もうそろそろ彼と彼の周りに暴れてもらおうかなぁ()
2022,6,19 誤字訂正
僕は彼と共にスタジアムに来ている。彼は僕に名乗る気はないらしい。
「真っ向勝負だな」
「どんな魔法でもご自由に」
彼の目線が僕のチョーカーに行く。
「そのチョーカーは何だ」
「能力を制限するものですよ、すぐ
「それは外さなくていいのか?」
「逆に外して欲しいですか?」
「できれば、だな」
「・・少々お待ちください、身内の者に渡してきます」
観客席にいる彼女の方へと向かう。彼女は少し不安そうだ。
「良いんですか、あの相手と戦って」
「あいつか?」
「名家の結構な腕前の人ですよ。それにこのチョーカーを外すと危険だと・・」
「うまいこと制限するよ、それとこれらを」
「魔力回復薬と短剣ですね」
「こっちは絶対に飲んだり割ったりしないように」
「はいはい分かりましたよ」
取り敢えずこれで彼と平等なはずだ。カウントダウンをする者に合図をする。
「これより
勝敗はどちらかが降参または追い込まれた状態になった場合のみとします。
制限時間は無制限、魔法制限はなしです。良いですね?」
双方が互いに同意するとカウントダウンを行う者がコインを出す。
「このコインが地に落ちたとき開始の合図とします」
コインは高く打ち上げられ、重力に引かれ落ちていく。
・・あの高さなら落下時間ぐらいは計算できるが今回は無しにしよう。
コインが地面に当たった。軽い金属音と同時に魔法がぶつけられる。
「
「
三発の黄色く光る弾を防御を強化して受けたが痺れを感じる。これが属性の強みか。
「
二度目は流石に避ける。一発目と違い二発目は単発だ。
流石に痺れは危険だ。動きが止まるとこちらは無防備になる。
まぁ当たらなければどうということはないのだが。
「
もっと遊び感覚だと思っていたがどうやら違うらしい。
もうそろそろ向こうも本気を出しそうだな。
「
何が来るかと思ったらちょっとした巨人じゃぁないか。そう思い接近して格闘に持ち込もうとした瞬間だった。
「
完膚なきまでにぶっ飛ばされた。
こいつ・・思ったより動くな。
「痛ってぇ」
こいつの動きは早くて強い。おまけに属性付きだ。大きな魔法は使いたくはない。
「
「
やっぱり撃ち落とされた。持久戦は分が悪い。
ほぼ勝つ手はないか。
そう思った時に声がした。
力が欲しいか?
そりゃ力が欲しい。負けたら何の意味もなくなる。これまでも、これからも。
どうしても倒したいか?
勿論だ。先ほどと同意義のような質問だ。
なら俺が代わってやる
俺が?お前は誰なんだ。
聞こうとすると手と足の感覚がなくなってきた。視界もぼやける。
お前はここで寝ていろ
起きる頃には全て終わっている
沈みゆく意識の中で抵抗できない力に押さえられ意識が途切れた。
§
抵抗が急になくなった。今まではこの
「おいおい、もう降参か?」
「まだ終わりはしないさ」
腹の底から冷えるような声がした。声の主は俺の前のあいつなのか?
目が赤く光っている。
「来ないならこちらから行かせてもらうぞ」
明らかに走る速度が速い。今までのは何だったのか。
「
「反応が遅い」
彼は見え切った攻撃を避けるように動いた。
まさか。
「
「
2本足から4本足へと移行する。
彼は何かになっている。
本来獣化は人が動物の特性を取り入れることで使いこなす技だ。しかしこいつは違う。
そもそも人間をやめようとしているのだ。完全な動物としての生を受けようとしている。
誰かが俺に体当たりした。その瞬間神獣が元いた場所を掠める。
「あんなのぼーっとしてたら死ぬわよ‼︎」
フォーマルハウテ・ルーナだった。こいつはあいつの差し金じゃなかったのか。
「どうするの?これじゃぁ誰も止められないわよ」
「何故だ?」
「見たらわかるでしょうに。魔法はそもそも当たらないし近接でやろうとすれば確実に肉塊よ」
「どうすればいいか分からないのか?」
「正確にはこんなになるまでしたことがないっていうのが答えね」
「動きは止まらないのか?」
「止められたらとっくの昔に止めてるわ」
どうやら大問題のようだ。無理矢理魔力を使って痺れさせようか。いいや、そもそも効くのかさえ分からない。もはや人間を超えているためだ。
ふとした瞬間に見失った。どこに行ったか探すが見当たらない。
「
「もうそろそろ出てくるのでは?」
「あの人にとっては延長は簡単なのよねぇッ!」
大きな音とともにフォーマルハウテ・ルーナが消えた。いや、飛んでいったという方が正解か。
「解除」
奴の動作がいきなり止まる。
「ンだよチラチラと邪魔しやがって・・あぁ黙れ黙れ、代わってやるよ。
奴は
「ぐぅっ・・が・・」
腹の底から冷えるような声は消えた。その代わりに見えたものは苦しむ
ーあれはなに?あかいいろをはなつものはちなの?ー
おれはなにもわるくはない。あいつがじぶんでじぶんをこうげきしたんだ。
ーでもなぜ?おれがああなるまでやつをおいつめたせいじゃないの?ー
やつがじぶんからさしたんだ。みているやつはぜんいんそういうはずだ。
ーほんとうにそうなの?ー
じゃあなんだっていうんだ!おれがわるいっていうのか!
ーじゃあかんがえてごらんよ。じぶんがどんなことをしたのか。ー
うるさい!うるさい!おれはこのせかいでいきのこるためのことをしたんだ!
おれがこのせかいにいてはいけないというのか!
ーじゃあさ。ほんとうにそうだったら?ー
ーほんとうにそうだったらきみはどうするんだい?ー
「・・・・・・」
目の前のことが理解できない。言われていない言葉が聞こえる。全員がこちらを見ているように感じる。
憎悪。
執念。
怒り。
憐れみ。
たくさんの感情が顔から溢れている。しかしその目は俺だけに当てられる。なぜだ。奴と俺とで戦い、勝っていたのは確実に奴だ。なぜ
その時理由がわかった。勝者を称賛しないのではない。
今まで無属性魔法は属性魔法に劣ると言われ続けてきた。無属性魔法の使い手が属性魔法の使い手に勝利するなどあってはいけないのだ。
そして勝者が自ら体に武器を突き立て体から血を出させている事実を見たくはない。関係者になってしまい、家名に傷をつけるような事はしたくないのだ。
その結果何の問題も起こさず、また属性魔法使用者である俺に視線が向くのだ。
誰もが予想だにできなかった事態が起こりスタジアムが鎮まる。
怪我人、それも重症のものがいるというのに誰も動こうとしない。
「イタタ・・って何やっているんですかヴァル!そんなに失血しているなんて!」
唯一スタジアムの壁際に叩きつけられるような動きをしたルーナが彼の元に駆けつける。
「これは・・魔力構成型武器!ヴァル!聞こえますか!ヴァル!」
彼は体に武器を貫通させたまま動かない。
「
スタジアムに声が響く。その声でスタジアムにいる人間も騒がしくなった。
ーちょっと先生に報告するわ。あとは任せた。ー
ーあれは無理だろ。ー
ー完全に意識ないじゃん。諦めようよ。ー
ー肉体は戻せても出血は戻せないでしょ。ー
ーいつかは絶える命だったんだよ。呪われた血の運命だよ。ー
ここにいる人間が全員彼の蘇生を諦めている。すると彼女から一つだけ呪文が溢れる。
「
全員の緊張が張り巡らされる。動きも明らかに規制されている。これが本来の力か。
「もう一度聞きます。この中に回復術式が使える方はいますか?」
明らかに声に魔力が混じっている。背中に寒気を感じる。
「・・はぁ、本当に使えない。対戦申込者、この戦闘は一時中止ということにしていいでしょうか」
流石にこのような状況で戦い続けたくはない。首を縦に振り肯定する。
「ご賢明な判断感謝いたします。では先に失礼させていただきます。」
彼女は彼を抱えスタジアムの出入り口より退出すると緊張が緩くなる。スタジアムの賑わいも戻った。
正直に言おう。彼は想定の数十倍以上強かった。そして彼女もそれと同等のレベルと言えるだろう。おそらく今までで一番仲良くしたいような人間だ。
俺は宝石よりもすごいのを見つけたかもしれない。
それと・・
世界は広いものだと思いつつ新たなことが知れた。今回の収穫はこんなものでいいだろう。
魔力構成型武器
・・魔力を一定の形に形成させることでで作った近接戦闘武器。自身の魔力により破壊力・操作性が強化されている。サイズ・威力は魔力使用量に上下される。
なお使用者にもその効果が出るため使用者の手に防御強化魔法をかける必要がある。