あと予約投稿機能初めて気付いた()
彼が部屋から出ると、ルーナは研究室のパソコンから自身のデータベースを開いた。
彼女のデータベースには彼女の両親から
彼女はそのデータベースから検索エンジンに"E2038"と入力した。
すると、E238Fの番号のにE2038と出てきた。
データベースを開こうとするも、データはなかった。消去されていた痕跡はあったがログは消去され復元はできなかった。
ルーナはこの結論から疑問点を上げていく。
なぜE"2038"なのか。どうして消去されているのか。
その結論を探るためデータベースを見ていく。
しかし、見れば見るほど分からなかった。
どうやら東西南北と中央で分かれているようだった。しかし、どのデータもふってある番号は1から350~400程で止まっており、到底2038には届かない。さらに、ほとんどのデータは残っており、彼以外の消去されたログも辿りやすかった。死亡状態や手術箇所の説明も細やかに書かれていた。
国の位置は辿れなかったがデータは得た。しかし、何も進まない。むしろ遠くなった気もする。
彼が帰ってくる前に寝室に戻り、彼の可能性について考える。
彼は普通の状況で生きた人間ではない。
それが故に彼の能力が恐ろしく高くなっていることがいえるであろう。仲間が強いことを嬉しく思う。
しかし、それが敵となり現れた場合、脅威としかなり得ない。
その際に私は本当に人間として対処できるのだろうか。
否、できるわけがない。
そのうえ、相手は高度な頭脳を持つ。明らかに不利だ。
一番あり得るのは彼に初めて会った時の眼になることだ。あれは完全に抑えきれていない。
あの状態で一般人に飛び掛かられたら死体が残るかさえ不安になる。
「・・
-
この権利は犯罪においても使われ、昔の犯罪者の八割は奴隷だったこともあった。その結果か、
ルーナはなるべくこの選択肢は無くしておきたい。他に対策を考えようとすると彼が帰ってきた。
「おかえり」
彼は黒髪に黒の瞳だ。瞳の色は赤色に変わることもあるが基本は黒のようだ。
本来、黒い髪の色は忌み嫌われる。しかし、彼の色は私にとっては綺麗な色に受け取れた。
「・・・・」
「どうしたの?」
「・・名はない。だからつけてほしい」
その話は私もしようと思っていたため同意した。
「ええ、その話をしようとしていたの」
「どんな名前にするんだ」
「取り敢えず私の家で養子として扱っていることにしておくわ」
「ああ、頼む。両親は・・両方ともにいないからな」
「そうね・・」
会話が途切れてしまった。なんとか会話を続けようとする。
「動物や物を参照に名前は付けられるわ。何かあるかしら」
「・・狼がいい」
「狼、か・・」
狼。彼を説明するにはちょうどいいくらいだ。しかし、狼には孤独や凶暴なイメージがついている。
できれば彼につけたくない。
「ヴァルキリアはどうかしら?」
「・・悪くはないと思う」
「ならガエリアは?」
「・・否定しない」
どうやらあまりいい感じではないらしい。もっと考える。
「・・ヴァルフ」
「ふぇ?」
「ヴァルフはどうだろうか」
彼が考えてくれた名前はいいと思う。そう伝えると彼は少し喜んだ気がした。
「なら私はヴァルと呼ぶわ」
「よろしく頼む」
そういうと彼から寝る提案をされた。寝室から出て行こうとすると引き止められた。
「どこへ行くんだい?」
「ち、ちょっと研究所へ」
「まさかそこで寝るのかい?」
「・・」
「・・どうやら当たりのようだね。ここで最後に寝たのはいつ?」
「・・分かりません」
正直に答えると彼はため息をついた。
「今日はここで確実に寝るように。いいですか?」
「嫌です、向こうでもっとしたいことがあるんです」
しばらく彼と睨みあう。どうやら折れてはくれないらしい。
「・・しょうがないです、ここで寝ますよ」
正直体は結構きつい。しかし頭が働けという限り働きたい。
とりあえず寝たふりをしてその場を凌ぐことにした。
§
もうそろそろいいかしら。
そう思いベッドから半身を上げる。
彼はこっちを向いていないが寝ているであろう。少し安心した。
ベッドから降り数歩歩いた時に声が聞こえた。
「どこへ行くんだい?」
声のした方に向くと彼は起きていた。
「‼︎」
「ここで寝るよう言いましたよね、
気がつくと彼に抱きかかえられベッドに戻された。
「なぜ足音を小さくしていたのですか?」
ここまで言われるともう言い逃れられないだろう。そう思い謝罪するために体を動かそうとすると強く押さえつけられた。
「ッ!」
「ここで寝たくないのですか?」
そんなことはない。急いで首を横に振る。
部屋は暗く顔はわからないが怒っているようだ。
「あなたが寝るまで僕はこのように押さえつけなければなりませんか?」
そんな必要はない。もう一度首を大きく横に振る。もう逃げ道はないのかもしれない。
「そこまでして僕を苦しめたいのですか?」
私はあなたを助けたい。首を横に振る。
そこで私は彼が怒っているのではなく、悲しんでいるのだと理解した。
彼は我に返り手の力を抜いた。拘束が緩くなり少し落ち着くことができた。
彼は一時的に落ち着くと体に手を回し、抱き締めながら謝り始めた。キズだらけのガラスを扱うかのような力の強さだった。
「ごめんなさい、僕が威圧的に動いてしまったため怖くなったでしょう」
「でも僕はもう貴女を失うことが怖いんです」
「もう誰も失いたくなんてない・・」
そこで私は気づいた。彼は元から強いのではない。
自分の体が無茶をしても守りたいものを守るために強くなっていたのだと。
そしてその守りたいものが守れず失ったものも多かったのだと。
私は大きな間違いを犯していた。私は彼を助けようとして彼を苦しめていたのだ。
彼の手が私のほおに当たった。どうやら涙が出ていたようだ。
「ごめんなさい、怖かったですよね」
「いいえ、これは違うの、今止めるから」
言葉に反して涙は止まらなかった。ずっと彼は私を抱き締めていた。
人の温もりを感じたのは何年振りだろうか。懐かしい想いに浸りながらも涙が止まるまで流し続けた。
涙が止まると彼は私に寝るように言った。
「先ほどまであったことは寝て忘れましょう。僕も忘れます」
「いえ、忘れなくていいです」
「?」
「この経験はいつかきっと役に立つでしょうから」
「・・そうですか」
「その代わり、とは言えなさそうですが」
「が?」
「貴方が私を守る対象になれるでしょうか?」
一瞬の沈黙の後に答えは返ってきた。
「仰せのままに」
「これからよろしく頼むわ、ヴァル」
「こちらこそ、でよろしいでしょうか」
「そこは言い切って欲しかったわ」
寝ようとしたその時彼からもう一つ話があった。
「貴女に遮蔽物を置いてくれって言いましたよね」
「あら、そこまで自分を制限できない人だったのかしら」
「・・もしもの可能性があるからですよ」
そんな冗談を交わしつつ私は睡眠をとることにした。
この睡眠は普段よりも短かったが、今までで一番充実した睡眠を取れた。