ブラック・ブレット~Another story~ 作:雪桜士紋
カチャカチャと軽い金属が重なり合う音とともに、誰かが自分を呼んでいる声が聞こえた。
少年は重い瞼をゆっくり開くと、手術台に取り付けられたランプの光に照らされていた。
仰向けになって寝かされている状態だった。
全身の感覚がなく、自由に動かせない。
馬鹿みたいに寒くて、呼吸も上手くできず、口の中は血の味でいっぱいだった。
自分の身体の異常に気付き、一体何故こうなってしまったのかを朦朧とする意識の中、必死に頭を回転させて思い出す。
そして少年は思い出した。
――そうだ……俺、『ガストレア』と闘ったんだ。 それで確か……。
少年は、自分の状態を確認する為に、重たい首を少し浮かせ、身体中を見渡した。
少年は驚きで眼を見開き、思わず悲鳴をあげそうになったが、あまりのショックに声が出なかった。
――両腕が無くなっていた。
「ようやく眼が覚めたか」
近くから男の声がして、少年は重たい首をめぐらせ可能な限りに周囲を見渡すと、視界の端に白衣を身に纏った男がこちらを見ていた。
男は少年の視線に気づくと、鼻でフッと笑ってから低い声で淡々と言った。
「なんだ、状況が今いち読み込めていないのか? ならおさらいしよう。 先ほどお前はエリア内に浸入したガストレアとの戦闘で大きな致命傷を負い、更に両腕も失った」
そう、少年の両腕はガストレアとの戦闘の際に失ったのだ。
その時の光景を思い出し、少年は強い吐き気に襲われた。
白衣の男は再び口を開いて言った。
「そして死にかけだったお前を俺が回収して応急処置を施した。 以上がお前の今の状況を作り出した事の顛末だ」
それを聞いた少年が男に感謝の言葉を告げようと口を開こうとしたが、男の「だが」という言葉にそれを遮られた。
「所詮、その場しのぎの応急処置に過ぎない。このままではお前は確実に死ぬ。……が、助かるかもしれない方法が一つだけある」
このままでは確実に死ぬ。
そう言われた少年は、死への恐怖が一気に込み上げて来ると同時に、男の言った助かるかもしれないという言葉に強く希望を抱いた。
「お前が助かるには、俺が開発した特殊な手術を受けなければならない。 受けるか受けないかはお前次第だ。 さあ、どうする」
男は冷たい口調で少年を試すように言った。
――なんだっていい。こんなところで死んでたまるか。
答えは直ぐに決まった。
「ぁ………」
返答をしようと声を出そうとしたが、やはり上手く出せない。
代わりにコクッと小さく頷く動作を見せる。
少年の返答を見て、男が鼻でフッと笑った。
「いいだろう。 成功する確率は限りなく低いだろうが、心配するな。必ず助けてやる」
そう言い、男は手術用のゴム手袋をはめた。
麻酔を射たれたのか、まぶたが重くなり、意識が朦朧とする。
「ではこれより、"機械化手術" を行う」
男のその言葉を最後に、少年の意識は闇の中へと沈んでいった。