やがて"最強"と呼ばれるウマ娘の話 作:心折れた騎士
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最近、やけに強い人たちとばっかり戦ってる気がする。毎回毎回負けるから、いい加減自信が無くなってくる。
その事をトレーナーさんに話したら、自分の一対一レースの映像を見せられた。
「どうだヴィク、改善点が何かわかるか?」
「うーん…追い比べで毎回抜かれてるなぁ。その他にも、先輩達の走りと比べて…その、何だろう…?不器用、て感じですかね」
「その通りだ。お前は強い。確かに強い。だがな、小手先の技術が足りん!」
技術かぁ、考えた事も無かったなぁ。
「レースってのは、どれだけ自分の能力を引き出せるかだけではないんだ。特に、先行バであるお前は多少の駆け引きが必要となって来る。レースは大人数でやるもんだ。だから、お前には特殊技術を覚えてもらうぞ!」
「特殊技術?」
どこからともなくホワイトボードを取り出してくるトレーナーさん。いつの間に用意してたんだろう。
「ではまず、お前が今出来るスキルを見ていこう。まずはコレだ」
そう言って、トレーナーさんは私が走る映像を見せてきた。映像では私が下り坂で減速せず、逆に加速する様子が映されていた。
「これは…そうだな、【決死の直滑降】とでも名付けようか?効果は"下り坂で加速してもスタミナの減りに変わりがない"と言ったところか。普通のウマ娘がやったらあっという間にスタミナ切れ、最悪転倒もあり得る。だがお前は違う。アホほど頑丈なお前のことだ、多少無理しても良いだろうさ」
ふふん、褒められた。まぁ、私最強ですし?最近負けが嵩んでるけど。偶には格上にも勝ってみたいものだ。
「次だ、スタート時の超集中力。これはお前に自覚は無いかも知れないが、並の物ではないだろう。ただし、過集中という程でも無いから更に鍛える必要があるな」
集中力ってどうやって鍛えるんだろう…?やっぱりレース経験とかかな。なら、沢山出走しなきゃって事だ。
「最後にコレだ。お前の象徴的なコーナリング技術。まぁ、これに惚れ込んで俺はお前をスカウトしたわけなんだが。これに関しては最早言うことはない。お前にしか出来ない、正真正銘の固有技だ。ただ、これに関しては敢えて『まだ足りない』と言わせてもらおう」
「えっ、あれダメなんですか?」
「そうだ。俺たちトレーナー達が使う用語として、【固有スキル】というものがある。お前たち風に言うなら【領域】と言う奴だ。真に強いウマ娘と戦った時、幻覚が見えると言う。例えば、シンボリルドルフの固有は王宮だと言う。お前には、それを身につけてもらわなければいけない」
固有、領域…初耳の言葉だ。
でもよくよく考えてみれば確かに、先輩達がソレっぽい雰囲気を醸し出していたのは彼女達に【領域】があるからなんだと思う。
タマモクロス先輩がなんかバチバチしてるような感覚に陥ったしね。そうなら、カフェさんのお友達も【領域】の一部なのかもしれない。
「領域は、確かな実力と強い想いで発現するらしい。実力の面はクリアしているとして、強い想いか。ヴィク、何か出来そうか?」
「うーん、急に言われても困ります…。でも、勝ちたいと思う気持ちだけじゃいけないんですか?」
「さあな、俺はウマ娘じゃないから分からん。だが、それぐらいしか手がかりが無いのも事実だ。まぁ、お前は見かけと口調によらず我が強い奴だからな。直ぐにでも覚えられるだろう」
さらっとdisられた気がしたけど、特に問題はないのでセーフ。
────⏰────
その後トレーニングを始めながらずっと考えていたけれど、思い至る事は無かった。オグリ先輩やタマモクロス先輩に【領域】の事を聞いたら、「正直、自分でもわからない」という答えが返ってきたので、本当に感覚とかで掴むしかないんだろう。
ぼんやりと強い想いについて考えながら廊下を歩いていると、黄色い声たちが飛んできた。私にじゃない。
「キャーッ!あれって、超有名モデルのゴールドシチーさんじゃない!?」
声援の方を向くと、そこにはど偉い美人さんが儚げな表情で立っていた。ウマ娘が皆美人とは言え、ここまで綺麗な子は生まれて初めて見る。
「シチーさんと話してるのって、もしかしてトウカイテイオー!?やだ、スターと将来のスターの共演なんて!最高!」
私がトウカイテイオーも良くやるものだなぁと思ってみていたら、急にトウカイテイオーが私に近づいてきた。何用だろうか…?ていうか、ゴールドシチーさん?をほっぽって来ないでよ。
「ねぇ、キミさ。次何のレースに出るの?あっ、G1以外は答えなくていいよ」
何でこの子はこんなに偉そうなんだろうか。男の人からしたら、小生意気でかわいいんだろうけど私からしてみれば、ただ失礼なだけだ。
「うーん、そうだな。阪神に、朝日杯に、ホープフルに、皐月賞に、桜花賞に、NHKに、オークス、日本ダービー、安田記念、宝塚記念、秋華賞、菊花賞、天皇賞・秋、エリザベス女王杯、マイルCS、ジャパンC、有馬記念にも出ようかな?まぁ、言うなれば国内の出れるG1総なめしようかなって」
あ、やっば。つい熱くなっちゃって今後の予定全部言っちゃった。どれもこれも、全部私の心が弱かったからだな。気をつけなきゃ。
「ププー!ヴィクティミアはアタマ悪いね!そんなに出走したら二度と走れなくなっちゃうよ?可哀想だから、ボクが無敗の三冠を取ってキミの傲慢さをポッキリ折ってあげるよ!」
そういえば、私が都会に上がってきてから漫画というものを読む機会が増えた。その中でも、最近気に入っているのが呪術の漫画だ。最強のキャラクターが出て来るから好き。
だから、ちょっとだけセリフを貰おうっと。
「──────大丈夫、僕最強だから」
「あっそれ呪「何それ!?意味わかんないよーっ!」
やっぱり、漫画のネタって通じづらいんだなぁ。私は少しだけ傷ついた。実際、トレセン学園にオタクは少ない。居てもウマ娘オタクとかその程度。サブカルよりも走る事が好きな子しかいないからね。
「もう良い?私眠いんだ。昼寝したいから行くね」
トレーニングによる疲労と、頭を使ったことによる糖分不足で私の身体はとっくに睡眠を欲していた。これから太陽に照らされながらのお昼寝タイムだ。
私は何やら抗議するトウカイテイオーを尻目に中庭で泥のように眠った。
────⏰────
気がついたら夜でした。寝相が悪くて茂みに埋もれていたのは流石に笑っちゃったけど、この後フジキセキさんに怒られるのを考えると憂鬱になる。
「そろ〜り、そろ〜り…みんな寝てるよね…?もう夜の2時だもんね…?」
「そうだね。君と私以外は」
「あっ」
こっそり帰る作戦は大失敗に終わった。フジキセキさんにこってり叱られて、飛んできたトレーナーさんが本当に安心した顔だったのが罪悪感を感じる。
「──────ともかくお前が無事で良かった。フジキセキから帰ってないという報告を聞いて、お前が思い詰めすぎてるんじゃないかと心配したんだ。ったく、俺はともかくとして、一緒に探してくれたフジキセキに謝っとけよ」
「はい…ごめんなさいフジキセキさん。」
「良いんだ。ポニーちゃんが無事なら、私もそれで満足さ。さ、もう遅いんだ。寝ると良い」
女神様はここにおられたのですね。今度からはフジキセキさんの事を敬意を表してママと呼ぶことにしよう。
それはさておき、カレンダーを確認したら来週が京王杯だった。そうか、ようやく踏み出せるのか。私の夢への第一歩が。そう思うと感慨深いなぁ。
さっき寝ちゃったからもう眠くないし、今夜は対戦相手の情報収集でもしましょうかね。
────⏰────
深夜も過ぎ、夜も明けようかと言った時間にソイツは現れた。真っ黒で、何を考えているのかわからない顔。でも、その顔には見覚えも、親しみもあった。
──────私だ。これは私だ。
「そうだ。私はお前。だが、少し違う」
「何の用?私、別に二重人格じゃないんだけど」
「私は█████。お前の██そのものだ」
「何ですって?それは本当?」
「嘘をつく意味が無い。今日はお前に助言を与えにきた。」
「助言…?私が私に何を助言するっていうの?」
「欲せよ」
「…っ!成る程ね。わかった、やってみる」
────⏰────
気がついたら私は机に突っ伏して眠っていたらしい。よく覚えていないけど、何か大切な事を聞いた気がする。
「ま、覚えてないからいいか。どうせ大した事じゃないし」
京王杯まであと一週間。