壊れた少年のマーチ   作:オリの中のカナリア

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やっと軌道に乗ってきた・・もうそろそろ本題に入る予定



魔力適性

とりあえず夜は明けた。

人間の癖とは恐ろしいものである。今は戦場でないというのに背中に意識がいってしまい、一睡もできなかった。いや、しなかったの方が正しいか。

 

・・まぁ結果彼女の酷い仕事癖に察知し寝かせることはできたのだが。

 

今度はないだろうと思うもいつか僕を殺しにくる人がいるのではないかとヒヤヒヤしている自分がいる。

とりあえずルーナの手と体の様子を見て生存確認をする。

呼吸正常、血流正常、体温正常・・よし、今日も生きている。

 

って違う!そんな確認しなくても生きてるから!

 

おっとっと、早めに手を戻して帰らなければ。もうそろそろ睡眠から目覚めるだろう。もし起きたら何をするのだろうか。僕としても少し仮眠をとって今日に備えよう。

 

§

 

拝啓、僕は早速どん詰まりに遭ったようです。

「えーっと、僕が聞いた限りだと僕は“無属性”だと聞こえたのですが聞き間違いですか?」

「いえ、はっきりと言いましたよ」

「・・嘘でしょ?」

「誰がこんなつまらない嘘つきますか?」

なんてこったい。こんなことになったのは少し前になる。

 

◇◆◇◆◇

 

「今日は魔力適性を調べましょう」

ルーナは朝食時にそう言った。ちなみに食事係は僕となった。彼女は料理があまり得意ではないらしい。

「魔力適性とは?」

「すごく要約すると魔力の編成です。いくつかの要素によって魔力の属性は変わります。遺伝、突然変異、無力化・有力化、周囲環境等に影響されます」

「それを調べると?」

「如何にも」

「進学には?」

「ちょっとした考査内容となる、と言ったところでしょうか」

「属性とは?」

「火、氷、雷、光、闇、回復、精霊の七つです。前者四つには光と闇のブレがあります。後者三つは補助系と考えていただいて結構です」

「効果も変わってくるのか?」

「ええ、前者三つで三つ巴、光と闇で対立、回復と精霊は孤立しており不干渉です」

 

中々に興味深いものだ。属性を持つ者はある程度有利・不利があるということらしい。

 

「どのように調べるのですか?」

「私がそれ用の魔法陣を作ります」

 

魔法陣か。もはや久し振りもいいところだ。

 

「ところでヴァルは何が使えるのですか?」

「基本的に無属性だ」

「強化幅はどの程度?」

「あの時の鎖が秒以内で潰れる程度には」

 

そう言うとルーナからの質問は無くなった。早く食べろとのことのようだ。

 

 

朝食を食べ終わるとアリーナに連れて行かれた。

 

「とりあえず魔法陣を描きますね」

 

そう言うと彼女はアリーナに手から出した銀色のペンを出し、魔法陣を描いた。

魔法陣を見る感じ七個の属性に魔力を振り分けるような形らしい。

面白いなと思い見ていると魔法陣を描き終えたらしい。

 

「この真ん中に魔力を込めることで属性に応じた魔方陣が光ります」

「こうかな?」

 

僕は魔力を魔法陣に流した。しかし、魔法陣が光らない。

 

「・・ありゃ?」

 

さらに量を増やすと微かに光ったような気がしただけだった。

 

「・・無属性、ですね」

 

ここまでが死亡宣告(属性判明)までの顛末である。

 

§

 

「まず事実を並べるとあなたは無属性魔法しか使えません」

「つまり僕の魔力が無属性であると?」

「いえ」

 

想定外の反応が返ってきた。てっきり無属性の能力だと言い渡されるのかと思ったが。

 

「あなたの魔力には全属性が入っています」

「・・それはいいことでは?」

「逆に言えば一属性の魔法を使うと五属性の魔力が行き場を失い最終的に身体の中で爆発します」

 

・・うん、結構ヤバかった。

 

「・・もし今までに属性魔法を使っていたら?」

「肉塊になっていればマシな方でしょうか。魔力暴走の一属性パターンのデータでそれなので六種が暴走するとどうなるか分かりませんが」

 

教官から無属性魔法のみを教わって正解でした!マジ教官感謝!しんどいとかつまらんとか文句言ってごめんなさい!

 

「つまり僕の体の中の魔力は混じりあって存在していて肉体を崩壊させないためには無属性魔法しかないと」

「如何にも」

 

試験はこの時点で不利な気がする。あとはどれだけ芸をこなすかだろうか。

 

「次に魔力量ですが基準を()()()超えています」

「??」

「あの魔法陣にあれだけの魔力を込められる時点でおかしいですからね」

「そうなの?」

「あれは設置型の簡易(プロト)タイプですからロスが大きいんです。その魔法陣全体に魔力を入れ、全属性である確証を得られるだけ込められるのはもはや異常なんです」

 

そもそも僕が考えていたよりも光りにくかったってことね。

・・要するに無駄に魔力を使ったってこと?

 

「それに無属性にとって魔力量は死活問題ですから」

「なぜ?属性魔法でも魔力は必須だろう」

「考え方が違うんです」

 

そう言うと彼女はアリーナの誰もいない方を向いた。

 

「属性魔法は攻撃の“方向性”で強みを出します。基本の無属性は」

 

魔球(シューター)

 

白い球が五つ上空に現れ、アリーナの地面に当たった。小規模の砂埃が上がる。

 

「そして属性を加えると」

 

氷球(フローズン)

 

氷の球が三つ上空に現れ、同じ場所に当たった。砂埃は上がらず、氷塊があった。

 

「これが属性魔法の考え方です」

「一方、無属性の魔法は攻撃の“威力”で強みを出します」

 

そう言うとルーナは僕のことを見た。

 

「先ほど魔法陣に込めたのと同じ感覚で魔力を込めつつ魔球(シューター)と言ってみてください」

 

ひとまず言われた通りにする。すると先ほどより一回り大きな白い球が五つ現れ、アリーナの地面に飛んだ。

当たった瞬間、微かに地面が揺れ大規模な砂埃が上がった。

 

「これが無属性魔法の考え方です」

 

ほうほう、属性魔法は賢く攻め上げるのに対して無属性はパワーでゴリ押す感じかぁ。

 

「にしても・・威力が強いとはいえここまでするとは想定外でした」

 

着地点の砂埃が晴れるとそこには小さなクレーターができていた。

 

「・・安全性等は考えてなかったの?」

「そもそもこんな魔球(シューター)の威力を出す人がいませんよ」

 

被害等は結構激しくなるなと思いつつ威力についても聞いてみた。

 

「威力を上げるにしても最大値があります。最大値は魔法によって変わり、上位になっていけばいくほど威力は上がります」

「つまり良家の人々はこの威力を上げる努力を行っているということか」

「そうなります。またこれとはジャンルが違う“血統魔法”なるものもありますがこちらは入学してからの方がいいでしょう」

 

うーん、経験の差って大きい。

 

「これからもいろんな魔法を教えてくださいね」

「基礎は教えますが・・固有魔法(ユニークスキル)を作ってみるのもいいと思いますよ?」

 

・・要するに自分で考えろということらしい。感謝が一瞬吹き飛んだ。




次回!ついに入学試験!
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