りっく司令、提督になる   作:ピギヤンマ

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尋問

翌日08:45。

天龍、暁、響、間宮、大淀、鯖江、大和、歩兵、ソーニャの9人は食堂に設置されたモニターを見ていた。

そこには鎖でしっかり拘束され、椅子に座らされた空母。そして提督である自分は彼女の正面にパイプ椅子を置いて座り、彼の左右に護衛としてアルマータと16式、そして敵の情報を得たいと志願した奈良と明石がその後ろに立っている。

 

 

提督「さて、これより尋問を行う」

アルマータ「抵抗しようと無駄だ。艤装も無い、ましてや陸上で私に勝てると思わない事だ」

16式「司令に指一本でも触れてみろ……消し炭にしてやる…!」

 

2人の高圧的な態度を前に、表情どころか身動きひとつ取らない。

かといって怯えている訳でもない…興味ないといったところであろうか。

 

提督「さて、先ずは君の名前を聞こうか」

ヲ級「……ヲ級……」

 

どこかエコーがかかったような声で呟く。

どうやら言葉は通じるようだ。

 

明石「ヲ…級?」

アルマータ「おそらく型番のようなものかと……014號と同じような」

提督「ふむ、では君達深海悽艦の目的は?」

ヲ級「目的ナンテ無イ……目ノ前二ヒトガイタカラ、沈メヨウトシタダケ……」

明石「…何よ……それ……」

奈良「マグマ軍のような目的をもった侵略ではない…本能とでも言うのでしょうか……?」

提督「……深海悽艦を束ねている存在は?」

 

ヲ級の発言に動じず、冷静に尋問を続ける。

知能があるならブラフの可能性もある…それを見極めなければ。

 

ヲ級「知ラナイ……頭ノ中デ声ガシテ、ソレニ従ッタ…………デモ、今ハモウ聞コエナイ…応エテクレナイ……」

 

ヲ級の表情が少しずつ曇る。

……こいつ、まさか……

 

提督「……最後に1つだけ答えてくれ。今でも俺達人間や艦娘を沈めたいと思うか?」

 

その問いを聞いて更に表情が曇っていく。

 

ヲ級「ワカラナイ……ナンデソウ思ッテイタノカ…!ワカラナイ…ワタシハ…ナンナノダ…!?ワカラナイ…ワカラナイ!…ッアァァァアアッ!!!!」

 

突如泣き叫び、椅子をガタガタと激しく揺らし始める。

それを見て危機感を感じたアルマータと16式は主砲を構えるがそれを手で制した。

そしてイスから立ち上がりヲ級に歩み寄る。

 

アルマータ「閣下何を…!?」

 

アルマータの問いにただ無言で首を横に振り、再びヲ級を見た。

 

ヲ級「ワカラなイ……!暗イ…!寒い…!!恐い…恐い恐い…!!!」

 

体を震わせ、怯えるヲ級。

あぁ、この娘はもう大丈夫だ。

 

確信を得た自分は震えるヲ級の背後に回り鎖を外した。

 

16式「ししし司令!?」

アルマータ「閣下!!」

明石「何をやっているのですっ!?」

 

思わず叫ぶ3人。奈良は何かに気付いたのか観察するようにその光景を見つめている。

 

ヲ級「っ!」

 

拘束が解かれた瞬間、ヲ級は四つん這いで部屋の隅へ移動しうずくまる。

 

明石「提督!拘束を解くなら一言仰って下さい!!何かあったらどうするんですか!?」

提督「すまない…。だけど、もうあの娘は大丈夫だと思うよ」

明石「何を根拠に」

アルマータ「…はぁ」

 

怒る明石の肩に手を置くアルマータ。

 

明石「なんですかアルマータさん!」

アルマータ「閣下が大丈夫と仰ったなら、もう安心ですよ。……この状況、何度も経験しましたから」

 

複雑そうな笑みを浮かべるアルマータ。

明石もそれが何なのかを察し、怒りを鎮めるがまだ納得出来ていないといった表情だ。

 

無理もない。一歩間違えればここにいる全員の命が危うかった。あとでちゃんと謝らないとな。

 

それはとにかく、収穫はあった。

これ以上は彼女の様子を見る限り難しそうだ。

 

提督「尋問は終わりだ。執務室で報告書を纏めるから16とアルマータは手伝ってくれ」

アルマータ「はい閣下」

16「は、はいっ!フヒヒ……司令と一緒にお仕事……!」

 

自分達は独房から出たのだが、奈良だけその場に残っていた。

 

奈良(彼女の声…エコーがかかっていた筈なのに怯えた辺りからエコーが消えた……いったい何故…?)

 

提督「奈良?どうした?」

 

独房の隅で怯えているヲ級を改めて眺めた後、彼女も自分の呼ぶ声に答えて独房を後にした。

 

場所は変わり食堂にて、一部始終を見ていた一行。

 

天龍「暴れるだけ暴れて捕まったら怯えやがって……ガキかっつーの」

間宮「なんだか複雑です……あの感じ、本当に怯えてしまってます」

暁「なんだか可哀想になってきた」

響「でも油断は出来ないよ。艤装が無いとは言え、用心するべきだと思う」

鯖江「確かにね。あの空母は私達憲兵側で監視をしようと思う。何かあったら連絡するわ。それじゃ私は一度司令官の所に行って監視の許可を取ってくるね」

 

鯖江が食堂を後にするのを機に他の者達も各々の持ち場に戻っていった。

 

 

 

(以降奈良あかり視点)

それから約1時間後、工房で私と明石さんはヲ級が装備していた艤装と中に入っていた艦載機の解剖を行っていました。

私達が見ているのは顔のように見える艤装前面部。天龍さんの砲撃で右目付近が吹き飛んでいますがその他は無事でした。

 

明石「これは…!?」

奈良「生物的な見た目だと思っていましたが……」

 

正面より少し上、人間で言うおでこの部分を解剖した結果、出てきたのは手のひらサイズの脳でした。

『艤装が生きて活動していた』。その事実に驚く私達。

その後も更なる情報を求めて解剖を続けていきます。

 

明石「…消化器官が無い事以外は生物となんら変わりませんね…。艦載機の方はそれに加えて弾薬を生成すると思われる臓器も」

奈良「いえ、もう1ヶ所特徴があります…艤装裏面、ヲ級の頭部と触れていた所を見てください」

 

裏面を見るとヲ級の頭部が触れていた部分に数本の縫い針の様な細長いトゲが付いていました。

 

奈良「このままヲ級のように装着したらどうなると思います?」

明石「トゲが刺さってしまいますね。この長さだと脳にまで達して…ちょっと待って下さい!」

奈良「気付きましたか……これは仮説ですが、これは寄生生物の類いで…。トゲを介して宿主を操っていた。ヲ級が言っていた声とはこの艤装の信号だった……そう考えられませんか?」

明石「ではヲ級は…ヲ級自身は一体……!?」

 

明石さんの問いに私は申し訳なさそうに首を振るしかありませんでした…。こればかりは私にも見当がつきません。

 

しかし、明石さんは何かを思い出したのか突然ハッとし、更に顔の血の気が引いていきます。

一体何を……?

 

明石「…ドロップ艦現象……」

奈良「え?」

明石「あかりさんはドロップ艦という現象を知っているか?」

奈良「いえ…それが…?」

 

ドロップ……『落とす』?そんな現象がそんなに危ない現象なのでしょうか…?

明石さんは額から滲み出る冷や汗を拭いながら私に説明を始めます。

 

明石「聞いたことがあるんです……。戦闘後、気が付いたら所属不明の艦娘が倒れていて保護したという事例が相次いで、RPGゲームに例えてドロップ艦現象と呼ばれていると」

奈良「……じゃ、じゃあヲ級は……」

明石「試験運用中に襲われたか、はたまた何処かの鎮守府で運用されていた艦娘…。もう今となっては艦種の特定も難しいでしょう…。あの体つきだと軽巡以上…もしかしたら戦艦だったという可能性も……」

奈良「なんてこと…」

 

私が立てた突拍子もない仮説、しかしそれの一部を明石さんは裏付ける現象を知っていた。

 

私達の間に長い沈黙がおりる。

 

2分?いや、10分も経ったのでしょうか……そんな沈黙を破ったのは明石さんでした。

 

明石「と…とりあえず艤装の解析結果と、この仮説を提督に報告しに行ってきます」

奈良「は、はい。お願いします」

明石「また明日から、改めてこれの解剖と鎖の調整、艦娘以外でも使用出来る対深海悽艦兵器の開発しましょう。…それでは」

 

そう言い残し、工房を後にする明石さん。

私は動く気になれず、しばらくヲ級の艤装を見ていることしか出来ませんでした。




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