転生したらなんかウマ娘に懐かれてる件について 作:和菓子甘味
「おや、まだ電気が点いているな」
今日も生徒会の仕事が長引いてしまい、時刻は21時を回ってしまった。もう1時間もすれば門限なので、最後に一通り見回ってから帰ろうと思ったのだが...どうやらこの時間まで寝ない不届き者がいるようだ。
「これは厳しく指導してやらねばな」
思い立ったら即行動。私はその部屋のドアに3回ノックをして返事を待たずに入室した。
「ルドルフ...生徒会長なら知ってると思うが、普通入室は許可を得て入るものだが?」
「おや?こんな時間まで残業をしてる悪い子に言われるとはね」
「お互い様だ。オメーだってさっきまで仕事してたろ」
危ない危ない。眼鏡をかけている正樹の姿につい昂ってうまぴょい伝説する所だった。これが馬の時なら理性が効かなかっただろう。
当の正樹はこっちの事情を知らずに立ち上がって珈琲を淹れようとするので、即座に傍に寄って椅子に押し付けた。
「少しは休んだらどうだ?『オレ』に気を使う必要もないだろ?」
「へいへい、皇帝様の仰せのままに」
両手を挙げて降参のポーズをとって軽口を叩く正樹。ああ、今すぐにでもその軽い口を私の口で塞いで押し倒したいが我慢する。熟成すればするほど旨みは増すものだ。
「砂糖やミルクは?」
「ブラックでいいよ」
ふふっ、まるで夫婦の一幕の様だ。いや、良く考えればこれは予行演習だ。将来私達が結婚した時の予行演習...そうだそうなんだ。
「今めちゃくちゃキモイ顔してるぞ。例えるなら某特型駆逐艦ぐらいだらしない顔」
「皇帝たる『オレ』がそんなに顔をするとでも?」
「うわぁ!急にキリッとするな気味悪い!」
全く、乙女に向かって気味が悪いとは失礼な。礼儀というものを全くもって弁えていないな。
これは指導が必要だ。
「乙女に向かって気味が悪いとは失礼だな」
「中身ジジイが何をっ!」
「忘れたのかい?人はウマ娘に敵わない。その気になれば君と契りを交わすことすら造作ない事だ」
私は正樹の両腕を掴んで彼の脚の上に跨る。これだけで1戦闘員であるはずの彼は何も出来ない。必死にもがいても敵わない絶対的力量差。
ああ、本当になんて甘美なんだろうか。
「ル、ルドルフ?なんだか目付きが怪しいぞ?」
「何がおかしい?君の方から誘ってきたんだろう?『オレ』は今まで散々耐えてきた。君の一挙手一投足にどれだけ理性を削られてきたか。今こうして傍に寄ってはもう無理だ」
そうだ。少しぐらい味見したって大丈夫だ。何、いつかは存分にしゃぶり尽くすが、今の熟成具合を確認する位は構わないだろう。
「ちょ!?ルドルフ!?それ以上はマジでやべえって!」
「ダメだ正樹。テイオーに妹か弟がいた方がいいと思うだろ?」
「それ違うベクトル!というかそれもうツルマルツヨシがいるだろ!」
「やかましくよく回る口だな。ならこうしてしまおう」
私はピーチクパーチク喚く口を抑えようと自らの唇を差し出した。
「んぁ!?」
気が付くと、私は消灯された生徒会室の応接用ソファーに横になっていた。
「...ちくしょう」
あともう少しだけ見せてくれれば『オレ』と正樹の天皇賞・春が始まるところだってのに...普段は寝起きはさっぱりしないが、今回は特にハッキリと意識は覚醒してる分、余計タチが悪い。
「グガ〜...」
そして目の前では上衣を脱いで、1人用ソファーで座って不用心にも爆睡する正樹の姿。夢の続きをしたい所ではあるが興が削がれた上、あのシチュエーションの後では寝ている正樹を襲った所で満足出来ないと思う。
「そういえばこの服は...」
私の上にかけられた服に目を落とせば、それは正樹が普段着ている迷彩服で、確かに彼の匂いが染み付いていた。大方睡魔に負けた私をソファーに運んで掛け布団代わりに掛けてくれたのだろう。普段は素っ気ないくせに、そういう心遣いが私達を狂わせてくる。
「そうさ、これは君のせいだ」
ウマ娘は体温が高いので丁度いいし、人肌はリラックス効果がある。なので理論上はストレス発散にもってこいの筈なのだ。
というわけで私は呑気に爆睡してる悪い子を私が横になっていた長ソファーの方へ運び、添い寝する。
「ああ...これを玉座にしたい...」
多幸感に包まれながら、私は二度目の睡眠へと誘われた。
その後、エアグルーヴにソファーごとひっくり返されて叩き起こされるまでの間、私は正樹との新婚生活の夢を見た。左手の薬指には愛の証、そして私のお腹には愛の結晶がいた。なんと素晴らしき光景だろうか。
エアグルーヴ。今回だけは絶対許さんからな。併走で目にもの見せてやる。