やがて"最強"と呼ばれるウマ娘の話   作:心折れた騎士

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メイクデビューまで②

 

 

「開始の合図は、タイマーが鳴ったらね。」

 

「私はいつでも構いませんが…」

「ニンジャには実際隙はない。いつでも来ると良い」

 

二人の了解を得られたので、タイマーをセットして走るタイミングを見計らう。今か今かと逸る気持ちを抑えながら、ただその時を待つ。

 

ピピピピッ!

 

まずは、グンとスピードを上げて後ろとの距離を引き直す!どうだ、これで追いつけないでしょ!

 

「イヤーッ!」

 

「なっ!?」

 

シノビちゃんは掛け声を上げながら私を追い抜く。鬼気迫る表情だ、負けてられない!

 

「うおおおっ!」

 

「アイエッ!?」

 

私は更に加速すると、シノビちゃんを追い抜かす。これで……!

 

「────────────」

 

「っ!?」

 

ナニカが、来る。暗い夜にあっても、黒いナニカが。その影は私達を追い抜くと、先に行ってしまう。その次の瞬間、カフェさんが前に躍り出てきた。

 

「お友達…待って下さい………!」

 

「は、速い…!なんて速度なの!?」

 

 

────⏰────

 

 

負けた。やっぱり、先輩の力は偉大だなぁ。シノビちゃんにもギリギリの差で負けてしまった。でも、次は勝てる。勝ってみせる。

 

「ところでカフェさん、さっきの黒い影は…一体?」

 

「実際、コワイ!」

 

シノビちゃんも見えたようで、カフェさんに聞くとカフェさんは驚いたような顔をして私達を見る。ヤバいやつって思われちゃったかな…?

 

「お友達が……ふふっ、そうですか。」

 

意味深な笑みを浮かべてゆらりと近づいてくるカフェさん。カフェさんは私の手を握り、何かを握らせる。一体、これは…!?

 

「私のメアドです。また走りましょう」

 

私が唖然としていると、カフェさんは行ってしまった。す、凄い人だったなぁ…

 

 

 

 

次の朝、タキオンさんからメールが来た。

 

『君、カフェのお友達が見えたらしいねぇ。もしよければ私の実験

 

 

そこまで読んで私は見るのをやめた。やっぱり、癖ウマ娘だ…!一癖どころじゃない、5癖はありそうだぁ…!

 

「ん?どうしたヴィク。今日は勉強をしてもらう予定だから、この隙に存分に身体を休めておけよ」

 

珍しく今日は優しい事を言う鬼畜メガネトレーナーに若干驚きつつ、近況報告がてら一緒に歩きながら雑談する事にした。

 

「あっ、トレーナーさんじゃないですか。私ですね、昨日トレーニング後にカフェさん…マンハッタンカフェさんとシノビサイレンスちゃんと勝負したんですよ!二人は強くって、勝てませんでしたけど…次は勝ちますっ!」

 

「は?」

 

トレーナーさんが鉛筆を取り落とす。やっぱりオーバーワークだったかな…怒られちゃうな。

 

「お、おまえ、マンハッタンカフェとやり合ったのか?あのマンハッタンカフェと!?」

 

「あの…って、そんなに凄い人なんですか?」

 

「凄いなんてもんじゃあない!あの子は俺たちトレーナーの夢、凱旋門賞にまで行けた娘なんだ!何故だか知らんが、凱旋門賞は辞退したみたいだけどな。」

 

はぇ〜…そんなに凄い人だったんだ、カフェさん…それなら、尚更超えないとなぁ。私は"最強"になるんだから。

 

 

────⏰────

 

「賢さを鍛えるなんて、誰がやるんですか?」

 

「ヴィク、お前は賢さの素晴らしさを理解して無いな?賢くなれば、レース運びも自分の思うままだし、自分の理想のタイミングで理想の走りが出来るようになる。要するに、賢さってのはレースに対する器用さなんだよ。」

 

「なるほどです」

 

そうかぁ、器用さか。確かに私も走っていて〈円弧線のウィザード〉が発動しにくい事がある。あれは私のパワーだけで無理矢理発動させてるような物だから、使った後は身体がとっても疲れる上に、発動タイミングも上手く調節出来ない。

どこで加速すれば良いのか、どこで追い抜けば良いのか。そう言うのが賢さなんだね。

 

「ヴィク、着いたぞ。今日の講師には理子ちゃんを読んでおいたからな。しっかり学ぶんだぞ」

 

「言われなくても!たのもー!」

 

教室の扉を思いっきり開き、挨拶する。挨拶は大事、シノビちゃんも言ってた。

 

「……………貴女は…」

 

「私、ヴィクティミアって言います!講習、始まっちゃってますか?」

 

「いえ。これから始まるところです。ではヴィクティミアは…そうですね、スペシャルウィークの隣で」

 

スペシャルウィーク…えっと確か、トレーナーさんが言ってたような。そうだ、黄金世代とかの!

 

「よろしくお願いします、スペ先輩!私、ヴィクティミアって言います。気軽にヴィクって呼んでください!」

 

「はいっ!よろしくお願いしますね、ヴィクちゃん!」

 

私が挨拶すると、とっても可愛い笑顔で挨拶を返してくれる。スペ先輩はみんなに元気をくれる良い子なのかな?

 

「さぁ、講習を始めますよ。ではまず、基本のところから。中山の直線は短く、追いつきにくいですのでコーナーを使い差をつけます。コーナーを曲がるのが綺麗であればある程、有利になれますからね」

 

コーナー。私の得意だ!

 

「あぁ、そう言えばヴィクティミアはコーナーが得意でしたね。確かにあの曲がり方は驚嘆に値します。ですが、使用は控えるように。あれば恐らく、相当の負担がかかっています。ただでさえ、ウマ娘の脚は消耗品だと言うのに、あんなに無茶な走りをしては直ぐに壊れてしまいますよ?」

 

「でも、私のトレーナーさん曰く大丈夫らしいですよ?何でも、『お前の脚はバケモンみたいに丈夫だからイケる』らしいです」

 

「それでも、あの走り方は危険すぎます。控えるように。どうしても勝ちたいという気持ちは理解しているのですが、選手生命が絶たれて仕舞えばそこまでです。」

 

「はぁーい、わかりましたよー…ぶぅー」

 

私がぶー垂れていると、突然スペ先輩に私の手をニギニギされる。顔を見ると、ちょっと涙ぐんだスペ先輩がいた。

 

「ヴィクちゃんっ…!骨折は、辛いんだよ!スズカさんのを見たから、ちょっとだけだけどその辛さはわかるの!その、無理は…しないでね?」

 

「いや、私は大丈夫だよ…」

 

教室内が微妙な雰囲気になりながら、そのまま授業は進行した。それからと言うもの、学園内で私をまるで可哀想なモノを見る目で見る人が多くなったように感じる。

 

私は大丈夫だってのに。

 

 

「トレーナーさーん…なんか私の評価が……え?」

 

私がトレーナー室へ寄ろうとすると、トレーナー室の中から揉めている声がする。扉は半開きになっていたから、チラッと覗いてみる。

 

「だから!あの走りはアイツの持ち味なんだ!それを殺すなんて、そんな事させてたまるか!アイツは最強になるんだ!」

 

「貴女はそう言ってゴッドスピードも潰したのですか!?」

 

「何だと!?てめぇ、言って良いことと悪いことがあるだろうが!」

 

り、理子先生とトレーナーさんが喧嘩してる…!?

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