前回の続きです
もう空には月が登っている。
今日は満月のちょっと手前ぐらいだが・・綺麗なものは綺麗だ。
まぁこのような綺麗なものを映す空を汚す奴らがいるから問題なのだが。
「ルーナ、今日は早めに寝てください。僕はこれからこいつの代わりとなるデバイスの作り方を考えないといけないので」
「私は手伝えませんか?」
「手伝ってもいいですが・・数値系統について理解しなければなりませんよ?」
「・・それって難しいですか?」
「覚えて使うだけです。そこまで難しくないと思いますが・・」
「なら教えてください!」
「・・分かりました。基本からいきますか」
「よし、これで・・」
「あっ、そういや僕は部屋まで動けないんでした」
「なら
「まぁあの中ならジェネレータのおかげであったかいしな。良いと思う」
そういやルーナってどの辺りまで理解しているのだろうか。
そもそも僕が使っているものはこの世界で使えるのか?
それにしてもルーナ楽しそうだな。そんな面白いもんじゃないと思うが。
「あ、ルーナはここに来てもらえるか?横だと狭いし」
「・・だからといってあなたの上に座るのはどうかと」
「だめ?ルーナあったかそうだけど」
「人を暖房器具と一緒にしないでください。それに色々と問題があります」
「どこら辺?」
「え?えーっと、その・・」
「右だと僕の書いている手が当たるし、左だと僕が君に教えにくくなる。だから前に」
「・・分かりましたよ。変なことはしないでくださいね」
「元からするつもりはないが」
「先に言いましたからね!何かしたらすぐ言いますよ!」
「・・教えるからある程度の発言権は残してくれよ」
まぁ教えるだけだしな。特に何かするとかはないだろう。
§
うん、この構図やっぱダメだと思うよ。主に私が。
だって体の横に彼の手があって耳元から彼の声がしてこの部屋があったかいとかもう色々ダメだと思います。総勢一人による全会一致!結果アウト!閉廷!
っていうことが頭の中で行われていた。ああ、目が無駄に冴える。
「ルーナ、大丈夫ですか?」
「ええ、ここのSが面積でそれはs-aとs-bとs-cをかけてルートと呼ぶ記号で平方することで求められる公式で、sはa+b+cを2で割ったものなんですよね?」
「そう。それでこれが2つ目の文で言った『sはa+b+cを2で割ったもの』を1つ目の文で行った式に入れて計算したものです・・ルーナ?」
「はい、大丈夫ではないけど大丈夫です」
「それダメじゃん。どこが分からなかった?」
分からなかったのではなくこの構図がアウトなんです!
とは流石に言えなかった。というか何でヴァルは真剣に教えられるの?
「いえ、分かるんですが頭が・・」
「流石に眠いか。眠いなら寝なさい。・・自分の部屋で」
「何でこんなことを思いつくんでしょう」
「ずっと考える時間があったからだよ」
なんか嫌だ。差を認めたくない。でも私を認めてほしい。
「何でヴァルはこんなにも難しいことを知っているのですか?なんかずるいです」
「いやずるいは違うだろ」
「じゃあなんで私に対してこんなに教えてくれるんですか?何も知らない私よりもいろんなことを知っている他の人の方がもっといいはずです」
自分でもわかるほど嫌なことを言っている。
「それは・・説明しにくいな」
「ほら、私みたいな面倒な人より他の人の相手をしたほうがいいんじゃないですか?」
嫌だ。離れて欲しくなんてない。
「それだけは違うな。君は面倒くさいが真剣に考えてくれる。もともとこれはじっくり考える人が考えるべき勉強なんだ」
「つまり私は頭の動きが遅いってことですね」
「そうじゃない。君は理解する速度は早い。熟考して答えを導くタイプなんだよ」
「じゃあもし私があまり考えずに答えを出すような人間だったら教えていないということですか?」
今日の自分はいつもに増して醜い。こんな聞きたくない答えを聞いたりなんて普段ならしないだろう。
「うーん、それはどうだろうかねぇ」
「・・それでも教えたいと思うのですか?」
「全く思わない、そう今までだったら言っていただろうね。残念ながら昔の僕には戻れないようだ」
「つまり?」
・・ああ、私は最初からこちらの答えを必要としているみたいだ。
「君には僕の考えを理解してほしい。せめて僕に一人の共感者が欲しい。だから教えたいと思う」
私のことを必要だと言ってくれた。私を彼にとっての“特別な”一人に数えてくれた。
「しょうもないよな。こんな大罪を犯した罰として一人だけで生きる状態になったはずなのに。なのに僕は隣に立つべき人間を要求してしまっている。いつの間にか僕は自分で立てないほど脆くなってしまっていたなんて」
「そんなのどうだって良いんですよ。人間はみんな何かの罪を持っているんです。人間は一人だけで生きるものじゃない。誰かと共に助け合うことで誰もが生きるのです」
「・・ふっ、まるでこれまでの僕は人間じゃなかったような言い方だね」
「自分でも言ったじゃないですか。『自分達は使い捨ての兵器である』って。兵器は人間じゃない。つまり今まで人間ではなかったんですよ」
「ならば改めて聞いておこう」
彼がこちらを見る。
「君は僕がこんな人間以下の生活を送っていたと知ってもなお、あなたの下で生かしてくれますか?」
「ええ、人間は間違えるものだもの。間違えたなら正しくすればいい」
「間違えたのなら正せばいい、か。今までに会った奴らに言えばよかったな」
「本当にあなたはもったいない考え方をしていた」
「ああ、世界にはこんなにも素晴らしい人がいると教えてやりたいものだ」
「・・貴方は、私についてどう感じているのですか?」
「・・どう、というと?」
ああ、貴方は重要なところはすごく聡い。
「普通はこんな状態だと大抵の人は手を出してくるものだと思っているから」
「まぁ・・そうだろうな」
「だからちょっと聞いてみたくなったの。そんなに魅力が無いかって」
「まさかだが・・全く手を出したくないなんて思っていたのか?」
「ええ、だからちょっかいをかけることがないのかと」
「はぁ・・全く。こちらの苦悩も知ってほしいものだ」
「ふぇ?」
彼は立ち上がり私を座席に押し付けつつ足の間に左足を入れ拘束する。
「君は本当に僕が手を出そうと思わなかったと思っているのかい?」
「あ、え、ええ。最初は警戒していたけど手を出す雰囲気がないから・・」
・・あ。本当に呆れた顔してる。
「本当にそう思っているのならやめた方がいい。男は全員下心あると思っておけ」
「・・つまり貴方も?」
「ああそうだはっきり言ってやろう、僕はあんたのことをズレた目で見てる。それに状態をわかっているのか?」
「いえ・・」
「鍵がわからない密室で男女2人がくっつき合ってんだ。ここまででも聞こえが悪いだろ」
「まぁそうね」
「それに追加して主導権を僕の方に取られているんだ。どういう状態だ?」
「・・バレたら?」
「人生が社会的に終わる。まぁそれで済むなら軽い方だが」
そこまでしたくなるということはつまり・・ま、まさかね。
でもとりあえず聞いてやろ。ヴァルの言いたがらないところを見てみたい。
「つまり私が好きだと?」
「ああそうだ悪いか?」
・・ん?
「・・!!」
「なんか問題でもあるか?」
・・脳が処理落ちした。
「あえてお前とやりたい事まで言わないといけないか?」
ちょい待って、ねぇ待って。
「まずお前と付き合いたい。抱き枕にしたい。身も体も心も蕩けさせたい。他にも・・」
「ちょ、す、ストップ!」
「何だ?」
「す、好きって意味分かってるよね?」
「ああ、一生の伴侶の相手となる候補を探し出す一段階目の判断のことだろう?」
「あ゛・・‼︎」
まさかの処理落ち2回目。
どうやら確定演出が入ったようです。
「おい、大丈夫か?」
「・・・・」
「ああ、僕が好きと言ったことに傷ついたんだな、すまなかった。訂s・・」
「え、ちょ、ストーップ!」
「お、戻ってきた」
「別に傷ついてません!むしろ喜びで何回か頭が処理落ちしただけです!」
「喜べるのか・・(引き)」
「そこ引かないで!私まで困るから!」
「ええ・・(困惑)」
「もう!何でそうなるのです!」
「いやそうだろ。『めんどくさい女』的行動をしたと思ったら今度は狂喜乱舞だからな」
「乱舞はしてません!って何か話そうとしたのに忘れてしまったじゃないですか!」
「おお良かったな。変な質問して恥ずかしくなるとこだったぞ」
「全く良くないです!本当になんて言おうとしたんでしょうか?」
「知るか。超能力者じゃあるまいし分かるわけないだろ」
「でしょうねー。少し残念じゃないですか?」
「全く」
「まさかの全否定」
即答だった。
「そりゃそうなる義理ないし」
「・・もしかして隣の子がかわいくてもときめかないタイプ?」
「何だそのタイプは。まぁそういうことになるがな」
「うわぁ・・その子かわいそう・・」
その子は主に私だが。
「憐れむな。こっちまで可哀想に思える」
「いや思いなさいよ。あなたが原因なんだから」
「いや絶対好きにならないだろ」
あ。そういやこの人めっちゃ自己肯定感弱いんだった。
「あなたに1つだけ言っておきます。少なくとも私はあなたが・・」
「やめといた方がいい」
「あら、どうして?」
「別にお前がどう思ってくれても構わない。ただ、好意だけは今は受け取れない。この罪を全て清算しきったらその好意にも応えられるようになる。だから」
「だから?」
「その瞬間が来るまで僕をみて評価しろ。間違いだと思ったならそこでやめれば良い」
・・本当に真面目な人です。私はあなたといられれば良いだけなのに。
「・・分かりました。私からもひとつだけ、言っておきます」
「何だ?」
「絶対、私の元に来なさい。私はあなたを待ち望み続ける」
「・・ふっ、まさか来ないと?そんなわけがない。こんな
「まわりくどいわ。一言で言って?」
「絶対お前をもらいにいく」
「うーん、70点くらいかしら?」
「微妙だな」
「あとの30点は私を持っていった時に来たらあげるわ」
無茶苦茶だ。そもそも私を連れて行く前提で話を進めてしまっている。
「・・どっちにしろバカだな、僕たち」
「私に至っては人生まで決めさせられたわね」
「まぁ決めたのはお前だが。安心しろ。損は絶対にさせない」
「・・本当、ずるいです」
この人はさらっと他の人が言えないことを言ってくる。
「疲れました・・眠いです」
「なら自分の部屋で寝ろ」
「でも外は寒いですよ?」
「・・はぁ、いいさ。ここで寝ていい。ただし僕はここで座って作業する」
「大丈夫です。あなたは手を出してこないので」
「そういうことでは・・まぁいい。寝とけ」
「なら位置交代ですね」
「まぁそうなるな」
彼と入れ替わる。やはり少し狭い。
「寝ていいぞ。絶対にお前を
この人はやっぱり優しい人だ。
そんなことを考えながら睡魔に落とされた。
§
「寝た・・か?」
彼女に少しだけ抱きついてやる。
「うん、あったかい」
特に表情の変化はない。寝てしまったようだ。
「バルバトス、アレ、使えるなら使って」
そういうとバルバトスは即座に反応する。
バルバトスは神経接続を介した補助管理によって肉体のバランスを保っている。
そして同時に肉体に対し働きかけることもできる。
「
バルバトスが肉体に対し必要最低限の電流を脊髄を通して流すことで細胞に対し強制的に修復能力を上げさせ、僕が修復したい部分を魔力で元の細胞の「設計図」を作る。
これにより回復における「本質的な回復速度」を上げることが目的だ。
「・・しょうがないとはいえ少し痛いな」
無理やり、しかも存在しない位置から電流を発生させるため痛みが伴う。
彼のような苦痛に慣れた体でさえ痛みを感じさせる電力を流すため本来はかなり痛い。
「・・座席倒してやるか。バルバトス、少し光を落としてくれ」
バルバトスに頼めばすぐに対応してくれる。
本来使わないのだが前後左右には多少のゆとりを持たせている。そして
そもそも使う予定などなかったが彼女のために倒してやる。
彼女の頭が胸元の辺りにくる。
「本当にかわいらしい奴だ」
髪は銀に輝き、一本一本に艶がある。
彼女の腕は細く、白い。雑に触ればすぐに砕けそうだ。
「ほんと、ガラス細工のようだな」
やはり目がいくのは胸だ。2つの曲線が織りなす双丘は触れば非常に柔らかそうだ。
「・・いやいや、流石に触れたら何かを失う気がする」
例えば倫理観とか。あれ?でも好きって言ってたよね?
自制心とか。でもこれはそもそも自制しろという方が無茶なのでは?
関係性とか。進めても問題ないようだが。
あれ?触っても問題なくね?事故ってうっかり・・ってことにすれば・・
「ダメだダメだ。流されちゃダメだ」
・・うん。でも気になる。
「ぐぅ・・」
ここまで迷ったことは初めてかもしれない。僕は、どうすれば良いんだろうか。
どうやらバルバトスから提案があった。聞いてやろう。
「・・いや食っちまえは一番ないだろ、それ避けてんだぞ?」
提案内容は「迷うぐらいなら夜のうちに腹を決めて食ってしまえ」とのことだった。
・・いやもう事故で言い切れないよ?
「・・生まれて初めて煩悩が邪魔に感じたな」
まぁ向こうの世界でみっちり教え込まれたからどうすれば良いか分かってしまうのがさらに辛い。
「・・朝日まで無事でいれたら良いが」
まだまだ夜は長い。
しかし開けない夜はないものだ。
第一章 一匹狼 終了!
最後は自分がかなりきつかった。腸ぶっ飛んでくところとか頭を砕くところとか悲鳴とかをある程度軽くしたのがしんどかった。
7/10(第二章)まで待っていてください。エタらせる気は無いです。
理由はちょっとだけ現実世界を頑張るからです。
みなさんも頑張りすぎない程度にやりましょう。追加依頼と残業と時間外労働は程々が一番です。
この後に人物紹介載せときます。やる気出たので。
それでは第二章が始まるまでドロンしますね。第二章で待ってます。探さないでください。