TSして人生やり直すことになったのでVtuberやる   作:減塩醤油

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第三話 目指せモノマネマスター!

あれから、ケイシーとはかなり仲良くなった。寝顔まじでかわいい。ほんと眼福だわ。女になって本当によかった。お互いの家にお泊まりして、夜まで話そうとして、結局寝て。アメリカの南部にあるという祖父母の家にまで行った。一緒に海に行ったし、お風呂で体の洗いっこもした。ぐへへ。我が生涯に、一片の悔い無し!もうこれで死んでも...良くはないけど。

 

保育園を卒業する際に向こうの両親の都合でアメリカに帰らないといけなくなったそうだが、それはもう滝のように泣いていたし私も泣いた。もう金髪美少女ロリに会えないのか。

 

..いや、もう私はケイシーをただの金髪美少女天使ロリだとは思っていない。出会ったきっかけは最悪で、仲良くなって3年も経ってないわけだけど。私が興奮しすぎたせいで、思い出があまりにも断片的だけど。ケイシーとは、生まれてからずっと一緒だったレベルで仲良しになった。ケイシーも、そう思ってくれていたら嬉しいな。

 

飛行場まで見送りに行ったけどまだ涙が止まらない。止めろよ私。精神年齢36歳やぞ。

 

ケイシーは最後の最後で頬にキスをして、涙目で何かを伝えてくれたけど、嗚咽が止まらない私の耳ではその一言が聞き取れなかった。

 

 

 

さて、時は1998年。私は6歳になり、小学校に入学したわけだけど、マジで暇。びっくりするぐらい暇。前世では小学校低学年なんてあっという間だった気がするが、今回はめっちゃ長い。保育園の時はまだ自由だったし、英語を学ぶいい機会だったから毎日楽しくてときめいていた。ただ、流石にあいうえおや足し算はしなくてもいいかな...コナソ君もこんな気持ちだったのかもしれない。何度も言うが暇。暇すぎて授業中に何かしようかと思い立ったけど、学校から両親に連絡が行ったりすると大変だから自重した。

 

また、なるべく目立たないために、休み時間は教室の隅で絵を描くことにした。一応保育園のときから描いてはいたが、そのときは他人に見せられる物ではなかった。ケイシーの方がまだ上手だったぞ。どうして地の画力が保育園のロリに負けるんだ。私の画力なさ過ぎだろ。

 

それから模写に模写を重ねてプロの書き方を真似し、ようやく自分の絵が描けるようになった。最近は美少女戦士セーラーサンやエヴォンゲリオンで美少女や美青年、おっさんの描き方を覚えて、ある程度は自信もついてきたところだ。練習すれば練習するほど上手に描けるようになるのがわかると、だんだんと絵を描くのが好きになってきた。

 

今は流行のペケモンの絵を描いているところだ。最近アニメも始まったようだが、簡単なようで意外と難しい。少しでも線がずれると目やら口やらのバランスが崩れてしm

 

 

「それってペケモンだよね?すっごく上手!」

 

 

やばい、誰かに話しかけられた。これは声的にショタだな。今はやめて集中してるの。

 

でも、流石に無視はよくないよな..と思い返して声の方を向くとそこには見るからに内気で気弱そうなショタがいた。おねショタモノのエロ漫画に出てきそう(偏見)。

 

おそらく彼は自分の趣味を共有できる仲間を見つけたと思い、勇気を出して話しかけたのだろう。オタクは趣味を語り合いたい生き物だからな。わかるぞ、少年よ。前世の私はそうだった。かといって、女の子に話しかける度胸は無かったけど。

 

仕方ない、その勇気を認めてやろう。私だって前世からペケモンは好きだ。オタク同士、語り明かそうじゃないか!

 

私はめんどくさがっていたのも忘れて返事をした。

 

この少年とは長い長い付き合いになることを、今の私はまだ知らない。

 

 

2000年、私が小学三年生になってから、親は習い事を許可してくれた。色々と選択肢を出してくれたが、スイミングスクールは肺活量が鍛えられるけど動きとかその辺は将来役にたたなさそうだし。

 

そろばんや書道は前世でしたことあるし。どっちも社会人のときは重宝したなぁ。

 

かなり悩んだが、無難にピアノにした。音感が研ぎ澄まされると耳にしたことがあったからだ。これで歌うための基礎作りをする予定。歌ってみた動画とかやってみたいし。あとピアノ教室の先生であるおばちゃんが何かすごかった(語彙力)。

 

昔オペラ歌手をやっていたか何かで、声に対する幅広い知識を持っている。教えてほしいと頼んだら、二つ返事で引き受けてくれた。感謝感激雨霰だ。本格的なボイトレのおかげで音域がみるみる広がり、またビブラートとかそういった歌をうまく感じさせる秘訣も伝授してもらった。

 

なんだかピアノが二の次になっている気がしないでもないが、将来のVtuber活動に役に立てることができる技術なので万々歳だ。歌ってみた動画や歌枠で存分に活用しよう。

 

かつて私に話しかけてきた少年とも結構仲が深まってきた。連載が開始した狩人×狩人の漫画を隣で読んだし、これまでに描いてきたエヴォのスケッチブックを見せたりすると、顔を赤くしてものすごい勢いで褒めだしたこともあった。

 

そのたびに(15歳くらいの趣味してないか...こいつ..)とか思ったけど、まあ兄とかと一緒に見たんだろう。多分。

 

まぁ、私も頑張って描いた絵を褒められて悪い気はしない。それに、顔を赤らめながら私の絵を褒めるこいつは、何か柴犬とかその辺に思えて、急にかわいく思えてきた。こいつのことはイッヌって心の中で呼ぼう。いいかい、お前の名前はイッヌだ。頭をなでてあげよう。

 

私は体を近づけて、彼の頭をゆっくりとなでてあげた。

 

そしたらイッヌ(呼称)は急に顔を真っ赤にして倒れて、私が保健室まで連れて行くことになった。なんでじゃい!

 

 

この時期になると、時間がたってもある程度人気のあるコンテンツが育ってくる。ペケモンだってそうだし、遊欺王のアニメもスタートした。

 

やっぱり、遊欺王の初代アニメはずば抜けて意味がわからない。王国編とかカードの効果を無視した、まさに言ったもん勝ちゲームでしょあれ...私はめちゃくちゃ好きだけどね。

 

そろそろ良い時期ということで、キャラクターのモノマネを身につけていきたいと思う。ビデオデッキにアニメを録画したテープを入れて、いざ練習開始!

 

勝手なイメージだがVtuberは会社員とか、年齢層の比較的高い人たちが見ていた覚えがある。スパチャ勢とかその筆頭だろう。子供があんなにお金を投げられるわけがない。

 

なるべくその層の目にもとまり、なおかつ若者にもウケるのはと聞かれたら、この時代のアニメは外せないだろう。ひとまずアニメを見ながら台詞に合わせて、声の特徴を捉えようと頑張ってみよう。

 

 

今更だが正直、おふくろは困ってるんじゃないだろうか。もう私は、他の女の子ならおしゃれな服とか、かわいいアクセサリーを欲しがり出す年齢。

 

部屋にこもってアニメを見ながら、男が読むような漫画を買い、ずっと独り言が聞こえてくるような娘では、どう接して良いかわからないはずだ。

 

それに、この時代はまだジェンダー問題に対する認識も浅い。性差なんて、黙殺されている時代だ。まして自分の娘が性同一性障害だったと思うと、普通の親は困惑するだろう。

 

一回だけ、聞かれたことがあった。

 

おふくろ「さくら、あなたはどうしてそこまで男の子向けの漫画やゲームばっかり見るの?女の子向けのモノは見たくないの?」

 

おふくろの目線には、かなりの困惑が含まれていて、どう答えるかかなり迷った。

 

 

 

..でも、変に言い訳をするのも良くないかな。否定されたりするかもしれないし、一層心配をかけるかもしれないが、否定されたとしても、正直に好きな物を好きって言いたい。せめて身近な人ぐらいには、しっかりと伝えたい。

 

私は目を見ながら精一杯自分の言葉で返事をした。

 

それからおふくろは、私の趣味について口を出すことは無かった。


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