やがて"最強"と呼ばれるウマ娘の話   作:心折れた騎士

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別の人から見たヴィクティミア①

 

俺がそいつを初めて見た時は鮮明に覚えている。

俺が昔、田舎の方に担当ウマ娘と出ていた時に野原を爆走するそいつを見た。

尋常じゃない加速力と正確なコーナリングは、当時の俺を惚れさせるに充分だった。担当ウマ娘もそいつの走りを見て、身震いしていた。彼女曰く、「彼女からは"絶対に勝つ"という強い意志を感じた」と言う。

 

その後、担当ウマ娘は俺が課したトレーニングに耐えきれず骨折。彼女は引退に追い込まれたが、アレは理事会の連中が圧力をかけて来やがったからだ。彼女はジュニア級にしては強すぎた。表すならば、オールCと言った所か?元からの才覚もそうだったが、何より彼女にはやる気が満ち溢れていて、どんなキツいトレーニングでもこなして見せた。だが彼女は、皐月賞を前に引退を余儀なくされた。

 

理事会の連中はウマ娘のレースで賭け事をしてやがるからだ。アイツらは自分達が損をしない為に彼女を…ゴッドスピードを引退させたのだ。そして俺も、危うくトレーナー資格を剥奪されかけた。だが、他のトレーナー達…主にキングヘイローのトレーナーの助太刀によって事なきを得た。だが、『ゴッドスピードのトレーナーは担当ウマ娘を虐待していた』などと言う噂が流され俺は次第に孤独になって行った。

 

そして数年の時が経ち、そいつに再び出会った。そのトモは更に強靭になっており、俺の心に再び火がついた。

 

コイツを最強にしなければ

 

その一心だった。だが、そいつは敗れた。あのトウカイテイオーに敗れてしまった。俺は困惑した。何故だ?と。

確かに、トウカイテイオーの才能は有り余る程だ。だが、奴の…ヴィクティミアの才能の前では霞む。何が起こった?

 

暫く思考して、俺はある仮説に思い至った。

 

「ヴィクティミアはレース慣れしていないのでは?」と。

そう言う事なら仕方がない事だ。今まで誰とも走ってこなかっただろうヴィクティミアに、駆け引きなんて土台無理な話だ。大方、走る時に流れてくる情報量に頭が追いつかず失速してしまったのだろう。

 

そして再びヴィクティミアを見る機会があった。チームリギルとトウカイテイオーに恐れをなし、逃げている姿だ。俺は「ふざけるな」と叫びたかった。

何故、お前達のような凡骨が神域の才能を持つウマ娘を威圧するのかと。お前達は何もわかっていないぞと。そう叫びたいのを我慢し、俺はヴィクティミアを追いかける。

 

ヴィクティミアが行った方向に向かって走っていくと、校舎裏で泣く声が聞こえた。白髪、コイツだよな?

 

「なぁ、何で泣いてんだよ。お前、練習してただろ?何で逃げたんだ。」

 

俺が声をかけると、ヴィクティミアは顔を上げて俺を見る。あぁ、変わっていないな。その白い眼は、俺を見透かしているかのようだ。

 

そして、暫く彼女と問答を続けている内に喜ばしい事実が判明した。

何と彼女はクラシック三冠を目指しているのだそうだ。素晴らしい、それでこそ俺の見込んだウマ娘だ。思わず大声を上げて驚かせてしまうが、そんなことは問題ではない。俺は強引にでもヴィクティミアと契約をする為にゴリ押しセールスをした。

 

──────そして、彼女は頷いた。

 

天にも昇るような気持ちだ。俺はこの才能を伸ばしても良いのか。それは何と、素晴らしい事だろうか。

 

ひとまずヴィクティミア…いや、ヴィクを寮に帰すと、俺はトレーニングを作り始めた。明日からでも勝たせてやる。だから待っていろ、ヴィク!

 

 

 

*************

 

 

私がヴィクティミアを初めて見た時、素直に「恐ろしい」と思った。テイオーの前でこそあんな事を言ったが、実際に戦ったら6:4で私が負けるだろう。そんな予感がした。

 

そして私は柄にもなく必死になって入学レースの資料を探し出し、ヴィクティミアのレースを見た。そして、驚愕した。

結果だけはテイオーの勝利だが、それはテイオーが絶好調だったからだろう。見る限りヴィクティミアはレース慣れしていない。"みんなの中で一人で走っている"状態だ。

それでは勝てるレースも勝てないだろう。私は彼女を警戒するだけではなく、一つの野生的な欲望が湧いて来たのを感じた。

 

 

勝ちたい。コイツと戦いたい。

 

 

久方ぶりに感じるウマ娘としての本能に、私は負けた。その日から私は、普段の五倍厳しいトレーニングを行った。オハナトレーナーからは叱られてしまったが、一度ついた火は止まることはない。

 

覚悟しろヴィクティミア。この私が完璧な貴様を倒す。そして、私こそが最強のウマ娘であると証明する。

 

 

後日、私はもう一度驚く事になった。

あのゴッドスピードの元トレーナーである鬼築トレーナーが、ヴィクティミアに専属で着いたと言うのだ。

ゴッドスピードは、私に匹敵する才能を持つと言われていたウマ娘だ。だが、厳しいトレーニングにより故障。そのまま引退してしまうという、悲しい結末を辿ってしまった。

 

新しい才能を、私の宿敵を奪われるわけにはいかない。そう思った瞬間、私の体は動いていた。

 

「鬼築トレーナー!話がある!」

 

「あ?何だ…?入りな。」

 

「失礼する」

 

私が鬼築トレーナーの部屋に入ると、そこは紙束の山が散乱していた。何だ、これは?全てトレーニングの方法だと言うのか?

 

「何だ、俺は忙しい。ヴィクのトレーニング内容を決めなきゃいけねえからな。」

 

「この内容は…やり過ぎだ!これではまた、ゴッドスピードの二の舞になる!あの悲劇を繰り返すつもりか、外道!」

 

「いいや、アイツなら耐える。アイツの脚はな、壊れねえんだ。アイツはわかってる。「手の抜き方」をよ。アホみたいなスピードで綺麗なコーナリングしてる癖に、全く膨らまねえ。あのバケモンみてえな耐久力が、この程度で根を上げるなんて"ありえない"んだ。生憎、お前さんのトウカイテイオーとは脚の出来がちげえんだよ。」

 

「……参考までに聞くが、コーナリングの時の速度は?」

 

「76km/hだ。おかしいだろ?」

 

何だ、それは。まるで化け物だ。そんな事をすれば、脚はポッキリ折れてしまう。だが、折れない?そんなのウマ娘なのか?

 

「は、はは…笑ってしまうな。冗談、ではないようだな?」

 

「あぁ。アイツは超えるぜ、伝説をな」

 

そう言うと、鬼築トレーナーは再び作業へ戻ってしまう。これ以上の問答は無用か。

 

 

 

 

「トレーナー、私をヴィクティミアより強くしてくれ」

 

気づけばオハナトレーナーに土下座で頼み込んでいた。生徒会長としての矜持も、責務も一切捨てた本気の土下座だ。これには流石のオハナトレーナーも折れてくれた。

 

「全く…!良いわよ、で?そのヴィクティミアとか言うのの特徴は?」

 

 

その後、オハナトレーナーは頭痛がしたそうだ。

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