今回で100話目です。記念として、百話目記念も同時に投稿して居ますので、そちらも読んでいただけると幸いです。
「俺は…消えたくない…はずだ…」
「総司君いきなりどうしたの?」
総司が突然放った独り言に反応する真由美。何でも無いと軽く流した総司は、天空を仰ぎ見る。そこには、幾何学的な模様が浮かび上がり、空を覆う光景があった。
「…俺も行かなきゃ」
「っ!?ちょっと、総司君!?」
「オイ、何処へ行くんだ!?」
肩を貸してくれていた摩利から離れ、走り出す総司。ついに盤面は最終局面を迎える。
少し前、スターズ対一高の戦場にて…
「カツト・ジュウモンジ!?」
「千葉、西城…お前達…」
「なんで十文字先輩が此処にいるか知りませんが…!」
「先輩がいれば百人力ッスよ!」
「…本当に何をしているんだ?」
突如として現われた克人に驚愕を漏らすカノープスを尻目に、エリカとレオが喜びの声を上げる…そんな明確に戦おうとしている二人何をしているかを再三に質問を行う克人。それは何故なのか。そう言えばここまでエリカとレオの服装に付いて何も言及していなかったので、此処で描写しておこう。
二人はなんと、コスプレ感全開の警官服のような物を身に纏っていたのだ…しかも、エリカは赤、レオは緑である。つまり…
「俺達戦隊なんで」
そう、深雪も幹比古も雫も、それぞれが似たような警官服を身に纏っている。色は順に青、黄色、ピンクだ。どう見ても特捜戦隊デカレンジャ○である。この見た目でマジレン名乗るのはちょっとどうかしてると思う。と言うか戦場にコスプレで来るな。
これには克人も目を見開いて、注意の言葉を…
「俺も混ぜてくれないか?」
オイオイオイ、やったわコイツ。もう(十文字家は)終わりかも分からんね。
「マジッすか!?じゃあ十文字先輩はウルザードっすかね!」
「ちょうどアーマー来てるし良い感じじゃない?」
「…混ぜてくれといった手前悪いのだが、ウルザードというのはどのようなヒーローなのだ?」
「ああ、知らないなら教えますよ…まずは口上からですね。ゴニョゴニョ」
「…なるほど、理解した」
本当か?頭が溶けている奴が書いているからキャラ全員の頭が溶けている気がしなくもないが、とにもかくにも、克人は口上を言ってくれるらしい。ウルザードがどんなヒーローか理解出来ていても、ここが戦場だと理解出来ているのだろうか?
「…百鬼夜行をぶった切る!地獄の番犬!ウルザード!」
だからそれはデカレンなのだが…
だがそんな事を構っている彼らでは無い。少し離れたところで戦っていた深雪達も合流し、遂に地球署のデカレンが「「違う」」…とうとう君たちまで地の文にツッコミを入れるのか。…マジレンの家族が勢揃いだ(ヤケクソ)(しかも揃ってない)。
克人という最強の盾を得た一高生達は、反撃の狼煙を上げる…
「レイジ・アベ…!」
「…スターズの総隊長様か」
一方、軌道衛星迎撃部隊のメンバーが揃ったのだが、今此処には、つい最近殺し合った相手が同席している。もう割り切っている達也はともかく、嫌な思い出しか無いリーナにとって、零次の存在は、敵にしか映らないだろう。
「アンタ、どの面下げて…!」
「この面だよ、何体も同じものがある複製品さ…そんなことより、今はアレを止めるのが先だ」
その言葉とともに、三人が上を見上げる。そこには、とうとう肉眼でも衛星が視認できるようになってしまっていた。あんな物が地球に落下すれば、氷河期の再来を招くことは容易に考えられる。一刻も早く衛星を破壊しなければならないのだが…
「…作戦は?」
「んなもんねーよ、俺が止めてお前らが壊す。それだけだ」
「…そうも行かないんだ、これが」
「あ?」
あまりに適当に対処しようとしている零次にリーナが苛つき出していた時、達也が横から口を挾む。
「あの衛星には、緊急時用に装備された対デブリ用の劣化ウラン弾がある…」
「…まさか?」
「ああ、間違いなく災害を招くだろうな」
「そうね、あの高度じゃもう、爆破した瞬間に世界にばら撒かれてしまう…」
衛星に仕込まれた劣化ウラン弾の影響で、ただ破壊するだけでは、地球の生態系に甚大な被害をもたらすこととなってしまう。そうなれば、直下にある日本も無事では済まない。流石にこれには零次も無理を通せなかった。
とここで、達也から提案があった。
「…零次は、できるだけ範囲の広い障壁を貼ってくれ。リーナは『ヘヴィ・メタル・バースト』で衛星を破壊してくれ」
「ちょっと!?破壊したら放射性物質が「それは俺が何とかする!」…っ」
「二人とも、それでいいな?」
「おう、しくじったらただじゃおかないからな」
「…頼んだわよ、タツヤ」
異議を唱えようとしたリーナを、達也は一喝で黙らせる。
達也は分かっていたのだ、リーナは出来る出来ないではなく、達也の肉体を心配していた事を。彼が何をするのか皆目見当も付かないリーナだが、仮に達也が放射性物質全てに干渉して消滅させようとするのは、達也の処理能力的に、オーバーフローしてしまうのでは無いかと。
「…時間が無い、さっさと作戦を開始するぞ!」
「…分かったわ」
「了解了解っと」
三人は散開し、それぞれの持ち場へ着いた。それにより、作戦が決行された。
「零次、障壁を頼む!」
「任せろって!『四重結界』!」
零次の叫びと共に、幾何学模様の障壁が四枚重ねて展開される。これは一枚一枚がファランクス999枚分…つまり、克人の連続展開の限界値と匹敵する防御力を誇る。欠点として、即席の障壁として使うには展開に二秒も掛かってしまい微妙である点だろうか。戦場においては致命的だが、飛来する落下物を防ごうとして使う分には申し分ない構築速度である。だが…
「やるならさっさとやれ総隊長様よォ!」
「言われなくとも!」
自然の力…特に質量×速度の計算式がもたらす破壊力は凄まじい。そんなこと零次には、敵を粉砕するのに自分も宿敵も同じ原理を用いているからこそ、これっぽっちの障壁では耐えられないと分かっていたのだ。
それは零次に苦汁を呑まされ、総司の規格外の速度を目の当たりにしている達也やリーナも理解している。相手が戦略級魔法と言うことで、軍から携行を許可されたCAD、神器『ブリオネイク』を構えるリーナ。槍の様な形状の先にある砲身を衛星へと向ける。
「…行くわよ!」
そしてリーナの掛け声と共に、音速の百倍の速度で、砲身から収束ビームが発射される。この魔法、『ヘヴィ・メタル・バースト』は、十三使徒の中でも最強の威力を誇る戦略級魔法である。その最大火力は、『
その発射までの様子を、ある程度高い場所から見ていた達也は、覚悟を決める。リーナが先程した懸念の通り、現在の達也ではミサイルに搭載されているであろう放射性物質全てを消しきるには、自身が廃人になる覚悟が必要だ。だが達也は感情を失っている。自分が死ぬことに、常人よりも躊躇が無い。自分の犠牲で友が、そして深雪が守れるなら。それで達也は充分なのだ…
「…お兄様!」
「…深雪!?」
だが、なんと言うことだろう。達也が最も大切にしている少女が、今この場に現われたではないか。何故此処にいるのか。その答えは、深雪の後ろから現われた人物によって教えられた。
「…俺が、連れてきた」
「総司…!?お前、大丈夫なのか?」
「問題ないから…さっさと『
「…!」
深雪がこの場にいる理由は、達也を援護するために、『
「深雪…頼めるか?」
「はい…勿論です、お兄様」
跪いた達也の額に、深雪が優しくキスをする。これによって『
「じゃあ、行ってくる」
「…お兄様、深雪はいつまでもお待ちしております」
「…ああ、必ず帰ってくるよ」
達也は飛行デバイスを操作して、空中へと飛び上がった。
その姿を、深雪は心配そうに眺めていた。
「…お兄様」
轟音が鳴り響く。衛星が木っ端微塵に爆発した影響だ。しかしその爆風や衛星の破片は、零次の結界によって遮られ、地上に降り注ぐ事は無い。
だが、放射性物質は別だ。このまま障壁が維持されるならば問題ないが、一瞬でも緩めばそこから地上に害を及ぼすだろう。
そして今なら、まだ大して拡散していない。完全に消し去るには、ここしか無かった。
「…『ベータ・トライデント』、発動」
達也は、万が一にと用意していた専用のカートリッジをCADに装填し、『ベータ・トライデント』を発動させた。
この魔法は物質を陽子と中性子にまで分解しさらに中性子をベータ崩壊させる魔法であり、第一段階として物質を原子に分解、第二段階として原子核を陽子と中性子に分解、第三段階として中性子から電子と反電子ニュートリノを分離する。魔法の効果が持続している間、陽子は中性子から分離された電子を捕獲することができず、電子の大部分は陽子と共もにプラズマ状態で拡散する。
これによって、放射性同位体は安定的な元素に組み換わり毒性が除去されるのだ。
この魔法に集中するため、一時的に飛行魔法を切って、トリガーを引いた達也。それによって放射性物質が全てプラズマ状態と化して拡散する…
その光景を見た、深雪は言葉を漏らす。
「…流石はお兄様です」
その瞳は、丸で白馬の王子の活躍を見た、お姫様のようだったと、後に総司は語った。
魔法科世界の秘匿通信
・エリかとレオが特撮にはまっているのは、総司の強い勧めがあって、視聴してみたため。
・『ベータ・トライデント』とは、後に作成される魔法『バリオン・ランス』の試作魔法であるが、原作と違い、開発に至った経緯はリーナと戦った時に知ったFAE理論の実在と、分解魔法…というより魔法が一切効かない総司のような相手を想定して研究が開始されている。
二章連続で戦闘にあんま絡まない主人公ェ…
後、次回からダブルセブン編ですが、100話記念で少しだけ描写があります。
別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?
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