「お望みの品ですよ〜流石に原本はダメなんでコピって来ました」
「でしょうね。逆に持ってきたら突っ込んでました」
「それで?何が知りたかったんですか?」
「・・ここ」
いくつかある空欄。氏名、生年月日、年齢。
「これ、ないってこと?」
「・・見つからない、っていうのが正しいんですよね。書類として存在していないので調べようにも調べられない状態でなっているんです。こちらの不手際って可能性も・・」
「元から存在しないってことで合ってますね。一回も呼ばれたことは
ないと思うんで」
少なくとも思い出せない。つまり呼ばれることがなかったのではなく、そもそも呼ぶ名がないと分かる。
「親御さんは?」
「会ったことがありません」
「親族は?」
「妹らしき人間しか知りません。まぁ肝心の誰かはわからないんですけど」
「お友達は?」
「いません。学校に行っていないので留年中です」
「誕生日も・・」
「分かりません。祝われた記憶もありませんし」
「そう来たか・・ちょーっとばかり面倒なことになってきたかもしれないわね」
「警察沙汰ですか?」
「そこまでは行かないかもしれないけど・・いろいろ困ったわね」
「どのように?」
「まず国籍を持っているかどうかが怪しいのよ。もし国籍を持っていなければここでの医療提供はできないしこの国にもいられない。身元を明らかにしない限りあなたはずっと社会にいない人間としてカウントされ続けていることになる」
「そうですか。なら僕に国籍は要りませんね」
「何故?」
「存在する意義を果たすものがないから。僕の知っている『妹』という存在がないのであれば僕は存在の意味がない」
「・・シスコン?」
「2人で1対。相反する能力を持たされた人間は対であって初めて完全な能力を発揮するのです。それがこの運命」
聞き慣れた声だ。間違いなく我が妹だ。
「誰ですか?」
「彼は分かってますよ。さぁ、行きましょう。ここはあまりにも危険すぎる」
「そんなことはありません。完全に管理された病棟の方が安全なはずです」
「それは不変状態における真理。今は変化している。彼を中心として」
「僕を、中心として?」
「ええ、兄さんの首が飛ぶことで億単位の金が動きます」
「そのような量・・動かすこと自体が難しいのでは?」
「簡単ですよ。何せ国の威信をかけて皆が取り合いをしているんです。指1本でどうとでもなります」
「国の威信・・」
「どうやら少しずつほぐれてきましたか。もう少しだけ回した方が良さそうですね」
「そもそもなんで国と争っとんねや?全くこっちじゃ聞かへんで?」
「そりゃそうでしょう。こんな平和主義の軍事大国が主催でおこなっている大量殺戮兵器のオープンマーケットを誰が伝えたいと思いますか?」
「大量殺戮・・」
「もしそれが本当だというなら証明をしなさい?」
「それは非常に難しいですねぇ。頭からロンギヌスの槍が刺さるくらい難しいと思います」
ロンギヌス。大量殺戮。
「ロンギヌス・・そっか、そうだね」
「思い出したようですねぇ。ならもうそろそろ見えてくると思いますよ?」
「うん、見える。というかアイツらどうすればいい?」
「最悪の場合の考慮でいいと思いますよ。こちらを覗いているのですから」
「じゃあ好きにやらせてもらうね。ある?」
「とりあえず3本。全部9ミリだからよろしく」
「はーい」
腕が重たかったので錘を破壊する。だいぶ軽くなった。
「回復してんだな」
「私がいろいろ手を回したんです。ちょっといじればうまく行ったので被験として」
「あざす。あとここからいなくなる方がいいよ?ここ榴弾で吹き飛ぶから」
「どこに行くのですか?」
「向かうべき場所。直線だから大丈夫。彼、よろしくね」
「とりあえず理解はしましたが・・帰ってきてくださいね」
「そこらは問題ナッシング。多分帰って来れないだけ」
「大問題じゃないですか」
「細かいことは気にしない〜」
取り敢えずめんどくさいのを追っ払う。
「向こうは?」
「7.62ミリを確認しています。こちらも一応遠距離対応はしていますが12.7ミリなので」
「体ごと粉々にする気か。そんなもんよく通したな」
「こちらも逐次対応はします。今は前を」
「有効は?」
「本来は100メートルですが改造済みで130メートルです」
「まぁ及第点か。次から5.56ミリか7.62ミリにしようか」
「14.5ミリもおすすめです」
「砲身2mはただの邪魔。却下だ」
「一応12.7ミリはXM500-A2C、あの設計図の改造版です。装弾とマズルを増やしているので楽ではあるかと」
「マジ有能。助かる」
照準を合わせ偏差を上3ミリほどで調整し引き金を引く。
想定された爆音が連続して鳴り響き轟音と化す。
「・・オートマかよ」
「駄目ですか?」
「せめてバーストな」
「自力で、どうぞ」
「レートが500超えてるものを作っておきながらよく言うよ」
「・・えへ」
「許すわけねぇだろ」
「それでは元気に行ってみよう!」
「絶望的な環境で言うな、変に盛り上がる」
「鎮めてあげましょうか」
「しれっと爆弾を投げつけてんじゃねぇよ。死んじまうんだ。どうせなら綺麗な花火と一緒に見ようぜ」
「違います。『汚ねぇ花火だぜ』ですよ」
「それはいろいろ危険だ」
主に元の版権が。
§
すごく楽だった。正直12.7ミリ出番なかった。
しょうがないね、生身の人間(当社比)だもん。防弾装備の死体があるけど気にしない。
「12.7ミリは出番なしですか」
「人間を砕く気にならん。それに1発打つたびに金がなくなる」
12.7ミリは対物用だ。そもそも人間に使うものじゃない。
「9ミリも大概ですけどね」
「9ミリは安いからいい。射程が絶望的だけど」
流石に300メートルは欲しい。そんなことしたら7.62ミリは使われなくなるが。
「逆に有効射程以上を当てているのが不思議なんですが」
「偏差だ。数字の」
「スナイパーと互角に戦えるのが誤差って言うんだったら戦車が手榴弾で吹き飛びます」
「ちっちゃなC4だったんだよ。もしくはクラスター」
「個人所有のクラスターって結構危険ですね」
「ちなみに12.7ミリってカスタマイズどうなってんの?」
「3点バーストです」
「そんなにいらねぇだろ」
「劣化ウランなので一応戦車の背部装甲は貫けます」
「どうなってんだよ」
「但しバーストなので固定しないと下に反動がいって使えません」
「実用性とは」
威力も申し分ない。弾もいいだろう。
ただ実用性がなさすぎる。旧式のボルトアクションの方が使える。ほぼ改悪だ。
「戻せるか?」
「2連装にですか?」
「なんでだよ。単発だよ」
「唯一の強みを?」
「劣化ウラン弾であることを強みとして捉えないのはいろいろすごいな」
確か劣化ウランは着弾地を汚染するはずだ。
「劣化ウランは使っていいのか」
「基本はダメです。ですが向こうが使う以上こちらもやむを得ません」
「無茶苦茶だな」
「そういうものですよ。倫理観が壊れていくんです。だからみんなで殺し合っている。私たちはこれを止めなければなりません」
「どうやって?」
「戦争を引き起こすものを全て壊します。そうすれば誰も戦わずに済むので」
そんなことができるだろうか。いや、やるだけだ。
「僕たちは全てがなくなった後どうすればいい?」
「私と共に自決しましょう。そうすれば争う元はなくなります」
全ての元凶は自分達にある。どうせ消える存在だ。
「・・楽しそうじゃん。死ぬ時は体を全て溶かし切れるようなのを使ってよ」
「勿論です。私たちをもう利用できないように、もう2度とこんなことが起きないように」
「場所どこにしようか?」
「飛んでハネムーンとか?」
「クレーター1個追加だねぇ」
明るい空気で話が進む。絶望の前だからか。
「さぁ、もうそろそろ迷宮を抜けよう」
「そうですね。武装チェックは済みましたか?」
「自分で設計してるからそれぐらいは分かる」
「それじゃ、行きましょうか。新たな未来を切り開くために」
するりと手を滑り込ませ指を互い違いに組み込む。
「あ、手は離さないようにしてくださいね。でないと十分に能力が発揮されません」
「正面から?」
「当然です。私たちの絶対的な差を見せて気づいてくれるといいんですけどね」
「能力って?」
「すぐに気付きますよ」
階段を降りていく。壁は欠け、あちこちが血だらけだ。
「苛烈な運命に苛まれ彷徨する魂よ」
星奈が唱える。内容が何故か記憶にある。
「全てを尽かした者を贄とし、我らに唯一にして最大の力を与えよ」
「我が命運を共にする者に祝福を与え、我らを裁く者に天罰を」
「最高神の名の下にこの詠唱を発動し、全てを救いたまえ」
「「
「記憶していたとは。流石ですね」
「僕も今驚いてる」
口から吐くように出たのだ。自分でも意識していない内容だ。
「さ、決戦の時です。これで未来が決まります」
「どうなるかな。もしかしたら暗いかも」
「大丈夫ですよ。最悪私と逃げながら生きればいいんです」
そんなことを言う星奈は笑顔だ。
「私たちは存在しない人間ですし。血縁関係もありませんし」
「え?」
「血縁関係はありませんよ。私はあなたに拾われた人間なんですから」
「拾われた・・?」
「ええ。兄さんが6歳ぐらいの時に兄さんに拾われたんですよ」
「・・血縁は?」
「いろいろ複雑ですよ。戸籍に登録できない程に」
「・・法律で禁止されていたとかか」
「大正解です。顔のパーツと遺伝子をちょっと調べたら出たんです。全く関わるはずのない血縁でできていました。私もですけど」
「どんな?」
「・・私たちは『完全なニックス配合』なんです。科学的に上手くいく血縁で作られていたんです。ある研究者が調べ上げた論文の遺伝子が私たちの血統と全く同じでした」
「それなら別にいいだろう?」
「私たちはインブリードの塊なんです。複雑なインブリードを繰り返し、完全な人間が生まれるまで繰り返した。ある意味私たちはそれまでの子の生きる機会を奪ったんです」
「それらは全て親の責任だ。僕達の責任じゃない」
産まれる子が親を選ぶなどできない。出来たのならどれほど良かったのだろうか。
「私たちの『家族』は元からいません。捨てられて兄さんに拾われたために『母親』と言う名の見知らぬ女と『父親』という見知らぬ男が家族になっているだけです」
「親の処分は?」
「私たちの扱いが先送りとなり、そして兄さんが成人と認められた瞬間に全ての保護を外されたためにこうなってるんです」
「研究ファイルは?」
「行政によって処分されたと思いますよ」
「・・となるとクロは向こうか」
「はい。こちらの政府は武力を使わないように殺そうとしたのでこうなったのだろうと」
「手が汚ねぇな」
せめて生み出した責任を担ってもらいたいものだ。
「だから私は全員殺すんです」
「・・いや殺人の理由にはなってねぇよ」
「どちらにしろ同じになりますよ。さ、念願の外です。どれだけ雨が降るんでしょうね」
「メタルシャワー(物理)って感じになりそう」
「いっそのこと全部祝砲にしましょうか」
「それならライスシャワーだな」
ドアが見える。もはやドアとも言えない砕け方だが。
「何か赤点がチラチラと見えるな」
「まぁ想定はしてますけどね」
「利き手大丈夫か?」
「生憎両撃ちなので」
「どこでそんだけやってんだよ」
「まぁ裏稼業みたいな?」
「答えておきながら疑問形になってる」
「まぁいいんじゃないですかね。どうせ散る命ですし」
「一緒に連れていく魂を刈り取りますか」
9mmを手に持ち12.7mmを肩に提げる。
「どうやって処理しよっか」
「とりあえず全弾頭、貫通2つで」
「無茶ですね」
「出来なくはないでしょう?」
「まぁね」
データ上は3連まではいける。但し空気抵抗などの都合上厳しいだけで。
「替え玉はマガジン5個。200人想定ですか」
「さ。可視範囲はここからです。とりあえず全弾止めてからにしましょう」
「7.62が50ほどと戦車砲がいくつか、あと機関銃が見える。被弾レートは200毎秒以上」
「強化開始」
1歩踏み込む。地面が爆発した。
「地雷ですね」
「この程度か」
全くもって無害。物体を除いて。
「防御」
「赤点いっぱい見えるや」
「展開!」
ずどどどん。
「戦車砲ありますね。榴弾です」
「了解。12.7でキル確やる」
「こちらもタイミング読みますか。赤点が消えれば仕留めましょう」
「そういやこの赤点って?」
「弾です。よく見えますね」
「あ、消えた」
単発の方の引き金を引く。1つなくなった。
もう1個、もう1個と引くうちに弾切れだ。装填しなくては。
「タクティカルの弾なし動作です」
「・・こうか」
マガジンが軽いせいかよく飛ぶ。正直マガジンは捨ててもいい、ただ痕跡は残したくない。
「お見事です。実をいうとやったことないんですよね」
「おい」
「まぁできるってことが分かったので」
「まぁいいか。にしても榴弾がうざったいな」
「ですね。煙幕と同じ状態だからでしょうね」
「・・しばくか」
「ですね。頭数も減ってますし」
「ここから当たるか?」
「無理でしょうね。跳弾がいいところかと」
「装甲じゃなくて砲塔にダイレクトインで」
「それなら可能かと。猶予は4秒ですから1秒で合わせきれれば」
「ならやるか」
12.7mmを解体しようとするが約束がひっかかる。
「離していいか?解体できない」
「・・3秒なら猶予ができます。その間にやってください」
「やれる。やってくれ」
「このことは他言無用ですよ」
取り出したものは黄緑色に赤で印字された缶2つだった。
「WPか」
「早くしてください。効果はかなり限定的です」
ピンを抜き投げると同時に12.7mmを解体しバースト機能を排除、再度組み上げる。
「アイアンでいっか、とりあえず1発食らえ」
引き金を引いた直後に爆発音が聞こえる。大音量を響かせ撃った弾が当たったようだ。
「火薬庫誘爆、大当たりです」
「動かない的はまだ当てられるからな」
そんなに腕を鈍らせた記憶はない。
「どれだけダウンしてる?」
「見る感じ戦車の周りが重症ですね。さっさと仕留めましょう」
「残りは?」
「第2ウェーブが見えますね」
「厄介だな。ナパームとテルミッドある?」
「数はありませんが一応」
「テルミッドで死体を焼き払って。一旦状況を立て直すために移動する」
「この状況じゃ困りますしね」
「ということでよろしく」
「はいはーい」
二つ返事で手榴弾を構える星奈。何でこいつこんなに嬉々としてんだよ。
「どこに行こうかな・・」
全体的に平地ではあるが山が端に広がる土地。右と左の山の頂上から赤点が多く見える。
どうにか裏まで行ければいいが。
「・・突貫だな」
「どこ行きますか?炎の中だろうと氷の中だろうと一緒ならいいですよ?」
「暑いのも寒いのも勘弁だ。山を突貫する」
「その後は計画があって?」
「周りにナパームを落とせ。山上は全て潰す。今日はそこから落とす」
「やっと乗り気になりましたか。喜んでやってあげますよ」
「移動する。捕まれ」
「さっすがぁ、スポーツカーに引けを取らない豪脚を使う時が来ましたね」
「そこまで出るか?」
「出るかどうかじゃありませんよ。出すんです」
「まぁどうせ死ぬしいいか」
前にしがみつくように捕まる星奈。
「・・絵面的にはヤバいねそれ。主に性的に」
「脚がなくなるよりいいのでは?」
「そんなに速度出ないでしょ」
「だーかーら!出るかじゃなくて?」
「出す、ってできねぇよ。先に体が燃える」
「私が調整すればできます。1発勝負ですが」
「・・もうめんどくさい、あと頼んだ。行くぞ」
思いっきり走る。
地に落ちた石を数秒で越え、生垣を数秒で越え、街灯を数秒で越え、信号を数秒で越え・・
あれ?めっちゃ早くね?
「もしかして調整してる?」
「もちろん。もうちょっとで250キロですよ」
「・・思ったより余裕かもしれん」
「言ったでしょう?スポーツカーに引けを取らないと」
「いや車って基本200キロぐらいしか出なかった気がするけど?」
「・・データは常に変わるので」
「ひでぇなおい」
「まぁ砲弾に当たらないならよしです」
「そもそも照準が合わせられないだろ。250キロで動く戦車って何だよ」
「どうやら調整次第では300ぐらいは出せるみたいですね」
「聞けよ」
このままだと住宅街が悲惨なことになるだろう。知ったことではないし今更なのだが。
「前はどれぐらい?」
「そんなにいないというかもう逃げてる。巻き込みリプによる混乱状態だ」
「f外ツイート失礼しますって言えばいいそうで」
「事後報告ありがとう。もっと早く言おうな」
あ。あの雑談場にしばらく開ける旨を書いてなかった。また混乱するんだろうな。
「どこらに落とします?」
「夕暮れ時、つまり今から2時間ぐらいしたら山を囲うように」
「はいはーい。ってことは・・あの辺りから拝借しようかな」
「返す気ないけどな」
「いずれ消費しないと困るものなのでちょうどいい機会です」
「どこにする?」
「1番高い場所で。管理も楽ですしよく燃えます」
「そういや能力の話って?」
「そういえば話していなかったですね。完全な配合の話は終えたんでしたっけ」
「ああ。どこぞの研究者がやったとかいう」
「ならそこからですね。山の頂上でゆっくり話しましょうか」
次回 もう一度、触れるために ネタとガスが切れました。助けて()