やがて"最強"と呼ばれるウマ娘の話   作:心折れた騎士

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ジュニア級⑮

 

私の次なる目標はホープフルステークスだ。今回、デフィちゃんは出ないらしい。何でも足が不安なのだそうだ。引き続き出走するのはトウカイテイオーと私だけだ。

そんな私は今、服屋に来ていた。何故かって?それは遡ること5時間前。私はシリウスに呼び出されていた。

 

「ヴィク、お前クリスマスパーティーにどんな格好で来るつもりだ?」

 

「え?普通に普段着だけど…」

 

「ほぉ、なら見せてみろよ。普段着」

 

そう言われて渋々私服を着た写真をシリウスに見せる。写真を見たシリウスは初めに怪訝な顔をした後、眉を顰めて苦々しい顔に変わった。

そして一言。

 

「うわ、ダサ…」

 

私は激怒した。必ずこのファッションセンス皆無の友を罰せねばならぬと決意した。何でや、バナナの文字がプリントされたTシャツとふわもこのジャケットは可愛いだろうが!

私がそう憤っていると、シリウスは私の肩に手を置いて真顔でこう言った。

 

「服、買いに行こうな」

 

そういう訳で、都内にある巨大ショッピングモールにシリウスと来ていた。途中でキングヘイローさんと合流したのでシリウスが彼女を誘って一緒に行動してもらう事になった。

 

「まず一着目!どお?可愛いでしょう!」

 

私が着たのは七色の革のジャケット。オマケに銀色のチェーンがたくさん付いていてかっこいい。これなら高得点間違い無し!

 

「ダサい」

「ダサいわね」

 

どうやらお気に召さなかったようだ。なら次だ。二着目はトゲトゲの肩パッドに黒の鳩尾までしかない革ジャン。それにジーパンを履いてインナーにはダメージ仕様の赤のシャツ。

いかにも世紀末みたいでかっこいい。

 

「野蛮だな、パーティーに来ていく格好じゃねえ」

「流石のキングもドン引きだわ…」

 

これもダメか。それなら今度は路線を変えて、ちょっぴり大人路線で行こう。

三着目はギリシャ風の服で、胸とパンツは隠せているけどお腹と背中丸出しのスタイルだ。自分でもスタイルは悪くないと思うから似合ってるんじゃないかな。

 

「どお?ちょっぴりセクシーでしょ!」

 

私が更衣室から飛び出すと、シリウスとキングヘイローさん二人がかりで更衣室に押し込まれた。そんなにダメだったかな、自信あったんだけど。

 

「お前それ人の前で着るなよ。絶対に襲われるからな。間違いない、絶対だ。ダメだこれは。絶対に、ダメ!」

 

「貴女なに考えてるの?こんな服を着たら貴女の容貌と雰囲気も併せて『襲ってください』って言ってるようなモノだわ。キングが命じるわ、絶対にやめなさい」

 

物凄い剣幕で止められたのでやめた。

 

「むぅ、それなら二人が決めてよ。当然、私よりもセンスあるんだよね?」

 

「「当然だろ(だわ)」」

 

解せぬ

 

 

────⏰────

 

 

「どう?これが一流のコーディネートよ!」

 

「こ、これ…恥ずかしいんだけど…」

 

キングヘイローさんが着せて来たのはシンプルな黒のドレス。胸元はクロスした布で隠されている。お腹らへんには花のブローチが付いている。正直、恥ずかしい。

 

「へぇ、似合ってんじゃねぇか。悪くねえ。流石はキングサマってとこか?」

 

「当然よ、普段から他の子の格好を見てあげたりしているもの。勝負服のデザインだってした事あるのよ?」

 

「そりゃあ凄えな、プロ顔負けってか。うし、次は私の番だ。ほれ、着てみろ」

 

シリウスが着せて来たのは蝶の羽のような模様が施された純白に金の線が入れられたドレスだ。いかにもセレブが着ていそうな高級感がある。肌触りもとても良い。頭には白いヴェールを被っている。

顔から火が出そうだ。

 

「これは…破壊力が凄いわね。静謐だけど何処かに遊び心と天衣無縫な雰囲気を感じるわ!」

 

「へっ、伊達にシンボリ家のウマ娘じゃねえからな。これぐらい朝飯前だ。で?どうなんだヴィク、どっちにする?」

 

「わ、え…そのぉ、えっと…」

 

言えない。どっちも恥ずかしいからヤダなんて絶対に。

私がウジウジしていると、次第に人だかりが出来始める。まずい、早く決めないと恥を晒す事になっちゃう。

えーい、ままよ!

 

「どっちも買いますっ!」

 

 

────⏰────

 

 

お小遣い全部吹っ飛んだ。私は泣いた。

買った服をトレーナーさんには絶対見せないようにしないとね。恥ずかしいし、それに何だかモヤモヤするから。

今私はトレーニング後のクールタイム中だ。なんだけど…今日は何故かトレーナーさんの態度が余所余所しい。なんでだろ。

 

「トレーナーさん?どうしたの?」

 

「ッ、いや…その……」

 

いやに歯切れが悪い。何か後ろめたいことでもあるのかな。だとしても、ここまであからさまだと逆に「疑って下さい」って言ってるようなものだ。

 

「ねぇ、どうしたのってば。」

 

「お前、わざとじゃないだろうな!?」

 

「何が?」

 

「その格好だよ!お前そんな破廉恥な格好しやがって!」

 

へ?

 

私が恐る恐る全身を見てみると、今日のトレーニングウェアの格好がおへそ丸出しスタイルである事に気づいた。途端に恥ずかしくなって、顔が熱くなってくる。

というか、トレーナーさんが私をそういう目で見てたって事!?待って、ダメ。恥ずかしすぎる。

 

「ト、トレーナーさんの…ばか」

 

「うるせェーーーッ!マトモな服を着ろォーッ!!今は冬だぞォーーッ!」

 

「んなっ!?別にいいじゃない!好きな格好したって!」

 

「学生がそんな破廉恥な格好するんじゃありません!お母さん許した覚えはありませんよ!」

 

「マ、ママ…?」

 

私たちがギャーギャー言い合っていると、本校舎の中から特大の爆発音が鳴り響いた。何事かとトレーナーさんと顔を見合わせると、目が合う。

うわ、間近で見ると顔がいいなこの人…てか顔近すぎ!?

 

 

フォルカヌポウッッッッ!!!!!!!

 

 

再び大爆発。今度は煙が上がっている。世紀末かな?

あっ、副会長さんが鬼の形相で走って行ってる。

何なんだ一体……?

 

 

────⏰────

 

 

謎の爆発事件があってから一日経って、私は今ルドルフさんと並走をさせてもらっている。何回か回しているのだけど、ルドルフさんは楽しそうにしてくれている。

時たま見せる獰猛な笑みがちょっと怖いけど。

 

「時間的に次がラストかな?」

 

「はいっ、お願いします!」

 

ルドルフさんと並び、合図を待つ。

 

「よーい、ドンッ!」

 

 

「ふヴゥッ!」「フッ!」

 

お互いに前へ前へと競り合う。直線ではまだ私に勝ち目は無い。明らかに手加減されていても付いていくのがやっとだ。

でも、コーナーなら話は違う。

 

「私、はァ!負けないッ!」

 

「ッ!」

 

イメージは、絡みつく鎖を引きちぎる感覚だ。

ギチリと言った音が鳴った気がした。その瞬間、私は通常のウマ娘なら故障してしまうような速度でカーブした。

 

「やはり、タダでは済まないね!私も、ギアを上げさせて貰おう!」

 

ルドルフさんは私よりも大きく外に逸れているにも関わらず私に追いついてくる。これが皇帝か。でも、まだ手を抜かれている。悔しい。ここまでしてもまだダメなんて。

 

「嫌だっ!負けたく無い!」

 

コーナーでダメなら、踏み込みを強くして超前傾姿勢で走る。トレーナーさんと考えた代替案の一つだ。でも、これは足首につよい負担がかかると言う。それでも、負けたくない。

せめて、ルドルフさんの本気を引き出したい。

 

「命をぉ、燃やせぇええええっ!」

 

「何っ!?よすんだヴィクティミア!くっ、調子に乗るなよ!」

 

一度だけ、ルドルフさんを追い抜く事に成功した。だけど、次の瞬間にはズバ抜かれていた。何が起きたのか理解出来なかった。

気がついたら負けていたのだ。

 

「はぁ、ぜえっ…な、何が…?」

 

「フゥ、ハァ……まさか、使わされるとはな」

 

「まさか…『領域』を?」

 

「その一割、だがな。それでも、ジュニア級でここまで引き出されたのは初めてだよ。強くなったな、ヴィクティミア」

 

「〜〜〜っ!ありがとうございます!」

 

感極まって少し涙が出かけてしまった。【皇帝】シンボリルドルフがその実力を少しでも見せつけてくれた。その事実に私は舞い上がっていた。だから、ルドルフさんの質問の本当の意図がわからなかったのだ。

 

「ところでヴィクティミア。先日シリウスと服を買いに行ったそうだね?何をするのか聞いても良いかな?」

 

「あぁ!今度、シリウスの家でクリスマスパーティーをするらしいんですよ。それに招待されましてね。その為に行ったんです」

 

「──────ほう」

 

突然ルドルフさんの目から光が消えた様に見えたけど、気のせいだろう。夕方だし、逆光でそう見えただけに違いない。

それからと言うもの、ルドルフさんがチラチラと私の方を横目で見てくる事が多くなった。どうしたんだろ…?

 

 

 

 

 

 

そして、いよいよ明日がクリスマスパーティーという日まで来た。激動のクリスマスが今、始まろうとしていた。

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