りっく司令、提督になる   作:ピギヤンマ

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ヘ ン イ

(天龍視点)

 

春雨と出会ってから数日後…深夜の鎮守府、演習場にて

 

天龍「ほら、もっと動けっ!その速度だと狙い撃ちされるぞ!」

春雨「う、うん!」

 

春雨はあれからどんどんレベルアップしてオレと模擬戦が出来る迄に成長していた。

あの日以来、オレ達は深夜に出会っては春雨の訓練と他愛ない世間話をする仲になっていた。

 

春雨「えぇい!」

天龍「うぉっ!?」

 

春雨の砲撃がオレの体を掠めて海中に沈んでいった。

あぶねえ……今のが実戦だったらヤバかった…!

 

天龍「今の凄く良いじゃねーか!」

春雨「はぁ…はぁ…ありがとう!」

天龍「ふぅ~…!今日はこんなもんか。休憩しようぜ?」

春雨「うん。じゃあまたいつもの場所で」

 

笑顔でそう言い残し、春雨は演習場を後にする。

いつも思うけど…春雨も艤装外して中に入ればいいのによ…。

変に律儀というかなんと言うか…。

 

頭を掻きながら艤装を外しに行き、近くに設置されてある自動販売機で飲み物を2人分買う。

 

そうだ、明日はお菓子でも買ってみるかな…?あいつ何好きなんだろ…チョコとか甘いやつの方が良いかな?

 

おやつで笑顔になる春雨を思い描き、思わずにやける。

アイツと接していると自然と心が安らいでいくような感じがする。アイツがオレをねーちゃんって慕ってくれるならオレも妹のように可愛がってやりてぇ……あいつに、龍田に出来なかった分まで…!

 

 

鎮守府の近くにある海岸、そこが2人のいつもの場所だった。

振り返れば数十メートル先に鎮守府の裏口や窓から中の様子もうっすら見える。

春雨は鎮守府に背を向けるように海岸に腰掛け、夜の真っ暗な海を眺めていた。

 

天龍「待たせたな」

春雨「おかえり。そんなに急がなくて良かったのに」

 

クスりと笑う春雨の言葉で、オレは無意識に走ってきた事に気付いた。

春雨に会いたいからとは言え、照れ臭くなっちまう。

 

天龍「い、良いじゃねーか!ほれ、ジュース」

春雨「えへへっ、ありがと」

 

照れながらジュースを手渡し、天龍も春雨の隣に座った。

お互い飲み物を飲んで一息つく。

 

天龍「ふぃ…春雨も随分強くなったな。これなら此方にいる暁や響と互角にやりあえるぜ!」

春雨「天龍おねーちゃんのお陰だよ!ここまで艤装の使い方を分かりやすく教えてくれて…もしかしたら、先生の才能あるんじゃない?」

天龍「あははは!何言ってんだ!春雨の飲み込みが早かっただけさ」

 

春雨の言葉に大笑いするが、ふぅ…と一呼吸置くと真剣な表情に変える。

ずっと気になっていた事があったんだ。

 

天龍「…前から思ってたんだが、なんで艤装の使い方知らなかったんだ?着任してから訓練とかしなかったのか?」

 

オレからの踏み込んだ質問に一瞬だけ表情が固まる春雨。

まずったか……?

そう思ったが向こうも腹を括ったのか話し始めてくれた。

 

春雨「……春雨がいた鎮守府は、そんなことさせてもらえなかった。戦果と資材にしか興味が無くて、春雨達は使い捨てにされてたの」

天龍「ブラック鎮守府ってやつか……青葉の新聞で見たことがあんな…」

 

前に1度だけ部屋を出た際、掲示板に貼られていた新聞の記事を思い出す。

艦娘を道具として使い潰すクソが運営する鎮守府の総じてそう呼ばれているらしい。

新聞だと陸の特殊部隊の1つが検挙に力を入れているらしいが、撲滅する迄にはいっていないんだとか。

 

春雨「春雨も着任してすぐ解体されそうになって」

天龍「なっ……!」

春雨「けど春雨を匿ってくれたおねーちゃんがいたの!」

 

先程とは違い、とても嬉しそうに言う。

 

天龍「ねーちゃん?姉妹か?」

春雨「ううん。重巡の艦娘なんだけど天龍おねーちゃんみたいに頼れるヒトだったんだよ!おかげでこうして自由にもなれた!」

天龍「そうか……良かった」

 

ブラック鎮守府から解放されたと知って安心し、春雨の頭を優しく撫でる。

 

春雨「えへへ…!天龍おねーちゃんも、優しい」

天龍「ったりめーだろ?大事な妹分なんだからよ?」

春雨「妹…うん!」

 

余程嬉しかったのかその後も噛みしめるように妹という単語を呟く春雨。

その後、夜が明けてきた為オレ達はまた会う約束をして解散した。

 

朝、鎮守府食堂にて

 

(提督視点)

 

提督「うーむ」

利根「ふーむ」

飯塚「ほーん」

 

自分をはじめとした一行の視線はただ1人。朝食をガツガツと食べている天龍に向けられていた。

 

数日前に朝食に来た時も自分も含め皆驚いたが、天龍自身は何も語らず、食べるだけ食べて自室に帰っていく。

…そろそろ話してくれると嬉しいのだが。

 

提督「な、なあ天龍?そろそろ何があったか教えてくれないか?」

天龍「んぁ?何でもねーよ……ごっそーさん。そんじゃおやすみ」

 

完食し、食器を返却するとすぐさま部屋に戻っていく。

 

利根「またじゃ…朝食後すぐ寝とる…」

暁「きっと夜に仔猫の世話でもしてるのよ!」

ベレーザ「そうだと良いのだけど」

提督「……」

アルマータ「…閣下」

 

 

 

その日の深夜

 

(天龍視点)

 

春雨に会うためにこっそり外へ抜け出す。春雨が喜びそうなお菓子が入った袋を持って。

 

アイツ、喜んでくれるかなぁ?

 

その時オレは油断しきっていて、尾行されていることに気付きもしなかった。

 

アルマータ「閣下」

提督「あぁ」

 

数分後何時もの待ち合わせ場所に佇んでいる春雨を見付けた。

 

天龍「お~い春雨~!」

春雨「天龍おねーちゃん!」

 

相変わらず元気な表情を浮かべてこっちに手を振る春雨。

合流して適当な海岸へ腰掛ける。

 

天龍「今日は訓練の前にこれでも食わないか!?」

春雨「天龍おねーちゃんこれって……?」

天龍「な、なんだよ…?お菓子だよ」

 

喜ぶと思ったら意外な反応を見せられて思わず戸惑っちまう。

…まさか知らないとは…。

 

春雨「ごめんなさい…こういうの食べたことなくて…!」

天龍「気にすんなよ!ゼッテー気に入ると思うぜ!!」

 

戸惑う春雨の口に一口サイズのチョコを放り込む。

春雨は最初は驚いて固まったけれどゆっくり咀嚼していくうちに表情がドンドン明るくなっていくのがわかった。

 

春雨「お、おいしい…!」

天龍「へへ、だろー?」

春雨「も、もう1個食べても良い?」

天龍「おう!色んな味があるから楽しんで食いな!」

 

春雨に袋を渡し、中身を見て無邪気に喜ぶ姿を見つめているとふとした違和感に気付いた。

 

……今日の春雨、何かが違う……。

なんだ?雰囲気や言動は確かに春雨だ……。

オレは何に違和感を覚えた……?姿も月明かりで細部は見れないが春雨のはずだ…。

 

そんなことを考えていると春雨が笑顔でこっちを向いて、オレにもチョコを食わせようとしていた。

 

春雨「おねーちゃん!あーんして?」

 

その時違和感の正体に気付いた。

 

天龍「春雨…お前、目が…」

春雨「っ!!!」

 

その時だった。

鎮守府から大音量の警報が鳴り響く。

 

深海悽艦接近の警報だ。しかもこの音……最接近された時の一番ヤベーヤツだ!!!!

 

天龍「春雨はそこにいろ!!!敵が近くまで来てやがるっ!!!」

 

春雨を守るように彼女の前に出て艤装を展開する。

…ちくしょう……今カチ会ってもやりあえる自信がねぇ…!でも、春雨を守るためにやってやる!!!!

 

その時だった。

 

 

提督「天龍!!!」

 

背後から提督の叫ぶ声が聞こえてきた。

アイツなんでこんなところに……?けどちょうどいい、春雨を保護してもらおう。

 

天龍「提督かっ!?ちょうどいい、そこにいる駆逐艦を保護してやってくれ!!!!」

 

これでひと安s

 

提督「レーダーが反応したのはここだっ!!彼女がっ!!!深海悽艦だっ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭が真っ白になる。

 

こんな時に提督は何を言っているんだ?

 

そんなハズはない。

 

ゆっくりと振り返る。

 

そんなハズは……!

 

 

 

 

春雨?「ッ……!」

 

天龍「な……!!!!」

 

 

 

そこにオレが知る春雨はいなかった。

同じ顔を持った深海悽艦が悲しそうに佇んでいた。

 

 

 

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