転生したらなんかウマ娘に懐かれてる件について   作:和菓子甘味

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第10R「取材」

さて、もう少しでチームリギルを卒業し、俺も一端のトレーナーとして勤務することが目前なので、今日は気合いを入れなければならない。

 

「...なあアマさん。アイツはなんでいつもと違う服着てるんだ?」

「ブライアン忘れたのかい?今日はリギルに取材が来るだろ?だから正樹も服装を正すって事であれ着てるんだよ」

 

気合いを入れようとした時にそういう会話やめてくれませんかね?ただでさえ防衛省と文科省にキレたいのを我慢してるんだから...。まあ、それはさておき、ブライアンとヒシアマの言う通り、今日は競走ウマ娘誌...前世で言うところの競馬誌の取材がある為、俺は普段の戦闘服装甲用と戦闘靴装甲用*1ではなく作業服と半長靴という出で立ちで、しっかりとアイロンと靴磨きをした上で待機している。

本当になんで取材を許可したのか防衛省に問いただしたいが、公益施設警護派遣隊本部から丸投げ状態なので取り付く島もないのである。畜生。

 

「そんなに硬くなってると受け答えまで固くなっちゃうよミスター」

「そりゃお前さんは慣れてるだろうなシービー...」

 

休めの姿勢で佇む俺の両肩に手を置いてマッサージしてくるのはミスターシービー。ルドルフ、ブライアンと同じくクラシック三冠を制すウマ娘であり、よく東条トレーナーと共に俺を見放して逃げるウマ娘でもある。

 

「まあまあ。噛み噛みでも示しがつかないでしょ?」

「なんというか...君は上手く生きていくタイプだと思うよ」

「ウマ娘だけに?」

「上手くねえよ」

 

なんかルドルフが悔しさと笑いと羨ましさが入り交じった顔で「上手く...ウマ娘...上手く...フフッ」とか呟いているが知らん。なんでアイツはこうも笑いのツボが浅いんだ...。

そんなことを思いながら溜息を吐いていると、東条トレーナーが記者団を引き連れて...え?多くない?2個分隊規模の記者団って多くない?俺が世間知らずなだけ?

 

「おい、いたぞ...」

「マジの自衛官だ...警派法の話は本当だったんだな」

「コイツはいい特ダネだぜ...」

 

うーんこのパパラッチ共どうやら俺目当てであるな?リギルの取材じゃないんかい。

 

「早速ですがすみません。貴方は噂のチームリギルサブトレーナーで間違いありませんか?」

「はい、間違いありません。自己紹介させて頂くと『陸上自衛隊公益施設警護派遣隊日本ウマ娘トレーニングセンター学園警護派遣員』樋野正樹3等陸曹です」

「陸上自衛隊からの派遣ということですが、ライセンスなどはどうされているのですか?」

「独学で勉強し、18歳の頃に取得しています」

「樋野家は戦前、トレーナーを輩出していたという歴史がありますが、その歴史に名を残すお考えは?」

「その件に関してはコメントは差し控えさせていただきます」

「陸上自衛隊という事は、学園内に武器等は保有しているのですか?実弾もあるのですか?」

「その点に関しては防衛機密上私からお答えすることは出来ません。防衛省の方へお問い合わせ下さい」

「陸上自衛官と同じような負荷のトレーニングをしていると話がありますが、それは事実ですか?」

「私の経験を元にしている事はありますが、負荷は各個人の能力に合わせたものにしています。また、それに関しては東条トレーナーに確認の上実行しています」

 

なんだコイツらたまげたなぁ...全然チームリギルに関係ねえじゃねえかおい。

 

「申し訳ございませんが、あまり今回の取材目的から逸脱した質問はしないで下さい」

 

さっすが東条トレーナー!俺の言いたいことを言ってくれて助かる...。なんかこのパパラッチ共は「邪魔しやがって」みたいな目をしているが、そんなもん知らんな。メシウマである。

 

「ほな、1ついいでっか?」

「はい、なんでしょうか?」

「樋野トレーナーにとってトレーナーってのはどういうもんか教えてもろてもええでっか?」

「自分にとってトレーナーはどういうものか...そうですね...ウマ娘達が目指す夢、未来を支える存在だと思ってます。ウマ娘単体で夢を叶えることは不可能。例えそれがシンボリルドルフだろうと、トキノミノルだろうと、お互いを信頼し、立ち向かわなければ壁を乗り越えれるわけがない。そう自分は考えてます」

「...ありがとうございます」

 

確かこの記者...シンデレラグレイに登場した藤井泉助という記者だったかな。なんか競バ界を引っ掻き回してたような記憶があるんだが...まあいいか。

 

「では...」

 

その後も記者たちは、各々が知りたがる情報を聞き出そうと四苦八苦していたが、ぜーんぶ東条トレーナーに止められてて草を禁じえなかった。なんで禁止されてるのにこのノータリンは防衛機密に片足突っ込もうとするかね。死の虹*2よりノータリンじゃねえか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、アイツらは全員出禁にしてやるか...」

「内なる暴君は抑えてもろて」

「リンゴなしのウィリアム・テルごっこにシマショー」

「声に抑揚がない上に普通に銃刀法違反と火薬類取締法違反と殺人罪を重ね合わせるんやない」

 

数日後、発刊されたウマ娘誌やスポーツ新聞を見て暴走し掛けのルドルフとタイキを宥めながら俺は本気で上の意図がわからずに悩む。因みに他の面々はトレーニングや外への対応で不在である。まーじで面倒事だぞ...。

 

「何故トレーナー君がここまで書かれなければならない!これなら週刊〇春に切り取られる方がマシじゃないか!どうせなら私と...」

「ルドルフ、その先を言ったら今度こそ一生無視するからな」

「ちゃんと計画はしていないから未遂だ」

 

はあ...ルドルフはルドルフで前回の一件で懲りたかと思えば相変わらずで...いや、これがルドルフらしいのか?シリウスには申し訳ないが、これは治りそうにないな...。陰湿さは消えたから俺的には良いけども。

でも目の前の問題は片付いてないわけでして...目の前のウマ娘誌の特集はまだマシではあるんだけど、新聞とかゴシップ系の雑誌はあることない事描きまくっててもう訳が分からない状態である。ネット記事もいくつか掲載されているが、コメント欄が左と右の大戦争で阿鼻叫喚の地獄絵図だったりする。もうね、どうしてこうなったと問いたい。問題がでかくなりすぎたのか、今朝は隊本部の上級陸曹からもお叱りの言葉が飛んできた。いや、それに関しては俺悪くないはずなんだけど...たかが3曹に丸投げしたのそっちだろうに...。

因みにこの事でトレセン学園にも苦情が出たらしく、理事長やたづなさんは対応に追われている。ルドルフも朝は度々電話対応してたから相当面倒なことになったっぽい。

 

「とりあえず理事長とたづなさんに謝罪しないといけないかなぁ...」

「面白いことになってんなぁトレーナー」

「What's!!?」

「急に驚かすなシップ。タイキが滅茶苦茶驚いてるじゃねえか」

 

急に現れたゴールドシップに驚いたタイキがびっくりして俺にしがみついてきた。ルドルフもシップの登場に驚いていたが、しがみつくタイキと俺の頭の上に顎を乗せてもたれ掛かるシップを見てご機嫌斜めになられた。

 

「わりーわりーシャトじいじ。いい情報があったんで寄ったんだよ」

「シャトじいじ...?もしかして」

「ルドルフの考えてる通りこいつも記憶あるぞ。というか俺が前世で会ったウマ娘大概記憶あるんでねえかね?知らんけど。でだ、どういう情報を持ってきたんだ?」

「トレーナーのサブ期間延長と来年か再来年からスピカのサブに起用するって話を聞いたなぁ」

 

なるほど、延長の上に来年か再来年から俺がスピカサブに...はい?

 

「え?俺がスピカに?」

「そういうこったなぁ...やったじゃねえか正樹」

 

上を見上げるとニチャァという擬音が似合う笑みを浮かべるゴールドシップ...あっこれは玩具にされる未来が見える見える...ってなるかぁ!

 

「直談判してやる!シップと同じチームはごめんだぞ!」

「残念だったなトレーナー!もうほぼほぼ決まってるんだよ!大人しくアタシの玩具になりやがれ!」

「人権!人権侵害だァ!」

 

俺は何とか逃げ出そうとするが、シップに緩いチョークスリーパーを決められているので逃げ出せない。コイツ...力量の差を使いやがった...!なんか横でタイキが「トレーナーさんは渡しまセン!」って言ってるが、その前に離れるか解放してくださいお願いします。

 

「ゴールドシップ。そんなに容易にトレーナー君を手に入れられると思っているのか?」

「おお怖い怖い。皇帝参上ってか?」

 

はい、暴君暴走です。もう俺の手には負えないぞどうしてくれる!!

 

「上の決めた事なら覆せばいい。下克上上等だ」

「生徒の模範たる生徒会長らしからぬ発言だねぇ...」

 

シップは笑みを浮かべるが、冷や汗を流してる。タイキも流石に口出しを控えるべきだと本能が告げているのか、俺から離れて黙り込んでしまった。

 

「あくまで常識の範囲内だ。どうだ?私と2400mのレースで決めると上に上申するのは」

「自信満々なのはいい事だがいいのか?2400mはオレ様の距離でもあるんだぜ?」

「ほざけ。皇帝であるオレが小便小僧相手に負ける訳────」

「はいそこまで。前世なら馬券が湯水の如く売れるレースを開催しようとするんじゃねえ」

 

これ以上問題行動を起こして理事長達に迷惑をかけても仕方ないので、俺はウマソウル全開の2人を制する。マジでこの2人のレースとか前世なら馬券が刷りきれないぐらい売れそうだから困る。多分東京競馬場でも人が溢れてキャパオーバーするだろうな...。

 

「お前らはカッとなると我を忘れすぎだ。血統もあるんだろうが、少し頭を冷やせ」

「でもよ!」

「シップ。これ以上問題事起こすと理事長達だけじゃなくて俺とシリウスが胃潰瘍で倒れるぞ」

「それは脅しなのか...?」

 

ルドルフに突っ込まれたが、知ったこっちゃない。

死なば諸共。以前貰った権利を使ってシリウスもこっちに引きずり込んでやる。

とりあえず落ち着いたと思われる2人を座らせて、今日の仕事を片付けないと行けないので部屋を後にしようとするが、何故か3人とも着いてきた。

本当に勘弁してくれよ...。

*1
戦闘装着セットのひとつで主に機甲科の戦車隊員に支給される。戦闘服はより難燃性が高い素材を使い、装甲車から引っ張り出せる様に背面に取っ手が取り付けられている。戦闘靴はベルクロ式で緩い状態にすることで、挟まれた際に脱靴しやすくなるなどの工夫が施されている。

*2
ゲーム制作会社のLJNの俗称。他にも『笑える、常軌を逸した、ノータリン(Laughing Joking Numbnuts)』や『邪悪なる死の刻印』の名称もある。理由はクソゲーを作りすぎたから。

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