壊れた少年のマーチ   作:オリの中のカナリア

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AI2回行動実行中


どうしても

問題となる重病人を負って歩く。相変わらず空は晴れたままだ。

 

「運んでくれるのは嬉しいよ。ただね、もうちょっとだけ考えたほうが良かったと思う」

「どこがですか?足に負荷をかけずに運ぶとなるとこれが最適ですが?」

「理論的にはね。でも君の負荷が」

「その問題点はもうすでに達成されていますよ。もう実行されているでしょう?」

「まぁそうなんだけど。効率化させれば君の負荷と僕の負荷の和は最小になるよ」

「それは怪我人にも負荷がかかるでしょう?それだと本末転倒です」

「それでも…」

「まぁ前にやられた時の恥ずかしさを理解してほしいからでもありますが」

 

あの時は望んでいたとはいえかなり恥ずかしかった。今ならまだ大丈夫。

 

「あの時に抵抗すればすぐにやめたのに」

「できるものならどうぞ?」

「なら」

「私の苦労が水泡に帰することになったとしても、ですが」

「……」

 

この言葉にヴァルは確実に逆らえない。

彼には努力を絶対に意味なく無駄にせず、献身しようとする性質がある。

 

ヴァルの体はピクリと動いたのち、また戻る。どうやら抵抗しないらしい。

 

我ながらかなり天才的で愚かな方法だ。

 

「・・今日の予定は?」

「まず家に帰って軽い処置をして、食事をとってから本格的な治療に移ろうかと」

「・・分かった。円滑に進むようどうにかする」

「怪我人はじっとしてほしいです」

「怪我人?」

「当の本人が何を言いますか」

「…そうだったな」

「不思議な人ですね、自分が怪我をしたと言うのに覚えてないなんて」

 

普通は苦痛を覚えればその瞬間を恐怖とともに記憶する。1日も経たない短時間で忘れることなど滅多にないはずだ。

やはりどこかを忘れているわけじゃない。どこかが確実に欠けている。

 

「…ん」

「どうしました?」

「背中。もう少し下」

「あっ、ごめんなさい」

 

背中に付く異物。そこまで目立つ形でないために忘れていた。彼にとっては嫌な場所だ。

 

「迷惑をかける。申し訳ない」

「この程度なら問題ないですよ」

「少しだけ呼ばれているようだ。後は任せる」

「ま、ちょっ、どこに…」

 

腕がいきなり重くなり一瞬落としそうになる。

 

「おーい…」

 

完全に意識がない。つまり今は誰にも見られてはいない。

 

限度(トリガー)解放」

 

少しだけ限界使用魔力量を増やす。締め付けられていた感覚が少しなくなる。

 

「これが1番楽で、私らしい」

 

増やした魔力を全身に循環させる。踏み込む足がだいぶ軽い。

あまりやり過ぎると周りに被害が出るため注意しなければ。周りを凍らせてしまう。

 

たまには留め具を外してしまうのもいいものだ。窮屈な世界で生きるぐらいなら壊してしまった方がいいのかもしれない。

 

「…思い出しさえすれば、全てが解決する」

 

本来の主が見つかる。欠けた部分が完成する。それは全員にとって望ましいことだ。

しかし、それでも納得していない私がいる。

 

 

それが本来の喜びか。利用されて消えるだけにならないのか。

 

 

余計だと思っても考えている私がいる。

彼にとっての『幸せ』と私の『幸せ』は大きく違う。そう理解しているはずなのに。

 

「それでも、運命を変えるためには必要だというのなら」

 

もう2度と繰り返させない。今度こそ、笑顔になれる終わり方を。

 

「私は抗う。たとえ全てが敵対しても」

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

「ただいま帰りました」

「意外と時間がかかりましたね。もっと早く帰ると思っていたのですが」

「いろいろあったのよ、いろいろ」

「…珍しくそちらが落ちているとは」

「いろいろの結果よ。しばらく籠る」

「身体に気をつけてくださいね。()()()()人間ですので」

「…」

 

自室に背を浮かせた状態で寝かせ彼の様子を見る。肉体の損傷は少なからずある。

それでも並大抵の活動時の程度の損傷しか見られない。運ぶ際にはかなり怪我していると思ったのだが。

 

「…貴方の身体は本当に不思議ですね。一体何をしたらこの能力がつくのやら」

 

ここまでの回復能力は自然界にもいない。この能力を望んだ生物が人間であることに狂気すら感じる。

 

「起きてくれると楽でいいんですが。まぁそう都合もよくなるわけがないのでやりますか」

 

損傷したはずの箇所に手を置いて状態を見る。

熱を持っているわけでもなく、傷があるわけでもない。側から見ても問題はない。

 

ただし、これは通常の人間のみ。

私は知っている。これは怪我を覆い隠すための構造であると。

 

「確かここらに…あった」

 

ここに連れてきた段階で気づいた命とリンクされた魔法陣(ライフシャード)。彼はこれを隠すためにこれの解読のために彼を生かすことにした。

 

「消えていない…なら生きているし研究の継続もできる」

 

あまりにも時代遅れでしかない肉体依存型の機構と先進的な機械システムが何故噛み合うのだろうか。内部で調整をしているのか、それとも彼自身が調整をしているのか。

 

「魔法陣の変異もなし、治療も不要」

 

記憶を消すべきだっただろうか。思い出せば有用な情報を得られると思っていたがこの先の有用性を考えれば検討すべきだ。

 

「本当に『孤独』のみが似合う人ですね」

 

つまらない。普通すぎてつまらない。もっと私が驚く事実はないのか。まだ私が知らない事実はないのか。

 

期待しても出ないものは出ないのだ。私の将来も、実績も。

 

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