やがて"最強"と呼ばれるウマ娘の話   作:心折れた騎士

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本当に遅れて申し訳ない


ジュニア級
ジュニア級①


 

こんにちは!私、先日メイクデビューを済ませたウマ娘のヴィクティミア!夢は「最強」のウマ娘になる事!今日も元気に練習!

 

 

………と、言いたい所なんだけど。

なんか、他のウマ娘の子達からの視線が険しい…なんで?私、何かしたかな…?

私が横切ればヒソヒソ話されるし、私が目を向けると睨み返してきたりする。これが世に聞くイジメって奴なのかな…?

私はちょっぴり傷つきながらトレーナー室へ行くと、そこにはニヤニヤしたトレーナーさんがいた。

 

「ヴィク、お前やるなぁ!」

 

「何がですか?今日はなんかみんなから変な目で見られててあんまり気分良くないんですよね…」

 

「はぁ?そりゃ当然だろ。お前メディアの前であんな啖呵切っちまったんだからよ」

 

「え?」

 

そういえば、この間カメラの人達に堂々とした事言っちゃったんだった。あれそんな大きいメディアだったんだ…?

 

「お前は複数のメディア達に向かって『私は最強だから、負けた奴は仕方ない』って言い放った訳だ。俺はその記事を見た時、舞い上がっちまったよ。俺の相棒はこんなにも頼もしいんだってな。」

 

「ちなみに、どんな事が書いてあったんですか?」

 

「言うよりも見る方が早いな。ほれ、みろ」

 

そう言ってトレーナーさんが複数の新聞を渡してきた。どれどれ…?

 

『傲慢なウマ娘!他のウマ娘を侮辱か!?』

『史上最悪のウマ娘現わる!スポーツマンシップは何処へ』

『傲岸不遜ウマ娘ヴィクティミアの被害者に聞いた、最低最悪のウマ娘とは』

 

「何ですか、これ…?内容も酷いですね。『悪の魔王を打ち倒すのは、期待の新星トウカイテイオーか!?』だって。何言ってるんですかね…」

 

若干不機嫌になりながらトレーナーさんを見ると、それはもうニッコニコだった。さっきから何なのこの人…?

 

「いずれ倒す敵だ。ハードルは上げていこうぜ?」

 

「そうは言っても…まぁ、勝ちますけど。」

 

「おう、その意気だ。じゃあ放課後からトレーニングだからな。場所は第三トレーニング場、今日はゲストにレジェンドを呼んでおいたから、気張れよ。」

 

そう言うとトレーナーさんは行ってしまった。レジェンド?誰だろう。みんなのアイドル、オグリキャップ様とかかな?

 

 

────⏰────

 

 

「あ、あのぉっ!」

 

「うん?あ、デジタルちゃんだ」

 

私が休み時間に廊下を歩いていると、息を荒げて震えているデジタルちゃんが声をかけてきた。大丈夫かな?

 

「ひゃわ…あの、記事、見ましたっ!」

 

あー…この子もそうなのかぁ…。ちょっと残念だなぁ。と、思っていた矢先、とんでもない爆弾が飛んできた。

 

「へ、ヘリオスさんと、ヴィクティミア様は……お、お付き合いされてるんでしゅかっ!?!?!?あっ、すいません!邪推でしたね!それではコレにてーーーっ!」

 

大声でそんな事を叫ぶ物だから、周りの目が更に変なものになっていく。勘弁してよ…

 

「ヒソ…ヒソ……レズ…」

「……百合っすか………いいですね」

「KWSK」「詳細キボンヌ」

 

やめてほしい。本当にやめてほしい…。

私がウンザリしながら歩いていると、シノビちゃんが音もなく耳元で囁いてきた。

 

「私は、別にアリだと思います……あの、頑張って下さい…?」

 

「ちがーーーう!!!!!そんなんじゃ無いって!」

 

思わず大声を出してしまった。周りからの目が更にキツく…うぅっ!

 

「ヘリオスさんとは遊んでただけだから!」

 

「あ、遊び……あれは遊びだったって訳ですか…!?何たる狂人の戯言!ハイクを詠め、カイシャクしてやる」

 

突然忍殺モードに入ったシノビちゃん。逃げる私。その後副会長さんにこっぴどく叱られたのは流石に理不尽だと思った。

 

 

────⏰────

 

 

さぁ、ようやく放課後のトレーニングの時間だ。京王杯ジュニアステークスに出て、ホープフルステークスへの出走権を得る為に頑張らなきゃいけない。

勿論、私と同じ狙いの子達はごまんといるから、その中で勝っていかなきゃいけない。だから実質、G1のレースと遜色ない緊張感だ。

 

「お、来たかヴィク。今日、お前のトレーニングをサポートしてくれるのはこの人だ。来てくれ!」

 

トレーナーさんが呼びかけると奥から小さな影が見える。あ、あれは…!?

 

「ホンマにしゃーないやっちゃな。兄サンの頼みや無かったら断ってたとこやで?ほな、ウチの練習相手は誰や?」

 

白い稲妻、怪物の好敵手。オグリキャップ様と並んで二強とも呼ばれたウマ娘。タマモクロス先輩がそこに居た。

 

「ほら、ヴィク。挨拶しろ、タマモクロスは忙しい時間を縫ってお前との時間を作ってくれたんだ」

 

「あっ、はい!私、ヴィクティミアって言います!その、よろしくお願いしますっ!」

 

「へぇ?お前さんが……。オモロいやん、ええで。兄サンの頼みじゃなくても手伝ったる気になってきたわ。」

 

タマモクロス先輩は目をギラリと光らせて『並走や』と言って来た。私よりも小さいけど、その身に宿る力は本物だ。隣に立たれるだけで、強者の圧を感じる。

 

「おうおう、血気盛んな事で何よりだ。それじゃ、コインが落ちたタイミングでスタートだ。そーれっ!」

 

コインが投げられる。私はコインが落ちる瞬間を待つ。集中力を限界まで上げて、今か今かとその瞬間を待つ。さぁ、まだか、まだか。

 

空気を裂いて、コインが地面に着く気配がしたのと同時に走り出す。よし、走り出しは好調!コンマ1秒遅れてタマモクロス先輩が走り出す。

私とタマモクロス先輩の実力差は圧倒的だ。でも、負けてやる訳にはいかない。何故なら私は最強だから。

 

「ヴィク!?ペースを上げすぎだ!スタミナが持たないぞ!?」

 

私がトップスピードに近い状態で走っているのにも関わらず、平然と横に並ぶタマモクロス先輩。その顔は私と違って、余裕綽々といった風貌だ。

 

悔しい。所詮私は実力を出すに値しないというの?だったら、目に物を見せてあげる。

 

「ッ!?」

 

誰かが息を呑む声が聞こえた。それは私だったかも知れないし、タマモクロス先輩だったかも知れない。

私は坂道をトップスピードで駆け降り、更なるスピードを得る。よし!突き放した!このままゴールしてやるっ!

 

最終コーナー、ここで完全に勝負を決める!勢いに乗ったまま私は全力でコーナリングする。脚が熱い。エンジンは全開、普通の子なら脚が砕け散るようなことも、私なら出来る。故に最強なんだ。

 

「あんまし、ウチを、舐めんのも、大概にぃ…せぇよッ!!!」

 

「ッ!?」

 

後ろからタマモクロス先輩がカッ飛んできた。ますい、どんどん差を縮められる。ゴールまであと50m。30m。10m。

 

「ウチの、勝ちやぁ!」

 

ゴール。負けた。完全に差し切られた。悔しい、全力超える力を出したのに、負けた。

 

「はぁっ……はあっ…悔しい、なぁ…」

 

「ぜえっ、はあっ…何を言うとんねん、はぁ、ウチにここまで喰らいつく奴なんて、そうそう居らんで。ヴィクなら、少なくともジュニア級は無双出来るで。」

 

とっても良い笑顔でタマモクロス先輩はそう言ってくれる。そっか、私…伝説と良い勝負出来たんだ。えへへ、嬉しいな。憧れがこんなにも近くにいて、その憧れと戦えたなんて。

 

「それよりも、ヴィク。お前さんのあのコーナリング、ほんまに驚いたわぁ。あれって、脚に負担とか掛からへんの?」

 

「あー…あれは、ですね。私以外がやると、たぶん、脚がもげます…だからこそ、勝てると思ってたんですけどねぇ。負けちゃいました」

 

「え、そないな事して大丈夫なん?ちょい脚触ってもええ?」

 

「良いですよー」

 

「ほんなら…熱っ!?何やコレ、アホみたいに熱うなっとるで!?」

 

ちょっぴり涙目になりながら恨めしげに私を睨んでくるタマモクロス先輩、か、かわいい…!

 

「おーう、お疲れ様だ。ありがとさん、タマモクロス。それでヴィク…お前、脚に不安はあるか?」

 

「いえ、無いですね。強いて言うなら、しばらくは脚を冷却しておきたいですね…見てください、私の脚を触ったタマモクロス先輩の指が火傷しちゃいました。」

 

「そんなに熱くなるもんか?ウマ娘ってのは神秘の塊だな。まぁ良い、今日はもう座学だけにしておこう。流石のお前でもこれからトレーニングはキツいだろ?」

 

「なんや、座学するんかいな。せやったらウチもレースのコツとか教えたるで。走ってるからこそ見えて来る景色もあるっちゅう事や。ええやろ?」

 

 

その後、タマモクロス先輩も混ぜた座学の時間が始まった。途中、私たちの並走を見ていたタキオンさんがハイテンションで乗り込んできて七色に光る人に連れて行かれていた。あの人の世界線だけおかしくない?

 

 

────⏰────

 

 

「ふわぁ…ねむ。」

 

夜中、教室に忘れ物をしていたのを気づいた私は校舎で歩いていた。オグリキャップ様のぱかぷちを置いて来てしまったのだ。あれが無いと眠るに眠れないんだ。

 

「おや、ヴィクティミアじゃないか。どうしたんだい?こんな夜中に」

 

「あ、会長さんだ。こんばんはー」

 

「あぁ、こんばんは。そう言えば、君の並走を見たぞ」

 

何やら怖い笑顔をしながら私の前に立つシンボリルドルフさん。威圧感が、実際コワイ!ところで、シノビちゃんは夜中に出歩いているらしいけれど怒られないのかな?

 

「並走?あぁ、タマモクロス先輩との奴ですね。それがどうかしましたか?」

 

「フフ……君の走りを見て、私もまた血が激って来たと言うワケさ。剛毅果敢、と言うやつでね。私にもまだ、最強になりたいという欲望が残っていたといわけだね」

 

やばい、めっちゃ眠すぎて半分ぐらい理解できなかった。でも、会長さんも最強になりたいって事は、ライバルって事…?それなら。

 

「やってみせろよ、会長」

 

「何だと?」

 

「私は最強です。必ず最強になってみせます。シニア級有馬記念、そこで勝負しましょう。尤も、その頃には私は最強で、貴女は太刀打ちすら出来ないでしょうが」

 

ライバルなら、もっと強くなって貰わなきゃ困るからなぁ。だって相手が強ければ強いほど、勝った時の賞賛は大きく、最強という称号に箔が載るからね。

 

「フッ、フフフフッ…!アハ、アハハハハハッ!そこまでの大口を叩く子は初めてだ!アーッハッハッハ!!!!良いだろう、ヴィクティミア!私は頂点にて待つ。決して折れてくれるなよ?」

 

「望むところです。シンボリルドルフ?」

 

「………それで、夜中に校舎まで何の用だい?」

 

「あっ」

 

 

────⏰────

 

 

次の日、トレーニング場で大きすぎるタイヤを引いている会長さんを見つけてしまった。なにあれ、拷問?

 

「眠れる獅子に火を付けてしまったな」

 

いつの間にか合流していたトレーナーさんが軽口を叩く。

 

「トレーナーさん、私勝つよ。だから、トレーニングお願い!」

 

「応とも。さぁ、地獄のスパルタ式トレーニングの始まりだぞぉ!」

 

 

京王杯まで、あと5ヶ月。

 




忙しかった為、執筆に時間がかかってしまいました
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