とある漫画作品を読んでいて浮かびました。

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メジロ家の重戦車

 

 目覚まし時計が鳴り響き、俺は思わずベッドから飛び起きた。

 

 急がないと。目覚ましが鳴ったということは、もう時間がない。

 

 と思ったところで俺は思い出した。

 もう俺は時間に縛られていないのだ、と。

 

 ◆

 

 俺は先月から、生まれ育った実家を離れ、長年の夢だった一人暮らしを始めた。

 前職は庭師兼トレーナーだった。

 俺の両親はメジロアルダンお嬢様のお家に仕え、家は代々メジロアルダンお嬢様のお家の庭師をしてきた。

 

 何故トレーナーだったかは、お嬢様が幼い頃から俺が話し相手になっていて、お嬢様の癖や我慢している時の仕草を熟知していたから。

 庭師をやりながらアスリートウマ娘のトレーナーライセンスの取得はしんどかったが、生まれつきお身体の弱いお嬢様が無理なくご自身の夢を叶えられるなら、そのお手伝いをしたいと思って死にものぐるいで勉強した。

 

 結果、俺はトレーナーライセンスを取得し、メジロアルダンお嬢様の専属トレーナーになれた。

 せっかくトレーナーになったのに勿体ないなんて周りの同僚たちから言われたが、そもそも俺はお嬢様のことしか考えていない。

 そんなお嬢様もアスリートウマ娘としてはもう引退し、ラストランも華々しく一着で幕を閉じ、あとは来週の卒業を待つだけ。

 

 お嬢様と共に過ごして、俺は思ったんだ。

 俺も夢を叶えたいって。

 だからこそ家を出て、一人暮らしすることにした。

 両親も一人暮らしを許してくれたし、家のことは弟が継ぐと背中を押してくれた。

 

 まあそれは建前。

 本当のところは、俺が庭師兼トレーナーでありながら、分不相応にもメジロアルダンお嬢様を一人の女性として意識してしまったからだ。

 だって仕方ないだろう!?

 事あるごとに食事や買い物に誘われて、その都度愛くるしい笑みを浮かべて寄り添って来るんだから!

 ただでさえウマ娘は容姿端麗。そんな異性が何かある度に俺を頼ってくれるんだ!

 惚れるなっていう方が無理だろ!

 

 お嬢様はメジロ家のご令嬢。

 俺みたいなたまたま縁があって兄みたいな存在に想われても迷惑だろう。

 大きくなった今でも、俺のことを「にぃに」なんて呼んで懐いてくれている。

 いずれは家格の釣り合う御仁と結婚する。

 今の俺ではそれを笑顔で祝えない。

 ならばさっさとこの恋に終止符を打つ方がいい。

 

 ◇

 

 それで今に至る。

 幸い契約したアパート近くの花屋でアルバイトを募集していたから、元庭師だったのもあってすぐに採用してもらえた。

 ただ今までメジロ家の庭師として生活していたことが未だに身体から抜けないし、トレーナーをしていた時の感覚も抜け切らない。

 まあそれも時間が解決してくれるか。

 

 お嬢様も、最後は「寂しくなりますが、また会える日を楽しみにしています」なんて言ってくれた。

 ちょっとだけ悲しかったが、それでいい。

 

『緊急速報です。メジロ家に名を連ねる〇〇氏が本日逮捕されました。不正融資や横領が本家メジロ家当主にて明らかにされ、警察は余罪を―――』

 

 ?

 !!!?

 

 旦那様じゃないか!

 え、旦那様何してんの!?

 あんなに柔らかくて優しい人が!?

 ちょ、テレビなんて見てる場合じゃない!

 お嬢様が無事か親父に連絡を―――

 

 ピンポーン

 

 ―――誰だよ、こんな時に!

 セールスだったらただじゃおかないぞ!

 いや待て、元関係者ってことで警察か!?

 

 ガチャ

 

「お久しぶりですね、にぃに」

 

 え、なんでここにお嬢様が?

 あれれぇ、おかしいぞー?

 ドアを開けたら警察じゃなくてお嬢様がいたぞー?

 

「お屋敷の方は?」

「情報は得ているようですね。にぃにも知っての通りです。お父様は今回の件で留置所へ。ただ私はこれがお父様を快く思わない手の者による工作だと思っています。お父様もラモーヌ姉様や信頼出来る伝手を頼りに奔走しています。お祖母様もあのままでは敵の思う壺だと判断してのことですから。そして、私は当家とは今は関わりのない、にぃにの元に一先ず身を隠すことになりました。にぃにのご両親にも説明はしてあります。ですので、どうかよろしくお願い致します」

 

 え!?

 

「構いません、よね……?」

「は、はい、大丈夫です! お好きなだけどうぞ!」

 

 くぅぅっ! なんだよ、その上目遣い!

 断れる男おりゅぅ?

 いねぇよなぁ!!?

 

 ◇

 

 そんなこんなで俺はお嬢様を自分のアパートで匿うことにした。

 でももう暫くはこの恋心が残るかもしれない。

 

「なんか嬉しそうだな? いいことでもあったのか?」

 

 バイト先の店長が俺に話し掛けてくる。

 しまった。家に帰ればお嬢様がいるということが嬉し過ぎて知らず知らずのうちに表情に出てしまっていたらしい。

 

「え、ええ! そうなんですよ! 今日、昔の知り合いが泊まりに来ましてね!」

 

「そうか。なら明日休むか? 明日は大口の注文もないしな」

 

「え、いいんですか!? ありがとうございます!」

 

(この喜びよう……知り合いなんて言ってるが、彼女だな)

 

 そしてバイトを終えた俺は、お嬢様用にちょっとお高いファミレスのフレンチトーストとかの小洒落た物をテイクアウトして帰宅した。

 

「只今戻りました、お嬢様」

「おかえりなさい。お仕事ご苦労様でした」

 

 生きてて良かった……!

 何これ、マジで最高以外言葉が出てこねえ。

 

「お嬢様、お口に合うか分かりませんがテイクアウトをしてもらって来たので、遅くなりましたがお夕食にしましょう」

「…………」

 

 あれ、もしかして嫌いだったかな?

 そんなことはないはずだ。

 だって前は俺が焼いたフレンチトーストを好んで食していた。

 

「お嬢様?」

「あ、いえ……では頂きましょうか」

「はい!」

 

 ◇

 

「ご馳走様でした。美味しかっです」

「良かったです! あ、今お茶をお淹れしますね!」

「あっ」

 

 俺がキッチンに入ると、そこには見知らぬ料理が皿に盛り付けられていた。

 え、もしかしてこれって……!

 

「申し訳ありませんでした、お嬢様!」

 

 俺はジャンピング土下座をして謝った。

 だってそうだろう。

 あれは俺が作った物じゃない。

 ならあれはお嬢様がわざわざ俺のために作ってくださったものだ!

 それを俺はテイクアウトだなんて姑息なもので、蔑ろにしてしまった!

 

「無理に食べてもらわなくても結構です……それににぃにの手料理には負けますから」

 

「もぐもぐ……え?」

 

「もう……ふふふっ。太ってしまわれますよ」

 

「これくらい平気ですよ! 何せ力仕事をしていたので大食いですし! それにこの肉じゃが、今まで食べた中で一番美味しいですよ!」

 

「大袈裟です……」

 

「しかしお嬢様はお料理が本当にお上手ですね! こんなお料理を毎日頂ける御仁は幸せ者でしょうなぁ!」

 

「……そうですね」

 

 あっ、しまった。

 今はそんなこと言ってる場合じゃない。

 そうだ。俺は今お嬢様を保護してるんだ。

 変なこと言ってられない。

 

 ◇

 

 夜も更けて来た。

 もちろん、今いるのはワンルームの普通アパート。

 安物且つ俺の匂いが染み付いたベッドを使わせるのは申し訳ないが、お嬢様を床で寝かせられない。

 お嬢様がお風呂を頂いている間、フ〇ブリーズとリセ〇シュのダブル除菌+匂い消しをして、ドライヤーでフカフカにしておいた。

 これなら大丈夫だろう。

 

「お風呂、頂きました」

 

「狭くて申し訳ありません、お嬢様」

 

「いえ、お構いなく」

 

 や、やばい。ネグリジェなんて持ってないから、洗濯したTシャツをお渡ししたものの、色々とやばい。

 

「にぃに?」

 

「い、いえ! では俺もお風呂入って来ちゃいますね!」

 

 危ない。危険が危ない。

 お嬢様がシャツ一枚なんて……俺の理性が保たない!

 とにかく冷水を浴びて心を落ち着かせねば!

 

 ◇

 

「ではそろそろ寝ましょうか、お嬢様」

「はい」

 

 消灯し、床に就く。

 正直全く眠れる気がない。

 明日が休みで本当に良かった。

 

「こうしていると、私が幼かった頃を思い出しますね」

「……俺も同じことを思ってました」

「ふふっ。私が熱を出した日はいつもにぃにが床で今みたいに寄り添ってくれていましたね」

「懐かしいですね。それで夜更しして、ラモーヌお嬢様に二人で叱られましたっけ……」

「私が外で遊べない分、にぃには色々な花を持って話し相手や遊び相手になってくれましたね」

「お手玉やって花瓶壊した記憶もありますね」

「忘れてください……恥ずかしいです」

「あの時の焦ったお嬢様の顔、今でも忘れられませんよ(うん十万するのに怒られなかったし!)」

「もう、にぃにの意地悪……」

「あはは、でもお嬢様との思い出は俺の宝物ですから」

 

 暗くて顔が見えないせいか、はたまた昔みたいな感じだからか、気兼ねなくお嬢様と会話が弾んでしまう。

 

「そういえば、ここで生活出来そうですか?」

「お屋敷と違って距離が近くて楽しいです」

「そうですか」

「ええ、ずっとここにいたいくらいに……」

「お嬢様……」

 

 本当ならそうしてほしい。でもダメだ。

 お嬢様にはお嬢様の輝かしい未来があるんだ!

 

「お嬢様にはこんな生活似合いませんよ。お嬢様には立派で、誇れる帰れる場所があるのですから。ほら、ボロ宿に泊まると最初は楽しいですけど、一週間も泊まっていると気が滅入ってくるでしょう?」

 

 自分でもどうしてこうも卑屈になれるのか不思議になる。

 でもそもそもが俺とお嬢様は住む世界が違うんだ。

 たまたま面倒を見れる兄みたいな存在が側にいた。それだけのことだ。自分で言ってても悲しいけど、これが現実なんだ。

 

「……そうですね」

「はい。それではおやすみなさいませ、お嬢様」

「おやすみなさい……」

 

 ◇

 

 朝になって、目が覚めた。

 

「おはようございます、お嬢様」

 

 ベッドの方へ目をやると、そこはもぬけの殻。

 そしてテーブルには手紙が置いてあった。

 

『にぃにへ

 一晩ですが、突然の訪問にかかわらず

 泊めて頂きありがとうございました。

 姉様から問題解決の目処が立った

 とのことで突然ですが帰らせて頂きます。

 

 遅くなりましたが、今まで私を支え

 導いてくださったことに

 心からの感謝を。

 これからは遠くから

 にぃにの幸せを祈っています

 

            メジロアルダン』

 

 は?

 どういうことだ?

 何故遠くから?

 まさか…………!!?

 

 俺はスエット姿のままだろうが、急いで部屋を飛び出した。

 すると丁度、お嬢様が黒塗りの高級車へ乗り込むところだった。

 見知らぬ男が俺を見て、ニヤリと笑う。

 クソッ! やっぱりこういうことか!

 

 お嬢様が政略結婚して窮地を脱するしかないのか!

 

「!」

 

 そんなの許してたまるもんか!

 お嬢様は、世界で、一番幸せになってもらわないといけない!

 それがあんな見掛けだけの男に任せられるか!

 

 俺は急いで車のあとを追った。

 死にものぐるいでチャリをこいだ。

 足が千切れそうだが、そんなのお嬢様の悲しみに比べたらどうってことない!

 

 ◇

 

 車が停まっていたのは、お嬢様のお屋敷だった。

 俺は使用人専用口から忍び込み、お嬢様を探す。

 

 するとテラス席でお嬢様はあの男と対峙していた。

 

「ようやく受け入れてくれて嬉しいよ。メジロアルダン嬢。そして、僕に連絡をくれたということは僕と結婚する以外に君の父親が助からないことを悟ったんだろう?」

 

 やっぱりこいつのせいか!

 

「白々しいことを……あなたがお父様を陥れたのでしょう?」

「そうだとも。そしてこの状況は僕だけにしか変えられない。それも踏まえて、僕のラブコールに応えてくれるということなんだろう?」

「…………あなたと結婚すれば、お父様の嫌疑は晴れるのですね?」

 

 っ!!!?

 

「そうだよ。もともとはメジロ家が席巻しているレース業界の事業が目当てだったけど、今は君が一番の目当てだ。僕みたいな有能な人間に見初められるのを感謝した方がいい」

「……下衆」

「随分な言いようだね。まあいいさ。政略結婚とは最初はそういうものだ。時間はたっぷりある。だからたっぷりとその身体に教えてあげるよ。僕の素晴らしさを」

 

 もう我慢出来ねぇ!

 

「お嬢様に近寄るな!」

 

「おや? なんですか? 見たところここの使用人でもなさそうですが? 不法侵入罪で警察呼びましょうか?」

 

 お高く止まりやがって!

 でも何が何でもお嬢様は俺が守る!

 初めて会った時から、そう誓ったんだ!

 

「お嬢様にあんたみたいな男と結ばれて欲しくないんでね」

「いきなり出て来てなんだよ。気色悪い」

「俺はお嬢様の庭師兼トレーナーだ! 悪い虫は取り除く! 庭師としての仕事をしに来たまでだ!」

「庭師? 雇い主はもうオワコンだろうに、まだ雇用されている体でいるとは、雇い主が雇い主ならその下も相当なものだ。まあいい。僕は寛大だ。今帰れば見逃してやるよ。給料も出ないのに、そんな家を君が守ってやる意味なんてないだろう」

「意味ならあるさ」

 

 もうどうだっていい。

 

「お嬢様が好きだから……愛しているから、守るんだ!」

「暑苦しいヤツだな」

「そういう性分なんでね」

「というか、カッコつけてるとこ悪いけど? 愛してるとかほざいてるお嬢様を袖にしたお前が今更何なんだよ?」

「は?」

「もともとメジロアルダン嬢は僕の許嫁。なのに逃げた。それはお前が好きだからというくっだらねぇ理由でな」

「っ」

「駆け落ちでもしたのかと思ったら、こうして僕のとこに来た。ということはそういうことだろう?」

「お嬢様……俺は初めて会ったあの日からお嬢様を幸せにしたいと願ってきました! 今でもその気持ちは変わりません! ですから、どうか……俺の手を掴んでください!」

 

「にぃに……!」

 

「おいおい、何盛り上がってんだよ! お前みたいな底辺、僕の命令一つで終わらせることは容易いんだからな!」

「関係ねぇ! 庭師無礼んなよ! 銃弾の一つや二つで死んでやるほど軟じゃねえ! お嬢様は俺が守り抜く!」

 

 戦争だろうがなんだろうがやってやる。

 もう俺は自分の心に嘘を吐かない。

 お嬢様を、メジロアルダンを幸せにするのは俺だ!

 

「……素晴らしい!」

「へ?」

 

 へ?

 何この人。いきなり満面の笑みでサムズアップしてきたんだけど?

 え、精神異常者?

 

 状況を理解出来ない俺を他所に、いつの間にか俺らを囲んでいた人たちが拍手してきた。

 当然、目の前の男も、お嬢様までも……!

 

「いやあ、見事な告白でしたね! これにはお嬢様も大満足なのでは?」

 

 やけに馴れ馴れしいな。

 

「ええ、とても……録音もバッチリです♡」

 

 録音されてた!?

 

「ちょ、そんなの消してくださいよ!」

「無理ですね。バックアップもバッチリですし、もう消せません♡」

「えー……」

 

 何がどうなってんの……?

 てか本当、何この状況?

 

「ああ、申し遅れました。私、〇〇プロダクション所属の俳優でして、この度お嬢様から成金クソ野郎の役を頂戴しました!」

 

 ええー!

 

「見事な演技でした。お父様に頼んで、あなたをうちの系列のコマーシャルにねじ込むよう倍プッシュしておきますね」

「わっ、ありがとうございます!」

 

 え、演技? ならお嬢様が結婚するっていうのも?

 

「詳しい説明は私からしよう!」

 

「旦那様!? 逮捕されたのでは!?」

 

「あれは嘘だ」

 

 なん……だと!?

 

「いつから騙していたのかは、私の口から……。そうですね、にぃにが庭師を辞めた時からですね」

 

 そんな前から!?

 込み過ぎでは!?

 

「そもそもな、娘は君のことが好きだったんだ」

「……はい♡」

 

 ◆

 

 にぃにが庭師を辞める直前。

 私、メジロアルダンはにぃにから『お話があります』と言われて、舞い上がっていました。

 やっと私に告白をしてくれる決心がついた、と。

 それはもう狂喜乱舞する程に。しかしメジロ家のウマ娘として面には出さず、にぃにの言葉を待ちました。

 

『本日限りで、庭師とトレーナーを辞し、俺もお嬢様のように夢を追い掛けます』

 

 え?

 ずっと一緒にいれると思っていたのに……。

 こんな突然だなんて……。

 

 それからの私の行動は早かった。

 まずはにぃにが庭師を辞することを認めたお父様を軽く吊るし……問い詰め、私に協力することを約束させました。

 それからラモーヌ姉様やお祖母様にも私が泣いて協力を頼めば、二つ返事で快諾してくださいました。

 役者のオーディションやあわよくば私のハジメテを頂いてもらおう作戦やら色々と準備が必要で遅くなりましたが、にぃにの言質……コホン、本心が聞けて満足です。

 

 ◇

 

「いやぁ、良かった良かった。これでいい補佐が出来たな。君ならアルダンと共にラモーヌを助けてくれるだろう」

「え、そんな大役を自分が!?」

「何、私だって元は一般人だ。妻にアプローチされて今に至るんだよ」

「えええええ!!!!?」

「娘の手段を選ばないのは母親譲りでね。私の時なんかは人権とは何なのだろう、と真剣に悩んだものさ。懐かしいなぁ、あっはっは!」

 

 苦労したんですね、旦那様……笑ってても目は笑ってないですもん。

 

「ということで、明日は披露宴だ。今日はゆっくり休んで、明日に備えてくれたまえ」

 

 ん?

 

「ああ、もちろん世間を騒がせてしまったお詫びに事の顛末を後日、今日録画した二人の素晴らしい愛をお茶の間の皆さんにお届けする予定だ」

 

 んんん?

 

「あ、初夜だのなんだの気にすることはない。私も妻も早く孫の顔が見たいからね。ラモーヌももう自分のトレーナーと結婚しているが、ラモーヌは結婚披露宴をさせてくれなくてね。だからラモーヌの分まで盛大にするつもりだ。東京レース場を貸し切っているし、この屋敷からレース場まで白のオープンカーでみんなに晴れ姿を見てもらうからね」

 

 そして俺は考えるのを放棄した。

 

「にぃに、幸せにしてくださいね♡」

 

 この笑顔のためなら、俺はなんだってする。

 

 俺がお嬢様に大声で告白した時の映像が本当に全国放送されて身悶えたのはまた別の話。




読んで頂き本当にありがとうございました!

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