§
槍があることはよくわかる。自分に突き立てられていることも理解した。
ならば何故、僕は糸が切れた人形のように動けないのだろう。
目の前で大事なものが壊れることだけは避けたくてここまで来たのに。
もう一度やり直すべきなのだろうか。1番最初、0から。
視界が常にモノクロな景色であるが故によくわからない。
僕が前に消えた時も似ている。
だんだん視界がぼやけて黒くなっていき、身体の自由が効かなくなって最終的に意識を失う。
恐らくそこに近づいている。
腕さえ動かせればいい。どうにか動かせないだろうか。
「・・線」
無数に空中に走る虹色の細い糸。
・・線で繋いでしまえばいいんだ。そうだ。昔から操っているんだ。この身体を。
魔力線で全ての筋肉を結びつけて無理矢理信号を送り、動かす。練習して覚えた。
「・・うまく繋がらない?」
首のあたりで遮断されるように全く通っていかない。かといって繋がらなければ死だ。
無理矢理ねじ込むように魔力を通し、少し出た端を各筋肉へと送る。まずは腕、そして足。最後に腹部を繋ぐ。ゆっくりではあるが自分の手が動く感覚がある。
「・・苦しいな。首のあたりに何かが・・」
手を弄り首元の異常を探す。根源はすぐに見つかった。首輪だ。
「こんなもの・・壊してしまえ」
首輪の継ぎ目をしっかりと掴み横へ引く。そこまで硬い材質でないのか少し形が歪み緩くなり、魔力を通す信号も強くなる。
ある程度緩くなってから力を思いっきり入れ首輪を引きちぎる。視界は鮮やかになり、腕や脚は自由を取り戻す。
腹に刺さった槍を無理矢理引き抜く。槍自体が熱い気がした。
「・・もういけるな。反撃開始だ」
身体中に魔力を一気に回す。だんだんと視界が赤くなってくる。
「あ、線太いままだ・・」
身体へと回した魔力が線を辿り逆流し脳を侵食する。もう思考がぼやけ始めている。肉体の支配権もすぐなくなってしまうだろう。
「あ・・や・・」
その時、彼は完全になった。
神と同等の力を持つ圧倒的な威厳と力。
古典に描かれた救世主に似た見目形。
不純な思考を捨て、肉体を脳と直結し反応させる究極の
それぞれ邂逅することのないとされた姿が一体となり現れる。
信教者は言う。"あれは神である"と。
学者たちはこう説く。"我々の望むべき救世主だ"と。
彼を戦場にて知る人は叫ぶ。"怪物だ"と。
その名を
またの名を
§
「・・骨董品も磨けば光るものですねぇ。触ってすらいなかったのですが」
ガラクタ整理も1度はやってみるものだ。不思議ではあるが手にとって分かるほどに強く、見た目以上に軽い。おまけに魔力消費はゼロ。どこの人間が作ったのだろうか。
「何故・・!何故お前が・・!」
「そりゃあ、守りたいものがあるからに決まっているでしょう?」
どこぞのスーパー人間のようなセリフを吐く。分かっていたが私には似合わない。きっと彼なら似合っただろう。どんな時でも自分が守りたいものを守る人間にこそこれは似合う。
「邪魔をするな!」
「どっちかというとあなたの方がこの世界では邪魔になっているのでは?」
「黙れ!」
「相当都合が悪いようで。まぁ駆除するまでです」
1度脚を大きく踏み込み、大剣─というにはあまりにも太く大きいが─を振り降ろす。
左腕を狙い切断しそのままの勢いで着地する。武器の自重だけで動かしているのだがかなり切れ味はいい。
後ろから殺気を感じた瞬間後ろの方で土壁が形成され相手からの攻撃を防ぐ。
土壁が崩れた瞬間にもう1度踏み込みもう片方を切り落とす。何故か左手は再生していた。
「・・こりゃ厄介だな。一撃で鎮めろってか」
「まぁ・・頭がおかしいぐらいヤバい奴だとは思ってはいましたが」
「それと着地保護はちゃんとしろ。何もしなけりゃ死んでたぞ」
「全身全霊で感謝します」
本当にいてくれてよかったと思った。いなければ確実に死んだだろう。
「それで、どんな手助けをすればいい?」
「そうですねぇ・・少し周りを助けてください」
「・・本気か?」
「今更本気でなくてどうすると?」
言っていることの異常性は理解している。
絶対に選択してはならない選択肢。逆に言えば相手にとっての絶対的な想定外。
勝機はこの手をどれだけ強気で打てるかだろう。
「・・被弾時の処理と回復は確実に行え。待っている奴を完全な状態で迎えろ。それと」
「それと?」
「確実に帰ってこい。お前に全ての後の説明を任せる」
「・・最低限の説明責任は果たしてくださいね」
まだあの老人とつるまないといけないらしい。まぁしょうがない。
「さて、もうそろそろ相手してもらいましょうか。predator.」
「神のなり損ないが何をほざいているのだ。僕は創造主さ。絶対的なね」
「そう言いながら現実世界の川の流れを崩すのはどうかと思いますが?」
「乱しているのはお前だ。わざわざ変わった流れに何故堰を作る。流れるべきものが流れぬではないか」
「流すべきでないものまで流そうとしているからこそ言っているのです」
「流すべきでない?そんなものはない。全て必要性に応じて動いている。彼の生命は僕の管理下においてこそ全てが開花すると判断したのだ」
「・・そんな時代遅れなことを今更本当に言っているのなんて驚きね。目を覚ましなさい」
「全ては統計に基づいている。間違うわけがない。絶対的な判断力があるからこそこの世界の創造主となりうるだけだ」
「そ。ならどうやって彼は
「そんなわけが・・」
腹を手が貫く。貫手で貫かれている。
「・・ああ、なんということでしょう。大穴が開いてしまいました」
「・・何故だ。何が間違っていた」
憎たらしいほどに生意気な存在に貫手を喰らわせられる人間。それはただ1人に決まる。
眼は白く輝き、白い羽が生えている。傷からは一切の血は流れず、その傷も修復されてきている。
明らかな威厳と共に現れた生物。その顔はまさしくヴァルフだ。
「何故、覚醒を・・」
「条件を満たしてしまったからじゃないかなぁ。創造主さんが考え付かなかった条件を」
ヴァルフが満たし切れない外因的要因を満たす。全てを正しい道で歩かなかったために起きる『未来の不完全性』を達成させる。条件がわからない上に結果もわからない。そこらで流行っている怪しい賭けとは比べ物にならない程に危険な賭け。
やっと、遂にこの賭けに勝つことができたのだ。
「黙れ」
冷たく、刺さるような声。普段の温厚な姿とは大きく離れている。
それでいながら私はこの声を待ち続けたかのように理解していた。
これこそが本来の彼の声だ、弱者を歯牙にかけることを厭わぬ心だ、と。
誰よりも鍛錬を積み、誰よりも体技を習得し、誰よりも基本を怠らない者。
どれだけ効率が良かろうとも基本を重んじ、自分で発展させ習得する。
まさしく自己完結。私たちが求めた姿。
「魔神よ。全ての根源の悪を祓え」
右腕に黒い蛇ような紋様がゆっくりと刻まれていく。まるで、腕を丸ごと侵食するように。
「喰い尽くせ」
「あの阿呆・・!そこを動け!喰われるぞ!」
騎士団長に素早く小脇に抱えられ連れ去られる。動いた瞬間、彼の腕から大蛇の頭が生まれる。
黒い大蛇は口を大きく開け侵略者を喰い尽くす。その姿は液体のように素早い。
身体を下ろされたあとに問う。
「何ですかあれ?」
「奴が言ってただろ。あれが『魔神』だ」
「ですが・・でも・・」
あり得ない。
人間に魔神の力が宿るなどあり得ない。その前に体が耐えられなくなってしまう。
代償も大きくなる。それだけの力を扱うのだから。
でも。
彼ならば、できるのかもしれない。私が知らない域へと踏み込んだのかもしれない。
彼は独自に進化している。自分だけで生きられるように。
それならば。
尚更、彼の元へと向かいたいと思った。
どこを見ているのか。何を考え、感じているのか。
全てが不思議だ。彼の深淵を覗く気になれた。そのためならば私の深淵も覗かれても良い。
そのぐらい、意味があるものだから。
「もうそろそろ終わるぞ。─どうなるんだろうな」
大蛇の腹が細くなって消える。最後に残ったのは無防備な人間。
「どうだ?強者に集られる感覚は?」
「あぁ・・あ・・」
「つまらない。つまらないなぁ、それでは」
「どこだ・・どこなのだ・・」
「間違い?そんなの決まっている」
彼がゆっくりと詰め寄る。視界が塞がれる。
「お前はまだ見るな。見るのは俺らだけでいい」
納得できなかった。自分だけ特別扱いなど許せるわけがなかった。
手を剥がそうとしたが鍛えられた腕には無力だった。
「お前が生まれたことだよ」
ざしゅ、と音がした。1拍遅れて質量感のある音。
「つまらねぇなぁ?生きてんだろ?創造主サマ」
ずるずる、と引きずる音。視界がないせいか音を敏感に拾う。
「まっさか死ぬわけねぇよ。あんだけ人を貶めて、苦しめて、後悔させて。その姿を悦ぶ神がその手を下された瞬間に死ぬわけがねぇ。だろ?だからさ」
しゃぎん、と金属が擦れ合う音がした。
「おんなじ仕打ちを受けたって文句も言わねぇよな?」
ざすざす、と地に何かが突き刺さる音が複数回した。合計4回。どういう状態なのか音だけなのに想像ができた。
「おっとぉ、もうしゃべる口もねぇんだったな。ま、いっか。死人に口なしっていうし」
想像している姿に答え合わせがされていく。恐ろしいほどに合う姿に吐き気のようなものを感じる。
「コイツは、死んでも良い奴だから」
もう1つ、大きな切り裂く音を立てて静まる。
脚の力が抜け、腕による拘束からすり抜けてしゃがみ込む。その姿を見た瞬間に口から何か吐き出しそうになったが無理矢理それを喉元で抑える。代わりに涙が少し出てきた。
彼女が見たのは、憎き奴の頭を嬉々とした姿で齧り付く姿と5種のそれぞれ異なる剣に刺された意志なき肉体だった。
赤、青、金、黒、白。意味するものはたった1つ。
彼は変わってしまったのだ。何もかも。元に見た彼ではない。私の求めていた彼は違う。
もっと美しく、もっとカッコよく。何より優しく。
そう思っているうちに気づいた。何故
目の前の彼は私が求めた姿ではない。むしろ真逆とも言える。
なのに。
私は、彼の姿を見て笑うことができるのだろう。
恐怖で顔が釣り上がっている?そんなことはない。
余裕があるから笑える?そうでもない。
ならば─
「これが、私が求めていた彼の姿だからなの?」
自壊めいたものでもなく。嬉々として言ったわけでもない。
ただ、ボソリと言って気がついたことなのだ。
"これこそが真実、これこそが事実。そして─"
"これこそが、理想郷である"
頭では最初から分かっていたことだ。
この世界は求められたように動く。それ即ち誰かの意思のもとに変化するのであり─
「・・ははっ」
口からは乾いた笑いしか出ない。
都合のみを描いた世界。そんなのが成り立つわけがなかった。
それも今日で終わる。
その日、神は死んだ。歴史の1ページのかけらにも満たない部分に小さく刻まれるのだ。
空気が揺れる波動も感じられる。これが歴史の変わる感覚だろうか。
「何故すり抜ける?」
一瞬にして連れ去られ壁へ叩きつけられる。
「お前は、何者だ?」
自分が何なのか。私にはわからない。自分を自分で定義することができようか。
「お前は何によって成り立ち、何によって消える?」
それも分からない。自分自身が理解できていないから。
それでも、言えることがある。
「私は」
「私は、存在意義を見つけるためにいる」
私は私が探すものを見つける。それを見つけることで、存在を確認できる。
それがいくら醜い姿であっても。
「それの答えこそが、私の存在条件にして私の
「解らぬ。何故あると限らぬことを探し続ける?無駄ではないのか?」
真っ当な正論に突っぱねられる。
「あるとは言われていない。でも、ないとも言われてない」
「何故そこまでして問い詰める。わからなくとも生きられる」
「それこそが、人間の生きる意味だから。それを無くせば人間は惰性のみで生きる」
「現在の人間は惰性で生きていないのか?無駄な生産と消費を行い続ける姿は惰性で生きていることに入らないのか?」
「多くの人間はそれに気づけていない。何故なら、それが人間という物語の原題であるから」
「我にはそのような無駄を行う理由が理解できぬ」
「そうね。確かに理解できない。私でも理解できないもの。何のためにそこまでするのかも」
「ならば尚更・・」
「でもそれは人間として生まれた以上の義務なのよ。逃れることのできない仕事。分かるでしょう?貴方も人間に産まれたはずよ」
「人間ではない。我は・・」
「神である?随分と大層なことを言うようになったわね。さっき貴方が直々に神を殺したという事実があるのだから。貴方がさっき手を下したのであれば神は死んだはずよ」
「しかし、世界は・・」
「神の所作で動いているわけがない。だとすればこの世界は一瞬にして破綻しているはずだし、神が殺されるわけがない。結局は全て偶像崇拝なのよ。人間のね」
それに、と付け足しておく。
「
「・・やはり主には叶わぬな。この身体を主に託す。護れ。さすれば求めるものが得られる」
「余計な世話よ。元からそのつもりでここにいるのだから」
羽から白い光の粒が舞う。眼の白い光も薄れていく。
残った跡に黒の羽が残る。前に見た時よりもずっと不完全で、不恰好な非対称の羽だ。
その羽も崩れ落ちるように小さくなっていく。まるで元から存在がなかったかのように。
ヴァルフが足元から崩れる。咄嗟の判断で彼を支える。
「・・本当、よく耐えたわよ。私も、貴方も」
全身に過剰供給させていた魔力を切る。この存在がなければ侵食された。
身体の力がふっと抜けていく。魔力を使いすぎたせいだろうか。
「あ・・」
背中から落ちる感覚がする。前にはヴァルフ。最善の選択を。
・このまま背中に。彼は無事。
・半回転して怪我を防ぐ。自分は無事。
▷横に向ける。傷も痛みも共有する。
「うぐっ」
地面にエネルギーを抱えたまま衝突した瞬間自分でも驚くほどの人に聞かせられないような声が出た。彼は起きていないからヨシ。
思ったより顔が近い。だいぶ整った顔立ちだ。候補としてはアリだろう。親に突き出そう。
・・というか呼吸をしていない。危険な状態だ。
「・・あの人間たちが来てくれれば良いのですが」
「お呼びかね?ルーナ殿」
上から顔を覗き込む金色の髪を持つ少年。横にはあの少女もいる。
「ええ、丁度ね」
「大丈夫ですか?動けますか?」
「私はある程度ね。それよりヴァルフを手当てして。彼、呼吸してないから」
「・・運ぶ間に死ぬぞ?先に言え。まだ価値がある」
「なら言われた通りにやりなさい。まず気道を確保してから胸骨圧迫。骨は折れても良いから」
「骨を折る、か・・」
苦虫を潰したかのような表情になる。流石に抵抗があるようだ。
「躊躇えば相手は死ぬわよ。人命救助にある程度の犠牲は伴うものよ」
「・・よし、やれる」
「ならまず仰向きにして顎を上に持ち上げて気道を確保する。そしたら身体の真ん中、胸骨の下半分を4cmぐらい押す。深くても浅くてもダメ」
「こんなもんか?」
「それをある程度間隔を開けて1分間に100回、とりあえず3分続けて。疲れたら交代して続ける」
「だいたい300回か。なかなかの長期戦だな」
「するのとしないのじゃだいぶ違うわよ。半分ほどはこれで生き残れる」
「もう半分は?」
「対処が正しく行われなかったりするとそっちに行くわ。それとヴェリア、回復薬を持っているかしら。1番効果が小さいのでいいわ」
「それなら・・はい。後で代金を引きますよ」
小さめの小瓶に詰められた回復薬。1番安い純正品だ。
「そのぐらい良いわよ。金貨2枚ぐらい渡すわ」
「き、金貨2枚!?ならこちらにしてくださいっ!」
出してきたのは中くらいの大きさの少し色の濃い回復薬。
「どれでも良いわよ、最低限動ければ良いのだから」
一気に飲み切る。前に飲んだ
「少し待てば動けるわ。ありがとう」
「別に褒められることでは・・」
「動けるのなら早く動いてくれ。こちらも中々に忙しい」
ジュークの方ではまだ延命を行えていた。中々に屈強な人間だ。
「少し待ってなさい。焦らなくとも動くわ」
少し待つと脚の痺れがなくなる。
「ジュークはそのまま続けて。リーゼは救護を頼んで来て」
瞼を軽く開ける。瞳孔はまだ閉まっている。まだ保つ。
「ちょっと退いて。心拍は・・」
そっと手を当て心臓に魔力線を這わせる。軽く揺れては止まるを繰り返している。
「良かったわね。あなたの能力が役に立つ時が来たわ」
「どうすればいい?」
「左上の肩のちょっと下から右下の脇の下に電気を流して。反応なしなら2分後にもう1度。反応すれば良いわね」
「・・どのぐらいの強さだ?」
「そうね・・前に撃った
「10分の1、分かった。
ヴァルフの身体に流れた電流は真っ直ぐに通る。適切に管理したためか事故は起こらずに済んだ。
「反応なし、と」
「代わるわ。少し休んで。ゆとりがない以上どちらかに負担をかけるのは非合理的よ」
リズムを取って。腕に体重をかけて。しっかりと真っ直ぐ押す。
「まだチャンスはある」
冷静に動け。1つ間違えれば死ぬ。次は何が必要か。
対処さえ間違えなければ救える命だ。
だから、確実に救う。
「・・準備しておきなさい。もうそろそろ2回目が来る」
「言われなくとも調整済みだ」
195、196、197、198、199、200。
「やって!」
「了解。
指先が動いた。反応がある。
「このまま続けるわよ」
「反応があったから終わりじゃないのか?」
「何言ってんのよ。寝起きの人間がすぐ動けるわけないでしょ」
そのまま圧迫を続ける。応答があるまでは絶対に続けなければ。
「もうそろそろ代わるか?」
「大丈夫よ。もう最後だし」
「そうか。なら万全にやるか」
確実に応答は強くなっている。但し、身体のみの反応で。
つまり逆に言えばまだ反射的にしか動けていないということだ。
「着実に、確実に」
もうそろそろ200だ、と言われるまで押す。
「よし、200だ。離せ」
「良いわよ」
「
「ぐぅっ・・」
言葉で答えた。大丈夫だろう。
「止めて。それ以上は必要ないわ」
「流石は"氷の女王"だな。冷静沈着で正確」
「アンタも見事な対応よ。完全に認めているわけではないけどね。それとその呼び方はあまり好きじゃない。ルーナさんとでも呼んでおきなさい」
「・・・・」
完璧はない。完璧に近いものはあるが。
「うぅ・・イテテ・・」
「大丈夫ですか?」
「痛いな。こりゃ肋骨が折れたか」
怪我の判断が速い。生き残ることに長けた本能だ。
「迷惑かけたならすまねぇな」
「ある程度はしょうがないことです」
「もっと俺らを頼れよ。怪我しないためにも」
「呼んできましたよ!」
騎士団の救護班だろう。
「大層な怪我はしていない」
「検査しなさい。後遺症があると面倒よ」
「とりあえず乗せられとけ。後で迎えに行ってやる」
「逆に心臓が止まっていることが大層の怪我じゃなければこの世界に大怪我なんて概念はありませんよ?」
「・・3対1は無理だな」
彼は担架に渋々乗る。彼は不満そうだが。
「・・勘は鈍っていないはずなんだが」
「検査だけはしておきなさい。異常があるとこっちが困るの。それにただでさえ無茶なことをしていたのよ」
「・・そうか。なら調整は必須だな。頼む」
大人しく担架に収まる。すんなりと答える姿にジュークは違和感を覚えたようだ。
「調整?」
「さぁ・・?まぁうまく従ってくれましたし良いんじゃないですかね?」
やはり昔の記憶に引きずられる部分があるのだろう。
完全に消させる方が彼にとっては良いのだろうか。
次回! 喪うもの、得るもの よろしくです!