転生したらなんかウマ娘に懐かれてる件について 作:和菓子甘味
まあ、試験的な話という事でよろしくお願いいたします。
「私の力で書類を書き直してみせましょうとも!!」
「あわわわわ...」
「何この地獄絵図」
どうも40連勤を迎えた樋野です。今現在どんな状況かと言うと、サクラバクシンオーが突撃してきてうっかりメイショウドトウと激突。ドトウが倒れてその際にバクシンオーを掴んだまま、東条トレーナーのトレーナー室にドアをぶち破って転倒。丁度ドアの前で用件を述べていた俺が押しつぶされ、持っていた書類が飛散。最終的にドトウが慌てて起き上がり、俺の書類を踏んで転倒して俺の上に尻餅をついて、無事俺が死にかけていた。そして暴走する委員長と慌てふためくドトウとドアに押し潰されてる俺が出来上がったってワケ。
「樋野君...」
「もうヤダこの職場...」
本当にどうしてこんなに酷い目に遭わねばならんのや...。
⏰
「このたわけ共がァ!!!!」
「脳が震えるッ!!!」
女帝の咆哮のおかげで、無事俺の鼓膜が病気休暇を取得した。因みに何故か俺はバクシンオーとドトウと共に正座をさせられている。あぁん?なんで?
「まず何度廊下を爆走するなと言えば解るんだバクシンオー!ドトウも普段から周囲に気をつけて冷静になれと言っているだろう!そして貴様はよくもやってくれたな!」
「先生、僕は何もしていないので理不尽だと思います」
「黙れたわけ!私はお前の先生では無いし、自衛官が理不尽ごときでぶー垂れるんじゃない!」
「さてはオメー俺の事奴隷だと思ってんな?」
「やかましい!貴様のせいでそこの2人も記憶を取り戻してるだろう!そのせいでまた私の仕事が増える羽目になるんだぞ!ただでさえ会長だけでも大変なのに!」
「それはシンプルにすまん」
そろそろあの暴走機関車ルドルフをどうにかせねばならんな...エアグルーヴの胃が超新星爆発してしまう。
「はぁ...本当になんでこんなことになってしまったんだ...」
「とりあえず私達は...」
「反省に決まってるだろ阿呆」
バクシンオーに大して随分冷たいエアグルーヴだが致し方無し。彼女は学級委員長でありながら問題児の1人に数えられる生徒だったりするのだ。いい子ではあるんだがな...。
「とりあえず俺は移籍に伴う申し送り申し受け業務をしたいんだが」
「ダメだ」
「なんで?理事長命令なのになんで?」
「なら私に誠意を見せてみろ」
なんで陸教みたいに自己犠牲の精神が問われてるんですかね?まあいいや、もうここまで来たらどうにでもなれの精神で玉砕じゃ。
「日中ご奉仕させて戴きます」
「ほう...」
「ちょわ!?」
「救いはないのですかぁ!?」
なんか周りがうるさいが知ったこっちゃない。
バクシンオーは「そんな簡単に牝馬にさらけ出したら襲われますよ!」とか何とか言ってるが、どうせエアグルーヴならやましい事は起きないし、大丈夫だという信頼を持っている。それに彼女の事だ、信頼を自ら無に返す様なことは無いはずだと確信を持っている。
「では、今週末はどうだ?」
「ちょっと待って...一応空いているが」
「では土曜の朝8時に寮に来てくれ」
「了解した」
こうして俺は業務に復帰出来る事になったのだが...バクシンオーとドトウは許されなかったのだった。
⏰
というわけで俺は今日エアグルーヴに指示された通り、寮の前で愛車のエクストレイルを止めて待っていた。時刻は0755。
まだ時間はあるので、近くの自販機でコーヒーを買って一服することにする。勿論喫煙所は無いので、車の中でコーヒーを飲むだけだ。
「おはよう正樹...ほう、中々いい車じゃないか」
「おはようさんエアグルーヴ。一応5年ローンなんだから傷つけないように頼むぞ」
「常識ぐらい持っているわ。たわけが」
俺の軽口にやや不機嫌なエアグルーヴだが、尻尾と耳は随分ご機嫌なご様子。それを言うと怒られそうなのであんまり言わないでおく。
「さて、今日は買い出しだったな?」
「ああそうだ。ショッピングモールまで頼む」
「了解しましたよっと」
俺はドライブにギアを変えてから車を発進させる。
...そういえば車で行くってことは荷物それなりになるって事なのでは?
「ちょ、重くない?」
「男ならそれぐらい頑張れ」
「いやしんど....」
案の定アホほど大量の荷物を持たされる私。買ってる物からして、恐らく生徒会の備品なんだろうけどさ...こういうのって普通配送して貰えないの?大体そういうものだと思うんだけど...。
「ちょっと休憩...」
「体力無さすぎるだろう...」
「最近事務仕事ばっかだったからかなぁ...」
そろそろ本格的に体力錬成再開しようかな...そこまで筋トレ好きじゃないけど...。
「全く...私はほかの店を確認しておくからそこで休んでいろ」
そう言い残してエアグルーヴは人混みの中に消えていった。
いやしかし休日だから人が多いねぇ...人酔いしそうだわ。
「あれ?樋野3曹!久しぶりですね!」
「んあ?おお!久しぶりだな
急に声をかけられたから誰かと思って振り向くと、そこには前いた部隊の後輩である
挨拶を返せば、須藤は相変わらずいい笑顔で後頭部を掻きながら近づいてきた。
「いやー樋野さんがいなくなってからダルい毎日ですよ。そろそろ退職の時かなぁと」
「3曹なったのに...ってのは野暮か。こんな安月給やってられねえよな」
「全くそうですよ...そういえば自分、今度実験団*1の支援に行くんですよ」
「そりゃ面倒なこって...あれ?機教連*2や1偵戦*3は?須藤とこが行く必要ないだろ?」
須藤は確か中部方面隊の3師団の所属だった筈だ。そういう支援なら通常は東部方面隊か中方でも10師団に行く筈...。
「なんでも今回の実験参加は、実質モルモットだから嫌だと...結局たらい回しにされて他方面隊のウチに回ってきやがったんですよ」
「イカれてんなぁ...それで一回こっちにか?」
「はい、上の人間同士の実施方法すり合わせですよ。それが終わってから富士に行って実験です」
「そうか...なら今日は羽目を外さないとな!」
そう言って俺は須藤に近くの自販機でジュースを奢ってやり、須藤もアホみたいに一気に飲み出す。久しぶりの楽しい時間だったが、遂にエアグルーヴが来て解散になってしまった。
「須藤、30分位拘束しちまったが時間大丈夫か?」
「ああ、大丈夫です。今日は週外なのでブラブラしますし、ホテル泊まるんで」
「そうか、頑張れよ若手3曹」
「樋野班長もまだ若手でしょ!それでは失礼します」
一礼して歩いていく須藤を見送り、俺はエアグルーヴと共に車へと歩みを進める。
「貴様にも友人がいたんだな」
「相変わらず言葉のナイフが厳しい」
因みにこの後エアグルーヴに高いディナーを奢った後、俺の寮の部屋に入り込まれそうになったが、いつもルドルフ等にやっているようにミノルをチラつかせて追い返したので割愛させて頂く。
俺の信頼は塵に還ったのだ。
⏰
そんなよくある日常が過ぎてから1週間後。俺は南坂から呼び出しを受けていた。
「どうした南坂。お前が喫煙所に呼び出すなんて珍しい」
「...実は特戦の同期から連絡がありまして」
重そうに口を開く南坂を見て、俺はタバコに火をつける。そしてひと吸い目を堪能してから疑問を投げつける。
「...ふう。で?どうした?俺にもお前にも関係ない話...」
「須藤蒼司3等陸曹、
「は?たった2名でどうやって...」
6両も車両があるなら、例え装輪MOSがあっても移動なんざ2名で易々と行えるわけがねえ。ましてや須藤のヤツだ。重大な規律違反なんかする訳がねえ。
「分かりません...ですが、特戦を使っている事から、この事を陸自は隠蔽する気です。恐らく将官が関わってるとすれば樋野3曹にも影響があるかと」
「わかった。この事はあんまり触らねえ方がいいな...俺の方からは探りを入れずに黙っておく。お前もあんまり特戦同期と連絡取んなよ。この事がバレたら俺ら消されるかもな」
「何故...」
「俺の予想だが、今回の件は
須藤...お前ならどんな状況でも乗り越えられる筈だ。頼むから仏さんになってってのは勘弁してくれよ...?
その頃、こことは違う荒野の世界で件の自衛官は叫び声を上げていた。
「こんのぉ!絶対仕留める!」
「頼むキリエ!いい加減諦めてくれ!このままじゃ俺達マジでレオナに殺されるか、バラバラになっちまうって!」
「よし!!」
「もうヤダこの戦闘狂!!!!!ぜってえ帰ったらテッパチで殴ってやるからな!!!!」
改造によって後部銃座が増設されたキ43一式戦闘機「隼」に乗り込んでいる須藤。彼は74式車載機関銃にしがみつき、己の相方であり、敵を前に狂気な笑みを浮かべる戦闘機乗りのキリエに対して、怨嗟の声を上げながら夜の空で半べそをかいていた。
どうやらこの自衛官もまた、不遇な目に逢う運命の様である。
今回登場した須藤3曹は今練ってる別作品に登場予定です。