転生したらなんかウマ娘に懐かれてる件について   作:和菓子甘味

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序章

「今日も一日癒されたなぁ…」

 

俺は現代の喧騒の中で扱かれる社会人の端くれ。普段は公僕としてお国のために奉仕しているのだが、今日は休暇を活用して北海道に癒されに来ていた。

 

「チケゾーじいさんも元気だったし、グラスも元気だったなぁ、シャトルもドトウも今までよりなんか元気だった気がする」

 

北海道に来たのは他でもない、かつて人々を湧かせた名馬たちに会いに来たのだ。

 

元々親父が競馬好きで色々な場所の牧場でコネを作っていたのが発端なんだが、当時赤ん坊だった俺も色々な場所の名馬に会いに行くことがあった。俺自身はそこまで競馬に興味があった訳では無いが、最近リリースされたウマ娘なるアプリでどっぷりハマりこんだ。

まあ、競馬に勝ててはないんだけどね…。

ともかく、俺は親父のコネで有名馬達と出会い、こうして会いに来ることが出来ているのだから、ここは感謝しなければならない。

 

「一服して帰るかぁ」

 

日も大分落ちてきたので、帰る前に牧場入口近くの道路脇に車を止めて煙草を1本蒸かす。

大抵の馬達は俺の顔を覚えているらしく、俺を見つけたら嬉しそうに近寄って来てくれる。しかしながら、俺が煙草を吸う様になってからは、寄ってきてくれるものの、皆が俺の腹を鼻先でどついてくるようになった。どうも煙草が気に入らないらしく、俺も渋々であるが、彼らに会う時はなるべく控えてる。

それでもチケットやグラスは勘づいてどついてくる。シップは小を引っ掛けてきたな。

 

とまあ、そういう経緯があり、俺は久しぶりの煙草を楽しんでいると、奥から誰かの大声となにか大きなものが近づいてくるのが見えた。確かあの方向はさっきまで俺がいた牧場...ってあの馬は!?

 

「グラスワンダー!?」

 

何故かこちらに走ってくるグラスに驚いたが、刺激しないために煙草を踏み消して携帯灰皿に吸殻を放りこんで、グラスの手綱を取って道路に飛び出ないようにする。

 

「どうどう!どうしたんだグラス。出てきちゃダメだろ?」

 

何とかグラスを宥める。だがグラスは何故か俺の傍を離れようとせず、煙草臭い俺の体に擦り寄ってきた。

 

「おいおい、おやつはないぞ?それに厩務員さんが...」

「すみませーん!」

 

グラスをあやしていると、若い厩務員さんが息を切らしながらやってきた。

話を聞けば、馬房に戻そうとした時にグラスが暴れだして柵をぶち破って駆け出したそうだ。普段あれだけ大人しいグラスが何故ここまで暴れたのかは謎だが、そうであれば後は厩務員というプロにおまかせが1番だ。

 

「ほらグラス、迷惑をかけたらダメだろう?早く厩務員さんと家におかえり」

 

厩務員さんに手綱を手渡すが、グラスは帰ろうとしなかった。まいったな…。

 

「大丈夫だってグラス。また今度会いに来るから。その時は凄く美味しい人参を持ってきてやるからさ!」

 

俺の言葉が理解できたのか、グラスは渋々であるが帰ろうと歩みを進めた。

何度も見返すグラスがもの悲しげで罪悪感があるが、高級人参を今度あげてご機嫌をとるとしよう。

 

3回目にグラスがこちらを振り向いた時、俺は強烈な力で吹き飛ばされて宙を舞った。

 

は?え?なにが...

 

ドシャッという音ともに俺は道路に叩きつけられる。全身が熱く痛いが、芯が冷めるような感覚が気持ち悪さを助長する。手を見るとおびただしい血。

 

そうか...俺は轢かれたのか...

 

そう理解すると急に視界が霞んできた。

その視界の端で何かが覗き込んで顔を舐めてきた。

 

「グ...ラ、ス。ご、めん...約束...守れ...」

 

俺がグラスの顔を撫でたと同時に俺の意識はブラックアウトした。

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