りっく司令、提督になる   作:ピギヤンマ

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演習 その2

(長門視点)

 

ブリーフィングが終わり、各艦隊は演習場の端で陣形をとる。

演習場は今回の対抗演習用に広く設定しており、両端に位置すると互いの姿が見えない程となっている。

 

麗香提督と向こうの提督、そして90式達は演習場全体を見下ろせる場所へ移り私達の勝負の行方を見届ける事になった。

 

90『これより対抗演習を開始するザマス!各部隊、配置の方はどうザマス?』

 

 

長門「こちら第1艦隊、準備完了」

天龍『こっちもOKだ』

 

審判役となった90式の無線に準備完了の返事をする。

 

90『演習始め!』

 

長門「まずは制空権を頂くとしよう」

蒼龍「了解!艦載機発艦!」

 

開始の合図と同時に艦載機を放ち偵察兼制空権確保に動く。

 

蒼龍「見えました!相手は輪形陣、龍驤ちゃんの艦載機発艦を確認!」

長門「ふむ、妥当な判断だ…ではこちらも進むとしよう」

 

私が低速艦な為一気に間合いを詰める事が出来ないのがもどかしいが、ゆっくりと進んでいく。

 

蒼龍「敵軽巡、駆逐艦の対空砲火、艦戦の抵抗激しく制空権拮抗!…そんな」

長門「どうした!?」

蒼龍「艦載機、艦攻艦爆全機撃墜されました!どうやら龍驤ちゃん艦戦だけ搭載してたみたい!こっちの艦戦の被害甚大、撤退させます!」

金剛「ワオッ!思い切りましたネー!」

長門「だが逆に我々は空からの攻撃を警戒しなくてもいいということだ」

 

艦載機は大きく3つに分かれている。艦を攻撃する艦功、艦爆。そしてそれらを撃ち落とす艦戦だ。

おそらく向こうは空からの攻撃を警戒し、持てる艦載機を全て艦戦にしたようだが……我々を空から攻撃する手段が無いということを意味している。

 

木曾「だとしたら残るは砲撃と雷撃か」

北上「なーんだ楽勝じゃん」

 

そして空戦があった場所に向かっていくと、そこには龍驤が1人だけポツンと立っており、彼女の周辺には艦載機の残骸が辺り一面に浮いていた。

 

どういう事だ…?周りの残骸に足を取られたのか?

だとしたら相当な練度不足ということになるが。

 

北上「えっと…降参かな?」

木曾「罠…かもしれないぞ」

金剛「どういうことネー?」

 

皆が龍驤の行動に注目する。

彼女だけを見てしまい、視野が狭まってしまっている事に気付くのが遅れてしまった。

 

木曾「くっ!」

北上「ちょっとぉ!!」

比叡「っ!?」

 

突如何処からか機銃を撃たれ、木曾は小破、比叡はかすり傷程度に済んだが、北上は魚雷管に命中して爆発、轟沈判定を受けてしまう。

 

北上「まだ何もしてないのにー!」

長門「何処から…まさか!」

 

周りに漂っている艦載機の残骸に目を向けると、そこには瑞雲が数機無傷で浮いているのが確認した。

 

してやられた……艦載機を持てるのは龍驤だけではない。

 

長門「重巡2人の瑞雲か!」

龍驤「あちゃーバレてもうたか。利根!鈴谷!」

 

龍驤が叫ぶと同時に瑞雲が離水。

 

蒼龍「うそ、きゃぁ!」

 

龍驤の合図と共に全ての瑞雲が離水と同時に蒼龍目掛け爆撃。

突然の事で蒼龍も対応出来ず中破判定を受けてしまう。

 

長門「蒼龍!」

金剛「シィット!」

 

さらにその一瞬だった。その一瞬全員の意識が瑞雲と蒼龍に移り、目の前にいる龍驤が対空機銃を構えたのに気遣くのが遅れてしまった。

 

龍驤「空母でも砲を積めるん忘れてたんか?」

木曾「しまっ」

 

全速力で木曾に突撃し、機銃を撃つ。

機銃と言えど至近距離からの攻撃に大破判定を受けてしまう。

 

なんなのだこの戦術は……!?

 

艦隊は普通6人纏まって行動するものだ…!誰かが突出して列から離れるなど自殺行為にも等しい。

 

比叡「っこの!」

龍驤「っ!あっちゃ~…」

 

咄嗟に比叡が迎撃してくれたお陰で、龍驤を轟沈判定にすることが出来た。

 

長門「本隊は、天龍達は何処だ!」

鈴谷「ここだよー!」

 

声がする方向を向くと鈴谷が水飛沫を上げながら突撃してくるのが見える。

だがよく見るとその後ろに鈴谷と水飛沫に紛れ暁、響が見えた。

 

長門「…なるほど。鈴谷は囮、本命は後ろの2人か。金剛!」

金剛「イエース!いっくネー!」

 

突撃してくる鈴谷と、その背後にいる暁達目掛け砲撃を開始する。

 

鈴谷「2人共避けるよ!」

響「了解」

暁「え、ちょ…きゃぁ!」

 

鈴谷と響には避けられるものの暁だけ対応に遅れ、被弾。轟沈判定を受ける。

 

長門「よし!」

 

これで相手の攻撃は未然に防げた…!

 

……ハズであった。

 

隣で大きな水柱が立ち、金剛達を包み込む。

 

金剛「ホワッツ!?」

比叡「っ!!!」

木曾「ぐぁ!」

蒼龍「いやぁ!」

 

金剛は大破、比叡は中破となり、木曾と蒼龍は轟沈判定を受けてしまう。

今の水柱は…雷撃…!?何故だ!?

未然に防いだ筈だ!!!

 

 

長門「……まさかあの突撃をする前からもう魚雷を放っていたのか…!それを悟らせない為にあの水飛沫と…作戦を誤認させる為に背後に駆逐艦を……」

 

くそ…やってくれるじゃないか…!

 

更に間髪入れず後ろの方角から砲撃を受ける。

振り向くと天龍、利根、そして合流した鈴谷と響が向かってくる。

 

天龍「やっぱ戦艦が残っちまったか!」

利根「じゃがまさかこんな戦法を思い付くとはのう。空戦で相手の航空戦力を潰す事だけに専念し散開、その後も色んなところに注意を向け不意を突くとは」

天龍「だがもうそれも通用しそうにねえ…!だったら正面からやってやらぁ!!」

 

どうやら先程迄の奇策が尽きたのか、通常の艦隊行動へ戻っていく天龍達。

 

長門「策が尽きて正面から来るか!まだまだだなぁ!」

 

互いに砲撃戦を開始。

私は中破、金剛と比叡が轟沈判定となってしまうが、天龍・利根は大破判定、響・鈴谷は轟沈判定にまで追い込んだ。

 

天龍「まだまだぁっ!」

利根「数ではまだこちらが有利じゃっ!!」

 

勇ましくこちらに食らい付いてくる2人。

…中々根性があるじゃないか。気に入った…!

 

長門「来いっ!この一撃で終わらせてやる!!」

 

その時鎮守府全体から警報が鳴り響く。

 

深海悽艦が接近している合図であった。

 

(提督視点)

 

90「演習中止ザマス!!!敵が接近中ザマス!!!!」

 

教導連隊のメイド達の動きが慌ただしくなる。

なんということだ…出先の鎮守府で敵が接近中とは。

 

16「確認出来ただけでも相当な数が接近しています!!」

駒門「なんてこと…!長門達を急いで出撃させて!!!」

提督「天龍!俺達も出撃するぞ!急いで準備だ!」

駒門「っ!?司令官さま…!」

提督「この状況で任せっきりは性に合わないのは知っているだろ?」

駒門「ふふ…そうでしたわね。弾薬や燃料はこちらが負担致しますわ!」

提督「ありがとう」

 

その時スマホから着信が入る。こんな時に誰だ…!?

画面を見るとどうやら鎮守府からのようだった。

 

提督「俺だ」

アルマータ『閣下!現在此方に深海悽艦が接近中です!』

 

なん……だと…!?

 

最悪のタイミングだ。

既に天龍達は長門達と共にブリーフィングに向かう所だ……それに今から戻っても迎撃に間に合うかどうか怪しい……。

 

提督「今こっちの鎮守府でも敵の大部隊が接近中だ」

アルマータ『そんなっ!』

提督「天龍達も迎撃に向かうことになったから戻るのは難しい…敵の規模はわかるか?」

アルマータ『今大淀から情報が入りました……戦艦級を旗艦に1部隊規模とのことです!……ちょ!』

明石『提督!聞こえますかっ!?』

 

アルマータから受話器を引ったくったのか一瞬の物音と共に明石の息を切らした声が聞こえた。

 

提督「どうした!?」

明石『つい先程あかりさんやミーシャさん達用の対深海悽艦装備の試作品が出来ました!!』

提督「っ!!!」

 

どうやら今できる最良の選択肢は1つのようだ。

 

明石『提督!』

提督「ナイスタイミングだ明石!戦車砲はどうだ!?」

明石「すみません設計図は出来ているのですが組立てが出来ておらず…」

提督「わかった。とりあえず椿達に装備させて迎撃させてくれ!ただし絶対に無理はするな!!」

明石『はいっ!ではまたアルマータさんに戻します!』

 

アルマータ『話しは聞かせてもらいました。編成が完了次第出撃させます』

提督「頼む。それと指揮も任せられるか?」

アルマータ『ご期待に御応え致します』

 

やれることはこれが全部だろうか……いや、まだ一手残ってる。

 

提督「それと…ヒリュウも出撃だ」


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