A,マジです。
「それとあともう一つ片付けたいことがありまして」
「もう一つ、ですか?」
「ええ、1分程代わってもらっても?」
「問題はありませんが・・」
「ならよかった。《これで違和感から外れられる》」
「違和感、ですか?」
「ええ、気持ち悪くてしょうがないです」
ステラのもとへと向かう。
「ステラは昔のことを今もできるか?」
「うん」
「・・そう」
ステラの肩に手を置く。すると幾秒かの静寂の後に倒れた。
「本来ステラはこれを見切れるはずなのですが・・」
「影武者、ってことですか?」
「ああ、本物はどこかにあるんだろうな」
「どうやって判断を?」
「
「言いましたね。でもそれが普通では?」
「ステラの場合は守る
「それに?」
「さいは元からふるだけだ。準備なんていらない」
姿、言動、記憶、使用魔法、癖といった仕草に関しては確かにステラと差異はない。
しかし、改造魔法は作った通りに魔力を流さなければ完成しないため見逃したのだろう。
「さ、開きましょうか」
『やっとこさかいな。遅いなぁ』
「・・やっぱり開かないでおこうかな」
『文句言うて悪かった!この通りや!・・って言っても見えんか。出してくれ。誠意見せたる』
「面白いことを言うね、君。採用だ。ルーナ、離していいよ」
本から手を離すと勢いよく本の表紙が開かれる。
その中から出てきたのはー
「ホンマ、何年ぶりの外やろかな。とりあえず外にいこか」
危険だと思われる訛りまくった何かだった。
「ちょい待て、帰んな」
「おいおい、そこの坊主が開けたんかいな。近寄んのはやめといたがええで。ウチは強いからな、身体が持たんくなる」
「そこに五点倒立しな」
「何でや。ウチより強いこと証明してくれんならええで?」
相当自分の強さに自信があるらしい。
「・・何をすればいい」
「そやなぁ・・せや!そこん山にデカい魔物がいたやろ、そいつを6匹倒して持ってき」
「バルバトスを使役している、ではダメか?」
「おいおいあんちゃん、それはそこのでっかい山吹き飛ばせ言うとんのとおんなじや。人にできるわけないて。それにウチの知り合いやからな、あいつの強さはよう知っとる」
「そうか。ならバエル、見にいくか?バルバトスを」
「あんちゃん何でウチの名前を知っとんねん。・・まさかあんたも悪魔か?」
お前悪魔なんだ。
「んなわけ・・はありそうだが違う。知っているからだ」
「誰から聞いた?」
「聞いてないさ。何故か知っているだけ。それで?見るか見ないか」
「もちろん見るで。ただな、そっから考えさせてくれ」
「そうか、分かった。ルーナ、その本に何か変な記述があれば後で教えてくれ」
「元からそのつもり」
§
二つの影がアリーナへと向かう。しばらく歩いた後にバエルが声を発する。
「・・あんちゃん、もう腹割って話そうや。あんたは何者や?」
「・・どういう意味だ?」
「影武者の見切り、ウチの名前、魔法の進化・・不可解な点が多すぎる。ホンマにあんちゃんは人間なんか?」
「人間とはどこまでの範囲を指すのかによるな。流石にこれ以上は言えないぞ?」
「つまりあんちゃんは区別によっては人間だっちゅうことやな」
人間かどうかはよく分からない。“クロユリ”や“怪物”とばかり呼ばれ続けたからだろう。
「人々のために生まれ、活躍したものにも関わらず、利用し、嫌がり、裏切り、殺す・・それが僕の“人間”という生物の定義だ」
人間なんて醜い生き物だ。
「ホント、人間は滑稽や。見た目のみに踊らされ、信じた情報を疑いもせず飲み込み、顔が見えないことをいいことに誰かを遠くから攻撃する。こっちは誰だか分かってんやで。金もちょっと騙せば大金が入る。その上学習能力も戦闘能力も低い。あそこまでコロッといってまうのは人間だけや」
欠陥しかない人間は滅ぶべきだと思う。
「人間は身体が弱いからな。進化しすぎて器用貧乏になっているのが事実だ」
「山に住んでいる魔物の方がまだマシやな。アイツらは生きた目をしとる」
「だが生きるべき人間もいる。ごく少数だが」
ルーナのような探求するために生まれてきたような人間は必要だ。
「もう一度作り直してもええんやけどそいつらがいるから即決できへんねん。そいつらを残して他の全員殺せへんかねぇ?」
「難しいと思う。それを識別するのがほぼ不可能だからな」
「そやねんなぁ・・最悪核融合させれば消えるけど区別でけへんからなぁ」
「核融合をするぐらいなら新しく生物を作って殺させる方が早いけどな」
人間。醜く薄情であり、高度の知性を持ちながら互いに殺し合う生物界の頂点の生物。
個体に差はあれど大きくまとめればこんなところだ。
当然ながら人間の器用さによって生まれたものはたくさんある。
しかし、それを互いが殺し合うために使っている。
自分が持つことによる利益を独占し、殺し合うために新しいものを作る。
新しいものを作り、その利益でさらに利益となり得るものを手の内にする。
たとえそれが人間として間違っていたとしても。
「あいつだ」
「どこや?おらんように見えるが?」
「白いデカいやつがあるだろう。それが『バルバトス』だ」
「おいおい、あん中に入ってるって?うそやろ?」
「事実そうだ。紋章が入ってるだろう?」
「・・せやな。入っとる」
「あそこに入れているのは僕が死んだとしてもあいつがここに存在するためだ。防御特化だが機動力は問題ないようにしてある」
「・・なるほどな。あれを依代にしてアイツだけであっても生きられるようにしたんか」
「そゆこと。使うときは中で操作すればいい。自律での動きもある程度だができる」
「あんちゃんはそれでええんか?不便にならへんか?」
「そもそも強いからな。バルバトスもそれを見込んで選んだらしい」
「・・ええなぁ」
「欲しいのか?」
「そういうことやないねん。あいつはええ主人選んだなぁって思ってな、ウチと違って」
バエルは『バルバトス』に羨望のまなざしを向けていた。
「ウチの主人は力に溺れた人間やった。いっつも『力を貸せ』って言いよった。その結果自分の身を滅ぼしてもうた。ワイは結果的にあの本に戻り、アイツは死んでまったんや」
「命ともども、とはいかなくてよかったな」
「アイツももうそろそろ死ぬことはわかってたんやろな。死ぬ前に本に描きよった」
「・・んでどうする?契約するかそのまま彷徨うか」
「バルバトスと話はできんか?」
「いいぞ。ただちょっとだけ待っててくれ」
「どうするん?」
「直接接続してバルバトスの意思を伝える」
「大丈夫かそれ?ウチが契約すって決める前に死んでまわんか?」
「大丈夫だ、問題ない」
「それ問題あるやつしか言わへんで?」
バルバトスの中に乗り込みコード接続を行う。
“OS data roading.please wait…”
起動画面が表示される。久しぶりに見る画面だ。
“Road complete.Connect waiting”
指示通り接続する。
“During the authentication…”
「・・う゛ッ」
背骨に強烈な痛みを感じくぐもった声が漏れる。
「あんちゃん大丈夫か?死なへんよな?」
「・・ああ、問題はない」
“Connecting compreat”
後はバルバトスを呼び出すだけだ。
「ダイレクトコントロール。developer permissionsより、バルバトスの招致を実行」
“Developer ID passed.Developer permissions made sure.”
(・・要件は何だ)
「客人。お前に会いたいらしい。名をバエルと・・」
(早急に代われ)
「お望み通りに」
よほどの重要性があるようだ。
(肉体を借りるぞ。良いよな?)
「そのために来たんですが?ってか拒否の選択なしかよ」
(なら話が早い)
「ったく・・相変わらず雑だな」
身体から力が抜けていく。触れる感覚はあるが動かない。
どうやら声も出せないようだ。
「接続コード延長。長さ上限を18mに」
コードの延長も忘れずにしてくれた。ありがたい。
「昇降用グリップ展開。降下開始」
飛び降りるかと思ったが違うようだ。骨折の心配はないらしい。
「バルバトスか?」
「如何にも」
「その返事はそうなんやな。久しぶりやな、バルバトス」
「どうした」
「相変わらず冷たい奴やなぁ。もうちょい友好にいこや」
「要件は何だ。ないなら帰るぞ」
「ちょい待ちて。バルバトス、あんたはなんで主人をコイツに選んだんや?」
「強かったから」
「他に理由はあるんか?」
「面白いやつだから」
「・・例えば?」
「主は何でもできる。頭の回転がまわりの奴より速い上、相手を確実に殺る」
「確かにそれは良いとこやな。なら悪いところはどや?」
「嵌められても全く気付かない上に人に関心がない」
「・・確かにそりゃひどいな」
・・罠には毎回かかっていたが全部解決させているぞ。
「ただ面倒見はいい。常に仕事を時間までに終わらせて調査までする」
「つまり仕えるには最高ってわけやな」
「ただ肉体の消耗が激しい。常に修復が必要」
「それだけやったら奉仕の中では軽い方で済むな。分かった。ありがとさん」
「帰る」
「最後に冷たいのが来たな・・話せて良かったわ」
昇降用グリップを掴み戻る。
「接続コード巻き取り。長さ上限を1.8mに。その後肉体の操作権を停止」
身体に力が入るようになる。バルバトスは帰ったようだ。
「もういいのか?」
(話す内容はない。それにあいつはそもそもお前に雇われるつもりで話したようだ)
「そうなのか?」
(話の内容はお前に関することしかなかっただろう)
「そういやそうだな」
(考え付かなかったのか。全く、これだから主は)
「説教はいらんぞ」
(・・もっと精進しろ。それだけだ)
「冷たっ・・」
バルバトスとの接続を切る。身体が重くなることもいつものことだ。
バルバトスを出てバエルと話す。
「こんなもんで良かったか?」
「ええで、もちろん。そんでな、契約をしてほしいと思てんねんけどええか?」
「誰と?」
「・・他の奴との契約のことをあんちゃんと話すか?」
「なら大雑把に契約内容を話すか。どうしたい?」
「どうするかはあんちゃんが決めるんやで?」
「そうなのか?バルバトスから聞いた時は違ったが」
「あいつ上手いことやりおったな・・」
「何かおかしかったか?」
「こっちの話や。そんでウチから希望を出すと『最低限の戦闘能力』が欲しいな」
「となるとバルバトス級がもう1体か・・少しゆっくりにはなるがいいか?」
「できるん?結構金いるで?それに魔法陣も・・」
「やろうと思えば」
そうなるとバルバトスの装甲と同じ装飾になるがとてつもなく時間がかかる。
「いっそのことダブルエントリーに・・いやそれだと1人で処理が・・」
「・・もし無理なんやったら言うてや?無茶はさせんつもりやから」
「気遣いは助かる。だがその前に五点倒立」
「・・あんちゃん、それだけはカンベンや」
「そこに五点倒立」
「なぁ、他の・・」
「五点倒立」
「・・はい」
バエルが手足と頭を地につける。絵面すげーなおい。
「取り敢えず開けてもらったことへの感謝を述べろ」
「・・開けてくださりありがとうございます」
「よし、雇用決定」
「・・は?」
「聞こえなかったか?雇用だ、こ・よ・う。ここで暮らしていいぞ。ただし仕事をしてくれ」
「仕事って何をや?」
「決まってるだろ。バルバトスの手伝いだ。コイツはデカいから細かいことが苦手なんだよ。その小手先まわりをしてやってくれ。報告を1日1回。日が暮れたらだ」
「そんなもんでええんか?」
「バルバトス、こいつお前のこと舐めてるぞ」
バルバトスの腕が動く。舐められるのは相当クるものがあるらしい。
「分かった、明日からやるわ、だから許してや」
「あ、そや。もう1つあるわ。ルーナが危険な時に極限まで守れ。いいな?」
「了解や!ほな契約を結ぼか」
「・・あ、どうしよ」
「どないした!火事か!事故か!」
「いや目の前にいて火事も事故もねーだろ。契約呪文バルバトス以来使ってなくて使い方忘れたわ」
「なんや、しょーもな」
「バルバトス、殺れ」ドゴン!
・・はっや。あの程度がいつも出るようにはしているが改めて見るとめっちゃ速い。
「ちょわぁっ!すまんかった!というか本当に殴んなやバルバトス!!」
・・まぁある程度手加減されてたしいいか。というかよくあの勢いで抑えたなバルバトス。
「ちょい待ってな、えーと、ここらに・・あったあった。これにこれで名前書いて血判押したら完了や」
「はいよっと・・ちょい後ろ向いてや、すぐ書くから」
「ほいほーい・・って壁横にあるやん!そっち使えや!」
「お前ノリいいな」
・・バエルはバルバトスとほぼ対照をいくな。コンセプトも少し変えるか。
「これで良いか?」
「おお!良き良きの良きや!これで完了やな」
宣言と同時に紙が燃え消える。
「ほんならヨロシクな、新しい
「よろしく頼まれた」
・・疲れた。アイツはほっといたら何回ボケとツッコミを繰り返すんだろ。
◇◆◇◆◇
(いいのか、ついて行かなくて)
バルバトスから独特の声が出る。『悪魔としての』バルバトスのようだ。
『ああ、
(寂しくはならんぞ。無茶ばかりして帰ってくるバカだが)
『ホント、自分のことをどっかで片付けないと抱えきれんくなるで、あれは』
(まぁ大人しく見てやれ。間違ってたら正すだけだ)
『まぁそーやねんけどなぁ・・なんか不安や。ほっといたら勝手に壊れそうや』
月が出ていた。今日は少し欠けた月だった。
次回! 始まりの終わり、終わりの始まり 次でやっと1日が終わるぜ・・
問題がありそうなところは削って辻褄を合わせて作りました。支障があるとはいえしょうがない。
もし問題だと思われる箇所があればコメントで報告してください。早急に直します。