本社に近いところなのでLDSを狙っているんでしょうね。とはいえそれにしては稚拙というか」
「ライバル企業にしては突発的だしLDSに恨みを持つ大人の犯行というには甘いのね?」
「なので子供、具体的には高校生以下の可能性があります。沢渡などの証言からも中学生あたりの身長の男が犯人の1人として候補に上がりますからね」
割とすぐに情報は集まりました。マルコ先生他、意識がない人も居ましたが概ね証言から浮かび上がる実行犯は2名。背が高めの男と少々低い中学生あたりの男です。
「何が目的なのかねぇ」
「目的がないとは言えないからね。LDSだけを狙っている以上」
「買収された塾の生徒だったとしてもLDSの講師を倒せるほどの生徒はごく少数だし、そういう生徒が居るならきちんと納得してもらった上で名前を残して買収だものね」
「逆恨みなら理不尽な理由でも襲撃はするでしょう」
理不尽な理由での逆恨みにしては破滅的な襲撃ではないです。周りを巻き込んでの自爆みたいな行為ではなく人気のない場所での襲撃がほとんどなので逆恨みにしては理性的でしょう。
「まあ今は巡回するくらいしかないでしょう。夕方は学校も終わっているので集まれますし襲撃犯が活動を始める時間でもあります」
「じゃあ明日からか?」
「私は部活あるのだけれど」
「俺もあるぜ。そろそろ大会も近いし新入生の指導もしなきゃなんねえ」
「そうですね。北斗くんは?」
「俺はないが2人だけだと人手が足りなくないか?」
「それはそうですね。まあ他の知り合い…飛鳥くんでも誘いますかね」
飛鳥くんはレッドアイズ使いなんですが割とワンキル狙いなんですよね。黒炎弾2枚はまずいですよ。
「飛鳥かぁ…あいつなら着いてきそうだな」
「俺、あいつ、嫌い」
ハンデスしても巻き返されて負けた刃くんがなんか言ってますが強いので来てもらいましょう。
「では今日は解散で」
「おう」
「じゃあね」
「また明日」
エルドリッチにアレルギー出してる人がたくさん居そうだけどもっとエグいデッキなので笑いながら読んでください