壊れた少年のマーチ   作:オリの中のカナリア

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題名通りの展開をやっと入れられるぜ!
ちなみにですが神はこの世界にいます、出てこないかもしれませんが。


もし、赦されるのなら

僕は寮へと帰った。その先の現実を知らずして。

 

「・・そういえばそうでしたねぇ」

 

部屋はただひたすらに白い風景が広がり、床にはちり一つ落ちていなかった。

天井には照明が一つついているだけだ。

頭の中にある事実が浮かぶ。

 

もしかして:何も持ってきていない

 

全くもってその通りである。

大抵の人ならば驚き、後悔しただろう。しかし、僕は大抵の枠には入れなかったようだ。

 

「生活用品を持ってきていませんが・・まぁ問題ないでしょう。生きられますし」

 

正直に言ってしまうと生活のしやすさはどうでもよかった。

部屋がある。それだけの事実であると理解していた。

設備なんてどうでもいい。ただ、明日が確実に来ることだけが重要なのだ。

 

「明けない夜はないそうだが・・僕には関係ないな」

 

僕の未来はどうでもいい。だって。

 

確実に終わることのない悪夢が待っているのだから。

 

§

 

昔から聴き慣れていた鈴の音に近い声がする。

 

ねぇ、こっちにおいでよ

 

向こうからも声がする。

 

こっちのせかいはたのしいよ

 

声のする方からたくさんの手が伸びてくる。

 

さあ、このてをとって

 

そのたくさんの手は自分に対して迫ってくる。

 

えいえんにおどろうね

 

その手は、自分がよく見る赤黒く染まった、指の欠けた手だった。

 

ねぇ、にげないで

 

たくさんの手が行く道を塞ぐ。何のために追うのかを聞いた。

 

そりゃあ、もちろん

 

 

き み を ゆ る せ な い か ら だ よ

 

 

もう嫌だ。忘れたいんだ。

 

わすれるの?だったら

 

 

さ ら に わ す れ ら れ な い よ う に す る し か な い ね

 

 

いきなり現実の世界に戻される。息苦しい。それにいつもより目線が高い。

 

-コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス-

 

また君か。僕に何の恨みがあるんだ。

 

-コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス-

 

・・はぁ、いいよ。僕を殺してしまいな。そのままの状態でいれば僕は死ぬさ。

 

-ウラマナイ?ナゼ?-

 

あんたを恨んだところで何になるんだ。僕は死ぬ。お前はやりたいことを達成できる。

お前はそれを望んだんだろ。だったら僕はお前に従うだけだ。

 

-ツマラナイ-

 

首に感じる圧力がなくなる。と同時に自分の足に地面を踏む感覚が戻る。頭に血が流れる感覚がする。視界がモノクロから微かな色が感じられるようになる。

 

「けほっけほっ・・本当にあいつは何がしたいのか分からんな・・」

 

毎回半殺し・・というにはかなり死にかけだが、この状態で放っていく。何がしたいという要求もなく、ただ追われて、首を絞められ、興味を無くしたように放ってしまう。

 

「何かを忠告するのならまだありがたいが・・」

 

首元を触れば指の形に沿って皮膚がへこんでいた。

 

「言わないと分かんないなんて不条理だねぇ・・」

 

もう空が明け始めている。もうすでに明日の世界なんだと自覚する。

 

「今日は厄日かな・・まぁいつものことだが」

 

今日は運命を変えるための日だ。気楽に行こう。

 

§

 

「来たか」

「遅れてすみませんね、ちょっと必要なものが多くて」

「問題ないです、達成までの計画の予想内ですから」

「そんなの考えられるんですね・・私には無理だけど」

「さぁ、行きましょうか」

 

昔の人間はこう言ったらしい。

ー選択肢とは人がいればいるほど広がるものだー

この四人で一体僕はどれだけの選択肢が広げられるのでしょうか。

 

「一旦三人で行ってください。僕は確実に追いつけますから」

「ヴァル、もう気にする人はいませんよ」

「周りからの目を考えると妥当かと思います。それに彼女との契約もありますし」

「彼女の家を再興させる、ということだったな」

「それを達成するための手順のようなものですから許してください」

「・・分かりました、行きましょうか」

 

三人を見送ってやる。さぁ、ショータイムの始まりだ。

 

 

 

彼らは速い。何故なら彼らは魔法を手に馴染ませているから。

だったら僕はどうするか。答えは簡単だ。

相手以上の技量と手順で上回ればいいのだ。

だから僕は色々試す。試してレポートを書く。書いたら欠点を見つけ改良する。

その三つのサイクルを常に行えばいいのだ。

 

 

「今回は圧縮魔力をそのまま使ってみようかなぁ」

 

圧縮魔力を使えば魔法の質は上げられる。その器が耐えられればの話だが。

僕にとってそんな問題は消えてしまうのだが。

 

抵抗(レジスト)

加速(ブースト)

 

火力を足に集中させ力を解放させる。なるべく上に飛ぶ形で威力を調節することで距離は調整している。

が。

 

「うっわヤバすぎぃこの速度!」

 

目の前の風景が見えては一瞬で流れる。上に少々飛ばしてこれだからおかしな話だ。

着地の際にかなりのオーバーランを発生させること以外は優秀だ。

 

「・・水平に使えば地面に当たってミンチ確定だな」

 

自分の頭も今日は冴え渡る。なかなかにいやらしい発想を我ながらするもんだ。今日の夢のせいにしておきたい。

 

「ではではひとっ飛びと行きますか」

 

方向と角度を決める計算式を立てる。

 

「今放物運動でθ≒63、t≒19、h≒2600を通るように動いたから初速度は・・約250kmか。

んでもって移動した距離は・・約2.2km程だから右方向に42度回転させて角度を40度にしてさっきと同等の火力で飛ばし3kmを跳ぶには空気抵抗入れて3.5kmで飛ばそうかな。

となると・・」

 

周りから見ればただひたすらにヤバいやつである。異常な速度で計算式を立て超高速で跳び、失敗すれば肉体が吹き飛ぶ危険な遊びをやっているのである。ただし、これが彼の唯一の生きがいであることもまた事実である。

 

そして彼は跳ぶ。綿密な計算の中で見つけられた最適解は正確な距離になる。

全ての選択肢はこんな風にはっきりしてればいいのにな、と彼は思った。

 

§

 

「んでもってここがルーナさんのところのラボですか」

「久しぶりだ」

「高そうなのがいっぱいね」

「こちらです」

 

そう言って案内されたのが僕がルーナと出会った場所である。

 

「ここは?」

「防音、耐衝撃、防火仕様の部屋ですね。ここが最適かと」

「サンキュ、ルーナ」

「で、話ってのは?」

「単刀直入に言う。もうそろそろヤバいのが来る可能性がある」

「・・根拠は?」

「半分山勘、半分実情だな」

「実情?」

「ジュークは分かっているのだろう」

「・・ああ、ある程度はな」

「それならスムーズに進められそうだ」

「どゆこと?」

「要約してしまうと『どこぞの誰かにヴァルフは狙われている』てことだ」

「なんでヴァルフを狙うの?」

「・・まぁある程度は想定できている」

 

理由は簡単だ。ほぼこれで確定だろう。

 

「神は邪魔なものを消したいらしい」

「・・へぇ、分かるんだ」

「そんな気がする。あいつらは直接手は汚さない」

「なんか神をかなり貶してる気がするけど・・」

「まぁ僕にかかるだけですし。話を戻しましょう」

 

かなり脱線したが引き戻す。

 

「んで来る敵がやばいかもしれないです」

「強さは?」

「国一個吹っ飛ぶくらいでしょうね」

「・・それ『ぐらい』で示す量じゃないでしょ」

「ついでに言うならば僕をつけている奴らも同時に来る可能性もあります」

「・・結構詰んでるのでは?」

「結論そうなんだけど避けるわけにはいきませんから」

「あぁ・・はいはい」

「そこで相談なんですけど、あの学校にまだ行きたいですか?」

「「「?」」」

 

まぁ言ってしまえば何も考えずにやるのであれば楽だろう。ただし、護衛対象があると難易度はかなり増す。

 

言ってしまえば周りを犠牲にしながら戦うか静かに倒すかを決めるということだ。

 

「正直なところ狙いはよく分かりません。学校か、それとも国か、もしくは僕か」

「どうするつもりなんだい?自爆するとかは言わないでくれよ」

「あら、勘が鋭い方ですねぇ。全くその方針()()()

「“でした”・・ということは別のことを?」

「解決できるだけの“手札”は揃いましたから。ここらへんであまり使わずに行こうと思いましたがどうやら使わせに来てるので」

「その誘導にわざわざ乗るのですか?」

「そういうことです」

「楽に倒したければ街と学校を捨てろと?」

「それはあなたたちの選択によって変わります。ですからあなたたちは選択をしてください」

「両どりはできないのかな?」

「・・それが選択の答えならできます」

「ならばそうしよう。最善を目指す答えは素晴らしいと思う」

 

確かにハッピーエンドは大事だと思う。ただ。

幸の反対側には不幸がいるんだ。

 

「それではあなたたちに一つ言っておくことがあります」

「なんだい?」

「この問題が出たときあなたたちは周りの人々と共に逃げてください。僕が一人で討伐します」

「出来るのか?」

「生存帰還確率は低いです。ですが僕が一人で行った際の達成可能確率はほぼ確実です」

「それでいいのか?お前だけが危険になる必要性はないはずだ」

「だって」

 

背中から何かが這い上がる感覚がする。気持ち悪いほかないが耐える。

この後ならば解放してもいいから。どうか。今は出ないでくれ。

 

「本来どこかで死んでたはずの命が生きているんです。ここで散らせるのが正解かと」

「その選択は違うだろう?」

「どこがです?僕は自分で生き方を決めているだけです」

「君の選択が間違いだと言っているんだ!」

「間違いではないと思いますよ。少なくともあなた方の周りはそう思っているのです」

 

そうだ。少なくとも僕が歓迎される日なんて絶対来ないのだ。

 

「何が嫌なんだ?何から逃げたいんだ?」

「僕は嫌なこともありませんし逃げていません。ただこの世界を変えるための必要な犠牲なのですから」

「・・手伝えないのか?」

「僕を手伝う方が邪魔になるかと思います。無駄な被害も広がりますし」

「・・勝手にしたまえ。君には失望した」

 

これは君への祝福だ。

 

「最後に君に言っておきます」

「この討伐は、人間と人間がぶつかる可能性があります。攻撃範囲に入らないように」

「これだけは忘れないでください。でないとあなたを当日殺してしまいそうです」

「僕はあなたを殺したくないです」

 

「・・そうか。役に立たない忠告をありがとう」

「お褒めに預かり光栄でございます」

 

今回のやっていることは危険でしかない。むしろジュークの方が正しい。

 

「3人に僕としての最後の指示だ。絶対に避難している群衆から目を離すな」

「・・それだけか?」

「「・・」」

「それが僕としての最後に伝えたかったことだ。死ぬやつは一人でいい」

 

今日は解散だ。来たるべき時の準備をしなくては。




明かされた不確定な未来。輝く光が時間と共に消えていく。
明かされた秘密は徐々に神々の時計を狂わせる。
変わるものと変わらないもの。人々は選択する。
一方、彼の所には異常が発生していた。
次回! せめて、人間らしく 目標は、達成するために。
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