転生したらなんかウマ娘に懐かれてる件について   作:和菓子甘味

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次回から第2章だと言ったな...あれは嘘だ。

すみません、ある方から質問を頂いてそこからアイデアが膨らんで書いちゃいました。
お許しください!


EXTRA 6R「君を求めて」

「そろそろ...」

「だな...これ以上は」

 

目の前で話す人達が何やら神妙な顔をしている。

彼らの話す内容は分からないけど、恐らく私の事なのだろう...。

 

「ごめんな...」

 

そう言っていつもお世話をしてくれる人が撫でてくれる。

ああ...そうなのか。私はもう用済みということか。

いや、仕方ないことだろう。

私は期待されすぎたのだ。この体を流れる血に。

皇帝の呪い(シンボリルドルフの血)』に。

 

 

 

それからというもの、私はいつどこに行くのかさえ分からないままだった。

ここで余生を過ごすことが出来なくても...せめて安らかにあの世に行かせてくれないだろうか。

そんな事を考える日々の中、ある老人がやってきた。

近くには幼い子供がいる。

 

「正樹。この馬がそうらしいがどうする?」

「...お馬さんかっこいい!」

「そうかそうか...じゃあこの子にするとするか」

 

何やら2人が話して私の近くに子供がやってきた。

今更なぜ子供が来たかは私の知るところでは無いが、この子供は目を輝かせながらやってきた。

...そんな目を向けられても困る。それなら兄貴の方がよっぽど向けられるべき存在だろう。

その日は老人が何やら別の老人と話し合った後子供を連れて帰って行った。

何やら不思議な時間であったが、私は気にもとめなかった。

 

 

 

 

 

「さあ、今日からここが君の家だぞ」

 

どういう訳か私は以前やってきた老人に連れられて新しい住処にやってきていた。どうやらここが今日から私の家になるらしい。

 

「父さんが馬を買うなんて聞いてないよ!」

「別に馬の1頭や2頭ぐらいいいじゃろうが」

「そういうことじゃないよ!世話だよ世話!」

「全く...それならばあさんと正樹も手伝ってくれるから問題ないだろ」

「そういうことじゃなくて...」

 

何やら言い合いを始めたが勘弁して欲しい...。

 

「おやこげんかは犬だけじゃなくて馬も食べないよね。お馬さん行こう?」

 

どうやら子供も居たくない様子。私の綱を引っ張って柵の中に入り、私の新居の中に連れていかれる。

中は既に藁が敷きつめられており、随分と涼しい部屋であった。

 

「お馬さんの部屋だよ〜元気に住んでね!」

 

...今更ながらなんだかこの子供に申し訳なくなってきた。そして外で言い合いをしている老人たちがなんともみっともなく見えるが大丈夫なのだろうか?

 

 

 

 

 

それからというものの、私はのんびりと過ごすことが出来た。正樹君も会う度に成長しているのがよく分かる。子供の成長は早いとは昔聞いたことがあるが、本当にその通りだ。

 

「よいしょっと...今日も頼むぞアイルー」

 

全く...私もかなりの老体なのだがな。だがそう言ってても仕方ないし、私の老後の楽しみの一つでもあるので正樹を乗せてこの辺りの集落を歩く。

目的地は少し離れた海岸で、そこで少しのんびりしてから帰るのがルーティンだ。いつも通り見慣れた道路を歩いていると、正樹が話しかけてきた。

 

「なあアイルー。俺さ、自衛隊に入ろうと思うんだ。だから今後はあんまり会えなくなるかもしれないけど...元気にしててくれよ?」

 

自衛隊...少し前に私の部屋で一緒に寛いでいた正樹が見ていた紙に書いてあったまだら模様の服を着た人の事か?良くは分からないが、正樹の言葉から遠くに行くか、危険がある事なのだろうか?どちらにせよ、正樹には元気にしていて欲しい。出来れば危ない事はやめて欲しいが、彼の決めた事なら口出しはすまい。

そう思って私も彼を送り出すことにした。

 

 

 

 

 

それから数年後はあまり正樹は帰ってこなくなった。しかしながら帰ってくる度に何やらごつくなって帰ってくる気がする。いや、あからさまにミホノブルボンほどムキムキという訳では無いのだが、明らかに鍛えている者のそれなのだ。時折暗い表情を見せてため息をついていたが、今まで通り私の背に跨ってくれるし、家族として接してくれる正樹が未だに元気そうでなによりだった。

 

そして数年後、正樹はこの世を去った。

 

聞いた時は信じられなかった。北海道という北の地で他の競走馬に会いに行っていた時に事故に巻き込まれて死んだという。

 

何故正樹が死ななければならないのか...死ぬなら私のような老いたものでは無いのか...?何故未来ある若者が居なくならなければならないのか...。

 

家族の意向で私が亡くなるまでは傍に立てた新しい墓に正樹の遺骨を入れるということになった。

毎朝起きては柵沿いに出来た正樹の墓へと向かう。

あれだけ元気だった私の家族は物言わぬ骨となり、この冷たい石の中にいる。

それだけでどうしても虚しい気持ちが私を引きずり込む。

人間でない私ができるのは、せめて正樹が寂しくないよう、こうやって会いに来ることだけだ。せめてこれだけは毎日してやりたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん...随分懐かしい夢を見たなぁ...」

 

まだ寝てたいが、これ以上だらけた生活をしてると天国に行った時に正樹に何言われるか分かったもんじゃないので、さっさと起きる。最も、この世界の天国に正樹がいるとは限らないがな。

 

「えーっと、今日は休みだからバイトと自主練と...あ、明日あのプラモの発売日じゃん!あ、トレセンの試験勉強もしねえと...」

 

休日とはいえなんとも面倒な事ばかりだがとりあえずバイトの準備をして家を出ようとする。その時ふとテレビから聞こえた言葉が耳に入った。

 

『今日はあのシンボリルドルフがレースに参加するということもあり、レース場は大賑わいです』

「...ケッ!またかよ皇帝様」

 

これ以上聞きたくないので電源を切ってリモコンをテーブルに叩きつける。

 

「こっちの世界まで『私』に関わってくんなよ...『クソ親父』が」

 

朝イチから気分が悪いが、バイトの時間が迫っているため、さっさと家を出て鍵を閉める。

 

「...さて、気分を変えて今日も頑張るか!」

 

そうして俺はバイト先へと走り出した。

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