TSして人生やり直すことになったのでVtuberやる 作:減塩醤油
前回に引き続き、今回も「イカトゥーン」をしていこうと思う。
ヒーローモードをクリアしたので、今度はレギュラーモードだ。わかりやすく言うなら対戦モード。
このモードでは、インターネットを使って見知らぬ、遠く離れた人ともプレイできる。かがくのちからってすげー!
ってことで、今日の配信は視聴者参加型。いつも見てくれてる視聴者の皆と、一緒にプレイしていこうと思う。私自身、配信は一人だけでは成り立たないものだと思っている。もし視聴者がいないなら、即匙投げしてたことだろう。
大人も子供も、おねーさんも、見てくれているだけで本当にありがたい。今日はそんな人たちを身近に感じる良い機会だ。インクでナワバリを塗り合う簡単な陣取りゲームだから、買ったばっかりの人も遊びやすいしね。
配信開始のずいぶん前から、今回の配信の告知をした。
ツブヤイターのいいねは250にも上っているので、かなりの人が参加してくれるといいな。古参も新規も、私と遊んでくれるだけで大歓迎。
サムネイルは、サクラが黒塗りのシルエットとにらみ合っているイラスト。
「視聴者参加型!初見さんいらっしゃい!」と目立つフォントで文字も入れた。これで準備はバッチリ。さあ配信開始だ!
【#サクラ満開中】視聴者参加型!誰でもかかってこいや!【イカトゥーン】
「バーチャル世界からこんにちは!初風サクラだよー!」
コメント:こん!
コメント:わこつ
コメント:こん!
オープニングの時点から、すで100人も待機してくれている。いつもよりもかなり多い。皆楽しみにしてくれていたのかも。
「予告の通り、今日は視聴者コラボ!私の初めてのコラボ相手だね!」
この時代の大手ゲーム実況者は、他の実況者とのコラボで登録者を増やす。でも私の場合はVtuber。下手にその辺の人とコラボしていては、世界観やら設定やらが崩壊してしまう。結果、安易に他の人とはコラボできないのだ。決して友達がいないわけではない。
コメント:友達いないんだね
コメント:かわいそう
コメント:ちょっとエモいね
コメント:ふーん、ぼっちじゃん
何がぼっちだ。設定を守ってるだけじゃい!
でも、確かにちょっとエモい気がする。
「いいこと言うねぇ。じゃあ私が部屋を作るから、パスワード下に表示するね」
パスワードを出すと、募集人数の7人はすぐに埋まってしまった。
三人がチームメイトで、残りの四人は相手チームだ。
「佐藤さん、仮面ノリダーさん、おにくさん、oppaiさん、黒の剣士さん、タケシさん、うんぴさん、よろしくね!」
コメント:ひどいメンツw
コメント:名前酷いなw
コメント:草
コメント:少しは恥ずかしがって言えよw
もしかして、半分くらいキッズいるんじゃないか?私の視聴者、変なヤツが多すぎる説。
「おっぱいぐらい別に恥ずかしくないじゃん。皆見たことないのぉ~?」
コメント:は?
コメント:...すぞ
コメント:ないです
コメント:ゆ゛る゛さ゛ん゛!!
皆マジで無いっぽいね。私だって、前世では無かったから気持ちが分かる。仕方ない、ちょっとだけサービスだ。
「ごめんて、お詫びに私の見せてあげる」
私を画面右下から真ん中に移動させて、画面真ん中に胸を映した。
どうだ、これで大満足でしょ?
コメント:ショボ
コメント:ないじゃん
コメント:いらない
コメント:草
なんやこいつら。人の厚意を踏みにじりやがって。
「は?あるけど?君たち、女の子傷つけちゃったね」
コメント:サクラ女っぽくない
コメント:おっぱいとうんぴを恥ずかしがらない子はちょっと..
コメント:ただの女友達じゃん
「あーあ、言っちゃいけないライン超しちゃった。今ボコしてやるから首、洗ってな」
試合開始後、私は真っ先に敵陣に切り込むが、秒殺。
エイムガバガバで狙いが定まらないのに、なんて無慈悲な。
どうしようもないので、隅っこでインクを塗る作業に徹する。
「あーいけませんお客様!私をおいて熱戦を繰り広げないでよー!」
終いには、私をおいてリスナーたちだけで激戦を繰り広げる始末。ふざけんな、私を頼れよ!
実質三対四の戦いになってしまっている。苦戦を強いられているっぽい。戦況がよく分からん。
結果、完璧に負けました。
同じチームの人スマソ。
「深海魚さん、くまさん、皆ありがとねさん、あいしてるさん、ロリコンさん、穴のあいた蓮根さん、しんのすけさん、よろしく!」
くっそ、こいつら名前で遊びだしやがった。私が戦力にならないからってそれはないでしょ!あと皆ありがとはやめろ。絶対前回の切り抜き見たヤツだろ。恥ずかしんだよ!
「みんありふざけんなよ!おちょくってんのか?」
本気で怒っていると取られないように、私は冗談めかした口調で怒る。
コメント:みんあり略すな
コメント:草
コメント:切り抜きで見た
「名前覚えたかんな!畜生、絶対倒してやる!」
結果、瞬殺。少しは遠慮しろ。ほらそこ、倒したからって煽りプレイするんじゃないよ!
「ムキーーー!煽りやがってーー!もうサクラすねちゃったから!隅っこにいるから!」
コメント:ちょっと男子ぃ~?
コメント:あーあ
コメント:雑魚
コメント:下手
仕方ない、こうなったら戦術的勝利を狙おう。今は雌伏の時だ。
..ずっとインク塗りをしてたけど勝てませんでした。ぴえん。
時刻は23時。初コラボだし人が集まるか心配だったけど、どうやら杞憂だったみたい。
今まで同じ人がかぶることなく入ってきてくれているので、一体どれくらいの人がいるのか気になって見てみると、いつの間にか500人以上の人が視聴中とのこと。
初めてでこれなら、このゲームに限らず他のゲームでも視聴者コラボをやっていきたい。皆とワイワイするのは楽しいし、視聴者サービス?みたいな感覚だ。
「夕飯はカレーさん、雑魚サクラさん、チーターさん、サクラの告白さん、焼き魚さん、塩さん、コロ助ナリさん、よろしくね」
また変なヤツらが来たよ。こうした視聴者とのプロレスは楽しいからいいけど。
「私の視聴者さん、もしかして私のこと好きだね?小学生が好きな子いじめちゃうヤツでしょ!」
コメント:好きだよ
コメント:ちがうぞ
コメント:思い上がるな
コメント:勘違い女乙
「クソがよぉ!叩き潰してやr」
マッチの開始前に、私のチームは全員倒された。は?何で?(威圧)
画面を見ると、相手チームの中のチーターさんが空を飛んでいた。チーターってそのチーターかよ。動物の方かと思ったわ!
えぇ、駄目じゃん..初配信なのに、よりによって荒らしかぁ..
新しいゲームはチーターの温床になりがちだ。この「イカトゥーン」もそれは例外では無かったのだろう。
「空なんて飛ぶなよ!そんなのチートや、チーターや!」
コメント:これはガチのチーターやん
コメント:名前控えた
コメント:そらとんでる
チーターが空を飛び、ナワバリが一瞬で塗られてしまった。これではもうどうしようも無い。
仮に名前を控えても、このゲームは名前変えられるからなぁ。今は指をくわえて蹂躙されるのを待つだけだ。
..でも、何もしないのは嫌。下手なら下手なりに、抵抗ぐらいしてやる。
「仕方ない。行くぞ皆、レイドバトルだ!あいつを分からせてやろうぜ!」
コメント:サクラ何も出来んじゃん
コメント:がんばれ!
コメント:チートは駄目
コメント:何かかっこいい
開始してから呆然としていたチームメンバーも、私の号令で動き出した。
知らんけど、雑魚サクラさんと焼き魚さんマジつよい。
私が地球人代表とすると、フリーザー様ぐらい強い。
私と塩さんはそんなに上手くないけど、必死にインクを塗る。
そうしているうちに、それまで普通に動いていた相手チームのチーターを除いた三人の動きが変わった。
一人ずつその場で動かないようになり、終には三人とも微動だにしなくなった。
「夕飯はカレーさんたち、どうしたんだろう?...もしかして、私たちを助けてくれてんの?」
もしそうだとしたら、相手はチーターただ一人。かなり戦いやすくなる。ありがたい限りだ。
コメント:なにこの胸熱展開
コメント:がんばれ
コメント:チーター嫌い
コメント:皆頑張れ
コメント欄も、かつて無い勢いで応援コメントが流れている。
なんだか力が湧いてくるようだ。やってみせろよ、私!
それでも、チーターからしたら大したこと無いのだろう。一瞬にして、フィールドが相手のペンキに染まる。
チームメイトもなんとかチーターにペンキを当てようとするが、空を飛ぶようであれば当たらない。
「残り時間があと60秒しか無い!けど、皆諦めるんじゃないよ!」
勝てる希望はかなり薄いが、諦めたら試合終了。某バスケ漫画で言ってた。
その時、チーターの操作が止まった。飽きたのかもしれないが、なんにせよチャンスだ。ようやく希望が見えた。
全員でフィールドを塗りにかかる。残りあと5秒のときには、ギリギリ勝利条件のフィールドの半分を塗り終わった。
「やったよ皆!これで勝ちだn..
無慈悲なことに、残り1秒のところでチーターはフィールドの色を染めた。
向こうにとってはボタン一つの操作なんだろうが、それは私の心を砕くのに十分だった。
どうしてか、感情が抑えられない。前世だと泣きたいことは無理矢理我慢できたが、女になったからだろうか、感情がとめどなく渦巻く。
「初コラボ配信で荒らしチーターがあらわれた」という、ただの笑い話にすれば良かったのに。
たった数分間の試合だったが、ただのゲームに過ぎないが、楽しみにしていた初コラボを台無しにされた気がして。
さっきまで皆と楽しくゲームをしていたはずなのに、一緒に頑張っていたのに、それが一蹴されてしまって。悔しくて。申し訳なくて。
恥ずかしながら私は、配信中にもかかわらず泣き出してしまった。
「...皆、ごめんね。せっかくがんばったのに..」
流れる涙で画面が見えない。これまでの配信で覚えた感覚を頼りに、どうにか配信終了の準備が出来た。
それでも、視聴者との、大切な大切な初コラボを台無しにしてしまった後悔だけが頭をよぎる。
「皆との初コラボ、こんな形でおわらせてごめん..」
それが、私の最後の言葉。
『配信は終了しました』