転生したらなんかウマ娘に懐かれてる件について 作:和菓子甘味
短いですがご了承頂ければ幸いです。
「これでよしっと...グルーヴそっちはどうだい?」
「こっちも今しがた完成したところだ」
時刻は21時過ぎ、私ヒシアマゾンはエアグルーヴと共に今まで弁当の作成に勤しんでいたところだった。勿論自分の弁当ではなく、私たちの元サブトレーナーである正樹の為の弁当だ。
「流石に多すぎたか...?」
「自衛官なんだから大丈夫じゃないかい?」
グルーヴは心配しているが、目の前には一般的なタッパー2個で構成された弁当が2セット出来上がっていた。確かに少々多いかもしれないが、最近食事をカロリーメイトごときで済ませるバカ正にはこれぐらいが丁度いいだろう。
「それに残業続きでゴールドシップも言う事聞かないんだろ?そのせいで喫煙量が増えてるそうじゃないか」
「あのバカには『ワタシ』と『ルドルフ』から再三注意をしてるんだがな...効果は無い。業務に関しては最悪『ルドルフ』の方から防衛省に圧をかけて貰うという手もあるが...」
「流石に家を使うのはマズいんじゃないかい?マスコミに漏れたら大事だし、正樹だって良くは思わないだろうね」
「そう思って『ワタシ』も『彼』を止めているのが現状だ」
全くルドルフの暴走にも困ったものだ。前世を全面に出す前は有能な生徒会長だったが、今では自分好みの姫を手に入れる事に没頭する暴君だ。
少し前に前世組の噂で痛い目を見たという話を聞いたが、懲りているのかいないのか...。
「まあ、私たちが面倒かけてちゃ世話ないね?グルーヴ」
「ヴッ...そ、それは....」
「あんただって面倒起こした身なんだから反省しな」
「ぐっ...!」
そう、このエアグルーヴでさえ前に正樹の部屋に押し入ろうとして一悶着あったのだ。
あの正樹が「流石にエアは信頼していたのに...」とアタシに零していた。それを彼女に伝えた所、珍しく3日間寝込んだそうだ。
「ま、ワタシ達が正にしてやれるのは現状これぐらいだろうね。過剰に入り込めば拒絶もされるさ」
「だ、だがやはり正樹は放ってはおけんだろ!あんな危なっかしい勤務体制で...」
「だからこそだよ。いいかい?いくら前世で経産婦だとしても今世じゃただの女学生なんだよ?対して正樹はもう三十路のいい大人だ。それに自衛隊だって人員が足りてないのに仕事が増える一方だそうじゃないか。本末転倒だとは思うけど仕方ないさ」
これが今の状況なのだから仕方ない。あくまで私たちは学生。正は社会人。これでも前世で何頭もこさえた身であるからこそ母親目線になるが、そこを忘れてはいけない。あくまで私たちが社会的常識から出来る範囲で彼をサポートするのが1番だろう。
「ま、明日の朝に正に弁当渡すか食わせればいいさ。ちょっとずつ信頼を回復していきな」
「事実なのに余裕そうに見える...」
なーんであんたは私に対抗意識燃やしてるんだ....。
翌日の朝早く。私達は学園の一室に設けられた自衛隊用事務所を訪れていた。磨りガラス越しにパソコンの光が見える所からおそらく正樹は起きているだろう。
「全く、こんな朝早くからやることもないだろうに...行くよグルーヴ」
「ああ」
私達はノックしてから部屋に入る。
「正!今日もどうせちゃんと飯食ってないんだろ?アタシとグルーヴが弁当を....」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛...団長のAMSR最高なんだわ...この晩酌配信の雪民の大喜利いいな...流石失言王ス〇ル」
「は?」
目の前にはパソコンのタブをいくつも開いて動画を視聴する正がいた。
確かあれは...Vtuberと言うやつだったか?まあそれはいい。
せっかくこっちが心配して飯を作ってきてやったのにこれは少々...いや、かなり許せない。
「正?」
「んぇ?....アッ」
肩に手を置いて気づかせてやる。振り向いた正はアタシ達を見ると同時に、普段だと面白いぐらい顔面蒼白になるが、今は笑えない。一応アタシもグルーヴも笑顔ではあるんだけどね。
「言いたいことは?」
「スゥーーーー逃げるんだよォ!」
「逃がすかたわけ!」
「アベシ!」
アタシの手を振りほどいて逃げ出したが、すぐさまグルーヴがラリアットをかまして地面に叩きつけられた。ウマ娘相手に逃げられるわけが無いだろ?
「さあ、教えてもらおうか?」
「ヒェッ」
朝からバタバタしているが、尋問タイムとシャレこもうじゃないか。
「ほーん...それで癒しを求めてVtuberをねぇ」
「この大たわけが...!」
話を聞いてみればなんでも数年前からVtuberの配信を見るようになり、そこから同期に沼に沈められて今では癒しを求めて配信を見ているそうだ。
まあ、仕事量や環境上仕方ないのは重々承知の上だが、アタシ達に弁当作って置いてもらって朝一から配信視聴は解せない。
「大体そんな画面だけの女より目の前に美少女が大量にいるだろうが...その気になればその先だって堪能できるだろ!」
「とんでもねえこと言いやがるなこの副会長」
「悪いけどこればっかりは正に同意する」
「なぜ!?」
グルーヴには悪いけど流石にそれは...言い過ぎでは無いが、世間体がね...。
「別にいいだろ!俺が35Pで星読みですこん部でスバ友で雪民で団員で座員で助手でも!」
「多い多い!え?どんだけかけ持ちしてるのさ?」
「ちゃんとメンバーシップ入ってます」
「そういうことじゃないだろたわけ!」
思いのほか多くの人を追いかけていた事にびっくりした。ウチの生徒でもアイドルを追いかける子は何人かいるけど、流石に何人も追いかけているのは驚いた。
...ふむ。試しに見てみるか。
「大体だな─」
「いやいや─」
ほうほう...中々面白いじゃないか。ワタシも何度かバラエティー番組に出た事あるけど、この子達の番組?はかなりしっかりしたものだし、各人のスキルも中々だ。
「ほう、中々いいじゃないか」
「ほら見ろ!ヒシアマだって...は?」
「え?ヒシアマなんて?」
なんだい。いいと思って口にしたら2人して鳩が豆鉄砲食らった顔して。
「いや、見てみれば中々面白いと思ってね歌もダンスもトーク力も高い。なんならアタシ達の良い参考にできるとも思うね」
「な...」
「ヒシアマァ...」
なんかグルーヴは「嘘だろ?」って顔して、正は嬉しそうな顔をしていた。なんでこうも対局的な顔してるんだい...。
「まあ、三十路でアイドル追いかけなんてして」
「ヴッ!」
「教え子に飯を作らせ」
「ガッ!」
「ましてや自分は業務の合間に癒されるためにアイドルに寄っていた」
「ウボァ!」
「けどまあいい事を知れたし、チャラにはしてあげないこともないよ」
「ソ、ソウデスカ...」
いい感じに言葉の槍が正に刺さった所で1つ提案をしようか。
「ただ完済とはいかないね。そうだね...今日は休みだし、アタシ2人に癒されてくれるなら許してあげなくはないよ?」
「は?え?いやそれは...」
「じゃあこの事をフジや会長に...」
「姐さんそれだけはお許しを!」
見事なまでの土下座に正直ちょっと引いた。フジや会長はどんな事を正にしてるんだい...。
「じゃあ、早速やってもらおうかな?」
それから1日正樹は私とグルーヴの2人から弁当を食べさせたり膝枕やマッサージを受けて癒されることになった。
終始ドギマギしてる正は新鮮で面白かった。ついでにエアグルーヴもドギマギしていて2人揃ってウブ過ぎないかとは心配したが、これは母心として言わないことにした。