転生したらなんかウマ娘に懐かれてる件について 作:和菓子甘味
第1R「着任」
「歓迎ッ!はるばる我がトレセン学園へようこそ来てくれた!」
「はいッ!ありがとうございます!」
陸上自衛隊の常装...よく見る緑の制服姿の俺は目の前の秋川やよい理事長に陸教*1ぶりの声で返事をする。
とはいえ、俺は未だに自分の状況が理解出来ていない。
前世で交通事故にあってポックリ逝ったと思えば、ウマ娘の世界に赤ん坊でこんにちわ世界した。そしてここがウマ娘の世界だと知った俺はトレーナーとなる為に猛勉強してライセンスを取り、中央の試験も乗り切ったのだが、そこで親戚が余計な茶々を入れて何故か前世と同じく陸自に入る羽目に。前世と同じく辛い思いしながら仕事してたら何故かここにお呼び出しを受けることになって何故か防衛省から文科省に出向扱いでサブトレーナーとして勤務が決まった。
あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!俺自衛隊で勤務していたと思ったら、いつのまにかサブトレーナーになっていた。な…何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだった…催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ...。
とまあ、頭がポルナレフ化してる俺の内情はさておき。
今はまだどこの所属かも決まっていない状態らしく、今日は一日学園を見学して欲しいと言われたので、大人しく命令に従うことにする。一応秘書の駿川たづなさんに案内される事となったのだが、トレセン学園滅茶苦茶広いな...流石2個普通科連隊規模*2の人数を抱える学園と言ったところか。
「さて、時間の関係で最後になりましたがここが生徒会室です。生徒会長であるシンボリルドルフさんとは度々会うことになると思うので、挨拶しましょう」
「分かりました」
シンボリルドルフ...確か最近生徒会に上り詰めたとか何とか...前世と同じく三冠馬で皇帝とか言われてるし、年下とはいえ礼儀を払わないとな...蹴られて死にたくないし。
「シンボリルドルフさん、たづなです」
「どうぞ」
たづなさんの後に続いて部屋に入る。奥ではアプリで見慣れたウマ娘───シンボリルドルフが鎮座しておられる。
なんでシングレなの!?明らかに「中央を無礼るなよ」って顔してるんやが?俺何かした覚え無いんやが?
「この度トレセン学園でサブトレーナーとして勤務する樋野さんです」
「初めまして。防衛省陸上自衛隊から本日付で日本ウマ娘トレーニングセンター勤務を命ぜられました樋野正樹3等陸曹です!」
「初めまして、私は生徒会長を務めています。シンボリルドルフです。以後お見知り置きを」
俺が敬礼をするとシンボリルドルフは手を差し出して握手を求めてきた。俺は特に何も考えず握手をすると、彼女はかなり力を入れて握ってきた。痛みを隠しながら握手をしていると、不意に手を弛め握手を終えた。正直手を持っていかれるかと思った。
「たづなさん。この方と少し2人で話したいことがあるのですが、大丈夫でしょうか?」
「ええ大丈夫ですよ。樋野さんも今日はお話の後は帰宅しても大丈夫です。但し明日の朝礼までには出勤お願いしますね?」
「わ、分かりました...」
たづなさんは何も気づいていないらしく、そのまま出ていった。目の前のシングレ皇帝は笑顔のままこちらを見ているが、覇気がヤバい。チビりそう。
「とりあえず、聞きたいことが山ほどある」
「えっと...自分は何が何だか...」
「おや、私の機嫌を損ねるのかな?」
シンボリルドルフがそう言葉を零すと全身の毛が逆立った。これは返答を間違えたら即ガメオベラな選択肢だ。
「ここに来たということは向こうでの寿命を全うしたと言うことかな?」
「な、何を...」
「坊主...話してるのは『オレ』だ。あまり苛立たせない方が身のためだぞ?それに...私は1度見た顔は忘れないんだ」
今度は血の気が引いた。目眩を抑えながら俺は確信する。
目の前のシンボリルドルフは俺が前世で会ったシンボリルドルフの生まれ変わりだった。
「...質問の答えだが、俺は交通事故で死んだ。グラスワンダー号に会いに行った時にな...」
「ふむ...私が死んだ後にそんなことがな...しかし、あの時の子供が随分と立派になったものだな」
そう言ってシンボリルドルフは俺の顔をまじまじと見てくる。なまじ美人な分気恥しい。
「おや?顔を赤らめてどうしたんだい?」
「分かっててやってるだろ...たちが悪すぎる。一応、今世では俺の方が年上のはずなんだがな...」
「年齢はトータルで言えば並駕斉駆の筈だがね?」
流石皇帝様と言ったところか。とはいえ、これ以上やられっぱなしでズルズルと続けるのも面倒ではある。
「聞きたいことが済んだのであれば、俺は帰らせてもらうぞ?」
「ああ、構わないよ。これから時間はたっぷりあるからね」
そう笑うシンボリルドルフは、底知れないものを感じる顔だった。
シンボリルドルフ
馬時代の隠居生活中に数回正樹と会う。おやつを貰ってから正樹に懐くが、最早おじいちゃんと孫のそれとして周囲からは見られていた。
馬の側面が出た時の一人称は「オレ」