執務室にて、自分達は艤装の解析結果と奈良·明石の仮説を聞いていた。
大淀「そんな…!」
明石「あくまで仮説ですが…」
動揺を隠しきれない大淀。そりゃそうだよな……。
…それに大淀ですらこんな反応になるのにこれが前線に出てる天龍達に言ってみろ…士気がガタガタになるし最悪撃つことに躊躇いが出る可能性だってある。
……戦場で躊躇ったら…その先は…
提督「……この事は天龍達には伝えないでくれ」
明石「えぇ。確証はないですし、何より前線で戦う皆を不安にさせたくないですしね」
提督「うむ、じゃあ今日はもう休んでいいぞ」
明石「では、失礼いたします」
明石が執務室を後にする。
提督「……寄生された艦娘か。それが本当なら闇堕ちより質が悪いな……」
アルマータ「閣下…」
心配してくれているのか、寄り添ってくれるアルマータ。
そんな彼女の頭を優しく撫でる。
提督「大丈夫…敵として立ちはだかったなら、撃破するだけさ…。それよりも、そろそろ飯の時間だ。行こう」
アルマータ「はい」
こんな重い空気じゃダメだ。
気分を切り替えるべく食堂へ向かう。
間宮「あら、提督。今日はカレーです!」
提督「おぉ、良い匂いだ」
間宮「あの、そう言えば提督…あの深海悽艦は食事をとるのでしょうか?」
提督「…確かに」
ふと、視線を動かす。天龍達がテーブルでカレーを美味しそうに頬張っている姿を見つける。
提督「…食べるかもしれませんね。持っていってみます」
間宮からヲ級用のカレーを受け取りアルマータの方を見る。
アルマータ「…私はここで閣下のお帰りを待ってます」
提督「えっ?」
意外だな。
ついてくるとばかり思っていたが。
アルマータ「私がいると、きっとあの娘怯えてしまいますから…」
提督「…わかった。戻ったら一緒に食べような?」
アルマータ「…はいっ!」
笑顔で見送るアルマータを背にヲ級がいる独房へ歩きだした。
独房にて
朝と変わらず部屋の隅でうずくまっているヲ級。
そんな彼女を部屋の外で歩兵が彼女を監視していた。
提督「…監視お疲れ様」
歩兵「司令官閣下様!お疲れ様です!!」
ビシッと敬礼をする歩兵のお腹からグゥっと大きな音が鳴った。カレーの匂いに反応したな。
歩兵「ギュピッ!」
提督「あはは!こんな良い匂い嗅げばそりゃ鳴るよな!そろそろ交代が来る筈だ。もうちょっと頑張ってくれ」
恥ずかしそうにお腹を抑える歩兵の頭を軽く撫で、部屋の中に入る。
入った途端、ヲ級がビクッと反応するのが見えた。
提督「腹、減ってないか?良かったら食べな?」
怯えるヲ級にカレーを差し出す。
ヲ級もカレーの匂いに釣られたのか、顔を上げてカレーを凝視する。
提督「大丈夫。毒物なんて入ってないよ」
それを聞いてもやはり不安なのか恐る恐るカレーを手に取るヲ級。
そして震える手でスプーンを持ち、カレーを一口食べる。
その瞬間ヲ級の目から大粒の涙を流し始めた。
ヲ級「っ!……うっ……うぅ……!!」
泣きながらカレーの頬張るヲ級を少し離れた所で眺める。
そしてヲ級はカレーを残さず完食し、泣いて腫れ上がった目で自分を見た。
提督「旨かったか?また夕飯の時間に持ってくるよ」
空になった食器を持って独房から出ていく。
ヲ級「あっ……あうぅ…」
食堂にて
間宮「提督!そのっ…どうでした?」
ヲ級からの反応が余程気になっていたのか帰ってきた自分を見つけるなり駆け寄ってきた。
提督「よほど旨かったのか泣きながら食べてたよ」
間宮「そうですか…良かった」
空になった食器を見て安堵の笑みを浮かべる間宮。
その後、アルマータや交代で戻ってきた歩兵と共にカレーを食べてアルマータは執務室へ、提督は戦力を増やすために工房に訪れた。
提督「…少し多めに投入するか。……お?2人か」
タブレットに2つ建造時間が表示される。
誰が来るのか思いを馳せているとアルマータがやって来た。
アルマータ「閣下」
提督「ん、どうした?」
アルマータ「市ヶ谷さんから電話です。また憲兵として部隊メンバーが来ると」
提督「ほう!わかった、行こう!」
小走りで執務室へ戻り、受話器を手に取る。
提督「市ヶ谷か!?」
市ヶ谷『司令官!お久し振りです!!』
市ヶ谷の声を聞き、思わず笑みが溢れる。
提督「アルマータから聞いたぞ!根回ししてくれてありがとう!」
市ヶ谷『いえ、なんとか皆がバラバラになる前に司令官の元へ送ろうとしたのですけど…それでも数名、別の鎮守府へ異動になってしまいました……』
提督「そ…そうだったのか……」
市ヶ谷『あぁ司令官は別に気にしなくて大丈夫です!……それで今回そちらに行くメンバーはですね……』
ーーーーーーーーー
提督「ふむ、わかった。到着時間は0900だな」
市ヶ谷『はい。では失礼しますね』
電話を切り、アルマータに内容を伝える。
アルマータ「あら、彼女達も来るのですね」
提督「あぁ、久し振りにアイツらの顔が見れるぞ…!」
アルマータ(私は閣下と2人きりが良かったのだけれど……ハァ……)
その後何事もなく執務が終わり気が付けば夕食時になっていた。
アルマータ「閣下、またヲ級の所へ?」
提督「あぁ、そのつもりだ。もしかしたら何か話してくれるかもしれないしな…そうだ」
パソコンを操作し、艦娘達が使う艤装の写真をプリントアウトする。
アルマータ「これは…艦娘が使う武装の写真?」
提督「明石達の仮説を完全に信じる訳じゃないけど。何かしら反応してくれるんじゃないかと思ってさ」
そんな淡い期待を背に、写真をポケットにしまい食堂へ向かう。
そして間宮から料理を受け取り、独房へ向かった。
独房にて
部屋の扉を開けるとヲ級が部屋の隅にいるのが見えた。
だが昼とは違いうずくまっておらず、怯えた様子もない。
提督「ほら、夕飯だ」
ヲ級「……あり……がと…」
提督「っ!お、おう、どういたしまして」
お、お礼を言われるとは思っても見なかった……。
そしてヲ級は食器を受け取ると無言で食べ始め、瞬く間に完食した。
提督「ん、食い終わったか。それで、少し聞きたいんだが……これを見て何か思い出さないか?」
ポケットから数枚の写真をヲ級に渡す。
そこには駆逐艦や軽巡が使用する連装砲と魚雷の写真、重巡や戦艦が使用する主砲の写真、空母が使用する弓と艦載機の写真の3枚。
ヲ級「…………」
1枚1枚じっくり眺めるヲ級。
そして最後の1枚、弓と艦載機の写真を見た途端大声を出した。
ヲ級「あぁぁっ!あぁぁああああああああ!!!」
提督「っ!?どうした!?」
大和「司令君大丈夫!?」
16「司令っ!」
危険を察知して外で待機していた大和と、どこからともなくやって来た16式が部屋に入る。
ヲ級は写真を両手で持って、涙を流していた。
大和「何があったの!?」
提督「…もしかしたらと思って試してみたが……まずったか…?」
ヲ級「はぁ…はぁ……驚かせてしまって…ごめんなさい……」
先程とは違い、落ち着いた様子のヲ級。
だが俯いたままで表情が見えない。
ヲ級「……1人にさせて下さい…………何かしたら沈めても…構いません…お願い…します」
震える声で懇願するヲ級を見て、自分達はただ唖然としていた。。
ヲ級「それと…ごはん……ありがとうございました…………」
そう言って静かに食器を目の前に移動させる。
自分は食器を手に取ると2人に目配せをし、無言で部屋を後にした。
ヲ級「思い出した……あの時…………私は……」
16「ししし司令、大丈夫ですかっ!?何かされていませんか!?」
提督「だ、大丈夫だから。落ち着けって」
不安そうに体をまさぐる16式を引き剥がす。しれっとどこに手を入れようとしてるんだこの娘は。
提督「驚かせてごめんな?あの娘は……いや、とりあえず引き続き、監視を頼む」
大和「任せて。あ、そうだ。今日司令君のお部屋に行っても良い?」
提督「アルマータと喧嘩しなければな」
苦笑いしながらそう言い残し、食堂へ向かう。
食堂に着くと天龍達に混じって見慣れない2人が居ることに気が付いた。