転生したらなんかウマ娘に懐かれてる件について 作:和菓子甘味
その内再投稿しますので。
時刻は0725。何時も通りであれば日曜のこの時間帯は二度寝で惰眠を貪る所だが、今日はそうもいかない。
というのも、今日はグラスと買い出しがある為、現在美浦寮の前で待ち合わせ中だ。あと5分は時間があるので、スマホでも眺めて待っていようと思ったら、目の前にココ最近で見慣れた顔がやってくる。
「おや?正がこんな所になんのようだい?もしかして寮に侵入とか...?」
「朝っぱらから脳内真っピンクかヒシアマゾン。グラスと買い出しの待ち合わせだよ」
冗談さ!と笑いながら背を叩いてくる私服のヒシアマゾン。いや、真面目に通報されたらそう見えかねないんだからそういう冗談は心臓に悪いんだよ...。
「しっかしまあ、あの会長とフジ公がよく許したもんだ」
「説得できたと思うか?」
「大方条件つけられたんだろ?」
「ああ。ルドルフは今度の視察に必ず同行。フジはカフェに連れてけだとさ。...全く、こんなトータル50過ぎの男のどこがいいんだか」
「それを言ったらアタシ達も人間で言えば7、80の爺婆だと思うけどね」
「勘弁してくれ...。そう考えると地獄絵図じゃないか」
「アッハハハ!まあいいじゃないか。見目麗しい美少女に詰め寄られて男としては本望じゃないかい?」
「その美少女たちに運が悪いとすり潰されかねないんですがそれは」
全く、お笑いにもならん...。ヒシアマゾンはずっと笑ってるし、少し弄り返してやるか。
「そういえば猫は大丈夫なのか?たまにそこら辺を彷徨いてるが...威嚇されてビビってないよな?」
「ちょ!それは卑怯だろ!い、今は猫なんて...」
ヒシアマゾンがそういうと、タイミングよく2匹の猫が近くに来て、お互いを威嚇し始めた。それを聞いたヒシアマゾンはひゃあ!と可愛い叫び声をあげて飛び上がり、俺にしがみつく。
流石に俺もコケたくないので、ヒシアマゾンを受け止めるがお姫様抱っこの状態となった。
あまりにもおかしくてつい吹き出した。
「こ、これは違...」
「まだ可愛いところがあるんだな。女戦士さん?」
「フンッ」
「あいたぁー!?」
朝の美浦寮前に気持ち良い位響き渡るビンタ音と、俺の頬に出来上がる赤い紅葉。それはヒシアマゾンの顔と同じ位赤かった。
「....」
「悪かったよグラス...」
私怒ってます。ということを主張するかのように、頬を膨らませたグラスと共に買い出しの為のショッピングモールに来ていた。
待ち合わせ時間になりやってきたグラスが見たのは、お姫様抱っこ中のヒシアマゾンと俺。しかもヒシアマゾンは顔を赤くしているし、俺は頬に赤い紅葉。グラスがどう受け取るなど想像に難くない。
案の定、グラスに変な誤解をされた俺は説明に30分を費やした。因みにヒシアマゾンは「せいぜい痛い目を見な!」と言って怒って行ってしまった。流石にやりすぎたので、後でお詫びになにか差し入れておこう。
それはさておき、問題は目の前のふくれっ面ガールである。私有車の中でもお互い会話がなかったが、ショッピングモールに来てもこの様子である。
うーん...どうにか彼女の機嫌を直さねばならないが、困ったことに『グラスワンダー号』であれば撫でたり人参をあげればいい事は知っていても、『グラスワンダー』の好みはてんで分からないという惨状だ。年頃の女の子だからなにかファッション系が良いかと思うが、あれでも前世は人間で言えば80近い爺さんだ。なら渋いものがいいか?と考えてもこれで抹茶を出したら、それはそれで殺されてしまいそうな気がする。
「うーん...?あれは...」
通りがかったアクセサリー店で偶然目に入ったのは花があしらわれたネックレスだった。値段はそこそこするが、ここは魔法のカードに頼るしかない...。
「グラス、ちょっと買い物してくるからそこで待っててくれないか?」
「......」
グラスは黙りだったが、少し離れた広場の椅子に座ったので、すぐに店へ飛び込んだ。
因みにお値段は5桁の中盤だった。
◻️
全く正樹さんは酷い人です。今日は私とデートだと言うのにヒシアマゾンさんとイチャイチャして待っているなんて...悔しいのでずっと無視することにしました。すると正樹さんも気まずいのか、ずっと曇り気味な表情で車を運転してました。
前世の事もあり車は苦手ですが、車には罪はありません。悪いのは無免許で飲酒運転と居眠りとスピード超過をしていた車の運転手です。あの後無事逮捕されたと厩務員の人から聞きました。
....正直な話、私がその犯人を蹴り殺したい気持ちでした。いいえ、蹴り殺すだけでは物足りない。なんなら自分の体重を活用して少しずつ骨を折り、命乞いをさせた上でゆっくりと殺すのがいいだろう。それほどまで『ボク』のはらわたは煮えくり返っていた。
でも『ボク』は所詮馬。人間社会のルールに異を唱えることなど出来なかった。そして正樹さんの葬儀の話を聞いてからも体調は良くなかった。でも、ここで死んでも意味がないと思い、精一杯生き抜いた。最期の時は朧気だったけど、大往生だったと思う。
だからこれぐらいワガママでも許されるはず。
そう、これは私のワガママ。『ボク』を置いて行ったという正樹さんの弱みに漬け込んだ卑劣な手段。
でもこれくらいなら可愛い方だと思う。正樹さんの性格なら、私がそれを理由に婚姻を迫っても決して断らないだろう。馬の時は分からないことも多かったが、今ウマ娘として接する中で、正樹さんの為人はある程度分かった。今も私に謝罪の意を込めた品を買いに行っているはずだ。
焦っているのか、私に注目していなかったのでしょう。あなたが見てない間もしっかりと見ていましたよ。
ほら、そう考えてる内に正樹さんが帰って...え?なんですかこの結構お高そうな紙袋は...?
「ほら、俺たち色々あったし...高級人参も流石に今はね?」
口下手ではありますが、謝罪の意を込めた品と前世の高級人参を兼ねてという事ですか...分かりました。頂きましょう。
「ありがとうございます正樹さん。早速ですが開けても大丈夫ですか?」
「いいよ。プレゼントだからね」
正樹さんの同意を得て開けてみるとそこにはピンクのコチョウランの形をしたネックレスが入っていました。
「これは...」
「グラスに似合うと思ってね。どうかな?」
「....はい、ありがとうございます正樹さん」
ふふっ。そういう事なんですね正樹さん。
ならば私も積極的に行くとしましょう。
ピンクのコチョウランの花言葉
「あなたを愛する」