TSして人生やり直すことになったのでVtuberやる   作:減塩醤油

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今回、限りなく灰色。あとすいません結構シリアスです。   

この話はフィクションです。

追記:登場人物の名前を変更しました。


第二十二話 君どこ住み?てかヂィスコやってる?笑

サイミライ。突如現れたAI系Vtuberで、四天王と呼ばれし他のVtuberたちと黎明期を支えた、V史における最も偉大な人物の一人である。

 

最初は個人勢からスタートし、途中で企業がバックに付くという業界でも異色の経歴を持っていた。

特に企業の援助が始まった後は、多数の新衣装や高度なモデリング技術が注目を呼び一気に頂点へと上り詰め、ファンとしても鼻が高かった。

 

ただある日のライブイベントを機に活動休止に入るという声明を発表して以来、私は断頭台に連れて行かれる死刑囚のような気持ちで日々を過ごしていた。

幸か不幸かそのライブを見届けることが出来ずに私の時間は巻き戻ってしまったが、今回こそはその姿まで見届けてやる!

 

ちなみに私の最推しVtuberだ。好きすぎてその迷言その声その仕草その魅力その顔その姿がしっかりと脳裏にこびりついているぞ。

ここだけの話、サクラのモデルを作る際、少しだけお手本にさせていただいている。そんな子と私は....

 

ダイレクトメッセージ

サイミライ
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サイミライ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初風サクラ  

初風サクラ よろしくお願いします!

サイミライ 連絡先を聞いたのは私なのでそんなに緊張しないで下さい

初風サクラ わ、分かりました...

初風サクラ 善処します

サイミライ すみませんわたし打ち込むの遅くて

サイミライ 慣れてないので通話でもいいですか

初風サクラ もちろんです!どんと来て下さい!

 通話終了1時間

初風サクラ バイト先に確認取りました、明日大丈夫です!

サイミライ ありがとうございます

サイミライ すみません即日に

初風サクラ いえいえ、何でも聞いて下さい!

ツブヤイター上で厄介オタクみたいな絡みをしてしまった後、ヂィスコ交換など紆余曲折を経て直接会うこととなってしまった。

「まだ素人なので色々聞きたいことや機材についての質問が...」という訳らしいが、こちらからするとむしろ願ったり叶ったりだ。

 

推しと会話できる推しと会話できる推しと会話できる...

これはテレビドラマ「Vオタ、推しとデートするってよ」が始まってしまう!(?)

 

いや、ここは男らしくちゃんとエスコートしてあげねばならぬ。

そしてあわよくば.....ぐへへ。

 

健全なオタク(自称)としては少々邪な心を持っている気がするが、向こうがすぐ会いたいって言ってるんだから仕方ないよね!サクラは悪くないよねぇ!

 

 

 

 

 

いよいよ時刻は待ち合わせの11時。気合いを入れたおしゃれな服(ナ二クロ)を着て1時間前から待機しているが、少し早すぎただろうか。

 

そこからしばらくして、昨日電話で言ってた通りの服を着て、辺りをキョロキョロ見回しながら人を探している様子の女の子が現れた。

何故だか少々顔色が悪い様子だが、おそらくあの子がミラちゃん本人のはず。

ただ、どうして私が目に入ってないんだろう。私結構目立つ場所にいるはずなんだけどな。

 

ま、ええわ。私の方から話しかければ万事解決よ。

 

「すみませーn

「ねえそこのお姉さん

 

私は電光石火の速さで近くの柱の後ろへ身を隠した。しまった服装が似ているだけで別人だったのかも。彼氏さんか男友達かな?

人違いだったのならば是非もなし。早急にこの場から離れ

 

「お姉さん可愛いねぇ。一人なの?」

「ヒッ、ぃや...その...知り合いを待ってるんですけど...」

 

ん?

 

「へぇー、彼氏?それとも女の子?」

「女の子の知り合いです....」

「いいねぇ~笑」

「俺たちも交ぜてよwその子も一緒に楽しい遊びしようぜw」

 

は?あいつらは許さん。まだ100%この女の子がミラちゃんという確証があるわけではないが、この連中は私の逆鱗に触れた。

 

百合の間に男を交ぜてはいけない(戒め)。心があいつを倒せと轟き叫んでいる。

おいこら、お前元男やろとか言うな。あんな下半身に脳みそがついてる下心くん丸出し連中とは違うぞ。私は女だ...誰がなんと言おうが女なんだ...

 

「ちょっとそこの人たち、この子嫌がってるじゃないですかやめてください!」

 

存外大きく、威圧的な声を出しながら、女の子を庇うように間に立つ。

 

「おいおい、嬢ちゃんが口出ししていい場面じゃないぜ。邪魔してないで帰んな!」

 

なんですのこいつ私のことをロリだと勘違いしてたんですの!?ムキー失礼ですわ!

チンピラのテンプレみたいな台詞回しのくせに!クソわよッッ!!

 

「私成人してます!それに(多分)この子の知り合いなので!」

 

女の子の細い手首を無理矢理ひっつかんでその場を離れる。

 

一瞬チンピラたちの顔が見えたが、案の上鳩が豆鉄砲食らったような顔をしていた。

極めてなにか私に対する侮辱を感じたので問い詰めようかと考えたが、拳で抵抗されたら絶対に敵わないのでやめた。

ちなみに女の子も驚いた顔をしてた。全私が泣いたわ。

 

しかし流石は脳みそおちんちん系男子、簡単には引き下がらない。絶対に諦めないという意思を感じる瞳とともに、私たちに手を伸ばす。

 

「ご、ごめんね、若すぎて大人には見えなくてさ☆良かったら君も一緒に

「触らないでください!!もし触ったら、ここで貴方たちのことを痴漢だと叫びますよ。この時勢、痴漢だと言われた時点でどうなるかお分かりですよね?」

 

漫画ならニチャァといった系譜のオノマトペが当てられそうな暗黒微笑(マジキチスマイル)で、かつ前世では絶対にされたくなかった脅し方で相手を揺さぶる。

 

力で敵わないときは、世論様を味方につけるのだ。前世でこれを(主にクソ上司たちに)されて負け続けていた。私は失敗から学ぶ系ウーマンなのだよ。

 

「チッ、お前みたいなブス誰も相手しねぇよ!」

「なっ....っふ、ふん。もっと上手な口説き文句を考えてくることですね!」

 

ブスだなんて分かりきってたこと...分かりきってたことだけど....実際に言われるとショックや...

ま、まあ、今の私は超絶美少女(初風サクラ)だし....別にノーダメだし..

 

「ぁ....あの、貴方は?」

 

しまった、落ち込んでる場合じゃねぇ!

出来る男は女の子のアフターケアを欠かせないって前世で読んだ自己啓発本にあったぞ。

当時は実践する機会がなかったが、今こそ活用するときだ!

 

「すみません、怖かったですよね。貴方と待ち合わせをしていた者です。ほら」

 

こんな人混みの中、しかもやたらと人が集まっている中で活動名の初風サクラを名乗るわけにはいかないため、ヂィスコのトーク画面を見せる。

 

「この近くに、私行きつけのカフェがあるんです。ひとまずそこでお話しませんか?」

 

嘘である

 

この私(陰キャ)がカフェなど知っているはずもない。知っているカフェはごちうなの*1イールハウスぐらいである。

しかし哀しいかな、オタクは推しの前では見栄を張りたい生き物なのだ。あと速やかにこの場から離れたいためでもある。

 

私は女の子のやけに細く不健康な手を出来るだけ優しく握り、こっそりスマホで検索しつつ、カフェへと足を急がせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、ここって都内でも有名な高級カフェですよ...私そんな大金持ってないです..」

 

えっ、そうなの?適当に入ったとこだったけど有名なカフェなのか。まあ推しに貢ぐと考えたらそんなもん苦ではないよね。

それに

 

「あのね、ミラちゃん電話で20歳って言ってたよね?私より年下なのにそんなガリガリだったらダメだよ。今回はお姉さんが奢ってあげるから好きなの選んで」

 

こんなモデルよりも痩せ細った女の子にお金を出させるなんて出来ない。私は線の細い美少女より、多少は健康的ムチムチ系美少女の方が好みだ。存分に太ってくれ^

迫真のお姉さんボイスで、目の前の彼女へ提案する。

 

本当に年上...?お、お姉さん..?い、いえ、そんなわけには!」

 

うーん、強情な子だなぁ。まあ断ってきたとしても、向こうに拒否権はないけど。

 

「じゃあ、私がここでよく食べる(嘘)オムライスセットでいい?アレルギーは...ないんだね。すみませーん、店員さーん!」

 

うなずいたので、メニューの1ページ目にあったオムライスを先手必勝で注文する。

このタイプの美少女は押しに弱いはず。エロゲで学習済みだ。

 

このオムライスセットを二つで!

カフェモカはトッピングを選ばないといけない?では、二つともミルクと豆乳のツインってやつを...

デザートは+300円で季節のフルーツケーキに変更できる..?分かりました、お願いします

.......を頼むと100円分お得....?分かりました.....

................?じゃあ.......

 

 

 

一通り食べ終わった後、彼女の方から今回私を呼び出した理由について口を開き始めた。

 

「今回呼び出させていただいた主な理由は、私がVtuberと言う肩書きを名乗っても大丈夫なのか伺いたかったからです。先日の記念配信で....」

 

あれかぁ...私はVtuberとして活動してたつもりだったけど、私のうっかりで今まで謎のUtuber的なポジションで活動してたって話。

あれ世間一般的に見ると、私の方が後から名乗りだした、もはや言いがかりのような言い分だし、それに本来はミラちゃんが作り出した言葉だからなぁ。

 

「あっはは...あれは配信を見て、勢いでつい言ってしまっただけだから。正真正銘、貴方の言葉ですよ。でも今度から私も名乗ってもいいですか?」

 

「あっ、はい!それに関しては、是非お願いします」

 

そう口にしつつ、ほっとした様子で胸をなでている。こちらの罪悪感が半端ない。これが時間逆行幽霊作家の気持ちか...

 

 

その後彼女はヂィスコで前触れしていた通り、色々と活動についての質問を投げかけてきた。

サイミライとしてのキャラはどうすればいいか、声はおかしくないか、機材はどのような機種がおすすめか、etc...

 

「キャラについては....、声の発声の仕方は.....、私が使ってるのは....」

 

ミラちゃんの活動方針については前世知識でよく知っている。それに機材やプログラミング等は高校大学で相当学んだし、発声についてもある程度のアドバイスなら出来る。

 

それにしたって、ミラちゃん真面目だなぁ。私の言葉を逃さぬよう、要所を掻い摘まんではメモしている。表情は死に物狂いといった感じだ。

 

こんな様子を見ていると、デートだなんて浮かれてた自分が恥ずかしくなってくるわ。

私ただの浮かれフルーツポンチだったんだ...なんだろうねこのおしゃれ服(ナニクロ)

 

「これほど熱心に話を聞いてくれるなんて、私も話し甲斐があるってもんだよ。本当に真面目なんだねぇ~」

 

ここまで話し終えた私は慣れない笑みを彼女に向け、少しの休憩がてらぬるくなったカフェモカ(?)を飲み干しながら現状整理をする。

 

 

(いやー、得意分野を真剣に質問してくれる子っていいよなぁ。私一度でいいから先輩風を吹かしてみたかったんだよな。なんだか理想の先輩後輩関係って感じ?)

 

普段の配信でよく絵についての質問は来るが、今世で一生懸命積み上げてきたVtuberの裏側としての技術まで教えられるのは初めてだ。ついつい気合いが入ってしまう。

 

(好きな分野では早口になるオタクの特性を出してしまったよ。でも相手は嫌な顔せずひたむきに聞いてくれてる。それも最推しが!クォレハ全ミラちゃんファンたちに咽び泣いて恨まれてしまうな!)

 

 

...ヒッグ...ウゥ...

 

 

(そうそうオタクたちのこんな小さくしゃくり上げるような嗚咽が聞こえてくる....)

 

「...って、どうしました!?私何か変なことでも言ってしまいましたか!?」

 

目の前で何故かミラちゃんが泣いていた。

涙がカフェのテーブルへと落ちていき、そのたびに顔がぐしゃぐしゃになってゆく。

 

「ぅ、ごめんなさい。だって、上京してからこんなに優しくして褒めてもらったの初めてで....」

 

あー分かる、東京ってクソ冷たいからな(偏見)。他人にまで意識を回せる余裕がある人が少ないってだけかも知れんけど。

 

なんて共感していられない。ミラちゃんだって年頃の女の子なんだし悩みの一つ二つあるはず。それが些細なきっかけであふれ出したって何ら不思議ではない。いっちょ私が話を聞いてあげたいところだが..

他の客や店員の視線が集まってしまっているのはいただけないな。女の子の泣き顔を凝視するのはナンセンス。恥を知れ(走れ走れ)

 

「ひ、ひとまず私の家に行きましょう!近くにあるので!これハンカチです、一旦そこの化粧室で涙拭いて落ち着いてきて!」

 

ミラちゃんが個室に入っていったのを見届け、カフェから脱出の準備をする。

今はお会計まで済ませて、ミラちゃんがトイレから出たら帰るだけって状態にするのが最善かな。

 

すみませんお会計お願いします

★★★★円になります

エッ..エッ.....?すみません5千円からで...

★★★円のおつりでーすアザシター

 

 

 

 

 

防音材を敷き詰めた配信部屋へと招き入れ、飲み物を出しつつ落ち着くのを待つこと数刻。

 

「さっきはすみませんでした、急に涙が出てきてしまって。わたし、夢である声優のオーディションでスカウトされて18のときに東京にやってきたんですけど....」

 

彼女をスカウトしたという声優事務所は、そこそこのアニオタ知識を持つ私でさえ所属声優を知らないごく小規模なものだった。

 

だが前世でVtuberガチオタだった私には分かる。そこは後々に立ち上がった『Cy Miraiプロジェクト』のバックにあった会社だ。

 

あまりガチ勢舐めるなよ。私の"勝ち"だな....

 

ほえー、この事務所で様々な困難を乗り越えて大スターへと成り上がっていくんやな!おいちゃん理解(わか)ったで!

 

「一応所属しているという扱いなので最低限のお給料は出るんですが、月に一回『講習』と称してその大部分は抜き取られてしまうんです。それでお金が本当になくて..」

 

ん?雲行きが怪しくなってきたな...

 

 

 

どうやらその事務所に所属する、脇役(通行人A)を1回か2回経験した程度の有名()声優さんの『講習』とやらが、給料の五分の三を持って行くそうだ。

バイトを掛け持ちしてなんとかやりくりしていたが、東京の家賃なんて払えるはずがなく今ではネットカフェで生活しているらしい。

 

えぇ....もはや詐欺じゃん...ミラちゃんの事務所、金!金!金!って感じで醜くないか?

 

「な、ならご両親を頼るのは?ご存命ならきっと助けてくれるはず」

 

しかし苦しげに顔をゆがませながら、重々しげに開口して

 

「もともと両親の反対を押し切って、夢のために上京したんです。何度か頼み込んだんですが、数回送金してくれたあと勘当されてしまいました....」

 

oh....

 

 

 

「じゃ、じゃあ弁護士か警察に頼むのはどう?雇用されている扱いならこの仕打ちはおかしいよ」

 

こんな時は公的機関やらその辺を頼るのが一番のはず。たまーに粗雑な対応の警察とかいるらしいけど、そんなのは流石にフィクションの中だよね。

 

「弁護士なんて当てもお金もないですし、警察からは一応最低賃金自体は守ってるのでそこからの支出は自己責任だと...」

 

うわぁ.....

 

 

 

 

「最後の賭けで、サクラさんがやってた配信スタイルを真似して見たんです」

 

この子は一攫千金のチャンスがあることを聞きつけ、Utubeでやっていくことにしたらしい。

収益化するまで色々と制約があるのは調べたら分かるはずなのに、よほど切羽詰まって頭が回らなかったのだろう。

 

「...ちょっと、モデル見せてもらって良い?前に見た配信でカクついていたのが気になってさ」

 

Vtuber初期特有のカクカク感は仕方ないのだが、それにしたって異常な気がする。私が前世で最後に見たモーションと天と地ほどの差があって違和感を覚えたのだ。

 

「うっわ、なんだこのポリゴン数!こんなの超高スペックのPCだったとしても下手すりゃ処理落ちするレベルだよ」

 

これはVtuber初期云々の問題ではない。初心者のモデリングであることが窺われ、おそらく依頼費用がなかったのだろう。

このままではいつか配信中に機材関係がオーバーヒートして、最悪配信での顔バレとか引退レベルのトラブルだって起こる可能性がある。

 

「こんなこと言うのもアレだけど、どうして普通のUtuberとして活動しなかったの?私のスタイル真似するにしてもモデリングと絵師さんの費用掛かっちゃうし、何より美人さんだからやっていけるよ」

 

私は全部自分でやったから相場は分からないが、絵師やモデリングの依頼をするのにもかなりの初期費用がかかるはずだ。

配信が出来る媒体一つで始められる方が良いと思ったのだが、

 

「わたし職場の上司から「お前よりも美人な女なんて東京にはごまんといる。お前は声で食ってくしかないんだよ」ってよく怒鳴られてましたし実際にそうなんだなと自分でも思います」

 

....あかん、これは酷い。DV男よりも悪質やろ。

 

「今はもう、もう夢にすがるしかないんです。残されたものは、それとこの体だけ...」

 

画面に映るサイミライを見ながらそうつぶやく。

 

「あっ、でも私自身の体もありましたね。上からは、住居と資金援助してやる代わりに...と提案がありましたし」

 

これまで悲壮感漂う様子だったのに、急に諦めたような口調でそう話す。その様子がかえって痛ましい。

 

  

 

 

 

ん?

 

 

 

ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい!

 

私が覚えている限りでは、ミラちゃんは個人勢から企業勢に変わった。

 

その際にモデリングやモーション、背景が一新されて以前よりも数段見やすくなり人気も上がった。

 

でもこれって.....前世でミラちゃんは策略に嵌められて無理矢理........

 

 

あーーーーーーーーーー!

とうとつな てんかいに のうを はかいされて しまった! ▼

 

いや違うのだ。私は、芸能人が隠れて交際することなどを悪いとは思わぬ。

だが、それが純愛か否かにおいては、人一倍敏感であった。もし不幸せなキスをして終了となろうものなら、全力阻止せねばならない。

 

それにこれほど純粋なべっぴんさん、将来は二股とか結婚詐欺とかするレベルのクソオスさんの餌食になってしまいそうな予感がする。

今ここで、私が守護(まも)らなければ。

 

 

...だがここで私が横やりを入れてしまうと、本当の意味で「サイミライ」は生まれないんじゃないだろうか。

Vtuberの人気は、偏に魂の魅力だけとは限らない。ガワ、映像技術、その他の要素が複雑に絡み合って出てくるものだ。

 

 

彼女が大成するのに邪魔になるのならば、私は手を出すべきではない....

 

 

 

 

いや

 

 

「ごめんな...あの人社長のお気に入りだから俺の立場程度じゃ強くでられないんだ」

 

「いいんすよ先輩、余計なこと言った僕が悪いんですから」

 

 

「先輩!短い間でしたが、本当にお世話になりました!」

 

「セクハラの件、気づいてあげることすらできず上司として面目ない」

 

 

「成果が正当に評価されない会社になんかいる意味はありません。辞めさせていただきます」

 

(俺が不甲斐ないばかりに....)

 

 

頑張れば届く距離に手を伸ばさなかったら、死ぬほど後悔する。

私は失敗から学ぶ系ウーマンなのでね、今回こそは後悔したくない。

 

 

「....よし、決めた。未練がないなら事務所辞めてしまわない?」

 

学のない私では、これ以外の選択肢が考えつかない。でもこのまま固執しすぎると、この子はますます貶められるだろう。

 

「え?で、でも私は声優を諦めてしまったらもう何も」

 

「自分で言ってたじゃん、その体が残ってるって。その体でやってくんだよ。モデリングとキャプチャ技術のリビルドも、私がなんだってやってあげる!」

 

むしろさせてくれ。前世において、私の唯一の楽しみだったのだから。

後心配なのは衣食住かな。それも私が何とかしよう。

 

「それに、住むところなら心配いらない、私がこのアパートの空き部屋を借りてあげよう。私も昔バイト戦士でね、お金には少し余裕があるんだ(嘘)」

 

「そう言っていただけるのはありがたいんですけど、Vtuberとして活動して成功できるかなんて私には

「出来るさ。絶対成功できるし、私が全力でサポートする。ミラちゃんがVtuberとして歩む先を見届けたいんだ」

 

なんだか告白みたいな台詞になってしまった。よもやよもやだな。恥ずかしくて、穴があったら入りたいぞ。

しかし完全には信用されていないようなので、そんなそぶりは見せないようにシリアス顔を作る。

 

「....どうしてそんな確信があるんですか?未来が分かるわけでもないでしょうに」

 

ファッ!?その通りなんだけど正直に言っても信用されないよね。なんて答えよう...

 

「い、いやぁー嘘と思われそうだけど、私実はある程度未来が分かる人間でね。前から貴方のことが大好きだったんだ。」

 

苦肉の策で多少ぼかしながら説明する。1ミリも説得力のない言い訳だけど...

すると、ミラちゃんは椅子から立ち上がり、怒りで少々パニック気味になりながら口を開く。

 

「...私のことからかってるんです?惨めな女だからって馬鹿にしてますよねッ!」

 

しまった、バッドコミュニケーションだ!いや、これは私が完全に悪い。

こんな時どうやればええんや....

 

「そんなつもりないよ、貴方に同情したってだけ。」

 

泣き出しそうなほど潤んだ瞳を、しっかり捉えて正直な言葉を伝える。

本心からの言葉だ。これほど追い詰められた少女を放っておく訳にはいかない。

 

ミラちゃんは私の目を見つめ返しながら下唇を噛み、過剰なほど拳を握っていた。

 

「...これまでよく耐えたね、頑張ったね。もう大丈夫だよ」

 

互いの顔が見えない程度に抱擁する。私の体格が二回り小さいためやりにくいが、頭をなでながら「大丈夫、大丈夫だよ」としきりにつぶやく。

 

これでいい!?これでいいかみかんソフト!私あんたのところのエロゲしかやったことないんだからな!

 

 

 

 

 

 

....ぁ、う..ヒック....

 

 

しばらくして、耳元ですすり泣く声が聞こえ始めた。本当に辛かったのだろう、抱きしめ返してくる腕にはかなり力が入っている。

他にもなにかしてあげたいが、何も思いつかない自分が恨めしい。

 

「頑張ったねぇ。後は私に任せて、今はゆっくりお休み...」

*1
ごちうなの舞台である喫茶店




前回あったコメを参考にして、活動報告でリクエストを募集中です。
お時間に余裕のある方は是非よろしくお願いします!
(これ誘導とかで運営様から指摘されたりしませんよね.....?)
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