転生したらなんかウマ娘に懐かれてる件について   作:和菓子甘味

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ごめんなさい...私が時系列ミスって次回から第2章開幕とさせていただきます。
スペが転入生なの忘れてた...。


第21R「進むべき道」

「やっと1年が経ったかぁ...」

 

春の風が心地よいこの時期。

入学式も終わり新入生たちがやってきたという事を、目の前のオリエンテーションに参加するウマ娘達を見て感じた。

本当に長かった...クリスマスとかバレンタインデーとかホワイトデーとか特に。

だって業務三昧って思わんやん?冬期休暇の間も自衛隊とトレーナーの業務でほぼ毎日トレセンにいたし...。

おかげでルドルフどころかシリウスにすら心配されたんだけど。あの時のシリウス優しかったなぁ...『なんだ...アンタも大変だな....特別に膝枕してやるよ』なんて言ってくれてさ。

久々に快眠を得た気がする...。

ヒシアマゾンやドトウも差し入れとか膝枕してくれたなぁ...。なんで俺泣いてるんだろ。

 

「おいおいきめぇぞ正樹」

「と、言うわけでゴルシ!今年こそ新入生獲得に向けて頑張るぞ!」

「急にはりきんな!...それはいいんだけどよ正樹。去年も無理だったのに新入生なんて来んのか?」

 

ゴルシに突っ込まれるのはやや不満ではあるが、確かにそれはどうにかしなければならない。

だがこの天才樋野さんはちゃーんと考えてあるのだ。

 

「適当にマックとかテイオーとかその辺をとっ捕まえれば俺のとこにひょいひょい来そうな気がする」

「お前某誠並にサイテーだな」

「失礼な!こう見えて前世知ってる奴から好かれてるのを理解した上で有効活用してるんだ!」

「だからそれ某伊藤並のクズ男のやり口だよな」

「うるせー!俺だって良心が痛むけど他にいい方法あるのかよ!」

「おうさ!この看板を立てる!」

 

そう言ってゴルシが意気揚々と出したのは例のダートに埋めるぞ看板...マジかよ。

 

「お前正気か?これで来る訳ないだろ...」

「んな事わかんねーだろ!」

「どんな物好きだよ...」

 

確かアニメ通りならスペすらドン引きしてたぞ...。

 

「まあ、別にゴルシのやりたい様にやんな...というか許可は?」

「アタシに許可なんていらねぇ!」

「因みに看板は?」

「もう設置したぞ?」

「やってくれたな貴様」

 

まあそうだろうさ、俺が頭を抱えることなんかこの芦毛の暴走機関車は考えてないんだろうな...それ見ろすごい形相でエアグルーヴが走ってきたぞ。

 

「ゴールドシップ貴様ァァァ!」

「やべ!んじゃあな正!」

「逃がすかぁ!」

「はぁ...俺はいつになったら休めるんだよ...」

 

そんな俺の言葉に答える者はおらず、春のそよ風が桜の花びらと共に吹き抜けた。

 

 

 

 

数日が経過したチームスピカの部室は既に負のオーラで押し潰されそうになっていた。

震源地は目の前の2人...『名優』メジロマックイーンと『不屈の帝王』トウカイテイオーだ。

 

「あ、あの...」

「なんでしょうか正樹?」

「イェ、ナンデモアリマセン」

「なっさけねーなおい」

「黙れシップ」

「スミマセンオジイサマ」

 

あのシップですらこの有様である。

流石は元G1馬、面構えが違う。

 

「それで?結局のところ、正樹はボクのトレーナーになってくれるんだよね?」

「何を言ってますの?正樹は私のトレーナーになるんですわよ?」

「はぁぁぁ?正樹はボクのトレーナーになるんだよ!」

「これは決定事項ですわ」

「俺の意思は....」

「ありませんわ」「ないよ!」

「ないよ!」

「ここは日本じゃなくて異世界だった?」

 

なんか目の前でキャットファイトならぬホースファイトが始まった上に当然のごとく俺の人権が無視された。

もはや様式美なので2人に言う気はサラサラないが、そろそろ日本国憲法下になってくれませんかねトレセン学園。

で、ゴルシは、というと早々に部屋からいなくなってる。これもいつも通りです。

目の前の喧嘩もかなりヒートアップして、凡そ地上波放送は不可能な規制音になる単語(放送禁止用語)が飛び交っている。

仮に手が出ることになっても俺が間に入れば封印されし何かみたいにバラバラにされるので俺もお暇させてもらう。

 

「本当になんであいつらは喧嘩しかしないんだかな...」

 

テイオーとマックイーンに限った話では無いが、ウマ娘達の暴走具合はどうにかならないものかと考えるが、どう考えても俺に被害が及ぶか強制などできるわけが無いので考える事を辞める。

 

「あ、正樹〜!」

「ん?チケットか」

 

時間もあるので自販機に行こうとすると向こう側からチケットがやってきた。いつも通り大声なので存在感は相変わらずだ。

 

「どうしたんだ、今日はどこも朝練ないって聞いてるけど」

「忘れたの?今日は一回目の選抜レースでしょ!」

「...そういえばそうだったな」

「もー、しっかりしてよね!まだボケるには早いよ?」

「ははは!チケ爺に言われちゃ世話ねえな」

「バカにしてるだろー!」

 

まあ、今日は珍しく仕事もあまりないのでブラブラするついでに選抜レースでも見に行くか。

 

「あ、自販機寄るけどチケットはなんか飲むか?」

「正樹は?」

「俺はブラックコーヒーかな」

「じゃあそれ!」

「え」

 

本当に大丈夫か?絶対飲めないぞ...。

 

 

 

 

 

「苦いィ...」

「言わんっこっちゃない...」

 

トラックに着いたが、横でチケットはヒイヒイ言いながら舌を出している。そりゃ苦いの飲めばそうなるだろうな。まあ、しっかり自分の物は飲んでもらうので帰ってガムシロでも入れて飲んでもらおう。

さて、第1レースは...サイレンススズカがいるじゃん。こりゃ他のウマ娘は勝てないんじゃねえかな...。

 

「正樹は気になる子いたの?」

「あの3番の子かな。サイレンススズカっていう」

「えぇ〜なんだか細くない?」

「そうか、チケットとは年代が違うか...」

「???」

「まあ、百聞は一見にしかずってな。ほら始まったぞ」

 

目の前のゲートが開くと同時に一斉にウマ娘が駆け出した。当然3番のサイレンススズカが先頭で逃げる。それに続いて他のウマ娘達が状況を見極めながらついて行く。

 

「そんな相手の出方探っても仕方ないのにな」

「どういうことさ」

「まー見てな。俺も生では見たことない走りだ」

 

あの俊足の名馬の走りを見られると思うと年甲斐もなくワクワクしてしまう。あのコントレイルの無敗の三冠達成の時よりもワクワクしているかもしれない。

走行しているうちに最後のコーナーを超えて直線に入る。他のウマ娘も仕掛けに入るが、ここからがサイレンススズカの真骨頂だ。

 

「更に速度を上げた!?」

「並外れた速度...それがサイレンススズカ最大の武器。そして...」

 

約6バ身離してのゴール。ここから彼女の輝かしい道は始まるのだろう。だが...。

 

「彼女を死に導く死神でもある」

「ま、正樹...?それって...」

「さて、目ぼしい子が居ないか近くに行って見てみようかな」

「ちょっと正樹!」

 

先の事を知っていたとしても、歴史に手を出すことは到底許される行為ではない。

 

 

 

 

 

「おーおー...流石1着。滅茶苦茶スカウトされてんな〜」

「大御所ばっかだね〜東条トレーナーに奈瀬トレーナー...強いとこが行ってるね〜」

「まあ、六平のおやっさんがいつも通り座って見てるのは逆に安心感あるわな」

 

そんな魑魅魍魎の中を掻き分けても、弾き出されるのは目に見えてるので他の娘を見てみるかな。

 

「ん?あの娘は...」

 

何やら息を荒くしながらターフを握りしめてる娘が1人。随分とまあ闘争心の高い子がいたもんだ。

 

「ゼッケンは7番...」

「最後の方まで3番の子について行った子だね。最後の方は失速気味だったけど」

「スタミナ切れで落ちたんじゃないか?ろっぺいのおやっさん、資料忘れたんで見せてくれません?」

「むさかだ!全く最近なったばっかのひよっこがよ」

 

悪態を吐きながらも見せてくれるあたりやっぱり面倒見はいい人である。

さてさて名前は...?

 

「は?え?...チケット、この名前読んでくれんか?俺の目がおかしいかもしれん」

「別に老眼ってわけじゃないでしょ...?なになに...アイルトンシンボリ...え?会長やシリウス先輩の親戚?」

「ちょっとこっち来て耳貸せ」

 

六平のおやっさんに聞かれたら不味いので少し離れた場所でチケットに耳打ちする。

 

「あれは前世でルドルフの産駒...子供だったウマ娘だ」

「...ぇぇええええええ!!」

「五月蝿いバカ!...やっぱこっちに来てたか」

「知り合いだったの?」

「ウチの家族だ」

「はい?」

「だから、引退後に路頭に迷いかけてた時にウチのじいちゃんが引き取って飼ってたんだよ。何回か俺も鞍上になったことがある」

「すごい聞き捨てならないこと聞いたんだけど」

 

チケットが嫉妬心丸出しの目でこっちを見てくるがそんな場合じゃない。少なくとも自衛隊で何人も潰れてきた人間を見てきたから分かる。今のアイルーは間違いなく自分を追い込んでる。

 

「今やってる場合かよ!とりあえずアイルーに話しかけないと」

「ちょっと正樹!」

 

チケットが呼ぶがまずはアイルーが先だ。未だ四つん這いで俯いてるアイルーに駆け寄って他人風に声をかける。

 

「君、随分頑張ってたね」

「...全然だ。まだこの程度じゃ...」

「随分と闘争心が高いようだね。誰か目標がいるのかい?」

「どうせ笑うだろうさ。俺の親と一緒だろ」

 

あらあら随分と荒んでるご様子。てかシンボリ家なんかやばいことなってない?嫌だぞ名家の面倒ごとは。

 

「君の親御さんを知らないけど、その目標を聞いてないから教えて貰えないとなんとも言えないな。それとも公言するのが恥ずかしい目標なのかい?」

 

試しにちょっと発破をかけてみる。これで言うのであれば本当に心の底から湧き上がることであろう。

 

「....皇帝だ。俺の目標はあの皇帝を引きずり落とすことだ」

「やっぱ血は争えないってことだな。君の兄弟も同じこと言ってたぞ」

「兄弟?俺は一人っ子...っ!」

「まあ、一旦落ち着いて椅子にでも座りな」

「ま、正樹...?」

「そうだよ正樹さんだよ。...久しぶりだなアイルー」

「あ...あぁ...ま、ま...」

「おいおい...俺はお前のママじゃないよ」

「正樹ぃ....」

 

泣き出してしまったよ...なんか周りのトレーナーからの目が痛いが、近くのスタンドの椅子に座らせて話を聞いてやろう。そしてそこでヒソヒソ話してる角宮トレーナー含む一団。俺の心は硝子だぞ。ついでにさっきからチケットが耳絞って歯を剥き出しで威嚇してるぞ。

とりあえず着席して宥めてやる。宥め終わる頃には3レース目が終わっていた。

 

「で?色々話したいことがあるだろうけど、なんでルドルフをそんなに敵視してるんだ?前世じゃ別にそこまで確執もないだろ?」

「...当然だけど俺もシンボリのウマ娘だ。だからルドルフと比較される」

 

それは...そうか。名家の考えることはよくわからんが分家本家云々かんぬんあるんだろう。

 

「その度に言われた...『お前はシンボリ家の恥』だと...そんなクソ親共が嫌で...前世だけじゃなくて今世まであの皇帝に重ねられるのが嫌で...俺は1人でここまで来た」

 

ごめん、

想像の1万倍やべえ家庭環境だった。シンボリ家ってどこまでイカれてんだ?文〇砲撃たれたら一撃KOじゃね?...いや、名家パワーで握りつぶせるのか。

 

「だから...俺は自分の力であの皇帝を打ち負かしてやりたいんだ」

「なんか...シリウスみたいだな」

「シリウス...?確か前世でも今世でも従兄弟だった...」

「なんかあいつもルドルフ打ち負かしたいんだとさ。なんか気に入らないことでもあるんじゃないか?」

あえてシリウスの意図は教えない。

 

教える意味が無いし、別に教えた所で差異はないだろう。

 

「まあ、元気があるならそれで何より。とりあえずあんまり追い込みすぎるなよ。家族が潰れていくとこなんて見たくないからな」

「家族...正樹はまだ『私』を家族として...」

「当然だろ。あれだけの思い出があれば家族だ。それを無下にするほど俺も人間捨ててねえよ。とりあえず肩の力抜いてトレーナー探してからルドルフを倒す方法考えな。今のままじゃ難しいぞ」

「...ありがとな、正樹」

「いいってことさ。俺はそろそろ帰るからしっかりストレッチしとけよ」

「ああ、そうする」

 

アイルーと話を終えて、俺はトラックを後にする。随分と不貞腐れたチケットのご機嫌を取るのに手間取ったが、後日食べ歩きをすることで話をつけることにしたのだが...。

 

 

 

 

 

「正樹...これはどういうことなのさ?」

「そうカッカすんなよ『兄貴』」

「まさか『僕』の兄弟とはね...それもそうか『父さん』の成績を考えれば当然だよね」

「『兄貴』と『クソ親父』...両方引きずり落とすってのも悪くはねえかもな」

「あれ?アイルーってこんな好戦的だっけ?」

「どうでもいいからこの空気どうにかしてくれよ正樹!じいちゃんもなんか不機嫌だし、アタシの憩いの場がなくなっちまったじゃねえか!」

 

目の前で兄弟喧嘩された上に、一生不機嫌なマックイーンが座って紅茶を飲んでるせいで、ゴルシからはなんか文句を言われているが一言述べさせてもらおう。

 

「とりあえずアイルーは西崎トレーナーに言って欲しいし、テイオーとマックイーンはそもそも昨日の選抜レースドタキャンで出てないだろ?」

『え?』

 

なんとも間抜けな3人の声が部室に響き渡った。

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