りっく司令、提督になる   作:ピギヤンマ

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外伝 出撃

(木曾視点)

 

数時間後、鎮守府にて。

補給級との戦闘で大破した金剛達は入渠し、唯一無傷だったオレは執務室で提督と16式に状況を伝えていた。

 

駒門「…金剛さん達を1発で大破させる補給級……」

16「それに比叡さんを、艦娘を補食するなんて…にわかには信じられませんね……」

木曾「ホントの事なんだよっ!実際に比叡が食われて…皆やられて!!」

 

今までに無い事態な為困惑している2人。

そんな2人に苛立ち、思わず提督の机を叩いてしまった。

 

駒門「落ち着いてくださいましっ!!」

 

大きく目を見開いた提督の声が執務室に響き渡る。

 

らしくない迫力に圧されて、オレも流石に頭が冷えた。

 

木曾「…すまん」

駒門「気持ちは分かりますわ。でも異常事態だからこそ対応を選ばなければ、それこそ比叡が危ないですわ」

16「普通なら砲撃なり雷撃して沈めにくる筈……。なのに比叡さんを捕食して、尚且つ大破した金剛さん達は見逃した……まさか」

 

何か思い付いた16式。

提督もその表情を見てすぐに分かった。

 

駒門「……ヒリュウさん…!」

木曾「ってことは…比叡は…!」

 

ヒリュウの名前を聞いて自分の血の気が引くのがわかった。

つまり……奴らの仲間になるってことか…!

 

駒門「急いだ方が良さそうですわね…その補給級はどの方向に去っていきましたの?」

 

16式が海図を開き、机に広げる。

オレはそれを見ながら当時の状況を思い出す。

 

木曾「確か……こっちの方角だった筈だ」

駒門「ここって…」

 

指差した方角を辿るとそこにはトラック泊地と記載された島があった。

 

駒門「…トラック泊地……行ってみるしか無いわね」

16「編成はどうなさいますか?比叡さんが抜けた部分をどう埋めましょう?」

駒門「第2艦隊を支援にまわしますわ。皆さんを呼んできてくださいまし。それと木曾さん、一応…彼女にも伝えてきて下さい」

木曾「わかった」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

数分後、執務室に6名の艦娘が集まった。

 

五十鈴、阿賀野、加古、不知火、雪風、海風。

遠征任務を主に行い、第1艦隊をサポートするために新たに建造された6名だ。

 

五十鈴「どうしたの提督?」

阿賀野「ついに阿賀野達の出番ですかっ!?」

加古「そろそろ本格的な実戦に出してくれよ~?眠くてたまんねえ~」

 

緊張感のない阿賀野と加古に駒門は溜め息を吐きながら、説明を始める。

 

駒門「先程の出撃で第1艦隊の比叡さんが、敵に拉致されました」

 

その言葉を聞いて、五十鈴達に緊張と衝撃が走る。

張り詰めた空気の中、駒門は静かに説明を続けた。

 

駒門「配属したての時に話しましたが、深海悽艦は寄生生物の可能性が高いです」

海風「じゃあ比叡さんは…!」

駒門「そうなる前に、総力を上げて比叡さんを救出しますわよ!」

16「貴女達第2艦隊は第1艦隊と連合艦隊を組み、前衛として戦って頂きます」

駒門「作戦開始は1時間後。入渠を終えた第1艦隊にも伝えておきます。気を引き締めて行ってくださいまし!」

6人「了解!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

(再び木曾視点)

 

その頃、オレはある人物の部屋を訪れていた。

 

木曾「…よう、長門…少しやつれたか?」

長門「…何の用だ…?」

 

その部屋の主は長門。

あの一件以来戦えなくなって部屋に籠りがちになっていた。

 

薄暗い部屋に入り、カーテンを開ける。

窓から入ってくる光に、長門は目を細めた。

 

木曾「比叡が…深海悽艦に捕まった」

長門「っ!?」

木曾「もう一度、オレ達と戦ってくれないか?」

 

長門の目を見据えるが、返事が返ってこない。

そのまま数分の沈黙が部屋を支配する。

 

長門「…私に、戦う資格なんてない」

木曾「…何故だ?ビッグセブンと呼ばれたお前なら!」

長門「私はっ!わからなくなってしまったんだ……。私達がやって来た事は正しかったのか……」

木曾「なっ…」

 

長門のカミングアウトに言葉を失ってしまった。

 

長門「敵だと思っていた人型深海悽艦が寄生された仲間だっただと……?じゃあ私達がやってきた事はなんだったんだ…!ただ仲間内で殺し合って、本当に倒すべきモノの掌で踊っているんじゃないか……そう思うと…………」

 

生真面目な奴だとは思っていたが、まさかここまで悩んでいたとはな…。まぁ、わからなくもない。

 

木曾「……一つ言っておく。オレは自分達がやって来た事が正しいだなんて、思ってない」

長門「…え?」

 

意外な言葉に驚く長門。

オレは彼女の隣に座り、続きを話し出す。

 

木曾「オレもあの後、自分のやって来たに疑問を持った。それで提督に相談したんだ。そしたらアイツ、『血を流してる時点で正義や正しさなんてないですわ。そんなモノを掲げる位なら自分の信念を掲げなさい』って…」

長門「信念……彼女がそんな事を……」

木曾「多分、誰かさんの言葉なんだろうけどな。けどそれでオレは正義や正しさがどうとか考えずに、この鎮守府の仲間を護りたい…その想いだけで戦ってる」

 

窓から見える空を眺めながら、半ば独り言のように話す。

 

長門「正義じゃなく、信念か…」

木曾「オレも人の事言えないけど、真面目に考えすぎなんじゃないか?考えすぎてドツボにハマって正義だのなんだの考える前に、今迄戦ってこれた本当の理由ってのを見落としているんじゃないのか?」

長門「…私が戦ってきた理由……」

 

オレの言葉を聞いて、自分が戦ってきた理由を思い出そうとしているようだ。

…よかった。どうやらこの表情を見れただけでも、ここに来たかいがあった。

 

木曾「ま、そう言うことだ。出来れば早めに答えを出してくれよ?そろそろ準備しなきゃ」

 

長門の肩を軽く叩いて、オレは部屋を後にした。

 

それから約1時間後、陣形を組んだ第1艦隊及び第2艦隊が鎮守府正面に待機していた。

 

だがそこに長門の姿は…いなかった。

 

……まだ、踏ん切りがつかねえか…。

 

アイツが皆の前に現れない事に軽く肩を落としていると、提督から無線が全員に入った。

 

駒門『これより比叡救出作戦を開始致します!彼女を奪還し次第即撤退、彼女の保護と全員の帰還を最優先して下さいまし!』

金剛「了解デース…!比叡を絶対に救いだしマース!!」

駒門『連合艦隊出撃!!』

 

提督の合図で一斉に動き出す。

トラック泊地目指して全速力で進み、特に会敵することなく目的地が見えてくる。

 

五十鈴「…見えてきたわね」

阿賀野「水上爆撃機を飛ばすよ!流石に敵もいるだろうし!」

 

水上爆撃機を2機、トラック泊地目掛けて飛ばす。

それと同じタイミングで加賀の艦載機も飛んでいった。

 

加賀「…敵艦隊捕捉」

阿賀野「いっぱい居るよ!皆気を付けて!」

 

前方で艦載機が戦っているのか、小さな爆発と水柱が見える。

 

五十鈴「見えたわ!駆逐、軽、雷巡級多数!」

加古「ここはあたしらに任せな!」

海風「金剛さん達は奥へ!比叡さんを頼みます!!」

 

五十鈴を筆頭に砲雷撃を繰り出し敵の陣形に穴を開けてくれた。

 

金剛「絶対に…連れて帰りまス!」

木曾「皆も無理をするなよ!?」

 

乱れた陣形の隙間を全速力で通り抜ける。

その後も軽、重巡級や空母級の艦隊が襲ってくるが弾薬の節約の為あまり相手をせず、ひたすら奥へ進んでいく。

 

加賀「…艦載機より入電、前方に比叡らしき影と戦艦級2」

金剛「っ!?比叡!!!」

 

目の前に立ち塞がる空母級らを沈め、前へ進んでいく。

そして情報通り比叡の姿とそれを警護するように左右に戦艦級が立っていた。

 

よかった……間に合った…!!

 

金剛「複縦陣に変更!ワタシと木曾は左、那智と北上は右の戦艦級を撃破してくだサーイ!加賀は両サイドの援護を!!」

那智「任せろ!」

加賀「了解」

 

それぞれ分散し、臨戦体勢に入った戦艦級に接近していく。

 

金剛「比叡に…妹に近寄らないデェェェエエエエエエ!!!」

 

戦艦級の砲撃を掻い潜り、その顔面に右ストレートを繰り出す。

更にその威力で仰け反った所に砲撃をくわえて吹き飛ばす。

 

金剛「木曾!」

木曾「おうよ!」

 

金剛の合図と共に魚雷を戦艦級が吹き飛んだ方向へ放ち、止めをさした。

一方那智達も戦艦級を沈める事に成功。そのままオレや加賀と周囲の警戒に入り、金剛は比叡の元に駆け寄っていた。

 

金剛「比叡迎えに来たデース!」

 

比叡を抱き締める金剛。だが比叡は何一つ反応を示さない。

 

金剛「比叡?どうしまし………」

 

比叡の顔を覗き込んだ金剛の顔の血の気が引いていくのが見えた。

抱き締めていた腕を放ち、一歩後ずさる金剛。

 

いったい何をやっている…!?

 

金剛「ひ、比叡…?」

木曾「どうした金剛!?」

加賀「道中無視した敵が迫っています…早く!」

 

オレ達の急かす声が、金剛の耳に届いていないようだった。

 

彼女の様子が気になり比叡の元へ向かったのだが……そこでようやく、オレ達も気付いた。

 

目の前にいる比叡から…寒気を催す程の殺気が発せられていたからだ。

 

金剛「比叡ワタシです金剛デース!!」

比叡「金…剛…?誰、だっけ…?誰……」

 

その瞬間、比叡の背後に巨大な水柱が立ち上がり何かが浮上してくる。

その轟音にオレ達全員の視線が水柱の中にいる物体に向く。

 

比叡「あぁ、思い出しタ……」

北上「ちょ、何あれ…!?」

那智「あれも深海悽艦だというのか!?」

 

水柱が消え中から出てきたのは、巨大な顔のような艤装であった。

そして艤装の顔の部分が割れ中から無数の触手が飛び出し、比叡の身体に纏わり付いていく。

 

比叡「金剛…艦娘……私ガ倒スベキ敵…」

 

腕に、腰に、脚に、艤装がどんどん装着されていく。

 

ヒエイ「コノワタクシガ叩キノメス敵ッ!!」

 

金剛「……比叡っ!」

木曾「嘘…だろ…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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