転生したらなんかウマ娘に懐かれてる件について 作:和菓子甘味
日本の東京都千代田区霞が関三丁目2番2号。
おそらくこの住所を書いて所在する建物が分かる人間など一般日本人では数少ないであろう。
そこに所在する建物は『文部科学省』と呼ばれ、日本の行政機関のひとつであり、教育、学術、スポーツ、文化および科学技術の振興、宗教事務等を所管する所であり、『文科省』の名で広く知れ渡っている。
そんな日本の教育機関のトップとも言い換えられるような場所に3人の男性が集結していた。
3人ともこの場にはおおよそ相応しくない紺色のスーツである陸上自衛隊の16式制服に身を包み、文科省を見上げていた。
「ここが文科省か...こんなとこに来るとはね」
「幕僚長。そろそろお時間です」
「うむ。早速行くとしよう」
この3名はというとそれぞれ陸上自衛隊のトップ『陸上幕僚長』、静岡県を除く東海・北陸・近畿・中四国地区の2府19県を管轄する中部方面隊のトップ『中部方面総監』、関東地方・甲信越地方および静岡県を管轄するトップ『東部方面総監』という自衛隊の中でも最上級クラスの将官であった。
3人は受付を済ませると、受付員から案内を受けて会議室へと通される。
そこには既に1人の男性がおり、こちらを見て裏のあるような笑みを浮かべていた。
七三分けに四角い眼鏡といういかにも役員風な男こそが、3人が合わなければならない文科省の『公益施設警護派遣法関連担当官』であった。
「本日は御足労頂き誠にありがとうございます」
「いえいえ。早速ではありますが、本日の調整についてですが」
「はい、我々の管轄下であるトレセン学園に陸上自衛官を派遣して頂けるという話ですね」
「はい、その件です。こちらでも幕僚会議や関係各所と会議を行ったのですが...どうにも理解できないのがこの『派遣員はトレーナー業を兼務出来る資格を保有する隊員である』という点と『トレーナー業は原則副業ではなく陸上自衛隊の業務の一環とする』という点についてでして...ご説明できますか?」
「簡単なことです...公務員は副業が出来ません。然しながら...我々や教育委員会としてもトレーナーを増員することが出来ないのです。そこで派遣される隊員の中で、トレーナー資格を持つ者を出向という形で支援して頂きたいのです」
「ですがそうなった場合の隊員の確保及び当該隊員の業務量は膨大であり、そういった面では...」
「おや?陸上自衛隊は365日24時間勤務であると伺っていますが?」
「いえ、あくまでそれは国防の為に出動する事を前提としていまして...」
「ですがこの公益警派法も国防の一環では?既に両大臣の合意はされているはずです。それに...名家からとやかく言われたくはないでしょう?」
それを言われた3人は顔を顰める。事実、ウマ娘の名家が関わるということは、この日本経済において重大な意味を示していた。
戦車やミサイルなどの半導体や基盤などの精密機器から装甲板、半長靴や迷彩服の素材に至るまで細々した物は各名家下の中小企業が作成しているというのが現状だ。
その他にも多くの食材やレーションの製造納入などの外部委託にも関係がある。
もし名家の機嫌を損ねようものなら、陸上自衛隊のみならず、陸海空自衛隊の補給基盤はガタガタになる事は間違いなかった。
「陸海空自衛隊の戦力とたった一人の自衛官。取るべきはどちらか...防大を主席で出られた貴方ならわかるはずですよね?」
幕僚長は歯が割れる勢いで食いしばった。可能であれば目の前で飄々としている役員に一発拳を入れたかったが、そうは立場がさせてくれなかった。
既に法は整備され、両大臣の合意がなされ、公益施設警護派遣隊の編成完結も迫っている。
どう足掻いても覆すことは不可能であり、部隊存続の為に1人の自衛官を犠牲にするしか無かった。
「分かりました...こちらの方で当該隊員を捜索してみます」
「よろしくお願いします」
⏰
文科省から出ていく3人を自分の部屋から見下ろす担当官はポケットから携帯を取り出して電話をかけた。
「はい、私です。やはり彼らも公務員。名家の話題を出せばすぐに頷きましたよ。おそらく約15万人の中で該当者は数名。そのうち彼が選ばれる可能性は高いでしょう。...ええ勿論。桜田門とサッチョーには既に。『あの約束』の方はお願いしますよ?」
電話をしながら担当官は備え付けのテレビを付けた。
「どうやらそちらも順調のようですね」
『続いてのニュースです。全国的に日本での銃の違法所持が進んでおり、特に10代の犯人が次々と検挙されています。警察は暴力団が関与しているとして捜査を続け───』
映し出されたニュースには『進む若者の違法銃所持』との見出しが出され、内容を読み上げていた。
『根底にはイジメがあるんですよ。結局国も警察も学校も何もしない。だから犯罪に走るんですよ』
そう語る専門家に大して担当官は吹き出した。
「全く学のないやつは分かっちゃいない。そんな物じゃない。漠然とある殺意が表に出ただけ、イジメはただの要因の一つ。結局は国が撒いて自分の首を絞めているだけなのに」
男はそう言い捨てて、机の上のコーヒーを飲んで再び窓に顔を向ける。
その窓の先には何も知らない東京の街があるだけだった。
また入校するので投稿遅れます
お許しください