やがて"最強"と呼ばれるウマ娘の話 作:心折れた騎士
「ふわぁ……よく寝た。」
昨日は本当に疲れた。でも、今日は日曜日だから休み。目一杯遊ぶぞお!
──────で、ここどこ?昨日シリウスと話した辺りから記憶が無いんだけど。あの後どうしたんだっけ。
「ようやくお目覚めか?眠り姫さんよ」
「あれ、何でシリウスがここに居るの?」
「お前なぁ…昨日の夜の事、覚えてねえのか?」
まさかとは思うけど、もしかして私あの後シリウスの部屋で寝落ちした?だとしたらシリウスはどこで寝たんだろ。床とかかな?それなら悪いことしちゃったな。
「あんな熱烈に抱きやがって。お陰で眠れなかったぞ」
抱く?眠れない?まさか。私はやってしまったのか…!?会って間もない子と同衾だなんてとんでもなく破廉恥な事を…!?
「もうお嫁に行けない…」
「知らねえよ、さっさと出て行け。私はルドルフを追い落とす算段を考えなきゃいけねえんだよ。ほら行け。」
シリウスは気にしてない風で私を追い出そうとしてくる。どうしよう、さっきから気になってる事をシリウスに聞いても良いだろうか。まぁ、良いか!聞こうっと!
「ね、シリウス。何でルドルフ会長の事を追い落とそうとするの?何か理由があるなら、協力するよ?カップケーキの恩もあるしね」
そう言うと、シリウスは少し考えるそぶりをした後ぶっきらぼうに「さぁな」と言った。何か心当たりがあるのかな?野暮だからこれ以上聞くのはやめとこう。
「じゃ、私出ていくからね。ありがとう、また来るねー!」
シリウスにそう告げて私は財布と小洒落たカバンを手に取り街へ繰り出した。
────⏰────
「やってきました、ウマーバックス!」
私は今、都内で最もオシャレなチェーン店であるウマーバックスに来ている。私の住んでた田舎には、こう言う小綺麗なお店は無かったから新鮮。唯一あったのが、農協の人たちが運営してるちょっとした茶屋ぐらいなものだったから楽しみだ。
「いらっしゃいませ!御注文は如何なされますか?」
「あ、えっと……オススメって何かありますか?初めてウマバに来るので勝手がわからなくって」
「でしたら、ショートソイオールミルクアドリストレットショットノンシロップチョコレートソースアドホイップフルリーフチャイラテやトールバニラノンファットアドリストレットショットチョコレートソースエクストラホイップコーヒージェリーアンドクリーミーバニラフラペチーノなどがオススメです。
チョコレートがお好きでしたら、トールバニラソイアドショットチョコレートソースノンホイップダークモカチップクリームフラペチーノなども如何でしょうか?」
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呪文かな?私はいつから剣と魔法の世界に転移してしまったのだろうか。ウマバって、魔境だったの?でも、店員さんがここまでしてくれて何も買わないって言うのは仁義にもとる…もとい、色々食べてみたい!
「端から端まで、ぜーんぶ下さい!」
「はい、かしこまりました!」
────⏰────
「──────で、無事太ったと。何してんだお前」
「ほんひょうひごめんなひゃい…ひゃからほっへふままにゃいでくだひゃい…(本当にごめんなさい…だからほっぺ摘まないで下さい)」
私がそう訴えると、トレーナーさんは優しい目をしながらゆっくりと語り始める。なんだか怖い。目が笑ってない。メガネもキラキラしてて怖い。
「ヴィク、今日は良い天気だ。鳥は歌い、花は咲き誇る。こんな良い日にお前さんみたいなおデブちゃんには──────地獄の業火に焼かれてもらうぜ」
「ひうっ…!?」
突然人殺しの目になったトレーナーさんは抵抗する私を引きずり起こして走らせる。どこから持って来たのかは知らないけれど、どこぞの隊長が使ってそうなメガホンで叫ぶのを聞きながら私は12時間ぶっ通しで走ることになった。
途中で、見兼ねたタマモクロス先輩が助けに来てくれたけど、トレーナーさんが事情を説明したら
「そらしゃあないわ。ヴィク、強く生きるんやで」
「そんな!私の身体がボドボドになってしまいますぅ!」
その後も、事情を聞きつけたタキオンさんが痩せる薬を持って来てくれたがタキオンさんの手が滑り内容物が地面にぶちまけられた。
薬がコンクリートを溶かしてたのは見たくなかった。
「タ、タキオンさん…?それ、何の薬ですか…?」
「これかい?これはねぇ、世界中の痩せると言われている物質を無理矢理練り込んだ薬品だよ。コンクリートは溶かしてしまったが、人体には影響がない事はモルモット君への治験で分かっている。安心したまえ」
どうやら、世界には人智を越える存在というものがごまんと居るらしい。私は少し自信が無くなった。
次に来てくれたのはオグリ先輩だった。オグリ先輩は地獄に垂らされた一本の蜘蛛の糸のように優しかった。
「鬼築トレーナー、これは流石にやり過ぎじゃないのか?ガスマスクをつけながら超重量のタイヤをダッシュで引かせてハードル走なんて、ヴィクティミアが壊れてしまうぞ?」
「そこで壊れたら、アイツはそこまでのタマだったってだけさ。アイツは俺に言ったんだ、最強にしてくれと。俺はその願いを真摯に叶えようとしているに過ぎない。それに、アイツは成し遂げてみせるさ。」
…………別に、嬉しくなんかないんだからねっ!
その後、何故だか絶好調になった私は余裕で地獄のトレーニングを終えて、無事痩せることに成功したのだった。
────⏰────
数日後、私がトレーニング用品の買い出しに出掛けていた時に変な男の人に声をかけられた。見る限り、メディアって風でもないし…何と言うか、冴えない?パッとしない?そんな感じ。服装もこれと言って特徴的でも無いからまぁ一般人だろう。
「ヴィクネキおるやんけ!他人の不幸で食うメシは美味いっすかwwwwwww」
突然こんな事を大声で言うものだから驚いた。何と言うか、笑い方気持ち悪いし髪の毛ギトギトだし…その、何?これは…
「あの、人違いじゃないですか?私、他人を不幸にした覚えは無いのですが…」
「ファッ!?うーん、自覚が無いみたいですねぇ!だったら教えてやるよホラ見ろよ見ろよ」
そう言ってその人はウマホを私に見せて来た。
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ウマ娘総合応援スレpart.349
368:名無しのウマ娘ファン
例のインタビュー見たか?
371:名無しのウマ娘ファン
>>368 見たわ。あのヴィクティミアとか言う奴だろ?
375:名無しのウマ娘ファン
負けた奴が悪いって、流石に言い過ぎやろ
379:名無しのウマ娘ファン
最低やな
381:名無しのウマ娘ファン
「私が強過ぎたのが悪い」とか何様のつもりなん?シンボリルドルフに勝てんの?
383:名無しのウマ娘ファン
ワイの見立てやと、ヴィクティミアとか言う子の実力は相当なモンや。だからあの驕りようは納得できる
388:名無しのウマ娘ファン
ヴィクティミアは名家の出なワケ?シンボリ家やメジロ家に勝てるとは思えん
390:名無しのウマ娘ファン
問題のメイクデビュー見たが、あれは抜きん出て強かったぞ。周りの子たちが可哀想なレベル
391:名無しのウマ娘ファン
>>390 現地勢ニキか。どうやった?シンボリルドルフと比べて
393:名無しのウマ娘ファン
>>391 流石に無理…とは言い切れんのだよなぁ。あのカーブはもはや魔法だしな。
395:名無しのウマ娘ファン
元トレーナーの現地勢ニキにここまで言わせるヴィクティミアネキは何者…?
396:名無しのウマ娘ファン
コイツ気に食わんなぁ…スポーツマンシップの欠片も無い。
401:名無しのウマ娘ファン
どうせ他人の不幸で喜べる女やぞ
404:名無しのウマ娘ファン
俺らで潰そうぜ
409:名無しのウマ娘ファン
>>404 流石にやめとけ。法律沙汰になったら負けるのは俺たちや
413:名無しのウマ娘ファン
せや!俺が本人に聞いて来たるわ!
417:名無しのウマ娘ファン
>>413 ファッ!?凸はやめとけ
420:名無しのウマ娘ファン
ガチの犯罪ニキ湧いてて草。俺は知らないからな
426:名無しのウマ娘ファン
聞く内容はこうや!
・他人の不幸で食う飯は美味いか
・引退するつもりはないか
これやな
429:名無しのウマ娘ファン
>>426 お前通報しておいたわ。
434:名無しのウマ娘ファン
とうとうこのスレから逮捕者が出るとはなぁ
440:名無しのウマ娘ファン
オイオイオイ、掛かりすぎ。死ぬわお前
445:名無しのウマ娘ファン
俺の推しのクルックシャンクスちゃんはあのメイクデビューで無理なレースをして引退したんや。必ず報いを受けさせたる
451:名無しのウマ娘ファン
ファッ!?復讐とか怖すぎィ!
454:名無しのウマ娘ファン
そう言って彼は戻ってこなかった
456:名無しのウマ娘ファン
別の話になるんやけど……
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・・・・・
・・・
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何これ?掲示板って奴?一体何を伝えたいのかわからない。コミュニケーション不足なのかな。
「まず一つ目の質問に答えろよ、ほらあくしろよ」
「はぁ……答える意味あるんですか?仕方ないですね。ご飯自体に罪はありませんので、美味しいものは美味しいですよ。」
「クズが!負けた子は悔しさで食事が喉を通らないんやぞ!?」
「知りませんよそんな事。私に言わないでください」
男の人は何やら顔を真っ赤にしたあと、続け様に質問を繰り出して来た。
「お前レース引退する気ない?お前最低のウマ娘やし、いなくなっても誰も気にしないから。だから消えろ!早く引退してクルックシャンクスちゃんに謝れ!」
もはや質問の体をなしてなかった。こう言う人もいるんだね。クルックシャンクス…というと、この間のメイクデビューで一緒に戦った子だ。覚えてる。ていうか、戦った子たちはみんな『打倒ヴィクティミア』を掲げてチームを組んで頑張ってるのを知っている。何なら、本人たちからメールで直接宣戦布告されたぐらいだし。
「引退しませんし、謝りません。もう良いですよね?人を呼びますよ」
毅然としてそう言うと、男の人は更に顔を赤くして私に襲い掛かろうとしたその時、いつの間にか来ていたトレーナーさんが男の人の腕をつかんだ。
「あっ、トレーナーさん。どうしたんですかこんな所で」
「ヴィク、何か変なことされてないよな!?」
「別に…強いて言うなら、その人が絡んできたぐらいですけど」
それを聞いてトレーナーさんは安心したような顔をすると、鬼の形相になってネクタイで男の人を縛り上げた。強い。
「何があったんだ!……っと、鬼築トレーナー。それにヴィクティミアも。どうしたんだ?」
続けて、何やら慌てた様子の会長さんも来た。私服姿の会長、初めて見たな。メガネかけてるんだ、目悪いのかな?いや違う、アレ伊達メガネだ。変装用だ!やっぱり有名人は違うなぁ。
「何だお前っ、離せ!ファッ!?シンボリルドルフ!?何でここに!?だが丁度良い。シンボリルドルフ、アンタ生徒会長なんだろ!?それならあのヴィクティミアとか言うやつを引退させてくれ!アイツは悪魔だ!人の不幸で喜ぶサディストだ!」
まだ言ってるよ。ん?あれ…なんか…会長さんの様子が…?
「──────ほう。」
「──────あぁ?」
この場に修羅が二体も君臨した。怖い。
二人から溢れ出す重圧がズンと空気を重くしている。あっ、赤ちゃんが泣くのをやめた。多分本能的に理解したんだろう。この場で粗相をした者から死ぬと。
「鬼築トレーナー、ここは私に任せてくれたまえ。この下郎には然るべき措置を施す」
「任せたぞ。俺やヴィクの分だけじゃ生ぬるい、全てのウマ娘からの怒りを食らわせてやれ」
「言われなくとも。」
ここに、鬼神達の会議が締結された。哀れ知らない人、来世ではきっと良い人になれる様に三女神様に祈っておくね。
────⏰────
あの後、学園に戻ったら突然会長さんに呼び止められた。何用だろうと思って近づいたら、何やら危うい目をした皇帝がいた。会長さんは私を壁に追いやると、壁に手をついて顔を近づけて来た。あれ、意外と可愛い顔してるな。
「絶対に君を辞めさせないぞ。いつか君が私と同じ舞台に立つ時まで、私が君を守ろう。生徒会長という立場でしかできない事があるからね。」
「はぁ、ありがとう…ございます?」
内心困惑しながらそう答えると、満足したように会長さんはどこかへ行ってしまう。何だったんだろ。
「あぁそれと…君、オグリキャップやタマモクロスと合同トレーニングをしているらしいね。今度一度だけ私も混ぜてもらう事になったから、その時は宜しく頼むよ。」
去り際にとんでもない事言うの辞めてほしいな。
ていうか、今気づいたけど私の練習相手ってレジェンドしか居ないな。萎縮しちゃダメだ、これはチャンス!絶対に物にするぞ!
試しに掲示板をやってみました。難しいですね。