りっく司令、提督になる   作:ピギヤンマ

7 / 32
亀裂

(天龍視点)

 

天龍「……今、なんつった……?」

 

 

午前中の演習を終えて暁や新入りの利根達と食堂にオレ達は向かった。

 

そこには静香達憲兵メンバー、そして見慣れない4人……朝アルマータが言ってた新しい憲兵だろうか……いや、そんなことはどうでもいい。

 

な ん で 鹵 獲 し た 空 母 が い や が る

 

 

提督「……もう一回言うが、彼女は協力者として本日から一部制限付でこの鎮守府に住むことに決定した」

 

アルマータや明石は妙に落ち着いていやがる……理由を知っているのか?

そんなことどうでもいい…!敵を首輪も付けずに鎮守府内に住まわせるなんてなに考えてんだ!!!!

 

怒りで肩が震える、そして見えちゃいないが表情がどんどん怒りで歪められていくのがわかる。

 

天龍「ざっけんじゃねえ!!何考えてやがる!!!こいつは深海悽艦だっ!オレ達の敵だぞっ!!!」

利根「提督よ。流石にこの処置は納得しかねるぞ」

鈴谷「それはちょっとどうなのよ?」

 

当然利根、鈴谷も納得出来ない様子で提督を睨んでいる。

一方暁と響はどうすれば良いかわからずオロオロしている。

 

明石「彼女の艤装も解体してあるのでもし…」

天龍「そういう問題じゃねえ!!!」

 

明石の説明を遮り、刀を提督に向けた。

 

大淀「っ天龍さん!!」

アルマータ「貴様っ!!!」

 

刀を向けたと同時にアルマータを筆頭とした憲兵組がオレに銃を向ける。

だが、提督はアルマータ達に銃を下ろすように命じ、そのままオレが構えた刀の切っ先を自分の首に当てやがった。

 

提督「今は納得出来ないのは承知している…。だけど、いずれちゃんと話すよ。それでまだ納得出来ないなら…その時は容赦なく俺を斬ると良い」

 

 

天龍「っ!……わかった…今だけは信じてやるよ」

 

渋々刀を納める。そうするしかなかった…コイツの目は本気で斬られても良いってツラだった。

 

提督「……すまない。あとは新しく着任した憲兵達だが…」

飯塚「あー…そこはアタイ達がテキトーに済ませるから気にすんな」

提督「…すまん」

 

その後提督、ヒリュウ、アルマータ達数人は間宮から食事を受け取り食堂を後にしていく。

 

こんな空気じゃ喰えねえわな。

 

 

だけどオレ達は午後も軽い哨戒任務がある手前、意地でもハラに詰め込まなければならなかった。

 

間宮さんからメシを受け取り近くの椅子に乱暴に腰掛ける。

 

天龍「くそ…なんだって深海棲艦と一緒に…!」

 

イライラしながら乱暴に昼食を口に運んでいく。

 

飯塚「隣、座るぜ」

天龍「あぁ?勝手にしろ」

 

新しく来た憲兵…どうやら飯塚椿って言うらしい。

飯塚はオレの隣で笑いながら昼食を食べ始める。

 

飯塚「お前、中々度胸あるじゃねえか。気に入ったぜ」

天龍「…」

 

絡んでくるんじゃねえ。さっさと食って離れよう。

 

飯塚「あんたと提督のやり取り見てたら昔のアタイを思いだしちまったよ!」

 

……なんだよそれ…?

少し気になってしまい手を止め、横目で飯塚を見る。

 

飯塚「あたいも昔、マグ公が大っ嫌いでさぁ。あいつらを仲間にしてるアイツと何回もタイマン張ったんだ」

天龍「…」

飯塚「結果はあたいの完敗。攻撃の隙をついて1発でのされちまった…。そしてアイツは勝負がつく度に言ったんだ。今の君に彼女達の何がわかる?って…」

 

気が付いたら顔を向けて真剣に話を聞いていた。

 

 

飯塚「最初は意味わからなくてよぉ。言われる度にんなもん知ったこっちゃねぇ!って言い返してたんだ。だけど20連敗した辺りから、やけくそでアイツらを傍で見て、話してみた。提督を負かす為にって意気込んでさ。………最初はギュイギュイうるせー虫女共だなって思ってたんだけどよぉ、あいつらと話してときどきタイマン張って…気が付いたらマグ公のダチが出来ちまった。だから」

天龍「…だから深海悽艦ともダチになれるってか?ふざけんじゃねえ、オレは御免だ」

 

アイツらは倒すべき敵だ。深海悽艦とダチだなんてクソ喰らえだ。

残りのメシを一気に口の中に入れる

 

あんな話を真面目に聞いてた自分がバカらしい。そう思いながら食堂を後にした。

 

 

 

飯塚「あ~クソっ。もうちょい上手い言い方が出来ればなぁ…」

ミーシャ「ふ、前に比べれば充分器用になっているぞ」

 

近くの席で天龍とのやり取りを見ていたミーシャがフォローを入れる。

飯塚はちょっと照れ臭く頬を掻く。

 

飯塚「そ、そうか…」

ミーシャ「それに以前の貴様だったら、他人をあんな風に気にかけようとせんよ」

飯塚「…だけどよぉ。あいつに上手く伝えられてねぇよ」

ミーシャ「今は、あれだけで充分だ。いきなり全てを教え説こうとしても無駄だ」

飯塚「さすが元中将様だな、言うことに説得力があるこって」

 

(提督視点)

 

 

提督「……まぁ、こうあるよなぁ……」

 

食堂から出てとりあえず執務室で昼食をとることにしたものの、先程のやり取りが思いの外参ってしまっていた。

 

食事に手が着かず、天井をボーッと見てしまう。

 

ヒリュウ「ごめんなさい……私のせいで……」

提督「いや、誰のせいでも無いさ……ただ色々とタイミングが悪かったんだ」

 

アルマータ「閣下に刃を向けるとは……あの小娘には教育が必要ね…」

 

アルマータ筆頭に何人かは天龍に対して敵対心を持たせてしまっていた。

こんな事で仲間割れは笑えない。

 

提督「天龍の言い分はもっともだ。だからこの件は不問だ。いいな?不問だからな?」

 

釘を刺しておかないと本当に殺りかねん……。

 

そんな中ノック音が聞こえ、扉が開かれる。

入ってきたのは大淀と明石であった。

 

提督「ん、どうした?」

 

明石「憲兵用の対深海悽艦装備の作成と捕縛鎖の強化の申請書の許可が欲しくてですね」

 

明石から申請書類と銃の仕様書を受け取り、目を通す。

 

提督「わかった。試作品が出来次第手が空いているメンバーに声を掛けてくれ」

 

申請書類にサインし、明石に返す。

そして再び執務を再会しようとしたのだが、明石と大淀はどこか落ち着きがなく見えた

 

提督「他に何かあるのか?」

 

大淀「その、提督…」

 

大淀の表情を見るととても深刻な表情だった。

 

大淀「明石からヲ級の…ヒリュウさんの事を聞きました。…提督はこれからも深海悽艦を捕獲していくつもりですか…?」

提督「いや、全ての深海悽艦を鹵獲して仲間にする気はないよ。敵として襲って来る以上基本的に撃滅する。例えそれが元艦娘であってもだ。そしてその中でチャンスがあれば捕獲、無力化していくってだけさ」

 

大淀の問いに迷うことなく即答するが、2人はそれを聞いてもなおどこか納得できない表情でいた。

 

明石「なぜ、そこまでハッキリと言えるのですか…?正直…答えに迷ってしまうかと…」

提督「……ちょっと昔の話になるな。座ってゆっくり話そう」

 

椅子から立ち上がり、来賓用のソファへ促す。

 

ヒリュウ「…私も聞いて良いですか?」

提督「あぁ、もちろん。コーヒーでいいか?」

 

3人の了承を得てコーヒーを4つ淹れ、それぞれの前に置く。

 

明石「あ、ありがとうございます」

大淀「ありがとうございます」

ヒリュウ「ど、どうも」

 

提督「さて、と」

 

3人と対面になる場所に座り、コーヒーを啜る。

 

提督「まだマグマ軍との戦争中だった頃、俺の部隊に10式戦車っていう武器娘がいたんだ。だがある場所で戦闘中にマグマ軍に鹵獲、闇墜ち状態になって俺達の部隊に襲い掛かったんだ」

3人「……」

提督「俺も初めての事態だったからさ。前線に出て説得しようと試みた……」

明石「どう…なったんですか…?」

 

コーヒーを一度啜り、深呼吸をして話を続けた。

 

提督「何度叫んでも彼女は一向に元に戻らなかった。終いには彼女が撃った砲弾が近くに着弾して、俺は身動き出来なくなっていた。……それでも希望はあると、そう思いながら彼女の名前を叫び続けた。その結果、俺は大事な部下を失った」

ヒリュウ「え……?」

提督「61式戦車……その作戦で一緒に出撃していた武器娘。彼女が俺を庇って…目の前で死んだ……ケッコンを間近に控えていた娘だった。…気が付いたら俺は10式を撃ち殺していた……弾倉が空になるまで。俺は自分の甘い考えのせいで部下を2人、殺してしまったんだ」

 

コーヒーを一気に飲み干し、空になったカップを静かにテーブルに置く。

 

明石「そんな事が、あったんですね…」

提督「それ以降闇墜ちした武器娘と会敵しても基本撃破、可能なら捕獲という方針に決めたんだ。……まさかここでもそうなるとは、思わなかったけどさ」

 

思わず苦笑いを浮かべてしまう。

遠くで聞いていたアルマータや大和はその時にはもう居たからその時の状況を知っているため、辛そうに目を背けている。

 

 

大淀「教えてくれてありがとうございます。…私も提督の方針に異議はありません」

提督「…ありがとな」

明石「では、私も失礼しますね」

 

 

(それから約2時間後、天龍視点)

 

天龍「オラオラァ!!」

 

哨戒任務で出撃していたオレ達第一艦隊ははぐれ艦隊と戦闘していた。

 

昼での提督とのやり取りのせいでイライラしているのもあったが……今深海悽艦を見ると無性に沈めたくなっていた。

 

問答無用で突撃して斬って撃って……手当たり次第攻撃していた。

 

利根「こら天龍!旗艦であるお主が隊列を乱してどうする!?」

 

後ろから利根の怒鳴り声が聞こえる。

振り返ると隊列からだいぶ離れていた。

 

天龍「…ちっ!」

 

流石にこれ以上は危険だな…。

仕方ねえから渋々隊列に戻った。

 

響「マグマ軍と仲良くなった司令官なんだ。きっと何か考えがあるんだよ。きっと」

天龍「…だとしても、オレはぜってぇ認めねぇ…」

利根「お主の言い分はわかったから落ち着くのじゃ。そんな事で隊列を乱されてはこちらとしては良い迷惑じゃ」

 

利根の意見はもっともだ……オレの八つ当たりでこいつらを危険な目に合わせたくねえ。……おかげで少し頭が冷えた。

 

天龍「…そうだな…すまん」

利根「うむっ!じゃあ改めて指揮をしてくれ!」

天龍「あぁ!艦隊前進!」

 

両頬を軽く叩いて改めて任務を再開する。

 

 

 

暁「天龍ちゃん…」

響「……」

 

そんな彼女を暁と響は心配していた。

そして鈴谷もそれを感じ、2人を安心させようと宥める。

 

鈴谷(提督……ちゃんとした理由があるんだよね?…じゃないと、私達も流石に黙ってないよ……?)

 

夕方(提督視点)

 

ジリリリリリリリリリリッ

 

夕食を終えて執務室に戻った矢先に電話が鳴り響く。

 

こんな時間に誰だ?

 

提督「こちら横須賀鎮守府、提督です」

 

『お久しぶりですわ、司令官』

 

提督「おまえ、麗香か!?」

 

電話の主は駒門麗香。静香や椿と同様共にマグマ軍と戦った部下だった。

 

彼女から直接電話とは珍しい。駐屯地で何かあったのだろうか。

 

提督「久し振りだなぁ!どうした?麗香も憲兵に異動か?」

 

駒門「フフッ違いましてよ」

 

フフフと何かを企んでいるような笑い声を出す駒門。

 

駒門「実は私、鎮守府で提督をやっておりましてよ!!」

 

ほぅ提督か~、自分と一緒だ……え?

 

提督「提督ぅぅぅうう!?」

 

思わず大声を出してしまった。

何処からともなくアルマータや16式が飛んでくる。どこにいたんだ君達は。

 

駒門「大声出しすぎてよっ!!!ビックリしましてよっ!!!!」

 

提督「あぁぁああすすすすまない!!あまりにも意外過ぎてな…!」

駒門「まぁ私も驚きましたわ。人手不足とはいえ、私に白羽の矢が立つなんて」

 

提督「そうだったのか…。どうだ、そっちは?」

駒門「今のところ順調ですわ。それで本題なのですが……どうやら私と司令官の鎮守府は結構近くにあるらしいんですの…フフッ」

 

まーた、さっきみたいないたずらっ子のような押し殺した笑い声が聞こえる。

 

駒門「そこであなたの艦隊と私の艦隊で合同演習を申し込みますわっ!!!!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。