壊れた少年のマーチ   作:オリの中のカナリア

27 / 62
さっさと一日終わらせてしまいましょう。

ついでに言っておくとこの次から精神爆裂拳(?)開始します。
かなり重め&長めの計画なのであしからず。


始まりの終わり、終わりの始まり

バエルとの件を終わらせルーナの元へ向かう。

ルーナは本の表紙を見つめていた。

 

「内容は分かった?」

「書いてあった内容はタイトル通りね。本としての落丁はなくって、一部ページが焦げていて文字が潰れていたわ」

「そうか・・焦げていたページの内容は?」

「世界創造物語の一部、『破滅』の序文です」

「どういった話なんだ?」

「神はたくさんの動物と植物と魔物、そしてそれらを統治する人間を作ったのですが、人間がその力の強さから驕り高ぶっていたために神に滅ぼされかける話です。この話は子供に『話を聞く大切さ』を伝えるためによく使われます。大抵は”神話だから“で受け流されてしまうのですが」

「その序章の内容は?」

「神は地上の惨劇を見て落ち込まれるんです。そして人間を作ってしまったことを悔やみ、人間の代わりとなる『天使』と『悪魔』を作り出しました。天使と悪魔に見た目の差はほとんどなく、能力も人間とほぼ同じでした。そして神は地域に住む動物ごとに区域を分け、17日分の肉の量を持たせて区域の中の1個体にのみその肉を渡し、『全員に渡し、20日に分けて食べるように』とそれぞれ教えました」

 

おい。

 

「足りないのでは?」

「この話に続きがあるんです。動物たちは天使と悪魔にそれぞれ『分け方』と『保存方法』を聞きました。天使は分け方を、悪魔は保存方法を教えました。分け方の目安も、肉をどのような環境に置くのかも教えました。

一方、人間たちは天使と悪魔が動物に教えた通りに教えようとしましたが、『自分はわかるからいい、だから誰にも教えずに出ていけ』と言いました。」

 

ほう。

 

「そして神が天使と悪魔が全ての区域に配り終えたときに、神はその肉以外の食料を腐らせました」

 

なかなかにダイナミックなことをするな。

 

「すると人間たちは1日目から喧嘩が起こり、3日目からは死者が出るようになりました。

そして周りの動物を襲おうとするも勝てず、どんどん死者が増えました。

肉をもらった者たちは最初は豪華な生活でした。しかし日が経つにつれ残りの肉が腐り、10日目で全ての肉が腐ってしまったんです。

一方動物たちは言われた通りに肉を分け、20日目まで肉を食べ続けました」

 

・・あれ?

 

「増えていないか?」

「いいえ、増えていませんよ。神は天使たちに『いつもよりの85%以下の量を』食べることを教えさせたんです。そして悪魔には『綺麗な川の水に入れて』保存することを教えさせたんです。このことを守った動物たちは肉が腐ることなく、また死ぬこともなかったんです。

しかし、人間はいつも通りの量、冷蔵室の中に肉を保存したために全ての肉が腐ってしまいました」

 

ああ。そういうことか。

 

「人間達はあまりにも空腹になり、一部の人間は人間を食べることで生き残りました。しかし、生き残った人数は前の10%ほどともそれ以下とも言われています。これは地域によって変わるようです。私は10%以下と聞きました」

 

ありゃりゃ。

 

「これが『破滅』の序章です」

「なるほどな・・ちなみにどこまで続く?」

「最後は『終焉』です。ちなみに内容は『どれだけやっても理解しないので一度全員殺してから都市をなくしてやり直させた』っていう内容です」

「いきなりヤケクソだな」

 

まるで『弾の速度が出ないから火薬を増やした』っていうようなパワープレイだな。

 

「まぁ言って聞かないなら力しかないよっていうことですよ」

 

そうはならんやろ、ルーナ。

 

「ちなみにあなたならどうしますか?」

「とりあえず相手に力とは何か『理解(わか)らせ』ますかね」

 

・・どうやら確定演出のようです。

っていうか『わからせる』って今の使い方違ったよね?

 

「・・と言った感じですね」

「うん、分からなさそうで分かった」

 

閉じ込めたやつもシャレた奴だってことが。

 

「もうそろそろ月が上がり切る頃ですかね」

「そうだな」

「朝の約束は覚えてますよね?」

「ああ」

 

・・あ、やべ。

 

「さぁ、好き放題私を食べるのです!」

「なんでそうなんねん!」

「まぁもっと肉がある方が良いですよね」

「・・まぁ否定はしないが今が一番いいと思う。全身のバランスが整っているし体幹もしっかりしている。機能上問題がない上に上手くやれば今の状態でも悩殺術は可能だと思う」

「なんですかいきなり褒めて・・胸でも触りたいのですか?」

「なぜその思考に直結するのかが僕には実に理解ができない」

 

なぜ僕にそこまで拘る。地位も名声も財産もまともじゃないやつになぜ擦り寄る。

 

「あなたはもっと誇るべきです」

「何をだ?」

「私が隣にいることを。結構良物件ですからね、私は」

「だろうな。君は王族の血を引くお嬢様だからな。思考回路がピンク色なのを除けば欠点がないだろう」

「別にいいじゃないですか。颯爽と窓から現れる王子様を期待したって」

 

なぜ窓からだよ。普通に入れよ。

 

「期待はいいことだ。だが期待とはただ待つことじゃない。その時が現れるまで常に努力し続けるのが期待だ。そのためには周りに自分を良く見せたり、窮地に陥った時の伝手を確保することも必要だし、困ったときに『助けてもらえる』相手も必要だ」

「でもあなたならできるのでしょう?」

 

ずるい。その質問はずるすぎる。

 

「ああ、できる。世界が滅びても爆発に巻き込まれても心臓が無くなっても死んだ後でも常に守ってやるよ」

「その言葉を期待してはいけないのですか?」

「・・その時が来ないようにしてくれ。来てしまったら対処してやる。もうそろそろ君は寝ろ。ここからは僕の仕事の時間だ」

「・・」

「どうした?」

「休んでください。休めないなら私が無理矢理休ませます」

「もし休まなければ?」

「私も寝ません。ここに居続けます」

「・・アホか。寝ろ。人間は寝なきゃ死ぬ」

「そういうあなたは人間です」

「・・はいはい、休みますよ」

「ならば最後の仕事です。私を横に抱いて寝室に送りなさい」

 

うーん、どうしよ。あ、そうだ。

 

「・・了解しました、お嬢様」

「ぐっ、なんか想像していたのと違う」

「横に抱いて、とのことでしたので」

 

当然、俵担ぎである。こちらの方が楽だ。

 

「分かってやっているのでしょう?」

「さぁ?何かご所望であれば言ってくださいよ」

 

意外と愉悦感が満載だなこれ。

 

「一応令嬢として扱えるのですから相応しいやり方があるのでは?」

「それがいいですか?あの本から出た奴らたちに揶揄われても知りませんよ?」

「いいでしょう?できなくはなさそうですし」

「まぁできますが。アレは互いに支え合わないと負荷が大きいんですよ」

「大丈夫です、分かっているので!」

「そうか。で、なにをして欲しいんですか?」

「なんか数珠繋ぎになっている気が・・」

「ないならそのままで」

「ちょっと!?」

 

流石に可哀想なので降ろしてやる。

 

「どうしたいのかは言ってくださいよ?」

「・・『姫』として扱いなさい」

「・・まぁ及第点です」

 

お望み通りにしてやろう。恐らく『お姫様だっこ』を望むのだろう。

 

「首の後ろから手を回し、できるだけ身体を近づけておいてください」

「まぁ言われなくともやりますが」

「持ち上げますよ。足元を掬われたからといって悲鳴を上げないでくださいね。この距離は流石に鼓膜が死ぬので」

「あなたをいつも信用しているのでそんなことは発生しないでしょう?」

「ええ、いつもね・・」

 

信用、か。昔とは縁がない言葉だ。今となってはよく聞くが。

 

「身体、筋肉質ですね」

「これくらいはないと速度が出ません。これでも“現役“より落ちてますが」

「昔の話ばっかりしない。今どうかが一番大切なんだから」

「・・そうですね。ジュークやヴェリアの為にも僕は動かなくては」

 

僕の全ての経験を以てあの子達には強くなってもらわなければ。

もう繰り返されてはならない。あんな事は。

 

そんなことを考えているうちに寝室に着く。

 

「さぁ、さっさと寝なさい」

「ちょっとこっちに来なさい」

「何故?」

「ちょっとだけ気になることが」

 

何だろう、すごく悪い予感がする。

 

「・・分かりました」

「もうちょっと・・とりゃっ!」

「・・・・」

「捕まえました!もう逃げられませんよ?」

 

うん、分かってた。見えてた。でも動けなかった。煩悩のせいで。

師匠、『全てを無にすれば全て分かる』はやっぱり無理です。

 

「何がしたい?」

「あなたを休ませたいだけです!」

「・・そうか」

「ふふ〜ん、これでもう休むしかないですね」

「・・そうだな」

 

やわらかいな。

 

・・じゃなくて。どうしようか。

逃げようと思えば逃げれる。だがそれをすればきっとルーナは寝ないだろう。

無理矢理眠らせるのは少し可哀想だ。

 

「・・やっぱりあなたの側が落ち着きます」

「家族がいるだろう?」

「いたところで私は煙たがられるだけです。どうせいてもいなくても同じなんですから」

「継承権があるだろう?」

「ええ、()()()()()()。父は私を選んでいますが母は姉を選んでいますので」

「・・そうか」

「どこよりも家庭環境は複雑です。私も外向けの顔は強くしているんですけどね。心の底を話す人なんていないんですよ。母は姉と常に比較し、父は見た目で評価する。『私』はどうだっていいんですよ。体裁さえ整っていれば外とは仲良くできるんで」

「・・僕からは何とも言えないぞ。あくまで僕は俯瞰者だからな」

 

俯瞰者とはどの口が言っているのだろう。僕には口がありすぎて分からない。

 

「いいんですよ。家族ですら見つけられなかった『私』を見つけてくれたのですから」

「・・・・」

「そのままずっと『私』を見てください。見失わないでください。私がどんなに拒絶しても探し続けてください。探している間『私』はあなたのために輝き続けるので」

 

「どうか、私を見捨てないでください」

 

・・はぁ。

 

「見捨てたりしねぇよ。そもそも捨てるつもりならもう既に捨ててるぞ」

「でもこれから私に失望して・・」

「んな訳あるか。僕があんたから教えてもらったことは全て初めて聞いたことだ。どこにどうやって失望する?比較対象がねぇんだぞ」

「ヴェリアを見て私よりもすごいと感じたら・・」

「それは『ヴェリアの成長』であって『ルーナの成長』じゃない。『成長』とは言ってもそこには大きな差がある。どんな物だってそうだ。1と2は同じ『数字』であっても違う意味を持つ」

「本当に、ですか?裏切ったりしませんか?」

「裏切るにはしょうもなさすぎるだろ。裏切ったのは組織の崩壊のときだけだぞ」

 

裏切る時はそれなりの代償を覚悟しなければならない。

だからこそ僕はあの組織についた。

たとえ、ヒトをやめたとしても。

 

「・・真面目な答えで安心しました」

「そもそもボケた答えを出したことはないと思うんだけど」

「やはりあなたを選んで良かったです」

「・・そ。色々言いたい事はあるけどよかったじゃん」

「ついでに言質もとれましたし」

「言質を取るような質問あったか?」

 

ま、いっか。どうせ寝れないけど。

 

「・・というかくっついたまま寝るのかよ」

「当然じゃないですか。別にすれば逃げるでしょうし」




次回予告
世界は狂い始めた。計画から大きくずれたからだ。
やがて世界はずれをもとに悲鳴を上げる。
世界の破綻までの道のりは、長い一本道だ。
次回! 戯れ タイムリミットは、近づいている。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。