転生したらなんかウマ娘に懐かれてる件について 作:和菓子甘味
アニメの流れの中でちょくちょくこういった話を挟んで行ければなと思います。
「正樹、これはどういう事だ?」
朝からパジェロのワックスがけをしているところに、耳を伏せて明らかに激おこなルドルフにしょっぴかれた俺は、生徒会室で絶賛説教中であった。
理由はまあ...火を見るより明らかなんだが、ルドルフが持ってる新聞に書いてある通り、スズカとアイルーを除くスピカ面々のウイニングライブでの醜態である。せっかく皆勝利を掴んでいるというのに、スペ、ウオッカ、ダスカは盛大に棒立ちや転んだりしていて、ゴルシに至ってはブレイクダンスを披露している。コイツはどこ目指してるんだ?
「どうと言われても...こうなってるとしか」
「それは指導者として如何なものなのだ!?大体生徒会長とはいえ、一生徒に指導される三十路のサブトレーナーかつ三等陸曹たる陸上自衛官というのも醜態だろう!」
「ウボォ!!」
コイツ...痛い所を突いてきやがる...。
「それに関しては俺も陸幕*1とか総隊*2とか隊長からお小言を頂いているので改善しようと西崎トレーナーには意見具申はしたんだ」
「結果は?」
「俺も西崎トレーナーも歌って踊れないので外部講師募集中です」
「たわけ!」
「エアグルーヴじゃないんだから...」
叫んだルドルフは呆れ果てた様子で目元に手を置いて溜息をつく。
若いうちからそんな事してると老けるぞ。
「今失礼な事を考えなかったか?」
「滅相もございません。因みに講師としてテイオーには調整してる。西崎トレーナー経由で結果は教えられるけど、アイツならなんとかなるでしょ」
「君は今怒られている立場って事を把握しているのかい?」
「もうこの歳になれば怒られるのも慣れた」
「変に成長してるんじゃない!!!」
今日のルドルフは随分とイライラしてるな...体調不良か?
「全く...君が忙しいのも重々承知だが、こっちも色々と忙しいんだぞ!?」
「珍しいな、仕事が恋人のルドルフが忙しいなんて...学園のこと以外でなんか起こったのか?」
「悪いが私の恋人の席は既に君の名前で予約済みだ。実家で少々問題がね...まあそこまで重大では無い」
ちょいまて、なんか勝手に予約されてるんだが。そんな予約した覚えないのでキャンセルさせて頂きますね。
「その予約キャンセルしたいし、そもそも予約してないんだが?代わりにラモーヌでも予約しとけ。シンボリ家が騒がしいとかなんかやったのか?」
「当店では予約のキャンセルは承っておりません。主に分家の方でな...所謂権力争いだ」
「とんだ悪徳店だな、通報するぞ。名家は権力闘争が激しいんだな...ご愁傷様」
「君の家も充分名家だろう?何を外野の様に...」
「ウチは基本的に兄弟揃って自由人が多いし、親も大体そんな感じだから...爺さん共がどうかは知らんがね」
「...君の家やシリウス、アイルトンが羨ましいよ」
どこか遠い目をするルドルフだが相当疲弊してるようだな...ウチはまあ爺様共がそういうのガヤガヤしてるかもしんないだけで、実際話は聞いてない。
叔父さん達も言ってないし、親も何も言わんし、クレイ姉さんもスターもそんな話してない所を見るに、多分誰も関わろうとしてないんだろうな。
シリウスはまあ、親御さんがそういう方針なんだろう。そこまで息苦しそうにはしてないところを見るに権力争いには興味無さそう。アイルーはこの前本人から聞いたが、親と絶縁してる状態だそうだ。
以前面談の流れで話をしたら、大胆カミングアウトでおじさん漏らすとこだったわ。
「お前も大変なんだな」
「ああそうだなー誰か癒してくれる人いないかなー」
「ラモーヌにでも頼めば?」
あからさまな棒読みでこっちを見てくるので、ラモーヌをおすすめした。結婚以上の事してるから大丈夫やろ。
すると、ルドルフは一転して溜息を吐きながら顔抑えて俯いた。
「頼むから勘弁してくれ...」
「何されたのさ...」
「この前...馬の頃の...その...行為のダメ出しをされた」
「おぉう...」
思った数万倍デカイダメージを受けててなんとも言えなかった。俺も男だし、そういう経験はないんだけど...気持ちはわかる。ただ流石に容赦ないんじゃないですかね?
「その上で言われたよ...『行為もつまらない人ね』ってね」
「なんというか...ドンマイ」
全てさらけ出したルドルフは遠い目をしながらフッと笑って真っ白に燃え尽きていた。
傷を抉るどころか裏返して塩塗りたくった俺が言えたことでは無いが、なんとも酷いことをしよる...。
「とりあえず俺が呼び出された要件は把握したから帰っていい?」
「あぁ...もう好きにしてくれ」
どうやらこの皇帝は再起不能のダメージを負っているご様子。エアにでも頼んでメンタルケアをしてもらおうかと考えていると、ドアが盛大に開けられた。
何事かと後ろを確認すれば、そこには必死に止める瀧本先輩と栗毛のウマ娘...オルフェーヴルがいた。
「ふむ...この余が直々に探しに来ねばならぬとは...貴様は余の臣下であるという自覚が足りないと見える」
「ごめん正樹君...流石に止められなかったんだ...」
ゼーゼーと息を切らす瀧本先輩を見るに、どうやらオルフェはテコでも動く気は無いと見える。
本当に申し訳ないと思っているのか、瀧本先輩は息を整えると俺とオルフェの間に入ってオルフェを叱り始めた。
「オルフェ!いくら何でも生徒会室に乗り込むなんてやり過ぎだ!こんなことをすればルドルフ会長だって黙ってない!」
先輩、ルドルフは死んで...ない!?
さっきまで真っ白に燃え尽きてた筈のルドルフは一転。シングレ顔でオルフェーヴルを睨みつけていた。
「喧喧囂囂。今は来客が無いからいいものの、もし重要な客人がいた場合どうするつもりだったのかな?」
「余の臣下が貴様と正樹が入る姿を見ていた。加えて貴様の事だ、迷彩服姿の正樹を呼んでまで客人と会うことなどなかろう?会わせるのであればそれ相応の服装をさせるはずではないか?」
オルフェーヴルの言う通りだ。ただでさえ要人がやってくることもあるトレセン学園。
そこに迷彩服で出迎えて話すのはかなり失礼かもしれないので制服はいつでも出せるように準備してる。まだ補給から物品来ないせいで緑の91式制服だけどな!
「図星ならこれ以上言葉を述べる必要もなかろう...貴様」
「え?俺?」
ルドルフが次の言葉を捻り出そうとしてると、オルフェーヴルがこっちを向いて呼びかけてくる。
なんで俺が指名されるのか全く理解出来んのだが...。
「余は疲れた」
「急だなおい。俺にどうしろってんだ」
「くどいぞ。王である余が疲れたと言っておる」
「日本語話せ、日本語を!俺がどうすりゃいいんだよ!?俺お前の担当トレーナーじゃなくてスピカのサブトレーナーだぞ!?」
「ええい!煩わしい!」
「グェ!!」
近づいてきたオルフェーヴルに胸倉を掴まれたかと思えば、ソファーへ投げ飛ばされる。
オルフェーヴルのコントロールがいいのか、俺は空中で一回転捻りながらソファーへ座る形で着地。
そのままオルフェーヴルは俺の肩に頭を預けてきた。
「ふむ...。やはり余の思った通り、ちょうど良い硬さだ。褒めて遣わす」
「さいですか...」
「では余は寝る」
そう言ってオルフェーヴルは寝始めた。瀧本先輩もこうなったオルフェを起こせないようで、手を合わせて謝ってきてくれた。
「本当にごめん正樹君!この埋め合わせはいつかするから!!」
「正直これには慣れてますから...」
慣れるものでは無いのだろうが、周りのウマ娘がゴルシを筆頭にハジケリストしかほぼ居ないので慣れなければ待っているのは死である。某死にゲーより理不尽である。
そして俺はオルフェの枕にされた訳だが、瀧本先輩が退室したのを見計らって、ルドルフも反対側にやってきた。
「お前もかルドルフ...」
「うるさい...黙って枕になれ」
「とんだ暴君達だなおい...」
もうこうなっては、ウマ娘パワーの前では非力な野郎1人で太刀打ちできないので匙を投げる。
とりあえず今日一日は仕事できないなと考えながら、両脇の湯たんぽに包まれて意識を手放した。
尚、エアグルーヴにバレてまた大乱闘が始まり、前世組ウマ娘の間で俺の肩枕がブームとなるのであった。
「もふもふでは無いけど...これはこれで...」
「おやすみなさぁい...」
「アヤベはトレーナーの所に戻りなさい。スペはさっさと起きてトレーニングせんかい!」
後日、ゴルシのアホが俺の肩枕チケット売りさばいてたので、とりあえずアイルーと一緒に人参畑に植えておいた。
なんか鹿毛のウマ娘がルンルンでゴルシの方に歩いていったが...知らない。正樹さんしーらない!